辺境伯のお嫁様

cyaru

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その頃、帝都を追い出されたル―ヴェル(元)第三王子。

本一冊を持って追い出された割には、意外に小奇麗ですね。何故?WHY?
ですが、グリーンのフワフワ髪の女の子、えーっと・・レイラ(元)子爵令嬢は
連れていないようですね。どうしたんでしょう?

一軒の店舗で何かを待っているようです。看板には・・「高価買取」??
カバンに詰めてた宝飾品は持ち出せなかったはずなんですが・・。

「番号札2番でお待ちのお客様ぁ!番号札2番でお待ちのお客様ぁ!
 計算が終わりました!5番ブースにお入りくださーい!」

女性の声が店内に響きますね。
おっ!ル―ヴェルが動き出しましたよ。5番ブースに向かってますね。
どうやら何かを買い取ってもらったようです。

ブースに入ると、にこにこしながら男が待っていますよ。
「お待たせいたしました。どうぞお座りください」
「あぁ」

促されて男の向かいに腰掛けるル―ヴェル。

「こちらが計算書兼内訳書、こちらが・・」
っと、カルトンの上に紙幣と硬貨が置かれています。

ル―ヴェルは計算書には見向きもせずに、紙幣と硬貨を数えてますね。

「ん?これって・・二束三文というレベルじゃないか?」
「そうですか?結構ウチも勉強させてもらった価格ですけど」
「え?でも結構な値がついてたじゃないか」
「あぁ、買取価格表の事ですか。あれは新品・未開通の価格ですよ」
「だから売ったんだ!」

ん?ル―ヴェルは何を売ったんでしょうか?まさかあの唯一持ち出し許可のあった
本屋でレジ担当が可愛くて若いお姉ちゃんだと
ついつい不要な本をチョイスして、あえて挟んで出したのに、
バーコードをピッピする時にタイトルを読みあげられて恥ずかしいあの本?

男は煙草に火を付けてふぅ~っと白い煙を吐き出します。

「ル―ヴェルさん、冗談言っちゃ困りますよ」
「冗談?まさか高価買取だから!お宅に持ち込んだんだぞ?」
「まぁねぇ。ウチもなかなか市場には出回らないんで、
 いつもの中古品よりは上乗せはしてんですよ?」
「中古品?いや!新品だろう?」

男は首を少し傾げて、両掌を上に軽く上げて呆れています。

「ウチも商売ですんでね。時折いるんですよ。中古を新品って持ち込む人」
「いや!本当にアレは新品だ!」
「うーん。困りましたね。買取価格にご不満なんですよねぇ
 でもアレって中古も中古。かなり使い込まれてますんでね・・」
「使い込まれてる??そんな馬鹿な!」

尚も食い下がるル―ヴェルに男は提案をしますね。

「じゃ、一部処分費は頂きますが、部分的に欲しいって客はいますんで
 バラシて売りますか?でも1万も増えませんけどね」
「うーん・・・だけど3万2560ポロ・・・5万は無理か?」
「ル―ヴェルさん、あの令嬢はかなり使い込まれてるんですよ?
 子爵って肩書がなかったら場末の娼婦より価値がないですよ」

え?・・レイラはそんな女だったの??
そのままでも、バラシてパーツ売りでも買取価格に大きな差がないのに
ル―ヴェルは最後の手段です!!

「仕方ない・・この本も付けるなら幾らになる?」

唯一持ち出せたアノ本をバーン!っとテーブルに出します。

いやいや!ル―ヴェル!アンタ本の前にレイラを売るって非道じゃないの??
これじゃ、キング・オブ・クズのヴィヴィアンよりクズじゃないか!!
作者の叫びは、本を見て目の色を変える男に書き消されてしまいましたよ。

「あっ!この本は・・!ちょっといいですか?」

男は驚いた顔で本の背表紙、裏表紙を確認しています。

「この本なら15万で買い取らせて頂きます!
 凄いです。中古とはいえこの状態。ヤケも折れもなく・・。
 大事にされてたんですね。この本は廃版でしてね。
 内容があまりにも専門的かつ、過激なので発行部数2000ですが
 回収命令がでましてね?
 店頭に並べられたのは100冊もない上に、手放す人もいなくて!
 出版社も倒産してもう手に入らない逸品なんですよ。
 私も本物を見たのは初めてです」

思わぬ価格がついた本にル―ヴェル自身がびっくりです。

「わ・・わかりました。アレとこの本を買い取ってください」
「本当ですか!!あっ!じゃぁこうしましょう!
 20万でこのお宝本とアレを引き取らせて頂きます。
 アレのほうがオマケみたいなものですがよろしいですか?」
「OKだ」
「じゃ、お待ちくださいね!すぐに金を持ってきます!」

男はカルトンの現金を持ち、ブースを出てレジに走りました。
ル―ヴェルは、唯一持ち出せた本の表紙をそっと撫でます。

「お縄でござる・・・15万って・・買った時は350ポロだったのに」

ぽつりと呟いていると、男が入ってきます。
カルトンに20万ポロがドカンと乗っていますね。

「では、こちらにサインをお願いします。
 現金の確認もこの場でお願いいたしますね」

買取用紙にサラサラとサインをすると、ル―ヴェルは胸ポケットに
現金を入れて席を立ちます。

「サインは・・OKです。あれ?現金ちゃんとありましたか?」
「あ、あぁ。また何かあれば買い取ってくれ」
「はい。どうもありがとうございました!!」

にこにこ顔の男に見送られて店を出るル―ヴェル。

少し先のカフェでカプチーノをオーダーし、胸ポケットから現金を出します。

「イチ、ニ、サン・・・・あれ?おかしいな?
 一枚、二枚、三枚・・・・あれ?やっぱりおかしいな?」

今度はテーブルの上に、紙幣を一枚づつ並べていきます。
勿論、一枚ごとに親指と人差し指をお手拭きタオルで湿らせて。

「やはり・・・19枚、19万ポロしかない!1枚足らない!」

そこに店員がカフェを持ってきましたので、慌ててまとめて胸ポケットに。
カプチーノを味わう事無く、ほぼ一気飲み。

「おい!おあいそを頼む」
「はい。450ポロになります」

胸ポケットから1枚紙幣を取り出し清算。おつりを無造作にポケットに入れ、
さっきの買取店に入ってきます。

「おい!買取価格!1万ポロ足らないぞ!」

店に入るなりル―ヴェルは叫びます。

「お客さん、困りますよ。ウチも商売なんです。
 そんな大声で、まるでウチが誤魔化してるようじゃないですか」
「な!何を!1万ポロ足らないぞ!20万ポロが19万ポロしかない!」

先程対応した男とは別の男は、ル―ヴェルの方を軽くポンポンと叩き、

「ウチは従業員には徹底してるんですよ」
「何をだ?」
「買取書にサインを貰うときに、をしてもらう事を
 ちゃんと口頭で伝えて、退ようにってね」
「ん・・・そういえば・・」
「確認されたんでしょう?足らないならその場で言えますからね。
 何も言わずに店から出られましたよね?で、今になって足らない・・
 それは難癖って言うんですよ。営業妨害です」

そう言うと、男はカウンターの後方に声を出します!

「おぉい!お客様がお帰りだっ!丁寧にお見送りをしてくれ!」

店の奥から出てきた屈強な男2人に腕を掴まれ、
店の外に放り投げられるル―ヴェル。

「待て!足らないのは本当なんだ!ちゃんと調べてくれ!」

しかし、店の扉は閉まったまま・・行き交う人がチラ見して通りすぎます。

「クソっ!レイラが中古だと?清いままだと言ってたのに??
 本も売ったし。。売るモノはもうないじゃないか!」

ル―ヴェルは舌打ちをしながら、ビジネスホテルに向かいますが・・

「大雨特別警報発令がされました。
 従業員の安全を確保するため、しばらく閉館いたします」

無情なお知らせを見て、安宿街に向かうのでした。

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