辺境伯のお嫁様

cyaru

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パッシングな元婚約者同士

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ル―ヴェルの捜索が繰り広げられているというのに
元々がお気楽者であるキャンティ。

いつものように、小屋でクライゴウト(2匹)を愛でていますね。

「今日の葦は美味いぞう~パオーン」
「メヘ?メェ、エェ??」
「あら?おかしいわね・・鳴き声が変だわ」

テレスの鳴き声がおかしいので、テレスの喉元をサスサスするキャンティ。
すると、アリスがキャンティの後ろに回ってお尻を鼻でツンツン。

「はわぁっ!何するの!アリ・・・ん??」

細い糸のようなものがホワホワとしていますね・・。
手繰り寄せていると、途中でアリスがパクっと咥えてモシャモシャ。

僅かに残ってホワホワする細い糸を手に取り眺めるキャンティ。
ジワジワと目元が細微動していますね。

「あんの野郎・・・やりやがったわ!」

小屋の扉にアリスに齧られて、途切れた糸がまだ見えますねぇ。
ですが、細くて・・光の加減で見えたり見えなかったりですね。

扉に引っかかった糸をグワシ!っと掴むと、落ちていた枝に
くるくると巻きつけていきます。

「いぃとぉ~マッキマッキ♪ 縛って吊るしてトントントン♪」

微妙~に歌詞が違う気もしますが、キャンティは枝に糸を巻いていきます。
別邸に戻ると、先日返却されたヴィヴィアンの置物の手に
糸を巻いた枝を指揮者のように持たせましたね。
ヴィヴィアン置物でなかったら、芸術的な感じなんですけどねぇ。

別邸に戻ると、お茶を飲むため湯を沸かします。
ついでに薄く切って乾燥させて干しておいた干し芋を取り出し、
シッチリーンに竹炭を入れてジワジワと温めていますよ・・。
読もうと思っていた本を取り出しテーブルに置きますね。

お茶を淹れて、シッチリーンに網をかけ、干し芋をあぶりだし、
適度に焙ったところで、パクリ。

「うんまぁい!」

あぁ・・単に暢気なだけですね・・・っと誰かの気配を察知したようですよ。

「お入りになったらどうかしら?」

干し芋を焙るシッチリーンから目も離さずに声だけを玄関に向けるキャンティ。
静かに玄関ドアが開きます。

「久しぶりだな!こんな田舎に嫁に出されたのか!ざまぁだなッ!」

入ってきたのは・・ル―ヴェル!
しかしキャンティはガン無視で干し芋を焙ります。

「ほぅ~。等身大の置物か・・相変わらず趣味が悪いな」

ル―ヴェルはヴィヴィアン置物をしげしげと眺めています。
未だにキャンティはガン無視。
ル―ヴェルは図々しくも部屋に入り、椅子に腰かけます。

「ふんっ。田舎暮らしももうすぐ1年。耳も遠くなったのか?」

次に焙ろうと思っていた干し芋を手に取り、
ル―ヴェルはキャンティに投げつけましたよ!

ぱしっ

「食べ物を粗末にするのは、おやめになって」

やっと言葉を発したキャンティですが、投げられた干し芋を
シッチリーンにくべて、また焙り出します・・

「おやめになってぇ~っときたか。アッハッハッハ
 未だにこんな、こ難しそうな本を読んでいるのか?成長しないな。お前は」

笑いだすル―ヴェルに焙りすぎになった干し芋をヒュンっと投げます。
笑っているル―ヴェルの大きく開いた口の中にスットラァァック!

「うわっち・・アフ・・アフ・・アッツ!(ペッ)」
「まぁ、お行儀の悪い事・・吐き出されるなんて」
「き、貴様・・熱いだろう!」
「当たり前でしょう?焙ったばかりのアツアツですもの。
 で?本がどうかしましたか?
 あぁ・・頭の悪い貴方ですものね・・こうして差し上げるわ」

そういうと、指をル―ヴェルの口に突っ込んで両側に広げます。

「さぁ!大きな声で 繰り返すッ!  学級文庫!」

強い口調で命令をされると、つい条件反射で繰り返してしまうル―ヴェル。

「がっきゅうう・・」

「どうなされたのですっ!さぁ! 学級文庫! はいっ!」

「がっきゅうう・・」

キャンティはニヤリと笑ってル―ヴェルを突き飛ばしますよ。(ドカッ!)
仰向けに倒れ込むル―ヴェルを見下ろしながら・・。

「どうです?学園初等部程度のお遊びは恥ずかしいですわねぇ」

「き、貴様・・芋で火傷したところが痛いだろうが!」

「あら?だって、貴方そのものがイタい存在ですものっ!」

そういうと、植木鉢のアロエをル―ヴェルの口に突っ込み
胸ぐらをガッと掴むキャンティ。

「グフッ!」
「アッロエはね♪やっけどに効くって言うけれど♪
 どんなに患部に浸してもぅ~♪」

っとピヨコがかくれんぼをするような目つき(どんな目つき?)で
ル―ヴェルに微笑むと・・。

「所詮は、民間療法という名の都市伝説!
 感染症を起こし!悶えると良いのですわ!」

掴んでいた胸ぐらを放り投げるように手を離すキャンティ。
よろよろと起き上がるル―ヴェル。

「貴様・・・一度は惚れたくせに・・酷い女だな!捨てた恨みかっ!」

えーっと・・根本的に間違ってますわね。
呆れた事は数知れど、惚れた事は一度もないのですけれどねぇ。
オトコの勘違いって酷いものですわ。

「なんだ、何も言えないだろう!詫びろ!今なら許してやる。詫びろ!」

何を言えばよいのかわからないくらい、呆れているのですわよ?
それに何を詫びるんですの?許しを乞う事などありませんわ。

「フッ、いいだろう。今日のところは許してやる」

え?何も言っておりませんが、わたくし心の声が漏れていたのかしら?
いやですわ・・心にもアテ●トいえ、リリ●フをせねばなりませんの?
まだ14歳ですのに!!

「惚れてもいませんし、恨んでもおりませんわ。
 そして・・許してもらうような事は何ひとぉぉぉつ!ございません」

「なっ、なんだと!」

おっと!どこから取り出したのか、キャンティ!貴族の証である
扇子を手にしていますよ!しかも鉄扇ですよ!

「許してほしいと懇願するのは、ル―ヴェル!アナタですっ」

扇子をバッと口元に展開するキャンティ。
ビクッとするル―ヴェル。

「むか~し昔、チョイと婚約者だったというだけで、惚れただのと。
 バカバカしいにも ホド というものが御座います」

開かれた鉄扇が角度によってキラキラしていますねぇ。

「アジフライが食べたかった・・それはわかります。
 あの店の揚げ物は美味。ついつい2枚目、3枚目と手が出ますもの」
「な?なんのことだ?」
「何の事?わたくしにストーキング縦糸横糸アルマイト!な
 糸の追尾を行ったのはアジフライが欲しかった・・そういえばよろしいのよ?」
「いや、全然アジフライは関係ないんだが・・」

鉄扇をパタパタと緩く扇ぐ仕草をするキャンティ。

「しかぁし!アジフライはわたくしのモノ!
 揚げたてアツアツをハフハフしながら食すのは絶品!
 それをお持ち帰りするのを狙うとは!不届き千万!」
「はぁ?なんだそりゃ・・」
「その上、家まで来るとはストーカーの鏡!とも言えますが
 女性の敵でもあるのです。許しませんよ?
 しかも!あれほど好いていたレイラさんも、お売りになったとか・・」

鉄扇をピシャリと閉じるキャンティ。
ル―ヴェルの顎を鉄扇の先でくいっと持ち上げます。

「女を売るなど、ストーカーの風上にも置けませんっ」

ブワチッ!!

キャンティの鉄扇がル―ヴェルの左頬に炸裂しますよ!
おっと・・口からアロエが飛び出したル―ヴェル!

ブハッ!!

「その上、悪行三昧!子供たちをどうしたのですかっ!」
「なんでお前がそれを知って・・」

ブワチッ!!

ル―ヴェルの答えを最後まで聞く気が全くないキャンティの
鉄扇がル―ヴェルの右頬にも炸裂!!

ガハッ!!

「吐きなさい!子供たちをどうしたのです!(ブワチッ!!)」
「ゲホッ・・」
「言えと言っているのです!言いなさい!(ブワチッ!!)」
「グハッ!!」

あのぅ・・キャンティ・・鉄扇で殴っていたら、まず喋れませんよぅ・・

「あら?小顔が流行だというのに・・困った(元)殿下ですわ」

倍以上に腫れあがったル―ヴェルの顔。あぁ痛々しい・・。
鉄扇を除菌シート(厚手)でフキフキするキャンティ。

キャプチャー捕獲

小さく魔法を唱えると、ヴィヴィアン置物にあった枝から
細~いキラキラした糸が動けなくなったル―ヴェルに纏わりつきますね。

「どう?好きでもない相手に纏わりつかれるのは?」

糸は、ル―ヴェルの右太腿と右脹脛、左太腿と左脹脛とクルクル縛っていきますね。
そして右の足首、親指に巻き付いたと思ったら、背中と胸元でそれぞれ
たすき掛けに舞って、左の足首、親指を縛り上げます。

そのまま、両腕を肘を折るように後手に交差し・・って!これは!!

「どうかしら?貴方の愛読書 お縄でござる の袋とじにあった
 お座りM字開脚、後方拘束・・・わたくしが知らないとでも思いましたか」

木の枝をヴィヴィアン像にまた戻して、キャンティはシッチリーンで
干し芋を焙ります。

「フンフフあぶったぁぁぁ~芋でぇぇイイ~♪」

こぶしを利かし、干し芋を焙るキャンティの元に、
開きっぱなしの玄関から、自衛団、憲兵団の面々が入ってきます。

「うわ・・こ、これは・・Tell me whyなんでこうなった?」

「ウフフ・・Ain’t nothin’ but a Punishmentちょっとしたお仕置きよ

何があったのか想像もつかないし、したくない面々はル―ヴェルを
動かそうとしますが、ちょっと動かすと、腫れあがった顔から吐息が漏れます。

「っン・・ふっ・・ハァ」

うわっ!キモっ!っと手を離す憲兵団の団員。
焙った干し芋をモグモグと食べながら・・

「あ、少々手荒でも構いませんわ。むしろでしょう。
 で、そちらのになっておりますので、
 付かず離れずの距離感で連行してくださいませね。

 すぐに、が参りますわ」

ルイボス茶を飲むキャンティ。あっけにとられる面々。
付かず離れずの距離感で向き合うル―ヴェルとヴィヴィアン像。

最終話まであと一息っ!
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