わたしの王子様

cyaru

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朝がこんなに眩しいとは

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「‥‥さまっ‥‥‥うさまっ!!」

何だろうとクリスティナは閉じた目で考えた。
いや、目は開けているのかも知れない。だって暗闇しかそこにはなかったから。

だが、自分を呼ぶ声がする。気のせいかもしれない。
だって自分の名前を呼ぶ者など【彼】の罵倒する声くらいだ。

しかし、それでも自分の名を呼ぶ声は止まらない。
それも女性の声であると気が付いたクリスティナは飛び起きた。

「うわっ!眩しいっ!!」

あまりの眩しさに思わず手で顔を覆ってしまった。

「ほらほら。お寝坊さんですからお日様も眩しゅうございますでしょうね」

クスクス笑いながらベッドに湯の張られた洗面器を持ってきたのはベスだった。

「ベっベスっ!!」

思わず抱き着こうとすると、湯を零さぬようにベスがひらりと身をかわす。
チャポンとはねた湯がクリスティナの頬にかかった。

「えっ?どういうことなの?なんで??」
「お嬢様、こぼすところでしたよ。どうなさいました?」

ベスを見ると若い??どうして??化粧で若返ったと思うには違和感がある。
ベスそのものが若いのだと理解できるまで数分ベッドでクリスティナは固まった。

動かないクリスティナにベスはタオルを湯で濡らし、クリスティナの顔を拭いて行く。

ふいにクリスティナは自分の手を見つめる。
手のひらと手の甲を交互にしながら、さも不思議そうに見つめる。

(生き返ったの??いえ…時間が戻ったの?まさか??)

クリスティナは目の前で忙し気に動くベスを茫然と見ながら考える。

「ねぇ…ベス‥‥今日って何日だったかしら」

クリスティナは焦点が定まらないままベスに問いかけた。

「お嬢様?どうされました?お熱でもあるのでしょうか」

ベスの少しヒンヤリした手がクリスティナの額に触れた。

(え?どういうこと?)

「お姉さんのような口調になっておられますよ。ヨハン様の婚約者様の影響かしらね?」

ヨハンはクリスティナの一番上の兄である。
次兄はジルド。ヨハンに婚約者…クリスティナはまた考えた。

「ね、ねぇベス?」
「なんでございましょう?」
「ヨハン兄さまの婚約者はエヴェリーナ様よね?」
「ウフフ。そうでございますよ」
「ジルド兄さまの婚約者はケイティ様よね?」
「そうなると良いですねぇ。ケイティ様と言えば学園でもエヴェリーナ様と並んでお美しいですから」

確か…クリスティナは頭の中で算数をする。
ヨハン兄さまが婚約した半年後にケイティ様がケイティ様のお父様とサロンでジルド兄さまの婚約者になりたいと居座ったはずである。

何事かとサロンに顔を出したクリスティナを見たケイティが【お願いだから貴方のお姉さんにして!!】っとクリスティナに泣いて懇願したのである。

ヨハンが婚約したばかりでジルドがまだだとすれば自分は8歳という事になる。
クリスティナは更にベスに問うた。

「ねぇ。ヨハン兄さまの婚約式って…」
「ウフフ。お綺麗でしたものね。昨日はお嬢様もエヴェリーナ様と最後までお客様のお見送りでしたものね」

なるほど。と、いう事は昨日ヨハンが婚約式だったのかと指を折る。
記憶では二日酔いの兄と父が夕方まで起きて来ずに母に叱責されるはず。

クリスティナはベッドから飛び起きるとクロゼットを開いてお気に入りだったワンピースを探す。
それは探さずとも一番前にあった。

薄いグリーンの裾にレースがあしらわれたワンピースである。

まだ混乱はあるものの、着替えをベスに手伝ってもらいながら食堂で朝食を取る。
やはり父とヨハンは来ていない。母とジルドだけが朝食を取っている。

思っていた通り、父と兄のヨハンは夕刻のそろそろ夕食時に起きてきて母に叱責をされた。

(間違いない。時間が戻ったんだわ!)

そうなればやる事は一つ。

『もうあんな思いはしたくない!!』

クリスティナは強く心に誓った。二度と同じ人生は歩まないと。

☆~☆~☆

次回から表現方法変わります。ご了承ください。<(_ _)>
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