辺境伯のお嫁様

cyaru

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交渉成立。さぁ冬に備えるわよ!

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残ったギルド商会のランバートさんとアリシアさん。

薬草茶に興味津々な感じが致しますわ。

「どうでしょう?お口にあいますでしょうか?」
「失礼な事をお聞きしますが・・奥様はポーションなどはお作りになられますか?」
「どのような?」
「どのような・・という事はポーションについてはご理解がある・・と?」
「えぇ、魔力を回復させるものと健康などを回復させるもの。
 そのほかに上級ともなれば、失ってしまった手足や見えなくなった目も・・」
「そうです。このお茶を飲んで・・なのですが」
「は、はい?ダメでしたかね?」
「いえいえ。緩やかに体質を改善していく効果があると思いましたよ」
「えぇ、元々お医者様に診て頂けない方に少しでも健康にと思って
 効能などを調べましたので」
「そうですか。で・・ここだけの話・・よろしいですか?」

ランバートさんはちらりとスチュワートさんを見ます。
スチュワートさんは席にはつかずに今日は少し離れた所に立っておられますね。

「えぇ、大丈夫です」
「では、すこしフィルターの結界を張らせていただきますね」

そういうとランバートさんはわたくしとアリシアさんを囲うように
結界を張られました。

「奥様がこの領に来られて4か月。もしやと思いまして」
「なんでございましょう?」
「奥様、外には絶対に聞こえませんし、誰にも漏洩はいたしません。
 今、ここで契約魔法をしてもかまいません。
 奥様、魔法が使えますよね?それも魔力がかなり多く、魔導士レベルの魔法が」

答えをどうしようか迷っていると、
アリシアさんがカバンからナイフを取り出します。

「なっ!なにを??」
「私はSS級の冒険者です。隠しきれていない魔力を感じます。
 そこから隠されている量を考えると、そこに恐怖を感じます。
 そして・・この4か月奥様が魔法を使えるとは聞いた事がない。
 と、なると意図的に隠されている。違いますか?
 ならば、ここで口外しない旨を契約魔法を致しましょう。
 今後の取引において、それは良い方に働きましょうぞ」
「う・・わ、わかりました」

ランバートさんとアリシアさんはお互い目を合わせ頷き、
親指をナイフで少し突きました。

「キャンティ様の魔法についての一切を口外しないと、
 ランバート、アリシア。ここに絶対の誓約を誓う。
 違えし時は、その命を以て償う事とする」

ぽぉっと光の玉が2つランバートさんとアリシアさんの胸に吸い込まれます。

「これで契約完了です」
「そのようですね。わたくしの為にありがとうございます」
「いえいえ。では、このお茶についてですが薬草茶については・・」
「それなのですが、薬草茶だけではないのです」
「では、ポーションも?」
「ええ。魔力回復、体力回復共にAランクのポーションを卸します。
 ですが、しばらくは作れません。
 監視者を付けられておりますので魔法は使わないようにしています。
 作れるようになれば、共に週100のペースで卸します。
 その他に、物理的治療への使用として薬草、モルヒネを卸します。
 材料が揃えばペニシリンも可能です。
 薬草茶は薬局、教会などへの融通に限り卸します。
 そして・・・これです」

わたくしはポケットから、皆さんが来るまでに作ったルピナスを出します。
ルピナスを見てランバートさんは目を丸くして驚きます。

「こ、これは・・ルピナスでは?」
「えぇ。ルピナスについてはトテポロ帝国内のギルドにて
 登録を済ませています。現在は製造を休止しておりますが
 ランバート様経由で販売をするよう製造を再開いたしますわ」
「あ!まさか・・奥様が・・カテンウォルで製造を許可していた・・とか?」
「えぇ。闇市でも取引されるようになったので現在は在庫のみの出荷で
 そろそろ在庫もなくなる頃ですわね」
「あぁ!私!夢のようです!一度でいいのでルピナスの生産者に
 会いたいと思っていたのです」

ランバートさんは考え込んでいます。

「奥様・・・奥様はこの伯爵家の敷地内からは出られないのですよね?」
「えぇ。伯爵様に許可をもらえれば出られますが・・」
「その上、監視を付けられていて魔法も封印している・・と」
「えぇ、使えるとなればいい様に使われますから」

「ううむ・・・どうしたものか」
「では、こうしませんか??」

アリシアさんが何かを閃いたようです。

「見たところ、別邸の屋根には修繕が必要ですわ。
 いえ、不要でも必要としましょう!」
「それは・・構いませんが・・」
「で、屋根と外壁の修繕として、防音、遮断、反射の防護壁で囲い、
 最後に偽装のコーティングをするというのはどうでしょう?」
「そうか!別邸は平屋だから外から覗かれても偽装がかかっていれば
 中で本当は何をしているのかが隠せる。という訳か」
「そうです!奥様如何でしょうか?」

(なかなかアリシアさんって悪知恵・・いやアイデアマンじゃないの!)
「わかりました。修繕は言われていたので良いと思います」
「では、そのように。で、卸値なのですが」
「ギルドに帰られたらわかると思いますが、帝都の支店には
 ルピナスの売り上げ分がそのままプールされています。
 なので、正直ここでの売り上げはなくても良いのです」
「それはいけません。何より私らがギルドから追放されてしまいますよ」

「ですので、8:2もしくは7:3で買い取らせて頂けませんか?」
「いえ、6:4でお願いします」
「それでは、キャンティ様が損をしてしまいますっ」
「フフフ、そうでもないのです。割合を押さえる代わりに
 材料調達の際、手引きをして頂きたいのです」
「わかりました。では工事の際に直通で連絡の取れる魔道具を置きましょう」
「ありがとうございます」

ランバートさんは結界を解きます。

「では、交渉成立という事で、今後とも末永くお願いいたします」
「いえいえ。こちらこそランバートさん、アリシアさんにはお世話になります」

形式的な茶番をスチュワートさんに見せつけ、
ランバートさんは【一般的な別邸の補修工事】を
スチュワートさんに伝えます。

よし!これで冬が越せるわ!
っていうか・・雪が積もったら監視の人はどうするんだろう?
かまくらでも作るのかしら?

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