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第42話  取り扱い要注意

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ギャーギャーと城内が騒がしい事に気が付いたクリスティアンは「ロペ公爵家に急ぎで届けてくれ」と思いが詰まった手紙を従者に託し、騒ぎの元となっている部屋に向かった。

「おぉ、クリス」
「どうしたんです?父上」
「どうしたもこうしたもない。オルタの娘が王妃の部屋に盗みにはいりおった!」
「盗みっ?!」

部屋には入らず中の様子を伺っている国王の言葉に驚き、部屋に入ってみれば取り押さえられたイメルダは生まれたままの姿になって騎士に後ろ手をされて押さえられていた。

相当に抵抗したのか胸元も背中も足も腕も傷だらけ。
その周囲にはイメルダのドレスと王妃の所有する宝飾品が散らばっていた。

<< クリス!! >>


王妃とイメルダの声が重なり、同時に2人はクリスティアンを見た。

「お前は妃に何を教えているのです!堂々と昼間に!しかも使用人もいるのに盗みに入る妃なんて前代未聞よ!」
「違うの!これは私のモノでしょう?正妃になるんだもの。クリスからも言ってやってよ!」

裸で泣き喚くイメルダは失禁どころか脱糞までしていて酷い香りがする。
この場合は両者、いや全員に話を聞いたほうが良いと考えたクリスティアンだったが、臭いだけはなんともならない。

――あ、そう言えば――


いつぞやイメルダから「THEオトコって香りなの。ムスクって言うのよ」と教えられてムスクを取り寄せた。

しかし、体臭が酷いクリスティアンはかすかに香るムスクに「もっと強く臭いがすれば」と考えて原液を取りよせた。

原液はそのまま使うと肌も荒れると聞いた事があったクリスティアンは水を混ぜて使ってみた。すると・・・。

「臭いな」とは思ったけれど、女性だけでなく男性の従者まで手で口を覆い、俯いたり顔色を変えて「少し席を外します!」と何処かに駆けて行く。

「効き目が凄いんだな…男まで虜にする香りなのか」

そう思ったからグラシアナがエリアスたちと登城すると聞いた時には水を足す量は少なめにしたがバシャバシャと自分に振りかけた。

手首や股間、耳の後ろにそっと塗る程度ではなく整髪料を全身に振りかけるが如く、水を足した原液を振りまくったのだった。

それで周囲を「クリスティアンの香り」に包むことは出来た。

効能についてはを実感していた。



――勿体ないが原液は直ぐに取り寄せられる――

ポケットに忍ばせているムスクの原液。瓶に半分ほどしかないがこの臭い香りを誤魔化せるのはムスクしかない! とポケットから瓶を取り出しイメルダにバシャバシャと振りかけた。

「痛いっ!なにするのよ!沁みるっ!沁みて痛いっ!!」

イメルダの声に意気揚々と瓶を突き出したが即座に「しまった!」と感じた。
間違ってしまったのだ。

イメルダに振りかけたのはグラシアナに擦り込もうとしていた「酒池肉林」でムスクの瓶は反対側のポケットに入っていた事に気が付いた。

「酒池肉林」は違法な薬物でもあるので、使った事がバレる以前に所持しているだけでも捕縛される案件。王太子が違法薬物使用と所持。こんな醜聞は受け入れられない!


慌ててクリスティアンはムスクの瓶の栓を抜き、「酒池肉林」の痕跡を消そうとイメルダに振りかけた。

「ギャァァァーッ!!痛っ!痛いっ!さっきより沁みるッ!!」

屈強な兵士もイメルダを押さえることが出来ないくらいにイメルダは「痛い、沁みる」と暴れ回る。


同時に部屋の中には野生の獣臭とアンモニア臭が充満し、全員がをし始め、我慢の限界を迎えた王妃や侍女たちは既に吐いてしまった者もいるのか身嗜みを気にしている余裕も失い、ドレスやスカートをたくしあげて口元を覆い、背を屈めて廊下に走っていく。

男性である騎士ですら遅れて部屋から逃げ出してしまった。

「ゲェェッ・・・ウェェェッ・・・誰か・・・窓を開けっ…ゲェェ」


扉を閉じても強烈に香る異臭に次元の違う阿鼻叫喚の場となった廊下。
濃度も濃い部屋に入って窓を開けようとする猛者は現れない。

ほどなくして、部屋に1人取り残されていたイメルダの獣を彷彿させる奇声が聞こえてきた。

傷口から沁み込んだのはムスクの原液だけではなく高濃度の酒池肉林も体内に吸収され、空気に触れただけでイメルダは達し、跳ねた体が床に擦れれば達し・・・。

獣となったイメルダが獣臭のなかで1人酒池肉林状態になっていた雄叫びが響いていたのだった。
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