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誰もいない家
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男爵家の3男であるシリウスは奨学金を貰いつつ
学園の騎士科を卒業し、騎士団に入団。もう7年目。
駆けだしから残った同期は半分以下だが、2年前班長となった。
さほど変わらないが、少しだけ月給も上がったのを機に
学園の頃から愛をはぐくんだシャロンと恋愛結婚をした。
「必ず幸せにするよ。君だけを愛しぬくと誓う」
必ずしも皆に祝福された結婚ではなかった。
伯爵家の二女であったシャロンの両親が反対をしたからだ。
学園生だった頃はシャロンの姉が婿を取って伯爵家を継ぐはずであったが
第三王子に見初められて王家に嫁ぎ、シャロンが家を継ぐ事になった。
同時に侯爵家の次男が婿に入るという家同士の約束があったのだ。
しかし、反対をされると余計に燃え上がってしまったのか
駆け落ち同然で家を出たシャロンと同棲。
うだつの上がらない騎士でも5年も経つと渋々認めてもらえ、
伯爵家はシャロンを諦め遠縁から養子をもらった。
シャロンはご令嬢ではあったが、しっかり者で近所付き合いも良く
騎士団の連中だけではなく、皆から羨ましがられた。
美人で働き者、そしてシリウスを一途に愛してくれる。
自慢の妻だった。
2週間の遠征を終えて、久しぶりの我が家に戻った
シリウスは家に戻り異変を感じた。
今日帰るという事は書簡で届けていたはずだが
外から見えた家には灯りがなかった。
「こんな時間なのにもう寝ているのか?」
胸から懐中時計を取り出し、蓋を開けるとまだ19時。
何処の家も灯りが点いているというのに
自分の家にだけ灯りが点いてない。
家には2年前に大恋愛の末に結婚したシャロンが
温かい料理を構えて待ってくれている筈だと疑わないシリウス。
「サプライズでもするつもりなのか?」
そう思って、ゆっくりと玄関のドアを開ける。
シリウスの予想では、ドアが開けられるとパっと灯りが点いて
妻が出迎えてくれるはずだった。
しかし、扉は静かに開いただけで、扉の向こうには静寂があるだけだった。
どうしたんだろうと思いつつ、荷物を置いて
居間に向かったが、整理整頓された居間には誰もいない。
「おーい。シャローン!帰ったよ!」
声をかけつつ寝室に向かうが返事がない。
「まさか、本当に寝ているのか?」
寝室の扉を開け、部屋を見るがベッドにも誰もいない。
綺麗に整えられたベッド。
薄給ゆえにまだ大きな家に住めるわけでもなく、
居間と寝室、あとは湯あみ用の部屋とトイレがあるだけの小さな家。
居間におらず、寝室にもいなければ家にいないという事だ。
シーンと静まり返る部屋。
「実家(伯爵家)にでも出かけてて遅くなってるのかな」
絶縁状態だった伯爵家も結婚をする少し前から
少しづつ雪解け状態でもあった。
ここ1年では夕食に誘われる事もあり、その時は帰宅が遅くなる。
きっとそうだろうと思い、シリウスは寝室を出て
湯あみ用のバスタブに湯を張っていると玄関の呼び鈴が鳴った。
「おっ、帰って来たかな」
伯爵家に行くといつも両手いっぱいの野菜や肉を持たせてくれるので
自分が先に戻っている事を外から確認できたシャロンが
ドアを開けてくれと鳴らしたのだと信じて疑わないシリウスは
少し悪戯してやろうと、じらした。
すると、呼び鈴が再度鳴る。シリウスはじらす。
もういい頃かとドアノブに手をかけると扉の向こうから
明らかに男の溜息が聞こえた。
「まさか?」
シャロンに限って浮気を??俺が今日戻ってくるという事は
知っている筈なのに??と思い、勢いよく扉を開けると
そこには書簡の配達員が戻ろうとしているところだった。
「なんだ。ワーグナーさん在宅じゃないですか・・速達ですよ」
「あ、あぁすまない。出るのが遅くなってしまったんだ」
隊服を着崩しているシリウスを見て配達員は言う。
「速達で神殿からの書留なのでサインをお願いしますね」
「神殿??どこの?」
「何処のって・・そりゃワーグナーさんが手紙を確認してください。
私達はほら、ここの印を見てでしかわかりませんので」
配達員が指さす先には神殿を示す印があった。
ペンを差し出されたシリウスは手早くサインをすると
配達員はペンをカバンに仕舞いながら帰っていく。
速達を受け取ると手紙の表と裏を交互に確認しながら
シリウスは居間にあるペーパーナイフで開封した。
「な、なんだって??」
ブルブルと震える手で、内容をもう一度読み返してみる。
【離縁調停通達】
何度読み返しても変わらないその文字にシリウスは崩れ落ちた。
そして、戸棚、書棚、寝室のクローゼットの扉を開ける。
「そんな・・」
家の中、どこを探してもシャロンの持ち物は
食器に至るまで何一つなかった。
学園の騎士科を卒業し、騎士団に入団。もう7年目。
駆けだしから残った同期は半分以下だが、2年前班長となった。
さほど変わらないが、少しだけ月給も上がったのを機に
学園の頃から愛をはぐくんだシャロンと恋愛結婚をした。
「必ず幸せにするよ。君だけを愛しぬくと誓う」
必ずしも皆に祝福された結婚ではなかった。
伯爵家の二女であったシャロンの両親が反対をしたからだ。
学園生だった頃はシャロンの姉が婿を取って伯爵家を継ぐはずであったが
第三王子に見初められて王家に嫁ぎ、シャロンが家を継ぐ事になった。
同時に侯爵家の次男が婿に入るという家同士の約束があったのだ。
しかし、反対をされると余計に燃え上がってしまったのか
駆け落ち同然で家を出たシャロンと同棲。
うだつの上がらない騎士でも5年も経つと渋々認めてもらえ、
伯爵家はシャロンを諦め遠縁から養子をもらった。
シャロンはご令嬢ではあったが、しっかり者で近所付き合いも良く
騎士団の連中だけではなく、皆から羨ましがられた。
美人で働き者、そしてシリウスを一途に愛してくれる。
自慢の妻だった。
2週間の遠征を終えて、久しぶりの我が家に戻った
シリウスは家に戻り異変を感じた。
今日帰るという事は書簡で届けていたはずだが
外から見えた家には灯りがなかった。
「こんな時間なのにもう寝ているのか?」
胸から懐中時計を取り出し、蓋を開けるとまだ19時。
何処の家も灯りが点いているというのに
自分の家にだけ灯りが点いてない。
家には2年前に大恋愛の末に結婚したシャロンが
温かい料理を構えて待ってくれている筈だと疑わないシリウス。
「サプライズでもするつもりなのか?」
そう思って、ゆっくりと玄関のドアを開ける。
シリウスの予想では、ドアが開けられるとパっと灯りが点いて
妻が出迎えてくれるはずだった。
しかし、扉は静かに開いただけで、扉の向こうには静寂があるだけだった。
どうしたんだろうと思いつつ、荷物を置いて
居間に向かったが、整理整頓された居間には誰もいない。
「おーい。シャローン!帰ったよ!」
声をかけつつ寝室に向かうが返事がない。
「まさか、本当に寝ているのか?」
寝室の扉を開け、部屋を見るがベッドにも誰もいない。
綺麗に整えられたベッド。
薄給ゆえにまだ大きな家に住めるわけでもなく、
居間と寝室、あとは湯あみ用の部屋とトイレがあるだけの小さな家。
居間におらず、寝室にもいなければ家にいないという事だ。
シーンと静まり返る部屋。
「実家(伯爵家)にでも出かけてて遅くなってるのかな」
絶縁状態だった伯爵家も結婚をする少し前から
少しづつ雪解け状態でもあった。
ここ1年では夕食に誘われる事もあり、その時は帰宅が遅くなる。
きっとそうだろうと思い、シリウスは寝室を出て
湯あみ用のバスタブに湯を張っていると玄関の呼び鈴が鳴った。
「おっ、帰って来たかな」
伯爵家に行くといつも両手いっぱいの野菜や肉を持たせてくれるので
自分が先に戻っている事を外から確認できたシャロンが
ドアを開けてくれと鳴らしたのだと信じて疑わないシリウスは
少し悪戯してやろうと、じらした。
すると、呼び鈴が再度鳴る。シリウスはじらす。
もういい頃かとドアノブに手をかけると扉の向こうから
明らかに男の溜息が聞こえた。
「まさか?」
シャロンに限って浮気を??俺が今日戻ってくるという事は
知っている筈なのに??と思い、勢いよく扉を開けると
そこには書簡の配達員が戻ろうとしているところだった。
「なんだ。ワーグナーさん在宅じゃないですか・・速達ですよ」
「あ、あぁすまない。出るのが遅くなってしまったんだ」
隊服を着崩しているシリウスを見て配達員は言う。
「速達で神殿からの書留なのでサインをお願いしますね」
「神殿??どこの?」
「何処のって・・そりゃワーグナーさんが手紙を確認してください。
私達はほら、ここの印を見てでしかわかりませんので」
配達員が指さす先には神殿を示す印があった。
ペンを差し出されたシリウスは手早くサインをすると
配達員はペンをカバンに仕舞いながら帰っていく。
速達を受け取ると手紙の表と裏を交互に確認しながら
シリウスは居間にあるペーパーナイフで開封した。
「な、なんだって??」
ブルブルと震える手で、内容をもう一度読み返してみる。
【離縁調停通達】
何度読み返しても変わらないその文字にシリウスは崩れ落ちた。
そして、戸棚、書棚、寝室のクローゼットの扉を開ける。
「そんな・・」
家の中、どこを探してもシャロンの持ち物は
食器に至るまで何一つなかった。
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