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第41話  愛の手紙

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「ねぇ。何時までこんな生活?つまらないわ」

イメルダは正妃になる事が決定をするとどんどんと自我を出し、我儘を言うようになった。

しかし王家には他国の王族や皇族のような権力も無ければ発言権すらない。買い物すら額に関わらず議会に承認を貰わないと自由に出来ない生活だなんて聞いていない。

「クリスっ!あんなに贈り物をしてくれたのになんでお金がないのよ」
「贈り物?違うよ。あれは報酬。言葉を間違わないでくれ」
「なっ!!まぁいいわ。じゃ観劇でもして気分転換したいわ。連れて行ってよ」
「観劇?無理だな」
「なんでよ!」
「チケットを買う金もない。何時も見てたBOX席は国が年間予約しているだけで、利用する時は議会に聞かないといけない決まりになってる」
「嘘でしょ…」

クリスティアンの言葉に嘘はない。
イメルダに贈り物を買っていた金は元々婚約者の為に使えと予算が組まれていたので明らかに女性への贈り物ではない場合は問題視されるが、女性用であり、尚且つグラシアナが文句を言わなかったので咎められなかっただけ。

議会もクリスティアンがグラシアナの為に使っていない事は把握していたけれど、グラシアナが文句を言わないために黙認していた。
被害者が被害を受けたと言っていないのに周囲が騒ぎ立てれば火のない所に煙は立たぬというのにわざわざ煙を起こす事になってしまう。

議長たちとしても、その時に何らかの口出しをしていれば今の面倒な事態にならなかったかと思うと後悔しかないが、その時はわざわざ手をかけてやる事もない。そう考えていただけ。


クリスティアンは段々とイメルダに対し不信感も抱き始めていた。
時に「正妃」にはこだわりがあるような発言もあるし、従者達には「クリスに選ばれたのは私」と発言する事もある。

相談をしていた時はイメルダしか頼りになる者はいなかった。
同性である男性の友人や従者に相談をする事も考えたが、王太子なのに?と馬鹿にされそうで相談出来なかった。

頼りにしていた時もあるし、今は性欲を存分に発散させてくれるイメルダ。
時に獣や野蛮人を思わせるような体位で楽しませてもくれるのでその点においては問題ないのだが、他の部分には問題行動が多すぎた。


「兎に角。王家に自由になる金はない。大人しく部屋で過ごしていればいいよ。執務もしなくていいんだし本を読むなり、刺繍をするなり。部屋で出来る事を探して過ごしてくれ」

クリスティアンにはイメルダに関わっている時間はない。

ずっと先触れを送り続けて反故にされてきた。エリアスは今、地下牢にいる。

「寂しいよね、僕が寄り添ってあげないと」

ロペ公爵家に先触れを送るため紙にペンを走らせる。

「議長が有能なのはあの場に僕を呼ばなかった事だ。あんな場にいたらシアになんと思われたか。でも今ならこの手紙を受け取って返事をくれるのもシアしかいない。待っててくれ。存分に僕の胸で泣かせて・・・その後は寝台で啼かせてあげるから」

今にして思えば負傷しているとは言っても寝たきりだった時に体を奪っていれば良かったと後悔が襲う。

透明な瓶の中に入った無色の液体を瓶を振って揺らす。
イメルダは知らないがこの液体はとても有能だ。

害がないか確かめるのに使ってみたが、効果は覿面だった。
粘膜経由だとあっという間にクリスティアンを欲しがって女官や侍女は体を開く。

他国から伝わって来た「酒池肉林」と名付けられた液体を思う存分にグラシアナに擦り込めば淫らなグラシアナが寝台で昼となく夜となくクリスティアンを誘惑する。

イメルダで鍛え上げた技と持久力、そして熟せる回数。

「グラシアナ。僕だけだと囁いてくれ」

熱くなる体の中心部の熱に突き動かされるようにクリスティアンは更にペンを走らせる。
出来上がった手紙を手に取り、愛を書き連ねた文字の並びにクリスティアンは頬を染めた。


★~★

その頃、イメルダはなんとか金を作る術がないかを模索していた。

国王と王妃の住まう宮に部屋の合ったグラシアナ。
金になるようなものは全て売ってしまってイメルダの部屋を飾る品になった。

でもその後はサッパリ。ドレスの数は増えないし宝飾品の数も増えない。

「そうだ!王妃様は大きなアメジストの5点セット持ってたわね」

思考は単純。
母親の侯爵夫人の持ち物の半分以上はもともと婿を取って侯爵家を継ぐイメルダが貰うはずだった。しかしクリスティアンの正妃になる事が決まると侯爵家は継げない。

母親の宝飾品は侯爵家を継ぐ弟の妻の物になった。

「つ~ま~り~。王妃様の持ち物のほとんどは結局私のモノって事よね」

イメルダは王妃の持ち物である宝飾品の数々を思い浮かべる。「うーん」唸るのはイメルダの趣味ではない物がそれなりの数で存在する事。

30代を前にしたイメルダと50代の半ばもとうに過ぎた王妃では年齢に見合った装飾になるためそのままイメルダが使うとなると似合わないし、趣味じゃない。

「いっか。要らないのは売って新しいのを買えばいいんだわ。王妃様の宝飾品だもの。売ればそれなりのお金になるし…なんなら私がリメイクして使った方がいいものもあるかも知れないわ」

コソコソと盗みに入るわけではない。
遅いか早いかの違いでどうせ自分の物になるのだし、売って新しいものを選んだりリメイクするにも時間はかかる。魔法のようにその場でポン!と新しいものが出てくる訳じゃない。

時間も必要なのだから、先に面倒なことは済ませよう。

イメルダはそう考えただけだった。


だけだったのに…。

国王と長い昼食を取っていて王妃が不在の部屋にやって来たイメルダはランドリーメイド清掃係のメイドの叫び声と侍女の「お止めください!」という制止。
そして見る間に駆け付けてきた騎士によって取り押さえられてしまった。
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