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ドレーユ侯爵家の妖精
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翌朝、早めの朝食を取って、侯爵家の馬車を待つシャロン。
「一緒に行きましょうか?」
心配そうなリーナはシャロンの髪を透く。
鏡に映るシャロンは戻って来たよりも顔色もよく少し体重も増えた。
リーナは髪飾りを少し直す。
「はい、出来ました!お嬢様今日の出来栄えもばっちりです」
「ウフフ。ありがとう」
そこに侯爵家の馬車が来たと知らせが入る。
ドレッサーの前から移動するシャロン。
玄関に行くと、ドレーユ侯爵本人が待っていた。
まさか侯爵自らが迎えに来るとは思っていなかったシャロンは
慌てて小走りで侯爵の元に行く。
「お待たせいたしました」
「いえいえ。少しも待っておりませんよ。さぁ行きましょうか」
侯爵にエスコートされて馬車に乗りこむ。
「行ってらっしゃいませ」
使用人に見送られて馬車が動き出す。
シャロンは侯爵にわざわざ迎えに来てもらった礼を言った。
「急にお呼びたてするのです。当然ですよ」
シャロンは不思議に思う。
侯爵そのものも不思議の塊のようなものだと思っているが
いつも形式的なお茶で先ぶれも毎回数日前に先にくれるのに
今回に限り翌日だという慌ただしさを侯爵らしくないと思ったのだ。
「今日は、何かございますの?」
「いえね?妖精を拾ったのです」
「え?妖精??拾えるものなのですか?」
「えぇ。だから拾ったのです」
「はぁ??」
いつもはあまり表情を変えない侯爵なのに今日は口元が
少し嬉しそうだなとシャロンは思った。
ーー妖精って拾えるものだったかしら?ーー
絵本の中では妖精がいつも活躍するが実際にいるのだろうかと
シャロンは不思議に感じた。
そんなシャロンを侯爵はからかう。
「先日、子羊が天に召されましてね。妖精をその時に拾ったのです」
「子羊が天に??」
「えぇ。子羊には何の罪もないのです」
ーーまぁそうだろうけど…そんな事言われると夕食が食べ難いわーー
「妖精は少し羽根を痛めておりましてねぇ」
「羽根を?ケガをしているということですか?」
「えぇ。ですから我が家に招いたのです」
「妖精でしたらお医者様は…無理ですよね」
「いいえ?お医者様はお連れしていますので」
ーー妖精も診る事が出来る医者が王国にいたのねーー
「妖精も診察してくださるなんて‥お会いしたいわ」
「フフフ…毎日会っておられますよ」
「えっ?わたくしが…ですか?」
「えぇ」
シャロンは毎日会う人を思い浮かべる。
リーナや執事は週に1日休みがあるので毎日ではない。
父も母も今日は領地に行っているので会ってない。
誰の事を言っているのだろうと思案を重ねる。
馬車は侯爵家に到着し、シャロンは馬車を降りる。
侯爵に先導されて、広い屋敷の中を奥に入る。
ーーこんなに広いんだわーー
初めて奥まで入るシャロンには何もかもが目新しい。
中庭に面した廊下を歩くと途中の部屋で侯爵が立ち止まる。
「妖精はまだ寝ていると思います」
やはり不思議な人だと思いつつ、にこりと笑う。
「私は向こうの部屋にいますので、何かあれば呼んでください」
「えっ?わたくし1人で入るのですか?」
「えぇ。そうですよ。他の妖精が私を呼んでますので」
「でっですが、まだ…人様のお屋敷ですし、わたくしだけというのは」
「困りましたねぇ」
侯爵はふむ‥と困ったような表情をする。
何か気に障るような事を言ってしまったのだとシャロンは焦る。
「い、いえ、あの‥」
「いいのです。この部屋の妖精に必要なのは貴女です。
私は妖精のお願いを聞いただけ。貴女は私のお願いを聞くだけです」
「わ、わかりました。扉は開けたままがよろし‥」
「いいえ?閉めますよ?なんなら外鍵も閉めます」
「えぇぇっ?」
外鍵を締められたら部屋からでられないではないかと
シャロンは更に慌てた。
「冗談ですよ。でも妖精はすごく繊細なのです。
こっそり覗かれたり、聞き耳をたてられるのを嫌うのです」
よく判らないが、ここは自分が折れるしかないのだろうと
シャロンはわかりましたと扉をあけて、1人入室をした。
「一緒に行きましょうか?」
心配そうなリーナはシャロンの髪を透く。
鏡に映るシャロンは戻って来たよりも顔色もよく少し体重も増えた。
リーナは髪飾りを少し直す。
「はい、出来ました!お嬢様今日の出来栄えもばっちりです」
「ウフフ。ありがとう」
そこに侯爵家の馬車が来たと知らせが入る。
ドレッサーの前から移動するシャロン。
玄関に行くと、ドレーユ侯爵本人が待っていた。
まさか侯爵自らが迎えに来るとは思っていなかったシャロンは
慌てて小走りで侯爵の元に行く。
「お待たせいたしました」
「いえいえ。少しも待っておりませんよ。さぁ行きましょうか」
侯爵にエスコートされて馬車に乗りこむ。
「行ってらっしゃいませ」
使用人に見送られて馬車が動き出す。
シャロンは侯爵にわざわざ迎えに来てもらった礼を言った。
「急にお呼びたてするのです。当然ですよ」
シャロンは不思議に思う。
侯爵そのものも不思議の塊のようなものだと思っているが
いつも形式的なお茶で先ぶれも毎回数日前に先にくれるのに
今回に限り翌日だという慌ただしさを侯爵らしくないと思ったのだ。
「今日は、何かございますの?」
「いえね?妖精を拾ったのです」
「え?妖精??拾えるものなのですか?」
「えぇ。だから拾ったのです」
「はぁ??」
いつもはあまり表情を変えない侯爵なのに今日は口元が
少し嬉しそうだなとシャロンは思った。
ーー妖精って拾えるものだったかしら?ーー
絵本の中では妖精がいつも活躍するが実際にいるのだろうかと
シャロンは不思議に感じた。
そんなシャロンを侯爵はからかう。
「先日、子羊が天に召されましてね。妖精をその時に拾ったのです」
「子羊が天に??」
「えぇ。子羊には何の罪もないのです」
ーーまぁそうだろうけど…そんな事言われると夕食が食べ難いわーー
「妖精は少し羽根を痛めておりましてねぇ」
「羽根を?ケガをしているということですか?」
「えぇ。ですから我が家に招いたのです」
「妖精でしたらお医者様は…無理ですよね」
「いいえ?お医者様はお連れしていますので」
ーー妖精も診る事が出来る医者が王国にいたのねーー
「妖精も診察してくださるなんて‥お会いしたいわ」
「フフフ…毎日会っておられますよ」
「えっ?わたくしが…ですか?」
「えぇ」
シャロンは毎日会う人を思い浮かべる。
リーナや執事は週に1日休みがあるので毎日ではない。
父も母も今日は領地に行っているので会ってない。
誰の事を言っているのだろうと思案を重ねる。
馬車は侯爵家に到着し、シャロンは馬車を降りる。
侯爵に先導されて、広い屋敷の中を奥に入る。
ーーこんなに広いんだわーー
初めて奥まで入るシャロンには何もかもが目新しい。
中庭に面した廊下を歩くと途中の部屋で侯爵が立ち止まる。
「妖精はまだ寝ていると思います」
やはり不思議な人だと思いつつ、にこりと笑う。
「私は向こうの部屋にいますので、何かあれば呼んでください」
「えっ?わたくし1人で入るのですか?」
「えぇ。そうですよ。他の妖精が私を呼んでますので」
「でっですが、まだ…人様のお屋敷ですし、わたくしだけというのは」
「困りましたねぇ」
侯爵はふむ‥と困ったような表情をする。
何か気に障るような事を言ってしまったのだとシャロンは焦る。
「い、いえ、あの‥」
「いいのです。この部屋の妖精に必要なのは貴女です。
私は妖精のお願いを聞いただけ。貴女は私のお願いを聞くだけです」
「わ、わかりました。扉は開けたままがよろし‥」
「いいえ?閉めますよ?なんなら外鍵も閉めます」
「えぇぇっ?」
外鍵を締められたら部屋からでられないではないかと
シャロンは更に慌てた。
「冗談ですよ。でも妖精はすごく繊細なのです。
こっそり覗かれたり、聞き耳をたてられるのを嫌うのです」
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シャロンはわかりましたと扉をあけて、1人入室をした。
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