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叱責を受ける影
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王弟の屋敷では直属で動かしている騎士たちの報告に
宰相は怒りを隠そうともせず大声をあげていた。
「3人とも遺体がないとはどういう事だ」
テーブルに置いた茶器が揺れ、中身が零れる。
6人の男たちはありのままを報告するが
納得をしない2人に直立のまま殴られる。
「寄りにもよって、川に流しました?
証拠も何もないではないか!首が無理なら
手足の一つでも持ってこなければ話にならんだろうが!
おまけに突入時、女の死亡を確認しておきながら、
戻ったらありませんでしただと?」
「しっしかし本当なんです」
「死んでいた女が、1時間もしないうちに戻ってみれば
消えていましたなど!何処のバカが信じるのだ」
「まぁ、川に流したのであれば数日のうちに下流域を
調べれば流れ着くだろう。
仮に生きていたとしても2歳では1人で生きられまい。
男も女も生きているのなら、家を見張れ。
数日は雲隠れをしても、1か月、2か月となると
金が持たないだろうからな」
王弟の言葉に6人の男たちは礼をして退室をする。
宰相は怒りがおさまらないようで、真っ赤な顔で独り言ちる。
「全く・・どいつもこいつも仕事が適当なんだッ」
ーーお前が一番適当なのではないかーー
王弟は喉元まで出た言葉を飲み込み
「体のいい厄介払いが出来たと思え。
あの男は所詮は使い捨てだ。お前だって将校への昇格など
手配の一つもしておらんだろう」
葉巻に火を付けて白い息を吐き出しながら王弟は
椅子に深く腰掛けて宰相を窘める。
「剣には血のりもついておったし、手負いは間違いない。
数か所斬り刺ししていれば助かる見込みはないだろう」
「それはそうですけれども、念には念を入れてですね」
「その動きを知られればどうやって言い訳をするのだ。
必要以上に動くと、王子の子種を使って国家転覆を計ったと
首を落とされるのはこちらになるのだ。動きすぎるな」
「確かにそうなのですが、確証もないままですと…」
「それはそうと…あの使い捨ての嫁はどうしているのだ?
少々痩せてはいたが、暇つぶしの玩具にはなるだろう」
「神殿に届けを出し、実家の伯爵家に戻ったと。
それからドレーユ侯爵との縁談が持ち上がっているそうです」
宰相の口から出たドレーユ侯爵との名前に眉を顰める王弟。
学園では同級となるが、空想の世界に入り込み訳の分からない事を
ブツブツと呟く奇妙な男だったと記憶を手繰り寄せる。
「ドレーユ侯爵か…」
「えぇ。偏屈者で頭の中は花畑だと専らの噂でございます。
伯爵家とは元々姉のほうと縁談があったようですが
姉が第三王子に嫁いでからは何処からも縁談がなかったようです。
最も、昔から偏屈者で爵位は兄が継ぎ、今は爵位は同じですが
母方の爵位を譲り受けて独身貴族を謳歌しているとか」
「昔も今も変わらず偏屈者か。ご苦労な事だ」
この時、王弟は少しでもドレーユ侯爵に気をかけて
調べていればと後々に悔むことをまだ知る由もなかった。
宰相は怒りを隠そうともせず大声をあげていた。
「3人とも遺体がないとはどういう事だ」
テーブルに置いた茶器が揺れ、中身が零れる。
6人の男たちはありのままを報告するが
納得をしない2人に直立のまま殴られる。
「寄りにもよって、川に流しました?
証拠も何もないではないか!首が無理なら
手足の一つでも持ってこなければ話にならんだろうが!
おまけに突入時、女の死亡を確認しておきながら、
戻ったらありませんでしただと?」
「しっしかし本当なんです」
「死んでいた女が、1時間もしないうちに戻ってみれば
消えていましたなど!何処のバカが信じるのだ」
「まぁ、川に流したのであれば数日のうちに下流域を
調べれば流れ着くだろう。
仮に生きていたとしても2歳では1人で生きられまい。
男も女も生きているのなら、家を見張れ。
数日は雲隠れをしても、1か月、2か月となると
金が持たないだろうからな」
王弟の言葉に6人の男たちは礼をして退室をする。
宰相は怒りがおさまらないようで、真っ赤な顔で独り言ちる。
「全く・・どいつもこいつも仕事が適当なんだッ」
ーーお前が一番適当なのではないかーー
王弟は喉元まで出た言葉を飲み込み
「体のいい厄介払いが出来たと思え。
あの男は所詮は使い捨てだ。お前だって将校への昇格など
手配の一つもしておらんだろう」
葉巻に火を付けて白い息を吐き出しながら王弟は
椅子に深く腰掛けて宰相を窘める。
「剣には血のりもついておったし、手負いは間違いない。
数か所斬り刺ししていれば助かる見込みはないだろう」
「それはそうですけれども、念には念を入れてですね」
「その動きを知られればどうやって言い訳をするのだ。
必要以上に動くと、王子の子種を使って国家転覆を計ったと
首を落とされるのはこちらになるのだ。動きすぎるな」
「確かにそうなのですが、確証もないままですと…」
「それはそうと…あの使い捨ての嫁はどうしているのだ?
少々痩せてはいたが、暇つぶしの玩具にはなるだろう」
「神殿に届けを出し、実家の伯爵家に戻ったと。
それからドレーユ侯爵との縁談が持ち上がっているそうです」
宰相の口から出たドレーユ侯爵との名前に眉を顰める王弟。
学園では同級となるが、空想の世界に入り込み訳の分からない事を
ブツブツと呟く奇妙な男だったと記憶を手繰り寄せる。
「ドレーユ侯爵か…」
「えぇ。偏屈者で頭の中は花畑だと専らの噂でございます。
伯爵家とは元々姉のほうと縁談があったようですが
姉が第三王子に嫁いでからは何処からも縁談がなかったようです。
最も、昔から偏屈者で爵位は兄が継ぎ、今は爵位は同じですが
母方の爵位を譲り受けて独身貴族を謳歌しているとか」
「昔も今も変わらず偏屈者か。ご苦労な事だ」
この時、王弟は少しでもドレーユ侯爵に気をかけて
調べていればと後々に悔むことをまだ知る由もなかった。
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