辺境伯のお嫁様

cyaru

文字の大きさ
上 下
5 / 87

野菜箱の秘密は暴かれる

しおりを挟む
今日で3か月半かぁ・・・わたくし頑張ってるとは思うんですが
やはり、ほとんどが野菜とライムギだけというのは堪えますわ。
本当に久しぶりの肉!って事で贅沢な3食を作ってしまい
あっという間になくなってしまったデスラビット肉。

と、いう事で今日は自生のライムギを見つけた庭の東側に来ています。
おっ・・いたいた・・

目の前には魔獣の1種であるデスラビット。
牙がグァっと出てて、うさちゃんの可愛さ半減。
おまけにハリネズミかと思うような剛毛なので抱っこも出来ない。
迂闊に近寄るとその体の棘を飛ばしてくるから要注意。

わたくしは、火魔法を使って炎の矢を投げ槍のように飛ばします。

「ターゲット、ロックオン!いっけぇー!」

ドスっ

「わぉ!当たった!当たった!」

で、ここで終わりじゃないんですよね。
魔獣の調理は結構大変。毒が皮の表面部分にあるので十分注意しないと。
わたくしは、炎の矢をさらに燃焼させます。
こうすると、外の棘も焼けるし、刺さった矢から中もコンガリ。
デスラビットの内臓は焼けると溶けてしまうのよね。処理が簡単なのよ!

そろそろいいかなぁ?っと見てみると、外側は真っ黒。焦げちゃったわ。
でも、北京ダックの要領で少しめくってみる。

「おぉぉ~今日のはローストビーフっぽい!いや、ローストラビットだわ」

これで2日分のお肉は確保できましたわ。
今日食べきれないものは、冷凍収納魔法で凍らせておきますのよ。
食べたいときに解凍すればいいだけだもの。

さて・・っと歩いていると・・。あれは!
こちらも魔獣のコッコトロン。鶏冠に目を奪われると眠ってしまうので注意。
でも、コッコトロンは猛毒なので食べられない。
だけど!卵は別!コッコトロンの卵は滅茶苦茶美味しい!
卵の状態だと中身も無毒。でも、親鳥の警戒が強いのでなかなか取れないの。
そぉーっと近づくけど・・・やっぱ気が付かれましたわ。

「トンボでくるりん!」

風魔法で渦を巻くようにしてドリル状にしたあと
親鳥に向けて撃つ!ばしゅー!

殺しませんよ?だってコッコトロンは老衰で死ぬ時は無害だけど
殺されるとその瞬間に一帯が毒の霧で覆われるし
他のコッコトロンが集まってくるからね。眠らせるだけ。

コテンと転がったコッコトロンを確認して・・あった!2個もある!
ごめんね・・と思いながら卵を頂きました。

「美味しくいただくので許してね」

*****************************************************
家に帰ったわたくしは、早速ライムギでパンを作ります。
本当は牛乳でもあればもっと柔らかくなるんだけどなぁと思いつつこねます。

焼きたてはそこまで固くないのですよ。冷めると乾パンくらいになりますけど。

春はいいですね。今日は偶然見つけたハーブとタンポポ、野イチゴもあります。

パンが焼きあがると、水菜を少し千切って、大根の葉も少し。
デスラビットのお肉をいれて、ニンジンをスライス。
これをライムギパンで挟みます。

ま、バーガーってやつですね。
ドリンクは野イチゴのジュース(3口で終わりますけどね)
で、菜の花から絞った油でジャガイモを千切りにしてポテトも作ります。
んー上出来。上出来。

それをパクリ・・と食べていると。。
あら珍しい。食材を運んでくるおじさん以外で初めての来客ですわ。

「奥様、こんにちは。お食事時に申し訳ありません」
「あら?スチュワート様、どうされました?」
「いえ、ご不便がないかと思いまして」
「ありませんよ?不便があればちゃんと伝えますわ」

あら?スチュワートさんの視線がバーガーに・・マズイかな?

「それは・・何を?」
「えーっと・・水菜と人参をパンで挟んだものですわ」
「ちょっと見えているのは・・肉??」
「えーっと・・今朝庭にウサギが死んでまして・・」

苦しい言い訳だわ・・信じてくれるかしら?
ひきつった笑顔全開になってますわね。どうしましょう。

っと、そこへ2週間ぶりに野菜箱を持ったおじさんがきましたわ。
グッドタイミング!っと思ったんですが、これが面倒なことになりましたの。

「奥様、ここに・・・あれ?スチュワート様・・何故ここに?」

置きかけた野菜箱をまた持ち上げるおじさん。

「奥様、あの箱は?」
「に、二週間分の野菜を届けてくれたのですわ」
「二週間??」

つかつかとおじさんに近寄るスチュワート様。

「ちょっと中身を見せてください」
「あ、いえ、あの・・私は頼まれただけで・・」
「わかっています。運べと言われただけでしょう?中身を見せなさい」
「は、はい・・」

おじさんは静かに野菜箱を置きますが・・・
中身を見たスチュワートさん・・眉間にグッキリと筋が通りましたわ。

「これは、野菜くずというものではないですか?」
「いえ・・私は・・運んだだけで・・」
「今すぐ、ここに!運べと命じた者を連れてきなさい!今すぐ!」

わたくしは、一向にきにしませんのに。
スチュワートさんは怒っておられるようですね。
そこに50代半ばと思われる男女が来ました、服装から・・
女中頭と調理長のようですね。

「スチュワート様、お呼びと伺いましたが・・」
「えぇ、あなた方、これを見てどう思いますか?」

恐る恐る野菜箱を見る2人。
ですが、驚いたのは男性の調理長らしき人だけ。
女中頭の女性は驚くというよりも、顔色が悪いですね。

「スチュワート様!私はこんな野菜くずは存じません!
 それに、私が渡したのはもっと大きな箱で数も全然違います!
 奥様に届ける日は朝から市場でその日に採れたものを入れております」

「そうですか・・では、女中頭のアンネ!どうです?」

アンネさんと言うのですね。寒気もあるようです。震えていますよ?大丈夫?

「も、も、申し訳ありまっせんっ!」
「詳しい話は、旦那様の元で伺います。すぐに新しいものを用意なさい!」

あっ!いけません。その野菜だってちゃんと食べられるし
畑に植える事も出来るんですから!
わたくしは、アンネさんとスチュワートさんの間に出ましたわ。

「スチュワート様!わたくしはこの野菜で構いません」
「奥様!これは由々しき問題なのですッ!
 仮にも辺境伯爵家で夫人にこんなものを!許されることではないッのです」

「いえ、これもちゃんとした野菜です。
 今日は暖かい日ですから、持ってくる間にしなびたのでしょう
 ほら、後ろを見てくださいませ。持ってきて頂いた野菜で
 食べきれなかった部分や根などを植えたものですの。
 丈夫に、美味しそうに育っているでしょう?
 調理長さんがいい野菜をアンネさんと厳選してくれたからこそなのです」

「しかし!奥様!」
「スチュワート様、わたくしは困った事があれば言うと申しました。
 困っておりませんので言いませんでした。それだけです。
 みなさん、わたくしに良くしてくださっております。感謝しているのです」

「奥様・・・申し訳ありません。申し訳ありません!」
「アンネさん、謝る事は何もされておりませんよ。いつも野菜をありがとうございます。
 調理長さんも新鮮な野菜を朝早くから・・感謝いたしますわ」

「奥様・・ですがこれは・・」
「スチュワート様、伯爵様には何も言わないでくださいませ。
 わたくしは、十分してもらっておりますから」
「う・・わかりました。ですが!次はないですよ?その時は報告いたします」
「スチュワート様?報告はわたくしが困った時にしてくださいませ」
「ですがっ!」

このままでは堂々巡りですね。スチュワート様の言わんとする事わかりますわ。
でも・・。

「わかりました。では、こう致しましょう。
 今後、食材を持ってきて頂かなくて構いません」
「奥様っ!それは余計にダメです!」
「いいえ、これから先は暖かくなります。冬になればお願いいたしますが
 雪の季節まで食材はこの畑でなんとかなりますもの。大丈夫です。
 お願いいたします」

最後の手段です。わたくしは頭を深々と下げました。
うふふ・・ズルい手だとは思いますか、これで溜飲を下げてくれるでしょう。

「わかりました。ですが本当に困ったら仰ってくださいよ?」
「えぇ。ちゃんと言いますわ。さぁ、皆様お仕事に戻ってくださいませ」

ふぅー。やっと帰ってくれましたわ。
でもこれでしばらくは本当に自給自足ですわ。頑張らなくては!

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

【完結】五度の人生を不幸な出来事で幕を閉じた転生少女は、六度目の転生で幸せを掴みたい!

アノマロカリス
ファンタジー
「ノワール・エルティナス! 貴様とは婚約破棄だ!」 ノワール・エルティナス伯爵令嬢は、アクード・ベリヤル第三王子に婚約破棄を言い渡される。 理由を聞いたら、真実の相手は私では無く妹のメルティだという。 すると、アクードの背後からメルティが現れて、アクードに肩を抱かれてメルティが不敵な笑みを浮かべた。 「お姉様ったら可哀想! まぁ、お姉様より私の方が王子に相応しいという事よ!」 ノワールは、アクードの婚約者に相応しくする為に、様々な事を犠牲にして尽くしたというのに、こんな形で裏切られるとは思っていなくて、ショックで立ち崩れていた。 その時、頭の中にビジョンが浮かんできた。 最初の人生では、日本という国で淵東 黒樹(えんどう くろき)という女子高生で、ゲームやアニメ、ファンタジー小説好きなオタクだったが、学校の帰り道にトラックに刎ねられて死んだ人生。 2度目の人生は、異世界に転生して日本の知識を駆使して…魔女となって魔法や薬学を発展させたが、最後は魔女狩りによって命を落とした。 3度目の人生は、王国に使える女騎士だった。 幾度も国を救い、活躍をして行ったが…最後は王族によって魔物侵攻の盾に使われて死亡した。 4度目の人生は、聖女として国を守る為に活動したが… 魔王の供物として生贄にされて命を落とした。 5度目の人生は、城で王族に使えるメイドだった。 炊事・洗濯などを完璧にこなして様々な能力を駆使して、更には貴族の妻に抜擢されそうになったのだが…同期のメイドの嫉妬により捏造の罪をなすりつけられて処刑された。 そして6度目の現在、全ての前世での記憶が甦り… 「そうですか、では婚約破棄を快く受け入れます!」 そう言って、ノワールは城から出て行った。 5度による浮いた話もなく死んでしまった人生… 6度目には絶対に幸せになってみせる! そう誓って、家に帰ったのだが…? 一応恋愛として話を完結する予定ですが… 作品の内容が、思いっ切りファンタジー路線に行ってしまったので、ジャンルを恋愛からファンタジーに変更します。 今回はHOTランキングは最高9位でした。 皆様、有り難う御座います!

【完結】『サヨナラ』そう呟き、崖から身を投げようとする私の手を誰かに引かれました。

仰木 あん
ファンタジー
継母に苛められ、義理の妹には全てを取り上げられる。 実の父にも蔑まれ、生きる希望を失ったアメリアは、家を抜け出し、海へと向かう。 たどり着いた崖から身を投げようとするアメリアは、見知らぬ人物に手を引かれ、一命を取り留める。 そんなところから、彼女の運命は好転をし始める。 そんなお話。 フィクションです。 名前、団体、関係ありません。 設定はゆるいと思われます。 ハッピーなエンドに向かっております。 12、13、14、15話は【胸糞展開】になっておりますのでご注意下さい。 登場人物 アメリア=フュルスト;主人公…二十一歳 キース=エネロワ;公爵…二十四歳 マリア=エネロワ;キースの娘…五歳 オリビエ=フュルスト;アメリアの実父 ソフィア;アメリアの義理の妹二十歳 エリザベス;アメリアの継母 ステルベン=ギネリン;王国の王

〈とりあえずまた〆〉婚約破棄? ちょうどいいですわ、断罪の場には。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
辺境伯令嬢バルバラ・ザクセットは、第一王子セインの誕生パーティの場で婚約破棄を言い渡された。 だがその途端周囲がざわめき、空気が変わる。 父王も王妃も絶望にへたりこみ、セインの母第三側妃は彼の頬を打ち叱責した後、毒をもって自害する。 そしてバルバラは皇帝の代理人として、パーティ自体をチェイルト王家自体に対する裁判の場に変えるのだった。 番外編1……裁判となった事件の裏側を、その首謀者三人のうちの一人カイシャル・セルーメ視点であちこち移動しながら30年くらいのスパンで描いています。シリアス。 番外編2……マリウラ視点のその後。もう絶対に関わりにならないと思っていたはずの人々が何故か自分のところに相談しにやってくるという。お気楽話。 番外編3……辺境伯令嬢バルバラの動きを、彼女の本当の婚約者で護衛騎士のシェイデンの視点から見た話。番外1の少し後の部分も入ってます。 *カテゴリが恋愛にしてありますが本編においては恋愛要素は薄いです。 *むしろ恋愛は番外編の方に集中しました。 3/31 番外の番外「円盤太陽杯優勝者の供述」短期連載です。 恋愛大賞にひっかからなかったこともあり、カテゴリを変更しました。

「宮廷魔術師の娘の癖に無能すぎる」と婚約破棄され親には出来損ないと言われたが、厄介払いと嫁に出された家はいいところだった

今川幸乃
ファンタジー
魔術の名門オールストン公爵家に生まれたレイラは、武門の名門と呼ばれたオーガスト公爵家の跡取りブランドと婚約させられた。 しかしレイラは魔法をうまく使うことも出来ず、ブランドに一方的に婚約破棄されてしまう。 それを聞いた宮廷魔術師の父はブランドではなくレイラに「出来損ないめ」と激怒し、まるで厄介払いのようにレイノルズ侯爵家という微妙な家に嫁に出されてしまう。夫のロルスは魔術には何の興味もなく、最初は仲も微妙だった。 一方ブランドはベラという魔法がうまい令嬢と婚約し、やはり婚約破棄して良かったと思うのだった。 しかしレイラが魔法を全然使えないのはオールストン家で毎日飲まされていた魔力増加薬が体質に合わず、魔力が暴走してしまうせいだった。 加えて毎日毎晩ずっと勉強や訓練をさせられて常に体調が悪かったことも原因だった。 レイノルズ家でのんびり過ごしていたレイラはやがて自分の真の力に気づいていく。

身勝手な理由で婚約者を殺そうとした男は、地獄に落ちました【完結】

小平ニコ
ファンタジー
「おい、アドレーラ。死んだか?」 私の婚約者であるルーパート様は、私を井戸の底へと突き落としてから、そう問いかけてきました。……ルーパート様は、長い間、私を虐待していた事実が明るみになるのを恐れ、私を殺し、すべてを隠ぺいしようとしたのです。 井戸に落ちたショックで、私は正気を失い、実家に戻ることになりました。心も体も元には戻らず、ただ、涙を流し続ける悲しい日々。そんなある日のこと、私の幼馴染であるランディスが、私の体に残っていた『虐待の痕跡』に気がつき、ルーパート様を厳しく問い詰めました。 ルーパート様は知らぬ存ぜぬを貫くだけでしたが、ランディスは虐待があったという確信を持ち、決定的な証拠をつかむため、特殊な方法を使う決意をしたのです。 そして、すべてが白日の下にさらされた時。 ルーパート様は、とてつもなく恐ろしい目にあうことになるのでした……

【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜

光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。 それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。 自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。 隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。 それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。 私のことは私で何とかします。 ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。 魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。 もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ? これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。 表紙はPhoto AC様よりお借りしております。

処理中です...