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水音
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「カリナママぁ・・」
ソティスが小さく声をあげた。
殺るなら今しかない…そう思いシリウスはソティスに近寄った。
ソティスはベッドの上に半身を起こして目を擦り
近づいてきたシリウスを見上げる。
「…パパ…なの?」
『パパ?君の父さんの事かい?』
思わずシリウスは話しかけてしまい、
短剣を背に隠した。
「うん。カリナママがね。僕のパパは騎士だって言った」
えんじ色の騎士服を着ていたシリウスを父だと思ったのだろう。
満面の笑みでソティスがシリウスを見ている。
ーー殺せないーー
そう思うと、シリウスはソティスを抱きしめた。
小さな体はすっぽりと胸に入るが、隙間だらけである。
玄関の向こうでカタンと小さな音がしたような気がした。
咄嗟にシリウスはソティスを抱き上げて
2階である事も忘れて窓を開けた。
「ちっ・・高いな」
飛び降りるには高さがある。自分一人ならなんとかなりそうだが
ソティスを連れるとなると飛び降りた後のバランスが取れない。
しかし行くしかない。おそらく玄関を開ければそこには
王弟の差し向けた輩がいる気配がした。
窓から出てソティスを小脇に抱いて、コーニスの上を慎重に渡る。
「おじさんの首にしっかり掴まるんだ」
「う、うん」
ソティスを背に回し、首にしっかりと小さな手が回ると
コーニスの出っ張りに指をかけて階下に降りた。
足先が地面に届くかというくらいまで下りると飛ぶ。
ソティスをくるりと回して小脇に抱えるとシリウスは走った。
細い路地を幾つもギザギザに回って、川べりにたどり着いた。
背の高い葦が生えているところを敢えて進み、
誰かの気配を感じると歩みを止めて蹲る。
そうやって少しづつ進んでいたが、
目の前に3人の人影が立ちはだかった。
一目で浮浪者でも、酔っ払いでもなく平民でもないと判る男たち。
背中のほうにも人間の気配を感じた。
ソティスを降ろして、腰から剣を抜く。
「おじさんにしっかり掴まるんだぞ」
「えっ??」
「男の子だろう?」
そう言うと、姿勢を正しソティスを前抱きに抱えて、片手で剣を構えた。
4,5回剣がキンキンとぶつかり合う。
子供を抱いて剣を交えるのは不利である事は判っている。
おまけにこちらは1人。相手は5人以上はいる。
目の前の男が大きく振りかぶり、剣を下ろした。
シリウスはその剣を自分の剣で受けたが、もう一人目の前にいる男は
剣を刺すようにシリウスに向けた。
ズシャッ……
「ウ”っ・・」
小さくソティスの声が聞こえたと思うと、シリウスの脇腹にも
背後から何かが刺さるような感触も同時だった。
剣を土に刺し、なんとか踏ん張ったが、手が剣から離れた。
シリウスはソティスを下にするように倒れ込む。
倒れたシリウスを男の一人が蹴り飛ばし、ソティスを確認している。
薄くなる意識の中。何かを川に投げたような水音がしたすぐあと、
シリウスは、男たちに両腕を抱えられて川に放り込まれた。
ソティスが小さく声をあげた。
殺るなら今しかない…そう思いシリウスはソティスに近寄った。
ソティスはベッドの上に半身を起こして目を擦り
近づいてきたシリウスを見上げる。
「…パパ…なの?」
『パパ?君の父さんの事かい?』
思わずシリウスは話しかけてしまい、
短剣を背に隠した。
「うん。カリナママがね。僕のパパは騎士だって言った」
えんじ色の騎士服を着ていたシリウスを父だと思ったのだろう。
満面の笑みでソティスがシリウスを見ている。
ーー殺せないーー
そう思うと、シリウスはソティスを抱きしめた。
小さな体はすっぽりと胸に入るが、隙間だらけである。
玄関の向こうでカタンと小さな音がしたような気がした。
咄嗟にシリウスはソティスを抱き上げて
2階である事も忘れて窓を開けた。
「ちっ・・高いな」
飛び降りるには高さがある。自分一人ならなんとかなりそうだが
ソティスを連れるとなると飛び降りた後のバランスが取れない。
しかし行くしかない。おそらく玄関を開ければそこには
王弟の差し向けた輩がいる気配がした。
窓から出てソティスを小脇に抱いて、コーニスの上を慎重に渡る。
「おじさんの首にしっかり掴まるんだ」
「う、うん」
ソティスを背に回し、首にしっかりと小さな手が回ると
コーニスの出っ張りに指をかけて階下に降りた。
足先が地面に届くかというくらいまで下りると飛ぶ。
ソティスをくるりと回して小脇に抱えるとシリウスは走った。
細い路地を幾つもギザギザに回って、川べりにたどり着いた。
背の高い葦が生えているところを敢えて進み、
誰かの気配を感じると歩みを止めて蹲る。
そうやって少しづつ進んでいたが、
目の前に3人の人影が立ちはだかった。
一目で浮浪者でも、酔っ払いでもなく平民でもないと判る男たち。
背中のほうにも人間の気配を感じた。
ソティスを降ろして、腰から剣を抜く。
「おじさんにしっかり掴まるんだぞ」
「えっ??」
「男の子だろう?」
そう言うと、姿勢を正しソティスを前抱きに抱えて、片手で剣を構えた。
4,5回剣がキンキンとぶつかり合う。
子供を抱いて剣を交えるのは不利である事は判っている。
おまけにこちらは1人。相手は5人以上はいる。
目の前の男が大きく振りかぶり、剣を下ろした。
シリウスはその剣を自分の剣で受けたが、もう一人目の前にいる男は
剣を刺すようにシリウスに向けた。
ズシャッ……
「ウ”っ・・」
小さくソティスの声が聞こえたと思うと、シリウスの脇腹にも
背後から何かが刺さるような感触も同時だった。
剣を土に刺し、なんとか踏ん張ったが、手が剣から離れた。
シリウスはソティスを下にするように倒れ込む。
倒れたシリウスを男の一人が蹴り飛ばし、ソティスを確認している。
薄くなる意識の中。何かを川に投げたような水音がしたすぐあと、
シリウスは、男たちに両腕を抱えられて川に放り込まれた。
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