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そこは異空間だった
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クラリスは【高級バー】に向かう辻馬車で昨日のことを思い出す。
【レストカフェ☆ルラン】
カランカランと店内に入る扉が開く音がする。
予約をするようなタイプのレストランではない。凄く混みあう五十日や賞与の出た時なら順番待ちをする事もある中堅にもう少し?という感じの店である。
約束の時間には少し早いけれど来店したクラリスは店内を見回す。
珍しく恋人のニルスから【大事な話がある】と伝言があった。
定時で仕事を終えたクラリスは指定をされた店に向かったのである。
「先に来てたんだ」っとニルスを見つけるとその座席に向かって歩いていく。
「あれ?」
クラリスが変だと思ったのは、座席に近くなると植え込みで見えなかったがニルスの向かいに誰かがいる。
そしてその誰かは【シルビア】だった。
シルビアは同期で侍女見習いで王宮に上がった令嬢の一人。
【いい人見つけて寿退職するんだぁ】が口癖で、仕事を覚えない【お荷物】さんだった。
何度尻拭いをさせられたかもわからない。務める棟が変わって噂しか聞かなかったシルビア。
少しだけ、嫌な予感もした。
「クラリス。こっちだ」
やはり間違っていないようだが、クラリスの名を呼ぶとニルスが立ち上がり向かいに移動する。
先ほどまでニルスが座っていたところに座れと促されてしまう。
「突然すまないな」
「いいんだけど、どうしたの?」
「大事な話があるんだ」
「その大事な話って…シルビアが聞いてもいいの?」
それ以前に何故2人が隣同士に座って手を握っているのかも理解が追いつかない状況ではある。
しかし、クラリスが理解をするのに最も端的な言葉をニルスがくれた。
【当たり前だ。俺はシルビアと結婚したからな。だから別れてくれ】
クラリスは理解は出来たが、はて?と考える。
通常は【結婚するから、別れてくれ】ではないのかと。
「やだ、何考えてるの?考えるほどじゃないと思うけどぉ?」
クラリスは、そうよね?考えるほどじゃないよねと、つい考える。
通常は【考えなしじゃないと理解できない】のではないかと思うのだ。
そして通常モードに戻る。
百年の恋がさめる時って一瞬なんだなぁと1人大きく心で頷いた。
しかし一応聞いておくべきである。相手も聞いて欲しそうな顔をしている。
「あの、普通は結婚の前に私と別れるべきなんじゃないの?」
至極真っ当な意見であるとクラリスは自負している。
「そうなんだが、籍を入れたり新婚生活に忙しくて今になった」
忙しくなる前に、世間一般ではいの一番に片付ける問題だと思うのは私だけ?
そうクラリスが考えるのは当然である。
しかし、目の前でチュッチュと始める2人に何だか馬鹿らしくなってしまった。
「そっか。判った。いいよ、幸せにね」
「いいのか!?」
いや、そこで籍をいれたと言われて、今更ゴネても仕方ないでしょうに。
そうクラリスが考えるのは当然である。
「ごめんねぇ。仕事場で睨んだりしないでね?」
「大丈夫よ」
「ホントか?シルビアに嫉妬して嫌味な事をするなよ」
「勿論よ」
蔑んだような笑いを浮かべてクラリスを見ている2人。
どうだっていいとすっかりニルスへの気持ちが消えうせたクラリスは微笑む。
【だって、今!浮気が判って良かったと感謝してるもの】
少し声は大きめだったかも知れないけれど、知った事ではない。
「そ、そうか…判ってくれて嬉しいよ」
「ホントは悔しいんでしょ?自分よりアタシが選ばれた事に」
「シルビアやめろよ。こんな所で泣かれたら面倒だろう?」
「クラリスは泣いたりするような子じゃないわよ」
「それもそうだな。じゃ、支払いはしとくから」
そう言って伝票を手にしてニルスとシルビアが店を出て行く。
支払いも何も、クラリスには給仕が出していいのかとそこに先ずはと水を持って立っているのだが。
何も注文をしていないのに恩をきせられる覚えはない。
「あ、帰りますので。結構ですよ」
「そ、そうですよねー」
そして店を出る。時計を見るとまだ20時過ぎ。明日は休み。
「そっかぁ。そうだったんだぁ…」
と思いつつ歩いていくが一歩ごとにふつふつと沸き上がるこの思い。
【2年間を無駄にした!!】
ニルスという恋人がいる以上、騎士団の副長さんとか近衛隊の4剣士さんの一人とかぶっちゃけ口説かれた事はあるが断ってきた。こんな事なら乗り換えればと思ったが自分が浮気者と呼ばれるのはごめんである。
むしゃくしゃする気持ちを抱えて歩いてると、高級倶楽部や高級バーが並ぶ筋に来てしまっていた。
えぇぇい!飲んでやる!そう思って1軒の品の良い扉を開けた。
【ワァオ…異空間】
ボッタクリバーは一杯で途方もない金額を請求されると聞いた事があるが、ここは…。
体重で潰れた絨毯まで請求されたらどうしよう。まさか一呼吸幾らの世界?と思うほどいい香り。
明らかに場違いではあるが店内に入ってしまった。逃げられない!
仕方なく震える足でカウンターに座ると、渋いおじ様が【いらっしゃいませ。お1人様ですか】
あぁ!一人!ワンマンですよ!さっきお1人様になったわよ!
と、毒づきたい気持ちを抑えて【そうよ?先ずは軽めのものを頼めるかしら】と言ってしまった。
で、出されたカクテルがそりゃもう体内に浸透する!する!
自分の体はアルコールで出来ていて至らない部分にはめ込まれるかのようにすいすい飲んだ。
で‥‥記憶がないのよねぇ‥。
そろそろ繁華街‥‥行ってみるか。
馬車を下りて【高級バー】までクラリスは歩き出した。
【レストカフェ☆ルラン】
カランカランと店内に入る扉が開く音がする。
予約をするようなタイプのレストランではない。凄く混みあう五十日や賞与の出た時なら順番待ちをする事もある中堅にもう少し?という感じの店である。
約束の時間には少し早いけれど来店したクラリスは店内を見回す。
珍しく恋人のニルスから【大事な話がある】と伝言があった。
定時で仕事を終えたクラリスは指定をされた店に向かったのである。
「先に来てたんだ」っとニルスを見つけるとその座席に向かって歩いていく。
「あれ?」
クラリスが変だと思ったのは、座席に近くなると植え込みで見えなかったがニルスの向かいに誰かがいる。
そしてその誰かは【シルビア】だった。
シルビアは同期で侍女見習いで王宮に上がった令嬢の一人。
【いい人見つけて寿退職するんだぁ】が口癖で、仕事を覚えない【お荷物】さんだった。
何度尻拭いをさせられたかもわからない。務める棟が変わって噂しか聞かなかったシルビア。
少しだけ、嫌な予感もした。
「クラリス。こっちだ」
やはり間違っていないようだが、クラリスの名を呼ぶとニルスが立ち上がり向かいに移動する。
先ほどまでニルスが座っていたところに座れと促されてしまう。
「突然すまないな」
「いいんだけど、どうしたの?」
「大事な話があるんだ」
「その大事な話って…シルビアが聞いてもいいの?」
それ以前に何故2人が隣同士に座って手を握っているのかも理解が追いつかない状況ではある。
しかし、クラリスが理解をするのに最も端的な言葉をニルスがくれた。
【当たり前だ。俺はシルビアと結婚したからな。だから別れてくれ】
クラリスは理解は出来たが、はて?と考える。
通常は【結婚するから、別れてくれ】ではないのかと。
「やだ、何考えてるの?考えるほどじゃないと思うけどぉ?」
クラリスは、そうよね?考えるほどじゃないよねと、つい考える。
通常は【考えなしじゃないと理解できない】のではないかと思うのだ。
そして通常モードに戻る。
百年の恋がさめる時って一瞬なんだなぁと1人大きく心で頷いた。
しかし一応聞いておくべきである。相手も聞いて欲しそうな顔をしている。
「あの、普通は結婚の前に私と別れるべきなんじゃないの?」
至極真っ当な意見であるとクラリスは自負している。
「そうなんだが、籍を入れたり新婚生活に忙しくて今になった」
忙しくなる前に、世間一般ではいの一番に片付ける問題だと思うのは私だけ?
そうクラリスが考えるのは当然である。
しかし、目の前でチュッチュと始める2人に何だか馬鹿らしくなってしまった。
「そっか。判った。いいよ、幸せにね」
「いいのか!?」
いや、そこで籍をいれたと言われて、今更ゴネても仕方ないでしょうに。
そうクラリスが考えるのは当然である。
「ごめんねぇ。仕事場で睨んだりしないでね?」
「大丈夫よ」
「ホントか?シルビアに嫉妬して嫌味な事をするなよ」
「勿論よ」
蔑んだような笑いを浮かべてクラリスを見ている2人。
どうだっていいとすっかりニルスへの気持ちが消えうせたクラリスは微笑む。
【だって、今!浮気が判って良かったと感謝してるもの】
少し声は大きめだったかも知れないけれど、知った事ではない。
「そ、そうか…判ってくれて嬉しいよ」
「ホントは悔しいんでしょ?自分よりアタシが選ばれた事に」
「シルビアやめろよ。こんな所で泣かれたら面倒だろう?」
「クラリスは泣いたりするような子じゃないわよ」
「それもそうだな。じゃ、支払いはしとくから」
そう言って伝票を手にしてニルスとシルビアが店を出て行く。
支払いも何も、クラリスには給仕が出していいのかとそこに先ずはと水を持って立っているのだが。
何も注文をしていないのに恩をきせられる覚えはない。
「あ、帰りますので。結構ですよ」
「そ、そうですよねー」
そして店を出る。時計を見るとまだ20時過ぎ。明日は休み。
「そっかぁ。そうだったんだぁ…」
と思いつつ歩いていくが一歩ごとにふつふつと沸き上がるこの思い。
【2年間を無駄にした!!】
ニルスという恋人がいる以上、騎士団の副長さんとか近衛隊の4剣士さんの一人とかぶっちゃけ口説かれた事はあるが断ってきた。こんな事なら乗り換えればと思ったが自分が浮気者と呼ばれるのはごめんである。
むしゃくしゃする気持ちを抱えて歩いてると、高級倶楽部や高級バーが並ぶ筋に来てしまっていた。
えぇぇい!飲んでやる!そう思って1軒の品の良い扉を開けた。
【ワァオ…異空間】
ボッタクリバーは一杯で途方もない金額を請求されると聞いた事があるが、ここは…。
体重で潰れた絨毯まで請求されたらどうしよう。まさか一呼吸幾らの世界?と思うほどいい香り。
明らかに場違いではあるが店内に入ってしまった。逃げられない!
仕方なく震える足でカウンターに座ると、渋いおじ様が【いらっしゃいませ。お1人様ですか】
あぁ!一人!ワンマンですよ!さっきお1人様になったわよ!
と、毒づきたい気持ちを抑えて【そうよ?先ずは軽めのものを頼めるかしら】と言ってしまった。
で、出されたカクテルがそりゃもう体内に浸透する!する!
自分の体はアルコールで出来ていて至らない部分にはめ込まれるかのようにすいすい飲んだ。
で‥‥記憶がないのよねぇ‥。
そろそろ繁華街‥‥行ってみるか。
馬車を下りて【高級バー】までクラリスは歩き出した。
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