辺境伯のお嫁様

cyaru

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お嫁様はアグレッシブ

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「大丈夫ですか?スチュワート様??」
「あ、あぁ・・なんとか持ち堪えてる・・ギリギリの瀬戸際だけど」

恐ろしく疲れた気がする・・なんで俺の周りは仕事をしないやつばっかなんだ?
俺は呪われているのか?何かに恨まれているのか?

「続けてもよろしいですか?明日にします?」
「いや、こんな心臓に負担になるような事は連チャンさせてはダメだ」
「そうですね。閉店間際の連チャンは心臓に悪いですもんね」
「へ?なんだそれは?」
「いえ、大人の遊びです。適度にやりましょうってヤツです」
「ちょっと待ってくれ・・」

スチュワートは再度侍女を呼んでお茶を淹れるよう頼みます。
(インターバルが必要だ。静まれ!俺の心臓!)

侍女が4人にお茶のおかわりを淹れていきます。
「今度は先日奥様より頂いたタンポポコーヒーでございます。
 では、わたくしはまだ外で待機を致します」
「あぁ、気が利くなぁ・・みんなが君のようならいいのに・・」
「ウフフ。スチュワート様、ありがとうございます。では」

侍女が部屋を出るとまた諜報員の男が結界を張ります。

「続きを始めますね。カテンウォルですがキャンティ様の相続で
 間違いございません。ただ現在婚姻されているとは言え、未成年です。
 皇帝陛下が未だ後見人であることも事実です。
 この件に際しては一昨日正式に婚姻届けも受理されていますので
 伯爵様が皇帝陛下に願い出れば後見人は解けると思われます。
 まぁ・・・伯爵様が皇帝陛下に!ですが」

「まず無理でしょうね。筋も通りも通る事でも陛下には言えませんよ」
「それがですね・・言える人間がいるんですよ!
 しかも、掴んだ数少ない情報では、シバく事もするようです」
「何か・・・聞きたいような聞きたくないような・・」
「その通りです!」
「やっぱり?そうだよね?そうくるよねぇ・・」

スチュワートの頭の中には、この流れでそんな事が出来る人間はもう・・
あの人しかいないでしょう!と聞くまでもないと結論が出てますね。

「えぇ、皇帝陛下の師匠であるエンド様です」
「え?誰それ?・・この流れならキャンティ様でしょう?」
「違いますよ。何を言ってるんですか」

諜報員の男は、してやったり!という顔でコーヒーを飲みます。

「あ!美味しい!」
「そうでしょう。私もこれはお気に入りですよ」
「それでですね、カテンウォル・・」
「あ、続けるんですよね。そうですよね・・はいはい」

「はい、カテンウォルですが、これといった特産品はありません」
「農作物も?工芸品も?」
「そうですねぇ・・無理やりあげるとすればウドン湖に生息する
 マゥリモと、ワッカァメですかね」
「なんですか?それは?」
「はい、ウドン湖は丸いんですが湖の中心に対して30度の角度で
 支流が流れ込んでおりまして緩やかに渦を巻いているんですよ。
 なので渦に流れされて藻が丸くなるんです。それがマゥリモ。
 小さい瓶に入って可愛いですよ。1cm大きくなるのに1万年かかりますが。
 で、ワカメの種類のワッカァメというのは流れに耐えるので
 肉厚でなかなか歯ごたえもあり旨いんですよ」

「特産品という事ですね。他には何もないんですか?」
「はい、ウドン湖がある関係で湿地帯が広く広がっておりまして
 菖蒲やシャクナゲ、水芭蕉などは綺麗なのですが、
 なんせ足場も悪く宿泊施設もない所ですから観光客も来ません。
 領地経営はかなり苦しいのではないでしょうか」

「人口はどのくらいだった?」
「まぁ、湖や湿地帯には人は住めませんから、少なかったですよ。
 人が住める面積が小さいですからね。
 パンフによると1200人ほどの領地人口で
 ほとんど全員が環境保全に携わっているようです」
「そうか・・・何かあると思ったんだがな」

「ですが・・・」
「何だ?何か気になった事がある??」
「いえ、それほどでもないのですが、大きな倉庫がありましたね。
 当然中は見せてはもらえませんでしたが、目視ですのでざっとですが
 横幅が50mほど、奥行きも400、いや500mくらい。
 とにかくこんな山奥で戦艦か空母でも建造してるのか?と思うほど
 大きな倉庫が幾つもありましたよ」
「気になりますね・・」
「それを聞いてみたのですが、誰もかれもが同じ答えなんです」
「何といっていた?」
「えーーっと・・なんだったっけ。長ったらしい名前だったよな」
「うーん・・まてよぉ・・(パラパラ)・・・あった!これだ」

「ダイアトニックセブンスコード!!」
「なんだそれは?」
「わかりません。誰に聞いても
 ダイアトニックセブンスコードはダイアトニックセブンスコードだ!
 としか言わないんです」
「さっぱりわからんな」
「えぇ、ですが名付けたのは皇帝陛下だそうですので
 陛下は知っていると思いますよ。お聞きになればよろしいかと」
「それが出来れば、誰も苦労はしないよ」
「デスヨネー」

残ったタンポポコーヒーを飲み干して諜報員は言います。

「で、キャンティ様ですが2歳から学園の中等部に入学する12歳まで
 カテンウォルのダイアトニックセブンスコード横にある屋敷で
 生活をされていたそうです」
「祖父母は?」
「両親の祖父母ともかなり前に他界しておりますね。
 エンド様と生活をされていたようですよ」

「そのエンド様というのは陛下に物申せる人物?」
「はい、陛下の師匠と聞いておりますが、何の師匠かは謎です。
 誰からも聞けませんでした」
「クルール様が領地に来られることは?」
「2,3回だったと聞きました。ご両親も2歳で領に預けてからはほとんど
 キャンティ様の元を訪れる事もなく、また・・・」
「なんだ?」
「不思議なのですが、誕生日にすら何も届くモノはなかったそうです」
「不遇すぎないか?なぁ・・俺、涙出てきたよ」

「あとは、キャンティ様に関する事ですが」
「何かわかったか?」
「はい、かなりアグレッシブな性格だったようですよ。
 これも共通しておりますが、一度キレると消滅するまで・・だそうです」
「恐ろしく攻撃的だという事か・・」
「はい、ただそれは理不尽な事が自身に及んだ時だそうですけど」
「うわぁ・・・まさに今!それじゃないの?ねぇ、ねぇっ!」

不安に襲われるスチュワート。
諜報員が退室した後も、頭を抱えてソファから立ち上がる事が出来ません。
どうなる!?伯爵?
どうなる!?スチュワート!!



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