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侯爵家の馬車
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シリウスは部屋を飛び出ると伯爵家に馬を走らせる。
きっと伯爵家にいるはずだと夜道をひた走る。
どうしてこうなったのか。心の半分は理解をしているが
もう半分が理解をしない。
ーー笑ってくれたじゃないかーー
班長への昇進が決まった時、
同時に2年後将校になる事も約束されていた。
第三王子の妻がシャロンの姉である事から
コネと言われても仕方がないが、シリウスは少なくとも
その役職に見合うだけの人間になろうと邁進した。
そのために結婚してからの2年間。
休みという休みを取らず業務をこなしていた。
将校ともなれば月の給与も格段に増える上に、
住まいも騎士団の家族寮が優先的に与えられる。
メイドも雇えるからもうシャロンに辛い家事をさせることもない。
ドレスも宝石も買ってやれる。
そして何より、結婚式をしてやれるとシリウスは思っていた。
だがその結果として、一番大事にしなければいけないシャロンに
寂しく辛い思いをさせる事となってしまった。
遠征から戻ったら全てを打ち明けるつもりでいた。
仕事にばかりで寂しい思いをさせていたと反省もした。
伯爵家の正門に到着したのは夜の21時頃であった。
門は閉ざされていて、門番の小屋では門番が談笑していた。
「すまない!伯爵に取り次いでもらえないか!」
馬上からシリウスは声を張り上げる。
門番の一人がシリウスのほうを見る。
すると小屋から一人の男が出てきた。
「夜分遅くにすまない。私はシリウス・ワーグナー。
伯爵に大至急取り次いでもらいたい」
シャロンとは何度か伯爵家に食事に来ていたので
多少の無理は通してくれると甘い考えをしていたのは否めない。
「ワーグナー卿、申し訳ない。伯爵様は現在領地におられる。
今日はもう夜も遅い時間だ。お引き取り願いたい」
門番がシリウスにそう言った時、
屋敷のほうから1台の馬車が走ってきた。
小屋にいた門番も全員が出てくる。
伯爵家の正門が開くと、その馬車が出てきた。
馬車の家紋を見て、シリウスは絶句する。
ドレーユ侯爵家の家紋である。
シャロンが繰り上げで迎えるはずだった侯爵家の家紋である。
頭の中で考えてみる。
ーー確かまだ・・独身を貫かれてたはずだーー
その馬車が伯爵家から出てくる。
当然シャロンが帰ってきたからだ。
そして・・神殿で離縁の調停を申し込んでいる。
嫌でも答えは直ぐに導かれる。
侯爵家は婿入りをするのだ。誰と?
シャロンである。
シリウスは今まで感じた頃がない程の恐怖が頭を支配した。
きっと伯爵家にいるはずだと夜道をひた走る。
どうしてこうなったのか。心の半分は理解をしているが
もう半分が理解をしない。
ーー笑ってくれたじゃないかーー
班長への昇進が決まった時、
同時に2年後将校になる事も約束されていた。
第三王子の妻がシャロンの姉である事から
コネと言われても仕方がないが、シリウスは少なくとも
その役職に見合うだけの人間になろうと邁進した。
そのために結婚してからの2年間。
休みという休みを取らず業務をこなしていた。
将校ともなれば月の給与も格段に増える上に、
住まいも騎士団の家族寮が優先的に与えられる。
メイドも雇えるからもうシャロンに辛い家事をさせることもない。
ドレスも宝石も買ってやれる。
そして何より、結婚式をしてやれるとシリウスは思っていた。
だがその結果として、一番大事にしなければいけないシャロンに
寂しく辛い思いをさせる事となってしまった。
遠征から戻ったら全てを打ち明けるつもりでいた。
仕事にばかりで寂しい思いをさせていたと反省もした。
伯爵家の正門に到着したのは夜の21時頃であった。
門は閉ざされていて、門番の小屋では門番が談笑していた。
「すまない!伯爵に取り次いでもらえないか!」
馬上からシリウスは声を張り上げる。
門番の一人がシリウスのほうを見る。
すると小屋から一人の男が出てきた。
「夜分遅くにすまない。私はシリウス・ワーグナー。
伯爵に大至急取り次いでもらいたい」
シャロンとは何度か伯爵家に食事に来ていたので
多少の無理は通してくれると甘い考えをしていたのは否めない。
「ワーグナー卿、申し訳ない。伯爵様は現在領地におられる。
今日はもう夜も遅い時間だ。お引き取り願いたい」
門番がシリウスにそう言った時、
屋敷のほうから1台の馬車が走ってきた。
小屋にいた門番も全員が出てくる。
伯爵家の正門が開くと、その馬車が出てきた。
馬車の家紋を見て、シリウスは絶句する。
ドレーユ侯爵家の家紋である。
シャロンが繰り上げで迎えるはずだった侯爵家の家紋である。
頭の中で考えてみる。
ーー確かまだ・・独身を貫かれてたはずだーー
その馬車が伯爵家から出てくる。
当然シャロンが帰ってきたからだ。
そして・・神殿で離縁の調停を申し込んでいる。
嫌でも答えは直ぐに導かれる。
侯爵家は婿入りをするのだ。誰と?
シャロンである。
シリウスは今まで感じた頃がない程の恐怖が頭を支配した。
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