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2回目の人生
第27話 それ、国宝ですよね
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アレグロとダクシオンが出仕をしていくと、先ほどカバンの中を漁っていたが手を止めたヴァルスが改めてカバンからそこそこに大きさがあるものを取り出してテーブルに置いた。
オレンジ色の布で包まれた物体。
何かと思えば…。
「花瓶?!」
「昨日、そこの棚にある花瓶はハタキを立てると言っていただろう?公爵家では使わないから使って欲しい」
「まぁ。助かりますわ。良かったわね。オデット」
「お母様、直ぐそうやって。だめですよ。無料程高いものはないって言いますでしょうに」
ヴィヴァーチェを窘めている間にヴァルスはオレンジ色のウコンで染めた布を解くと、中から出て来た花瓶をコンコンと軽く叩いて「割れてないな」とご満悦。
が、明らかに不味い。
オデットは目利きは出来る方ではないけれど、ハッキリ言って花を生けるような花瓶ではない。
流石にそれはヴィヴァーチェも気が付いたようで顔が引き攣っている。
「あの‥その花瓶って…」
「倉庫に沢山あるんだ。掃除も結構大変でね。専門の商会から職人が来て磨いていくんだ」
「磨いて…凄く古そうな感じですけど」
「古い?古いと言えば古いな。500年ほど前に先祖が当時の国王から下賜された花瓶だ」
「ヒュッ!」ヴィヴァーチェが息を飲んだ。
――それ、もう花瓶じゃないから!――
「不要ですわ。それ、国宝ですよね?お持ち帰りください」
「不要?国宝と言えば国宝だけど…花瓶なんて使ってなんぼだろう?もしかしてデザインが気に入らなかったとか?もしかしてこの突起みたいになった取っ手か?!折ろうか」
「是非やめて。そのままで。そーっと布に包みなおして頂けるとありがたいですわ」
「そうか?」
ヴァルスは大人しく花瓶を布で包み出した。
ちょっと考えればわかるだろうに。
普通の花瓶を保管するのにウコン染めの布なんか使わない。オデットは包んでいる最中にさっき「折ろうか」と言った突起を折ってしまうんじゃないかと気が気でない。
「良かったら一緒に倉庫に来てくれればいい感じのを選んでもらえるんだがな」
――そういうのを保管してあるところに他人を連れて行っちゃダメ!――
間違いなく国宝級のお宝がずらりと並んでいるのがヴァルスのいう倉庫なのだろう。歩いたりすることで風でも起きて破損させてしまったらとんでもない事になるではないか。
まさか、それを待ってる?前回は完全冤罪だったから今度は宝物を破損させて処刑台に送る気なのか。オデットはヴァルスの考えが解らない。
「そういえば…絨毯もあったな。ペルルーシャのカリフから貰ったやつがあるよ」
「置き場所が御座いませんので」
「床に敷けばいいじゃないか」
――歩くところが無くなるでしょうに!――
「ところでオデット嬢。今日の昼は…昼食はさっき断られたから良いとして、予定はあるか?」
「御座います。今日は昨日出来上がった品を納品に行き、新しい仕事を貰ってくるのです」
「危険だろ。夜ではないにしてもだ、こんな昼間に1人で出かけようと言うのか」
――だったら何時出かければいいのよ――
「ちょっと待ってくれるか?」
「なんでしょう?」
「屋敷に走って戻り、騎乗してくる。送って行くよ」
――激目立つからやめて――
ただでさえヴァルスは美丈夫なので目立つのだ。
その上、ディアナやケイトもナタリーもヴァルスの顔は知っている。勿論他の令嬢たちもだ。
馬車の走る車道を挟んだ歩道で瞬間横並びになっただけで妊娠するとか言われているのに一緒に行動していたら何を言われるか解かったものじゃない。
馬に相乗り?冗談じゃない。
「馬には乗れませんので遠慮します」
「大丈夫だ。落とさない自信がある」
「そういう問題ではありません。そろそろお体も温まったでしょう?お帰りはあちらで御座いますよ」
「そんなに長居をしてしまったか。約束を取りつけたかっただけなのに…すまない」
ヴァルスは大人しく花瓶を手に、約束は何1つ取り付けることが出来なかった。
さぁ、帰ろうかと玄関扉を開けると「うわぁ!!」美丈夫でも驚く事があったようだ。
何かと思い、ヴァルスが驚いた先を見てオデットは小さく溜息を吐いた。そこには本日2人目の招かれざる客、ジークフリッドが立っていたのだ。
オレンジ色の布で包まれた物体。
何かと思えば…。
「花瓶?!」
「昨日、そこの棚にある花瓶はハタキを立てると言っていただろう?公爵家では使わないから使って欲しい」
「まぁ。助かりますわ。良かったわね。オデット」
「お母様、直ぐそうやって。だめですよ。無料程高いものはないって言いますでしょうに」
ヴィヴァーチェを窘めている間にヴァルスはオレンジ色のウコンで染めた布を解くと、中から出て来た花瓶をコンコンと軽く叩いて「割れてないな」とご満悦。
が、明らかに不味い。
オデットは目利きは出来る方ではないけれど、ハッキリ言って花を生けるような花瓶ではない。
流石にそれはヴィヴァーチェも気が付いたようで顔が引き攣っている。
「あの‥その花瓶って…」
「倉庫に沢山あるんだ。掃除も結構大変でね。専門の商会から職人が来て磨いていくんだ」
「磨いて…凄く古そうな感じですけど」
「古い?古いと言えば古いな。500年ほど前に先祖が当時の国王から下賜された花瓶だ」
「ヒュッ!」ヴィヴァーチェが息を飲んだ。
――それ、もう花瓶じゃないから!――
「不要ですわ。それ、国宝ですよね?お持ち帰りください」
「不要?国宝と言えば国宝だけど…花瓶なんて使ってなんぼだろう?もしかしてデザインが気に入らなかったとか?もしかしてこの突起みたいになった取っ手か?!折ろうか」
「是非やめて。そのままで。そーっと布に包みなおして頂けるとありがたいですわ」
「そうか?」
ヴァルスは大人しく花瓶を布で包み出した。
ちょっと考えればわかるだろうに。
普通の花瓶を保管するのにウコン染めの布なんか使わない。オデットは包んでいる最中にさっき「折ろうか」と言った突起を折ってしまうんじゃないかと気が気でない。
「良かったら一緒に倉庫に来てくれればいい感じのを選んでもらえるんだがな」
――そういうのを保管してあるところに他人を連れて行っちゃダメ!――
間違いなく国宝級のお宝がずらりと並んでいるのがヴァルスのいう倉庫なのだろう。歩いたりすることで風でも起きて破損させてしまったらとんでもない事になるではないか。
まさか、それを待ってる?前回は完全冤罪だったから今度は宝物を破損させて処刑台に送る気なのか。オデットはヴァルスの考えが解らない。
「そういえば…絨毯もあったな。ペルルーシャのカリフから貰ったやつがあるよ」
「置き場所が御座いませんので」
「床に敷けばいいじゃないか」
――歩くところが無くなるでしょうに!――
「ところでオデット嬢。今日の昼は…昼食はさっき断られたから良いとして、予定はあるか?」
「御座います。今日は昨日出来上がった品を納品に行き、新しい仕事を貰ってくるのです」
「危険だろ。夜ではないにしてもだ、こんな昼間に1人で出かけようと言うのか」
――だったら何時出かければいいのよ――
「ちょっと待ってくれるか?」
「なんでしょう?」
「屋敷に走って戻り、騎乗してくる。送って行くよ」
――激目立つからやめて――
ただでさえヴァルスは美丈夫なので目立つのだ。
その上、ディアナやケイトもナタリーもヴァルスの顔は知っている。勿論他の令嬢たちもだ。
馬車の走る車道を挟んだ歩道で瞬間横並びになっただけで妊娠するとか言われているのに一緒に行動していたら何を言われるか解かったものじゃない。
馬に相乗り?冗談じゃない。
「馬には乗れませんので遠慮します」
「大丈夫だ。落とさない自信がある」
「そういう問題ではありません。そろそろお体も温まったでしょう?お帰りはあちらで御座いますよ」
「そんなに長居をしてしまったか。約束を取りつけたかっただけなのに…すまない」
ヴァルスは大人しく花瓶を手に、約束は何1つ取り付けることが出来なかった。
さぁ、帰ろうかと玄関扉を開けると「うわぁ!!」美丈夫でも驚く事があったようだ。
何かと思い、ヴァルスが驚いた先を見てオデットは小さく溜息を吐いた。そこには本日2人目の招かれざる客、ジークフリッドが立っていたのだ。
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