辺境伯のお嫁様

cyaru

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お嫁様は女子力低め

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調理場のオーブンの前で鼻歌を歌うキャンティ。

「エブリバディ家紋!ダッウェ~家紋!家紋!家の紋っ!」

しかし、焼きあがったモノをみて大きなため息ですね。

「これは・・人に差し上げるわけには参りませんわね」

呟きながら焦げ焦げになった残骸をお皿にとり、
お茶をするようですね。

「雪が多いとは聞いておりましたが、これほどとは」

毎日毎日、雪かきに来てくれる領民に感謝しかありませんね。

「お菓子の一つでも作れれば、差し入れ致しますのに、
 女子力の低いわたくしでは無理ねぇ」

差し入れようしとした残骸をポリポリと食べていますね。
うーん・・それは何でしょうか?
黒くて歪な・・まさか!トリュフチョコとかの失敗作?

「(ゴリっ)硬いっ・・これは固いを通り越して硬いわ!
 おかしいわねぇ・・レシピ通りに作りましたのに・・。
 卵はやはり鶏卵でないとダメなのかしら」

1冊の雑誌をしみじみと眺めるキャンティ。

【失敗しない!初めてのお菓子作り】

あぁ、先日買った本はこれなのですね。
スチュワート!残念っ。

で、どうやら作ったものはクッキーのようですね。
平べったく薄い??感じの物は炭と化しておりますし、
丸くしたものは焦げたゴルフボールですねぇ。
キャンティ才能がないですねぇ。

数冊の雑誌を分別BOXに入れてますねぇ・・
よくよく見ると、どうやら定期購読系の雑誌のようですね。
ゴミ箱の雑誌を分別した箱のの中には結構入ってますねぇ・・
隔週発売系に手を出したようですね。
初刊だけは安いんですよねぇ・・どれどれ??

【超簡単!映える刺繍も短時間で出来ちゃう!】
「全然ダメだったわ。ネコを刺繍したのにコッペルアさんには
 『これは昔流行った 被り物騎士ヒヒンダーですね』
 って・・ヒヒンダーって何ですの?知りませんわ」

【ひと手間加えて、リメイク名人!】
「これもダメだったわ。むしろ手を加えたばかりに
 人前に出す事が出来なくなったわ。
 メイドのカレンに『放送禁止ですよ?モザイクかかります!』
 なんて言われちゃったし」

【手作りだから目を引く!絵手紙初級編】
「切って貼るから簡単だと思ったんですけれど・・・
 ちぎり絵はハードルが高すぎたわ」

そうですか・・キャンティ。女子力は皆無だったんですねぇ。
そういえば石鹸も固めるだけとか、香りのエキスを入れるだけっていう
シンプルなのは作ってましたが、形を花形とか造形はしてませんしね。

作る食事も、煮る!焼く!盛る!って感じの・・多かったですしね。
キャラ弁なんて作った日には大変な事になりそうですねぇ。

最後の1冊をポイっと分別BOXに入れますね。

【イチから始める版画】
「本当にイチからでしたわね・・まさか版画を作る道具からだなんて
 買った人はタイトルからは思いませんわ
 ですが、道具だけは造れたのよね・・肝心の版画は・・・はぁっ・・」

確かに・・これが販売最初の1冊目だったら
菓子作りは小麦の栽培から、絵手紙は紙漉きから・・って
みんな思っちゃいますしねぇ。

コンコン

誰か来客のようですね。覗き穴を覗くキャンティ。

「(うわっ、ダブルはきついわぁ) どうされました?」

ガチャリ

「こんにちは。奥様」「こんにちは。キャンティ様」

予想通りのスチュワートとサーベィ。ドM男ダブルの登場。ブレません。

「少々報告したい事がございまして、ついでにお茶でもと・・」

っと紙袋を差し出すスチュワートさん。
何でしょうか?何が出るかな?何が出るかな?フッフー♪

紙袋の中は女の子受けしそうな、可愛いスイーツ。
(うわぁ・・美味しそうな甘味ですわぁ)

パッと2人を見ると、得意そうな顔のスチュワート。

「わたくしの手作りでございますよ。唯一の趣味でして。
 お茶うけにどうかと思いましてね」

「まぁ、どうぞ。お入りになって」

「失礼を致します」

2人をテーブルに案内して、机の上の焦げ焦げキングダムを片付けます。
じぃぃ~っと見ているスチュワート。

「ところで、報告したい事とは何ですの?」
『それがですね。どうやら帝都を追われた第三王子が
 整形をして、ポロネーゼに潜伏しているようだと・・
 これが整形後の絵姿なんです』

っと1枚の絵姿を差し出すサーベィ。
真面目な話の時は、ちゃんとした人なのですけれどねぇ。

『お聞きするのはどうかと思ったのですが、皇族となるとその姿を
 知る者はあまりおりませんので、見て頂こうと思いまして』

ビフォー・・アフター ですわね。
整形前の絵姿はよく特徴を捉えていますわ。
へぇ・・これが整形後・・ん??どこかで見かけたような・・
はっ!あの路地で見た男だわ!

「サーベィさん、整形前はよく特徴を捉えていますわ。似ています。
 で、整形後なのですが、鼻はもう少し・・こう・・
 目元は涙ぶくろを・・こんな感じで・・二重でしたわ!」

手渡された絵姿の整形後に手を加えるキャンティ。
ですが、いけません!貴女には絵心がないんです!皆無なんですよー!

『奥様!整形後がもう人間じゃありませんよ?!
 これじゃただのイエテイじゃないですかっ!』

ハッと気が付くキャンティ・・・やってしまいましたね。

「あら・・どうしましょう?
 で、ですが整形後の男の顔は覚えておりますわ。
 そうでございましょう?スチュワートさんっ」

「え?わたくしですか?・・えーっと、王子に知り合いはいないのですが」
「違いますわ!散歩兼視察に行った際に路地裏で!」
「え?あっ!あぁ!あの伯爵姉妹のドラマですね」
「ドラマはどうでもいいんですの!男がおりましたでしょう?」
「ん?・・・あぁそういえばいましたねぇ」

『お二人とも、見た事があるんですねっ!
 では、覚えているうちが一番なんです!奥様は別として
 スチュワートさん!アナタは物覚えが悪い上に忘れっぽいんですよ!
 すぐにモンタージュっぽい似顔絵を作りましょう!』

そういうとサーベィさんは軽くスチュワートをディスりつつ
持ってきたスケッチブックにさらさらと
キャンティが手を加える前の整形後絵姿を描いていきます。

「お上手ですわねぇ」
『そうですか?昔は画家になりたかったんですよ。
 ウタマーロのような浮世絵ってのを描きたくて・・』

前半は良いのですが後半は聞かなかった事にいたしましょう。

『で、目は吊り目っぽかったんですね・・眉も細くて・・』
「そうそう!似てきましたわ!」
『鼻筋はこんな感じ・・・ですか?』
「もうすこし鼻が高かったですわ・・そう・・そう!これですわ!」

『唇はこんな感じでしたか?』
「いえ・・もう少し下唇が・・細いと言うか・・」
「えぇ、そうですね、それで人中の掘れ込みが意外に深くて・・」
『ふむふむ・・こんな感じ・・』
<<それです!>>

サーベィさん、見直しましたわ。こんな特技があったなんて!
素晴らしいですわ!

『これで・・絵姿はよし・・なんですが問題がありましてね』
「問題?どうやって捕獲をするか?でございますか?」
『いいえ、本邸の輪転機が故障しましてね。絵姿を沢山貼りたいんですが・・』

っと・・思い出すキャンティ!

「サーベィさん!これをお使いくださいまし!」
『これは??』
「版画用の台枠とキットですわ!木の板などに似顔絵を掘って、
 墨をつけて、紙を置いて写し取ればいいんですわ」
『なるほど!これなら輪転機ほどじゃなくても増刷することができます!』
「良かったらお使いくださいまし」

サーベィさんは、袋に版画キットをしまい込みますが・・

『あっ!奥様・・部品が足りませんよ』
「え?そんなはずは・・はっ!そうですわ・・困りましたね」
「何が足らないのです?」
『いえね、写し取るときに紙を擦るバレンがないんですよ』
「わたくしとしたことが・・」

代用品を思い浮かべるサーベィ。悔しいキャンティ。
しかしスチュワートは2人がどうして困っているのかが不思議そうです。

「ここに沢山あるじゃないですか」

っと、カゴの中に先程隠したはずの焦げ焦げキングダムの中から
そこそこ厚みのある生地だったと思われるものを取り出します。

「ほら!こんなに沢山ありますよ?キャンティさんは予備も作られたんですね」
「そ・・それは・・」

クッキーですとは言い出せないキャンティ。

確かに版画で使うバレンですね。キャンティ。精進しましょう。

******************************************
書き足しです。

似顔絵の男・・この後出てきます。
前後する公開になり、申し訳ありません <(_ _)>
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