辺境伯のお嫁様

cyaru

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痴話喧嘩は見苦しいですYO!

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キャンティがいなくなったトテポロ帝国では・・・。

第三王子は皇帝陛下に謁見しておりますね。
その隣には、グリーンの鮮やかなフワフワ髪の女の子がいますよ?誰?誰?

皇帝陛下が玉座に着席をすると第三王子は手を胸に当てゆっくりと頭を下げます。

「陛下にはご機嫌うるわ・・」
「もうよい!」

あれ?第三王子はまだ言葉を終わってませんよ?
途中で打ち切るように強い言葉を発する皇帝陛下。

「あの・・陛下?」

何を言いたげな第三王子をギロリと射殺すような視線を向けて
ため息交じりに陛下は宰相に話しかけます。

「あやつの教育係の首を撥ねよ」
「かしこまりました」

宰相が脇にいた騎士に二言三言、告げると騎士は謁見室から出ていきます。
その様子に第三王子はガクガクと震え始めます。
縋るように各大臣に目線を向けますが、目が合うと大臣連中は目線を外します。

「あ、あっ!あの!皇帝陛下っ!」

思い切って声をあげると、護衛の騎士がとたんに剣を抜き、
第三王子と女の子の喉元に剣先を突き付けました。

「発言の許可はしておらぬ。陛下の前ぞ!黙られよ」
「いえ、しかしながら、わたくしめは陛下に謁見を申し立てて・・」
「そ、そうですッ!陛下が来いって言うから、あたしたち・・・」

今度は宰相から皇帝陛下に何か、耳元で話をしています。
フっと口元が緩んだかと思うと、陛下はおもむろに話しかけます。

「第三王子ル―ヴェル。そなた挨拶の仕方も知らんのか?
 サルを連れてここに来るとは・・お子ちゃまクーデターでも起こす気か?」
「い、いえっ!わたくしは・・」
「私の許しを得た婚約を勝手に破棄するとはなぁ。ル―ヴェル。
 さぞかし偉くなったのであろう」
「いえっ!その件に付きましては手続きに不備がありまして・・
 先にスチフナー嬢に申し付けるようになった次第でございますっ」
「そうですっ!あの女はずる賢いのでッ・・ギャッ!!」

第三王子の隣にいる女の子の口元に騎士が剣を突き付けます。
少し唇に当たったようで、血が流れていますね。

「ひっ・・ひどい!」
「第三王子、その五月蠅いサルは何だ?躾がなっておらんようだが?」

「へ、陛下。お伝えするのが遅くなりましたが、こちらにいますのが
 ヘンゼル子爵家のレイラ嬢にて。わたくしの運命の相手でございますっ!」
「運命の相手・・だと?」
「は、はいっ」
「そうか、そうか。ならば背を押してやらねばならんな」
「あっ!ありがとうございます!」

陛下は宰相をちらりと見ると、宰相が頷きます。

「では、第三王子ル―ヴェルとスチフナー侯爵家のキャンティ嬢の婚約は
 只今を持って、われ、皇帝が解消を認める。
 そして、同時に第三王子は廃嫡とし、以後皇族を名乗る事、帝都及び
 トテポロ帝国内に足を踏み入れる事を禁止する。
 最後にヘンゼル子爵家は取り潰しとし、その財産は帝国が没収とする。
 異議を唱える者は首を撥ね、その首を朽ちるまで氷壁から吊るせ」

「え?え?・・そんな!待ってください!お待ちください陛下!!陛下!叔父上!!」

すがる第三王子とレイラ嬢。
もう目に入らないのか謁見室を後にする皇帝陛下。
そのあとに続く宰相と騎士。

がらんとなった謁見室でレイラ嬢はル―ヴェルを扇子で打ち据えます。

「話がっ!話が違うじゃないのっ!なんで?取り潰しってどういう事?!」
「(ばしっ)い、痛い・・待って!ま・・(バシっ)・・待ってレイラ!」
「何を待てって言うの?騙されたわ!王子でもないアンタなんか!触るなッ」

扉を開けて退出を待っている騎士の元に走り寄るル―ヴェル。

「おい!陛下いや叔父上はどこだ?それより、父上は!父上はどこだ?」
「早く退出しなさい。つまみ出される前に」
「なんだと?貴様、王子である私に向かってその口の利き方はなんだ!」
「王子?先程廃嫡されたのを理解されてない?あぁ・・異議があるんですね?」
「何?・・異議・・異議?・・いやいや!異議などない!」

そういうとル―ヴェルはレイラを置いたまま、謁見室を飛び出し
自室(だった部屋)に向けて走り出します。

「さぁ、お前もさっさと出るんだ」
「きぃぃぃ!何なのよ!もぉ!」
「フッ・・まんま、サルだな」

騎士をキっと睨みつけてレイラ嬢も謁見室を後にし、馬車停に向かいます。
しかし、あるはずの子爵家の馬車はなく右往左往。
しかたなく、勝手知ったるル―ヴェルの部屋に向かいます。

ル―ヴェルは部屋に付くと、金になりそうな宝飾品をカバンに詰め込みます。

「あぁっ!くそっ!何なんだ?何でこうなった?」

そこに馬車停から走ってきたレイラ嬢。

「ル―ヴェル!馬車がいないわ!」
「ふんっ知るか。出ていけよ!」
「何ですって?どうやって帰れって言うのよっ!」
「歩けばいいだろう?人の事を扇子で打っておいてなんだ、お前は!」
「だって!言ってた事と違うじゃないの!家が取り潰しって何よ!説明して!」
「知るか!わからないなら陛下に聞けばいいだろう!」
「いやよ!殺されちゃうわ!って・・コレなによ!?」

レイラ嬢が汚いものを摘まみ上げるように、一冊の本をル―ヴェルの目の前に。
とたんに真っ赤になって慌てるル―ヴェル。

「な!なんだっていいだろう!俺のモノを勝手に触るな!」

っと本をひったくるように取り上げます。
扇子が折れそうなほど指に力が入ってますよ?レイラ嬢。

「毎回、毎回縄で縛ると思ったら!!そんな趣味があったなんてッ!」
「なんだよ!お前だって悦んでいたじゃないか!」
「悦んでないわよ!フリってのも気が付かないの?信じられない!」

くだらない痴話喧嘩をする2人の元に、騎士が4人やってきます。

「へいへーい!ホゥダップ手を挙げてぇスタンダッそこに立ってぇ!」
「だめだねぇ。勝手に色々持ちだすのは犯罪だよ?」
「へぇ・・捕まるときはこういう風に縛ってほしいって事かな?」
「どうでもいいが、その本以外は置いて、さっさと出るんだ」

本だけを持たされて、城外に連行される2人。
放り出されると、無情に大門は閉じてしまいます。

「どぉすんの・・馬車もないわ・・」
「あぁ・・何故こうなったんだ」
「あんたがそんな本を持って行こうとするからでしょう?」
「この本は関係ないだろう!」
「じゃぁ捨てなさいよ!」
「何で捨てなきゃいけなんだ!」

行き交う人はみな・・ル―ヴェルの持つ本を遠めに確認して
近寄っちゃいけない、絡まれたら大変!っと速足で去っていくのでした。



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