辺境伯のお嫁様

cyaru

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ライ麦 見つけた!

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「あー・・炭水化物食べたーい!肉とか卵とか言わないからさー」

別邸に来てから3週間。食料の補充は初回入れて3回。
毎回毎回、酷い状態の野菜ばかり。余程嫌われてるんだなぁって実感しますわ。
麦も一握りも入れてくれてない。
野菜箱に入れる物をチョイスする人捕まえて言ってやりたい!

「あんたはこれで満足できるの!?」

あーダメダメ。何もしないで好きな事させてもらってるんだから
文句はダメだわ。反省しなきゃ。

っと、ベッドで愚痴っても仕方ありませんわね。
ないなら、ないで何とかせねばなりませんものね。甘えは禁物ですわ。

と、いう事でまた庭に散策しております。
南の方に向かうと、本宅があるので近寄りませんわ。
西の方には池があって、こじんまりとした薔薇園とガゼボがあったので
こちらも近寄りません。
もうねぇ・・逢引の現場見るのはこりごりですわ。

え?何で?って・・あーそうですわね。

わたくし、帝都で第三王子と婚約しておりましたのよ。
で、呼ばれたお茶会に王子が何時まで経っても来ないの!
仕方ないから、一人でウロウロ散歩してたらね・・ミニ薔薇園のガゼボで
第三王子と子爵令嬢が下半身だけアッパッパーになって
エイヤサーエイヤサーって上下運動してるのよ。
なんかねぇ・・あれって・・直で他人の見ちゃうと夢も壊れるよねー。
汚いの一言なんだもの。
伯爵様と子供作るときってアレをしなきゃいけないのかって思うと吐いたわ。
でも、しなくていいって面と向かって言ってくれたわ!なんていい人!
そういうの、情を交わした女性?っていうの?そっちと頑張ってー!

っと、まぁ、それでね夜会で仲の良いご令嬢とワイワイやってたら

「貴様とは婚約破棄だー!」

って叫ぶものだから、二つ返事でOKしてスキップして帰ったわ。
やっと自由だ―!王子妃教育もオサラバ―って思ってたらね。
辺境伯に嫁に行け!だなんて。
正直、この可愛い別邸に来るまで凹みまくってたんですのよ?

でもねー!辺境万歳!田舎最高!伯爵様ありがとうぉぉ!
悠々自適で快適なおひとり様生活。
フリーダム!マンセー!ってな感じかな?

で・・っと南と西は、
伯爵様と情を交わした女性の現場に遭遇する確率高いのでパス。
東の方に来てるんだけど・・これって・・ライムギが自生してるのかな?
人が植えたにしては少なすぎる。種が飛んだと考えたら・・やっぱり。

人1人分くらいのスペースで転々とライムギが自生してる!
やった!キャンティはライ麦をゲットした!


数回は増やすために育成しなきゃいけないけど
来週はパンが食べられそう!わたくし、持ってるぅー!ツイてるぅー!

さて、根っこを傷めないようにそぉーっとそぉーっと

*****************************************************

「スチュワート、あれからご令嬢はどうだ?」
「どうだ?とは?」
「夜会だ、買い物だと言ってきてはいないか?」
「昨日で3週間ですが、一向に。ですが・・」
「どうした?」
「畑を作って野菜などを育てているようです」
「は?」
「ですから、自分で野菜を育てているようですよ」
「苗からか?」
「いえ、そのようなものは配達していませんね」
「ならどうやって?」
「食材として持って行った野菜から育てているようですよ」
「食材?では毎日の食事はどうしているんだ?」
「育てた野菜や、山菜などを食べられているようですね」
「そのうち根を上げるだろう。適当にやっておけ」

書類の束をスチュワートに渡すとコートを手にするヴィヴィアン。

「今日もリンダ様のところへ?」
「あぁ、春物の帽子とドレスをねだられた」
「奥様には何も贈られないのですか?」
「予定はないな」
「そうでございますか。いってらっしゃいませ」

まだ何か言いたそうなスチュワートでしたが、ヴィヴィアンは出かけます。

******************************************************

「ヴィオ、遅~い」
「すまないな。書類が多くて手間取った」
「リンダより大事なんだ・・ぐすっ・・」
「いやいや、リンダより大事なものはないよ」
「じゃぁ、待たせたから指輪も買ってほしいなぁ」
「そうだな。そのあとはレストランを予約しているから食事に行こう」
「え?どこのレストラン?」
「フルドワーニュを予約してるよ」
「やった!超映える!ヴィオ大好きぃぃ」

テーラーメイドのドレス専門店で煌びやかなドレスを作るため
採寸するリンダをじぃっと眺めるヴィヴィアン。

「だめ!こんなレースじゃダメ!私の良さが全然でてないわ!」
「ですが前回こちらを使うと・・」
「もうそんなの映えないの!帝都じゃもっとユルフワ系なんだよ?」
「そうでございますか・・」
「リンダ、あまり我儘を言ってはダメだ。それもいい生地じゃないか」
「ヴィオ~ダメなんだってばぁ、もうこの形古いんだもーん」

その後、宝飾店に向かう2人。

「リンダ、この石がいいんじゃないか?」
「えーやだぁ。緑色のやつはこの前もらったもん」
「だが、私の瞳の色だから何個でも欲しいと・・」
「いやぁん!これ見てぇ。超やばーい!このルビー激かわ~!」
「流石リンダ様、こちらは昨日王都から入荷したばかりです」
「やっぱそう?そうよね?流行ってるって聞いたもん!ヴィオ~これがいいのぉ」
「そうか。店主、これはいくらだ?」
「昨日の入荷でしてね・・金額は・・このくらいですね」

前回の倍以上じゃないか・・と思いつつもリンダが欲しがるならと
ヴィヴィアンは伝票にサインをします。

そしてレストランへ・・

「うわ!やった!リンダお姫様みたぁい!」
「リンダはいつでもお姫様だよ」

静かな雰囲気をぶち壊すキャンキャン声を出すリンダ。

「うわ・・これ・・マズ~。え?ヴィオよくこんなの食べられるね?」
「鹿肉の希少部位だろう?臭みもないし柔らかくて旨いじゃないか」
「信じらんなぁい・・これヴィオ食べてぇ。リンダそっちがいい!」

隣で食事をするカップルに出された皿を指さすリンダ。

「仕方ないね・・ちょっと・・あの肉を彼女に・・」
「コース外になりますがよろしいですか?」
「うむ・・かまわん」
「かしこまりました」

食事が終わり、店の外に出る2人

「リンダ、今日は泊まっていかないか?」
「え?ウィザードホテルのスィート??」
「いや、私の屋敷だ」
「えぇぇー。だってヴィオ奥さんいるしぃ・・いつも帰る時家令がウザいんだもん」
「今日は泊まりだ。明日帰ればいい」
「えぇぇー。ホテルならいいんだけどぉ・・今日はやめとく。家まで送って!」
「リンダ・・この前もそうだったじゃないか」
「だってぇ・・今日は女の子の日なんだもん」
「そうか・・結構長いんだな。仕方ない送るよ」

************************************************
 
屋敷に帰ると、家令のスチュワートが出迎えます。

「今日はリンダ様は来られないのですか?」
「あぁ、女の子の日だそうだ」
「そうですか・・差し出がましいようですが・・」
「なんだ?」
「わたくしは、25歳にもなってあのような話し方、振舞をされる女性は
 たとえ家に迎え入れずとも、どうかと思います」
「そうだな・・」
「キャンティ様・・・奥様は14歳ですが弁えていらっしゃいます」
「侯爵家と子爵家の違いだろう」
「そうでしょうか。わたくしにはそれだけではないと感じます」

ヴィヴィアンからコートを受け取ったスチュワートは礼をして
静かに控室に戻りました。



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