辺境伯のお嫁様

cyaru

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陛下のコレクション

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トントントン・・カンカン!

木槌の音が青空に響きますね。
高台の広場には仮設住宅を早速建設してくださっているようですわ。
荷馬車や台車に乗せられた家庭ごみが山盛りになっている街道沿いの広場ですわ。

「結構ありますねぇ」

一言いう間にもどんどんゴミは増えていきますわ。
ここで、ゴミをゴミとも思わずに、まだ使えるかも~ってなると
収まりがつきませんわね。

「キャンティさん。分別はしなくていいんですか?」
「お願いしたいところだけど・・この状況じゃ領民の方に無理は言えないわね」

一先ず、ゴミは指定の場所に集めてくれているようですわね。
明日には応急ですが仮設住宅も出来るので領民の方に
順番に移動して頂きましょう。

救護施設になっている教会も人がいっぱいですわね。
調理場からは見習いの調理師さん達が炊き出しを頑張っていますわ。
美味しそうな匂いがいたしますわね。

街道の崩落現場にも行きたいところですが、退職希望者の書類整理もあるので
一旦屋敷に戻りましょう。

****************************************

本邸のサロンには書類が山積みになっていますわね。
コッペルアさんとスチュワートさんが仕分けをしていますわ。

「どうです?全員分揃いましたか?」
「あ、キャンティさん。それがですねぇ・・見てくださいよ。これ」

領の管理に携わっていたのが105人。
屋敷の使用人が36人ですか・・多いのかしら?少ないのかしら?

「とりあえず、こちらが継続雇用希望者ですね。
 こっちの山が退職希望者ですよ。」

見た目にわかるほど、退職希望者が多いですわね。
それも仕方のない事ですわ。

「では、先に退職希望者から片づけましょう。
 退職希望者のうち、もう引退する者と転職する者に分けて
 まず、コッペルアさん、次にスチュワートさんで査定をしてくださいまし」
「査定?・・全部ですか?」
「当たり前でしょう?2人を通過した書類にわたくしがサインをします。
 査定は退職金の金額に関係しますから、職務中の態度、成果はもちろん
 欠勤や遅刻、残業なども出来るだけわかるように」

「あの・・実はですね?文字が読めない、書けないって使用人もいるんですよ。
 領の管理をしていた者は全員読み書きは出来るんですが
 使用人の中には物心ついた時から奉公に来ている者もいますので」
「そう・・そしたら、そういう人は面接をするわ。
 読み書きは出来ないけど、言葉は理解して返答できるのでしょう?」
「それは大丈夫です」
「なら、わかるように目印をつけておいてくださいまし。
 わたくしは少し出かけてきますわ」

「どちらに??」
「い・い・と・こ・ろ♡」

スチュワートさん。そんな縋るような目で見てもダメですわよ?
あなたは、アナタの仕事を片付けなさいな。

そう言うと、キャンティは別邸の小屋に向かい、転移をします。

*******************************************
ヒュン・・・

転移した先は・・やはりここですね。陛下の執務室。
おや?陛下は留守のようですよ?
仕方ないので、勝手知ったる執務室。ワゴンからお茶のセットを取り
湯を沸かしていますね。

陛下の書棚をゆっくりと見ていますよ?おや?1冊手に取りました。

【ベランダ菜園のススメ】

へぇ・・畑仕事をするのに必要なんですかね?
って・・・読むんじゃないんかい!

比較的薄い本を手にしたキャンティはパタパタと扇いでいますよ。
扇子を忘れたんですね。
お湯が沸いたようで、お茶を淹れて甘味を食べていますよ。
そこに足音が聞こえてきましたよ。

ガチャリ

「うわっ!」
「ヤホー。お待たせされちゃった」
「おやおや、キャンティ様!お久しゅうございます」
「あら、メイタン・ドルデさん。すっかり老け込んじゃって・・兄さまのせいね?」
「いえいえ。わたくしももう60ですから」
「どうしたんだ?あー!アレか?行ってきた。OKだ」

思った以上に煎餅がお気に召したキャンティ。口の中をモゴモゴ。

「兄さま、ありがとう。早速だけど・・」
「あーダメだ。今は災害指定で忙しいんだ・・っと
 ティナ?お前溶鉱炉って・・この災害をよんでたのか?」
「え?あー違いますわ!鉄筋を作ろうと思ったんですけど、丁度良かった。
 かなりゴミが出てたので焼いちゃいますわ」
「焼くって・・ゴミを?」
「えぇ、溶鉱炉なら1500度くらいになるから、灰も分解されるわ。
 ダイオキシンの心配もないし。わたくし持ってるわぁ!ツイてるわぁ!」

テーブルの上に扇子替わりに出されていた本を片付ける宰相。

「陛下、出したら片づける!何度言えばわかるんですか!」
「いや!それは俺じゃない!違うぞ!」
「いつもそうです!服も脱ぎっぱなし!それで俺じゃない!ですからね」
「いや!ホントに!本当に俺じゃない」

聞こえませーん。聞いてませーん。っと煎餅を齧るキャンティ。
宰相から逃れようと話を戻す陛下。

「で?何だ?早速してほしい事ってなんだ?」
「今日では(ぼりぼり)ないんですの。数日後に書類(ぼりぼり)
 持ってくるから(ぼりぼり)転職者の紹介状にサインを・・ね」
「あーそんな事か。わかった。わかった。
 だが、忙しいからまとめておけよ?この前みたいなのはダメだ」
「あ、ついでに離縁書の保証人にもサイン。兄さまと宰相様ね」

本を片付けようと書棚に差し込みながら宰相は・・

「サイン??わたくしの??いやぁ・・そんなに人気があるとは・・
 今流行の枯れ専ってやつですか?照れますなぁ・・」

陛下もキャンティも目が・・・遠~い、遠~い地平線を見ていますよ?

「宰相様・・色紙ではなく離縁書ですわ」
「えっ!離縁書?ついにですか!で?わたくしに乗り換えると?」

陛下もキャンティも目が・・・更に遠~い、遠~い地平線を見ていますよ?

「わたくし・・まだ枯れ専には達しておりませんわ。
 ついでに言うなら、無駄に鍛える40男のマッチョメェンも興味なし!
 それに・・宰相様、奥様いらっしゃるでしょう?言いつけますわよ?」

そこで何かを思いつく宰相!

「おっ!そういえば、いい話があるんですよ」
「いい話?ネズミとかマルチ?そんなの話が来た時点で損する話ですわ」
「違いますよ!縁談です!」

『縁談~??兄さまの?』『ティナの??』

「フォッフォッフォ・・」

宰相様、手が・・チョキになってますわ。それはあの宇宙から来たヒーローの
お友達ではありませんこと?

「キャンティ様!あなたにですよっ!いやねぇ・・ウチの家内がですねぇ
 最近仲人に凝っておりましてね?仲人フェチってやつ?」

聞いた事が御座いませんわ!なんですの?仲人フェチって・・

「これがねー絵姿なんですが、イイ男なんですよ。経歴もバッチ・グゥ!
 ちょっと待ってくださいね。宮内の侍女などに見せようと思って
 丁度持ってきてるんですよー」

陛下の執務室を飛び出て走る宰相様・・いりませんわ。
だいたい、まだ離縁が成立していない時点で見合いもなにもないでしょうに。
どうしてこう・・わたくしの周りは一癖も二癖もあるヤツばっかりなのかしら?

「ティナ・・伯爵はどうしている?」
「へ?伯爵?別邸の玄関に転がっておりますわ」
「で?どうだった?」
「どうだったとは?」

「伯爵に集るハエどもはどうした」
「あー・・ボンっ!もういませんわ。魅了を使ってましたので。
 ですが、操られた娘の血液は保管しておりますわ。
 なんだ・・兄さまご存じでしたの?」
「いや、まだ調査の域だったが片づけてくれたようで良かったよ」

ふいっと手を出すキャンティ。

「なんだ?その手は」
「片づけたのはわたくしでしょう?お駄賃くださいな」
「いくらだ?10ポロか?20ポロか?」
「2000億ポロですわ」
「は?はぁぁぁ?それは桁が違うだろう?!」
「復興費用ですわ。良かった。これで工事が出来ますわ」
「いや、まだ許可はだしていないぞ」

ジィィ~っと陛下を見るキャンティ。

「許可?何を仰いますやら。
 わたくしが提案した時点で可決ですわ。ないならポスト型貯金箱とか~
 タンス貯金とか~、引き出しの中の貯金とか~・・」

「フェ!なんで知ってる??やらんぞ!
 あれは頑張って貯めたギザ10と、エラー銭なんだっ!」
「なら、いいでしょう?2000億ポロ」
「あぁぁぁ!もう!わかった!復興費用だしな!出す!」
「やった♪ 兄さま太っ腹ぁ!言質取ったわよ!じゃ、バイバーイ」

またもや嵐のように言うだけ言って転移したキャンティ。
そこに宰相が絵姿を抱えて入ってきました。

「あ、あれ?キャンティ様は??」
「帰った・・俺から2000億もぎとってカエッタ・・」
「うわっ!陛下!なぜ燃え尽きているんですかっ!」

宰相の手から零れ落ちる見合い絵姿。

ホォォウ!これはイケメンではないですか・・あれ?
あのぅ・・絵姿の裏にある日付・・20年ほど前のものですけど・・
奥様大丈夫ですか?宰相さん?訴えられるよ??
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