旦那様に離縁をつきつけたら

cyaru

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雨と侯爵家の使者

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午前中、テラスで読書をしていたシャロン。
雲行きが怪しくなり、雨が降りそうだとメイドのリーナに言われ
テラスを後にする。

そこにドレーユ侯爵家から手紙が届いた。

「お嬢様、侯爵様からお手紙が届いております」

そうやって執事が言うときは、返事を待っている者がいるという事だ。
シャロンは急ぎ封を切って手紙を読む。

「お嬢様?どうされました」
「えぇ、明日侯爵様のお屋敷に来て欲しいそうなの」
「明日は特に出かける用事もなかったと思いますよ」
「そうね・・では、明日お伺いしますと言伝をして頂戴」

そういうと執事は玄関で待つ侯爵家の使用人に
シャロンの言葉を伝えた。

「では、明日お迎えに参りますので」

侯爵家の使用人は丁寧な礼をすると屋敷を後にする。
シャロンの好きな紅茶を淹れてリーナは窓の外を見る。

「降り出しそうですね」
「そうね。明日も雨かしら」

雨の日の外出は着替えも必要になるし、ドレスの裾が
汚れやすい。シャロンは小さくため息を吐く。

窓を見るとぽつぽつと雨が降り出したのが見える。
シャロンは紅茶を飲みながら、シリウスを想う。

☆~☆~☆

「ただいまぁ・・びしょびしょだ」
「だから朝、傘をって言いましたでしょう?」
「仕方ない。濡れついでだ。一緒に湯あみをしよう」
「えっ?わたくし、濡れておりませんわ!」
「ンッフッフ・・(がばっ)」
「きゃぁ。やめてくださいまし!濡れてしまいましたわ!」
「じゃ、湯あみしないとな」

☆~☆~☆

びしょ濡れのシリウスに帰宅早々抱き着かれて
シャロンまで一緒に湯あみをする羽目になった事を思い出す。

「ふふっ・・」

小さく笑うとリーナは何か楽しい事でもあったのかと聞く。
その言葉に、もう忘れようと思ったシリウスとの思い出に
浸っていた事を自覚する。

忘れよう、考えることはやめよう。
そう思っても、シャロンの心の中のシリウスは消えない。
辛い事もあったけれど、目を閉じると思い出すのは
いつもじゃれついてくるシリウスの事だった。

ーー今になって手紙だなんてーー

だが、その手紙に腑に落ちない事も多いとシャロンは考える。

ーー君の世界にはもういないかも知れないーー

どうしてなのかしら…。
カリナの事は任務だったと頭ではわかっても心はまだ受け入れない。
だけど、死んでしまうような文言にシャロンは戸惑う。

外の雨は窓に打ちつけるように激しくなった。
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