わたしの王子様

cyaru

文字の大きさ
上 下
11 / 33

兄2人の心配と暴走する婚約者

しおりを挟む
「様子はどうだ?」
「ジルド様……1時間ほど前目を覚まされましたがお泣きになって…いま眠ったところです」
「そうか。朝までは俺がついているからベスは休みなさい」
「いえ、わたくしが‥」
「いや、明日もベスには様子を見てもらわないといけない。今日は休みなさい」
「判りました。ですが一体‥‥」
「ベス?制服を着ていた時は喜んでいたと聞いたが本当か?無理をしていなかったか?」
「いえ、お友達が出来るかとか、招待しても良いかととても嬉しそうで」
「そうか。ありがとう。おやすみ」
「はい、では失礼を致します」

ジルドはクリスティナの事をゆっくり考えてみます。
明らかに変わったのは兄ヨハンの婚約式の翌日の事だ。

夜に眠るとき、必ずこうやって部屋のどこかに灯りを灯してでないと寝なくなった。
兎に角暗闇を怖がる、いや恐れているのだ。

昼間は何ともないが暗くなってくると明るい所に居たがるのである。
数日は灯りがないと怖いと部屋に幾つもランプを持ち込んで灯し、ベスの手を握って眠った。
だが、昼に母と昼寝をする時は手を繋いで欲しいなどわがままは一切言わない。

「暗闇を怖がる?」

その時後ろに気配を感じるジルド。
振り返ると兄のヨハンがいた。

「暗い場所だけじゃないそ。これも‥‥だ」

そう言って持ってきたのは口が細くなったエールが入った瓶である。

「おいおい。クリスティナはまだアルコールは飲まないぞ」
「酒じゃない。こんな感じの瓶はとにかく嫌がる、いや、恐がるだな」
「そう言えばそうだな」
「あとは…本だ」
「本?いや、よく読んでいると思うが」
「違う。小さかった頃からお気に入りで読んでいた絵本だ」
「絵本?あぁあのよくせがんでたやつか」
「あぁ、ベスに棄ててくれと触るのすら嫌がったと聞いた」
「確か‥‥お姫様と王子様…王子様??」
「あぁ、顕著な変化はそれくらいだが嫌悪するにも程があると思うが振り切っているな」
「だが‥‥王族との関りはまだないはずだ」
「王家主催の展覧会なども徹底して嫌がっているとロクサーヌから聞いた」
「何かあるんだろう」
「そうだな」

年の離れた妹をじっと見つめる強面の兄2人。
家族だからいいですけど、結構怖いですよ?その絵面・・・。

☆~☆~☆~☆

チュンチュン♪ピーヒョロロ~♪

翌朝うにゃ?っと目を覚ますと一般人なら異世界に飛ばされたかと思うほどの叫び声をあげるでしょう。
えぇ。強面の男性が2人も自分を覗き込んでいたらそのまま召されるかも知れません。
ですが、クリスティナにとっては優しくて強い兄2人。

「おはよう…ヨハン兄さま、ジルド兄さま…ウゥゥ~ん」

両手を上にあげてギュギューっと伸びをするクリスティナです。
ホッとした様子のヨハンとジルド。

「腹は空いてないか?何か持ってこさせよう」
「えっ?どうして?病気じゃないのに。食堂にいくわよ?」
「いや、今日は特別だ。兄様が食べさせてやろう」
「いやいや、もうわたくしは子供じゃありません。それにそんなのケイティ様が怒ります」
「そのケイティからもくれぐれも!と言われてるから安心しろ」

ふと時計を見ると10時を過ぎているではありませんか。
どうやら少し前にケイティさんは来ていたようですね。

「あ‥‥制服見せる約束してたんだった」
「心配するな。ケイティも怒ってないよ。また来てくれる」
「うぅぅ~不覚~」

その後運ばれてきた遅すぎる朝食を固形物をジルド兄さま、飲み物をヨハン兄さまに世話されるクリスティナです。

「立てるか?」
「へっ?立てるどころか走れるし、ジャンプも出来るよ?」
「それくらい元気なら良かった。じゃ、そこの椅子に」
「はぁい…って着替えたいんだけどな」
「そうか、じゃ‥‥ベスっ!ベスっ!!」

呼ばれてやって来る大好きなベス。今日はイエローのワンピースを手伝ってもらい着替えます。
そこに扉の向こうからバタバタと大きな音が聞こえますよ。

コンコン!

ノックの音が終わるかどうかくらいの速さで扉が開いて、そこには肩で息をするヨハン兄さまの婚約者であるエヴェリーナが立っています。

「エリィどうしたんだ?」

両手を広げて満面の超怖い笑顔でエヴェリーナを抱きしめようとするヨハンの横を僅差でかわす。
ヨハンの腕が空を切ります。

「クリスっ!良かったぁ!!もう大丈夫なの?どこも痛くないの?」
「えっ…えぇ。お義姉さま。どこも‥」
「あぁ良かったぁ。下で聞いて生きた心地がしませんでしたわぁぁぁぁ」
「グっぐぇっ…お、お義姉…さま…ぐるじぃぃぃ」

ギューっと抱きしめてわんわんなくエヴェリーナにヨハンも苦笑いです。

「えーっと…エリィ今日は買い物だっ…」
「そんなもの!キャンセル!キャンセルでしょ!何を言ってるの!」
「いやでも、予約が・・」
「ヨハン!あなたね!何よりも優先するのはクリスでしょう!」
「い、いえ。お義姉様。わたくしは大丈夫なので…」
「ダメ!ダメです!あぁもう!今日のワンピースも萌えを撃ち抜くわね。流石よ!」

あぁ・・・そこなんですね。
ヨハンとのデートはキャンセルとなりましたが、にこにことテーブルの隣で世話をするエヴェリーナ。
相手が違いませんかね…向こうでヨハン兄さま捨てられたゴーレムになってますが。

そうこうしていると、ジルド兄さまの婚約者、ケイティ様もお見えになりましたよ。
なんとケイティ様は目が覚めたと聞くと自分で騎乗してやって来たと・・・。
愛されてますねぇ。よかったねぇ。
和やかな兄弟+婚約者+妹が囲むテーブル。ジルドが口を開きます。

「クリス。ちょっと聞きたい事があるんだが」
しおりを挟む
感想 82

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

侍女から第2夫人、そして……

しゃーりん
恋愛
公爵家の2歳のお嬢様の侍女をしているルイーズは、酔って夢だと思い込んでお嬢様の父親であるガレントと関係を持ってしまう。 翌朝、現実だったと知った2人は親たちの話し合いの結果、ガレントの第2夫人になることに決まった。 ガレントの正妻セルフィが病弱でもう子供を望めないからだった。 一日で侍女から第2夫人になってしまったルイーズ。 正妻セルフィからは、娘を義母として可愛がり、夫を好きになってほしいと頼まれる。 セルフィの残り時間は少なく、ルイーズがやがて正妻になるというお話です。

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす

まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。  彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。  しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。  彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。  他掌編七作品収録。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します 「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」  某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。 【収録作品】 ①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」 ②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」 ③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」 ④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」 ⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」 ⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」 ⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」 ⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました

月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

【完結】私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね

江崎美彩
恋愛
 王太子殿下の婚約者候補を探すために開かれていると噂されるお茶会に招待された、伯爵令嬢のミンディ・ハーミング。  幼馴染のブライアンが好きなのに、当のブライアンは「ミンディみたいなじゃじゃ馬がお茶会に出ても恥をかくだけだ」なんて揶揄うばかり。 「私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね! 王太子殿下に見染められても知らないんだから!」  ミンディはブライアンに告げ、お茶会に向かう…… 〜登場人物〜 ミンディ・ハーミング 元気が取り柄の伯爵令嬢。 幼馴染のブライアンに揶揄われてばかりだが、ブライアンが自分にだけ向けるクシャクシャな笑顔が大好き。 ブライアン・ケイリー ミンディの幼馴染の伯爵家嫡男。 天邪鬼な性格で、ミンディの事を揶揄ってばかりいる。 ベリンダ・ケイリー ブライアンの年子の妹。 ミンディとブライアンの良き理解者。 王太子殿下 婚約者が決まらない事に対して色々な噂を立てられている。 『小説家になろう』にも投稿しています

処理中です...