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スチュワートはブラック?
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コンコン
深夜の家令専用室の扉をたたく音がしますね。
「入れ」
扉が相手すぅーっと無言で軽く頭を下げて入ってきたのは
キャンティを監視している班長さん。
「どうだ?何か変わった事はあったか?」
「はい、奥様には何も変わりはありません。本日は朝食後に散策、
野草を採っておられまして、両手で抱えるほどのアロエを採取されました」
「ほう・・そのようなものをわざわざ運ぶという事は
やはり魔法は使えないのでしょうか」
「全くという事ではないと思いますが、平民程度は使えるかと。
水やりをする際に、まじないをかける程度の魔法ですが」
「使い慣れているとふいに発動させたりしますが、
その程度しか出さないとなると・・やはり使えないのでしょうかね。
調理などはどうでした?」
「魔法はありませんね。火打ち石で火種を起こして、
ある程度の火力が出た所に魔石を放り込む。
魔力の少ない平民が通常行う方法で火を起こし、
水は都度井戸からくみ上げて使っておられます」
「では、明日も・・」
「スチュワート様、奥様ではありませんが一つ。」
「なんでしょう?」
「本日、奥様が散策から戻られた時、女中頭のアンネが来ておりました」
「アンネが?」
「はい、不審者丸出しでございました」
「何の用で行ったのでしょうか。野菜を運んだ?」
「いえ、奥様に話があるとの事でした」
「直接ですか・・昨日の今日で・・」
「はい、奥様にテラス席を勧められましたが、椅子に座らず
奥様に椅子を拭かせたあと、自分の立場を何とかしろと詰め寄っておりました」
表情がとたんに険しくなるスチュワートです。
「奥様はなんと?」
「はい、奥様は自分には人事権もないので何ともできないと」
「困ったものですね。アンネですね」
言うべきかどうか迷っている風の班長さん。
「どうしました?まだ何か?」
「はい・・報告すべきかと思うのですが・・」
「どうぞ。奥様の身の回りを監視させているのですから言ってください」
「はい、では。そのアンネ女中頭は、奥様の事を悪女、売女と。
伯爵様に迫り、無理やり婚姻を結ばせて嫁いできたが
見向きもされず捨て置かれている身で!と罵られまして」
「はぁ・・もう困ったものですね。奥様はどうされていたのです?」
「奥様は、ここに来るまで伯爵様の事は声も絵姿も知らず、
婚姻の件ですら皇帝陛下からの命令ではあるが
それを聞いたのは自身の父である侯爵からだと言っておられました」
「ふむ。奥様のいう事は間違いないですねぇ」
「と、申しますと?」
「奥様はこの地に来られるまで旦那様の声すら知らず、
絵姿も見たことはないでしょう。
また、別の調査の先行報告では陛下からの命令の少し前に
第三王子から婚約破棄をされたそうですから
婚約中は他の男には見向きもされていなかったのでしょう」
「ですが、男漁りが酷いという話を聞きますが?」
「たった2日ですが、男漁りばかりをしていた女性が
3か月以上住んでいる屋敷はどうでしたか?」
「どうでしたか・・・はぁ・・まぁ、思春期の頃の女の子が
飾り付けるようなものでもなく、年齢の割には落ち着いた感じで・・。
ご趣味は畑と散策。仮に辺境の地に一人送られて反省しているとは言っても
あの状態では我慢は出来ないでしょうね。夜な夜な抜け出しても
おかしくはないでしょうが、その気配も素振りもない」
「そうなんです。噂で聞く奥様像と実態がかけ離れているんです。
しかも、地味な方がめちゃめちゃ板についてるというか
普通侯爵令嬢が育てた麦でパンをこねて焼かないでしょう?
粉状にするまでの過程をこなせる令嬢など聞いたことがありません。
火すら起こすことにもかなり手慣れてます。
噂は噂・・・というのが真相なのでしょうね。
そうなると、何故陛下が下賜されたのか。陛下の考えが読めません」
「では、調査は続行で・・女中頭のアンネはどうします?
あの様子では何かを仕掛けてくる可能性があります」
「そうですね、もしかするとリンダ嬢と奥様を偶然を装って
鉢合わせさせる可能性もありますね。
探りを入れ始めた段階でかき回されるのは好きませんね」
「では・・消しますか?」
「いえ、アンネは泳がせましょう。膿を出す小さな穴が必要ですからね
仕掛けてきたら監視役の一人を庭師など装ってアンネを遠ざけなさい。
理由のこじ付けは任せます。奥様は引き続き監視を続けてください」
「御意」
うーん・・・このお屋敷で一番怖いのは家令のスチュワートなのかも
知れないですねぇ。
深夜の家令専用室の扉をたたく音がしますね。
「入れ」
扉が相手すぅーっと無言で軽く頭を下げて入ってきたのは
キャンティを監視している班長さん。
「どうだ?何か変わった事はあったか?」
「はい、奥様には何も変わりはありません。本日は朝食後に散策、
野草を採っておられまして、両手で抱えるほどのアロエを採取されました」
「ほう・・そのようなものをわざわざ運ぶという事は
やはり魔法は使えないのでしょうか」
「全くという事ではないと思いますが、平民程度は使えるかと。
水やりをする際に、まじないをかける程度の魔法ですが」
「使い慣れているとふいに発動させたりしますが、
その程度しか出さないとなると・・やはり使えないのでしょうかね。
調理などはどうでした?」
「魔法はありませんね。火打ち石で火種を起こして、
ある程度の火力が出た所に魔石を放り込む。
魔力の少ない平民が通常行う方法で火を起こし、
水は都度井戸からくみ上げて使っておられます」
「では、明日も・・」
「スチュワート様、奥様ではありませんが一つ。」
「なんでしょう?」
「本日、奥様が散策から戻られた時、女中頭のアンネが来ておりました」
「アンネが?」
「はい、不審者丸出しでございました」
「何の用で行ったのでしょうか。野菜を運んだ?」
「いえ、奥様に話があるとの事でした」
「直接ですか・・昨日の今日で・・」
「はい、奥様にテラス席を勧められましたが、椅子に座らず
奥様に椅子を拭かせたあと、自分の立場を何とかしろと詰め寄っておりました」
表情がとたんに険しくなるスチュワートです。
「奥様はなんと?」
「はい、奥様は自分には人事権もないので何ともできないと」
「困ったものですね。アンネですね」
言うべきかどうか迷っている風の班長さん。
「どうしました?まだ何か?」
「はい・・報告すべきかと思うのですが・・」
「どうぞ。奥様の身の回りを監視させているのですから言ってください」
「はい、では。そのアンネ女中頭は、奥様の事を悪女、売女と。
伯爵様に迫り、無理やり婚姻を結ばせて嫁いできたが
見向きもされず捨て置かれている身で!と罵られまして」
「はぁ・・もう困ったものですね。奥様はどうされていたのです?」
「奥様は、ここに来るまで伯爵様の事は声も絵姿も知らず、
婚姻の件ですら皇帝陛下からの命令ではあるが
それを聞いたのは自身の父である侯爵からだと言っておられました」
「ふむ。奥様のいう事は間違いないですねぇ」
「と、申しますと?」
「奥様はこの地に来られるまで旦那様の声すら知らず、
絵姿も見たことはないでしょう。
また、別の調査の先行報告では陛下からの命令の少し前に
第三王子から婚約破棄をされたそうですから
婚約中は他の男には見向きもされていなかったのでしょう」
「ですが、男漁りが酷いという話を聞きますが?」
「たった2日ですが、男漁りばかりをしていた女性が
3か月以上住んでいる屋敷はどうでしたか?」
「どうでしたか・・・はぁ・・まぁ、思春期の頃の女の子が
飾り付けるようなものでもなく、年齢の割には落ち着いた感じで・・。
ご趣味は畑と散策。仮に辺境の地に一人送られて反省しているとは言っても
あの状態では我慢は出来ないでしょうね。夜な夜な抜け出しても
おかしくはないでしょうが、その気配も素振りもない」
「そうなんです。噂で聞く奥様像と実態がかけ離れているんです。
しかも、地味な方がめちゃめちゃ板についてるというか
普通侯爵令嬢が育てた麦でパンをこねて焼かないでしょう?
粉状にするまでの過程をこなせる令嬢など聞いたことがありません。
火すら起こすことにもかなり手慣れてます。
噂は噂・・・というのが真相なのでしょうね。
そうなると、何故陛下が下賜されたのか。陛下の考えが読めません」
「では、調査は続行で・・女中頭のアンネはどうします?
あの様子では何かを仕掛けてくる可能性があります」
「そうですね、もしかするとリンダ嬢と奥様を偶然を装って
鉢合わせさせる可能性もありますね。
探りを入れ始めた段階でかき回されるのは好きませんね」
「では・・消しますか?」
「いえ、アンネは泳がせましょう。膿を出す小さな穴が必要ですからね
仕掛けてきたら監視役の一人を庭師など装ってアンネを遠ざけなさい。
理由のこじ付けは任せます。奥様は引き続き監視を続けてください」
「御意」
うーん・・・このお屋敷で一番怖いのは家令のスチュワートなのかも
知れないですねぇ。
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