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1回目の人生
第02話 きっかけはデヴュタント
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「何かの間違いではないの?ほら、ナタリーとか伯爵家でしょう?、一緒に行動したりするから間違ってるんじゃない?」
「間違ってはいないようだ。何度も使者に確かめたんだ」
――すん…そこは少しだけ否定をしてほしい――
自分で自分の事を下げるのはいいが、他者にすんなり下げられるとムッとしてしまう。父親なら娘可愛いフィルターを通して欲しいところだ。
「ガッティネ公爵家…身分差がありますわよ。断りましょう?」
オデットがそう言うのも当然のこと。
貴族と言っても厳しい身分社会。爵位が1つ違えば全く違う。
公爵家と子爵家となれば住む世界が全く違う生き物なのだ。
「それが是が非でもと言ってな」
「そうは言っても!公爵家なんて無理です。持参金だって用意できる額じゃないわ」
子爵家へ輿入れする時の持参金はおよそ200万。
これが伯爵家になると2000万、侯爵家になると2億になり…。
爵位が1つ上がるとゼロが1つ増えていくのだから公爵家に嫁ぐとなれば一生かかっても稼げない20億が持参金の額。
これは嫁いだ時に持参金で身の回りの物を揃えたりせねばならないので王族に次いでの地位になる公爵家なら20億でも2、3年耐えられるかどうか。
大抵はその後に実家の支援も必要になる。
マルネ子爵家には逆立ちしたって出せる筈がない。
「兎に角お断りしましょう。ジークにだって申し訳ないわ」
「そうだな。私もそれが一番良いと思うんだが」
父のダクシオンは歯切れが悪い。
何よりオデットには結婚の約束をしたわけではないけれど、平民のジークフリッドという一般的に見れば「彼氏と彼女」と呼ばれる仲の男性がいた。
咎められることはまだしていないし、幼馴染から少し進んだ程度で照れながら手を繋ぐのが精一杯。それでもオデットは内職の傍らジークフリッドの家で足の悪いジークフリッドの母を手伝って家事を手伝ったりしていた。
「それがだな。持参金も要らない。身1つで嫁いで欲しいというんだ」
「そんなの社交辞令よ!真に受けちゃダメだってば」
「そう思ったんだが後継ぎじゃなく次男だと言うんだ。次男のヴァルス君だと言っていてなぁ」
「ヴァルス様?」
はて?首を傾げる。
ガッティネ公爵家のヴァルスと言えば知らない令嬢はいないだろう。
オデットだって知っている。
それだけヴァルスは有名人だったのだ。
筆頭公爵家でもあるガッティネ公爵家と言えば現国王の実妹が嫁いだ家。
次男ヴァルスは王太子とは乳兄弟で、年齢も誕生日が6日違いだからかよく双子と間違われることがあった。
女性はそれぞれに個性のある色を持って生まれるのに王族の男子のみは金髪碧眼。
ヴァルスも金髪碧眼で、その上ガッティネ公爵が元騎士で体つきも大きく頑丈で高身長だからか、両親の良いとこどりをして生まれて来たとも言われていた。
男性なのにその横顔は愁いを帯びた美女にも見えると言わしめるほど。
美丈夫と呼ばれる男性は多いけれど、頭1ついや、とびぬけた眉目秀麗と言っていい。
そんな容姿だからなのかヴァルスには浮いた噂もなく、家督を継がない事から12歳で騎士団に入団し、空前絶後と言われた父親のガッティネ公爵よりも早い出世で22歳で近衛隊を纏めるまでになった。
親の七光りではなく実力も本物で質実剛健の文武両道。
独立をする際には既に国王から伯爵位を授かっているため家も興せる。
将来有望で女の影もない。隣国の王女や国内外の資産家の貴族から毎日のように釣書が届くもヴァルス本人は「まだ人として未熟」と断りを入れている。
夜会でもヴァルス目当ての令嬢は、はしたないと言われようが女性側からダンスを申し込もうとするが、ヴァルスの姿を夜会で見られるのは王太子夫妻が出席している時のみ。
護衛騎士として姿が見られるだけで私的な参加は一度もない。
最近ではワンチャンあるかも?と婚約を見送る令嬢も多く、ヴァルスが結婚をしてくれないと他の子息が婚約すら出来ないと言われていた。
そんな人物から縁談。
是が非でも?
ないない!!
オデットは否定した。
「間違ってはいないようだ。何度も使者に確かめたんだ」
――すん…そこは少しだけ否定をしてほしい――
自分で自分の事を下げるのはいいが、他者にすんなり下げられるとムッとしてしまう。父親なら娘可愛いフィルターを通して欲しいところだ。
「ガッティネ公爵家…身分差がありますわよ。断りましょう?」
オデットがそう言うのも当然のこと。
貴族と言っても厳しい身分社会。爵位が1つ違えば全く違う。
公爵家と子爵家となれば住む世界が全く違う生き物なのだ。
「それが是が非でもと言ってな」
「そうは言っても!公爵家なんて無理です。持参金だって用意できる額じゃないわ」
子爵家へ輿入れする時の持参金はおよそ200万。
これが伯爵家になると2000万、侯爵家になると2億になり…。
爵位が1つ上がるとゼロが1つ増えていくのだから公爵家に嫁ぐとなれば一生かかっても稼げない20億が持参金の額。
これは嫁いだ時に持参金で身の回りの物を揃えたりせねばならないので王族に次いでの地位になる公爵家なら20億でも2、3年耐えられるかどうか。
大抵はその後に実家の支援も必要になる。
マルネ子爵家には逆立ちしたって出せる筈がない。
「兎に角お断りしましょう。ジークにだって申し訳ないわ」
「そうだな。私もそれが一番良いと思うんだが」
父のダクシオンは歯切れが悪い。
何よりオデットには結婚の約束をしたわけではないけれど、平民のジークフリッドという一般的に見れば「彼氏と彼女」と呼ばれる仲の男性がいた。
咎められることはまだしていないし、幼馴染から少し進んだ程度で照れながら手を繋ぐのが精一杯。それでもオデットは内職の傍らジークフリッドの家で足の悪いジークフリッドの母を手伝って家事を手伝ったりしていた。
「それがだな。持参金も要らない。身1つで嫁いで欲しいというんだ」
「そんなの社交辞令よ!真に受けちゃダメだってば」
「そう思ったんだが後継ぎじゃなく次男だと言うんだ。次男のヴァルス君だと言っていてなぁ」
「ヴァルス様?」
はて?首を傾げる。
ガッティネ公爵家のヴァルスと言えば知らない令嬢はいないだろう。
オデットだって知っている。
それだけヴァルスは有名人だったのだ。
筆頭公爵家でもあるガッティネ公爵家と言えば現国王の実妹が嫁いだ家。
次男ヴァルスは王太子とは乳兄弟で、年齢も誕生日が6日違いだからかよく双子と間違われることがあった。
女性はそれぞれに個性のある色を持って生まれるのに王族の男子のみは金髪碧眼。
ヴァルスも金髪碧眼で、その上ガッティネ公爵が元騎士で体つきも大きく頑丈で高身長だからか、両親の良いとこどりをして生まれて来たとも言われていた。
男性なのにその横顔は愁いを帯びた美女にも見えると言わしめるほど。
美丈夫と呼ばれる男性は多いけれど、頭1ついや、とびぬけた眉目秀麗と言っていい。
そんな容姿だからなのかヴァルスには浮いた噂もなく、家督を継がない事から12歳で騎士団に入団し、空前絶後と言われた父親のガッティネ公爵よりも早い出世で22歳で近衛隊を纏めるまでになった。
親の七光りではなく実力も本物で質実剛健の文武両道。
独立をする際には既に国王から伯爵位を授かっているため家も興せる。
将来有望で女の影もない。隣国の王女や国内外の資産家の貴族から毎日のように釣書が届くもヴァルス本人は「まだ人として未熟」と断りを入れている。
夜会でもヴァルス目当ての令嬢は、はしたないと言われようが女性側からダンスを申し込もうとするが、ヴァルスの姿を夜会で見られるのは王太子夫妻が出席している時のみ。
護衛騎士として姿が見られるだけで私的な参加は一度もない。
最近ではワンチャンあるかも?と婚約を見送る令嬢も多く、ヴァルスが結婚をしてくれないと他の子息が婚約すら出来ないと言われていた。
そんな人物から縁談。
是が非でも?
ないない!!
オデットは否定した。
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