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父の心折れ、息子は爵位を継ぐ
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ルシェルが結婚し、間もなく2年。
あの融資の件から1年と8カ月が過ぎようとしていた。
「どういうつもりなんだ」
「どういうと言われても…仕方ないじゃない」
侯爵に詰め寄られているのは侯爵夫人である。
ついに侯爵は覚悟を決めた。
覚悟と言っても最低の覚悟である。
爵位をオレリアンに譲り、引退後は夫人と離縁。
爵位譲渡のゴタゴタに紛れて虎の子を持って侯爵は「逃げる」という最低な覚悟を決めたのだ。
侯爵に「離縁」を色濃く思わせ、その衝動に突き進ませる原因があった。
ルシェルは2年前、根抵当権を打った際に侯爵に言った。
【限度額まで余裕があるから借り入れするのではなく、災害に備えろ】と。
そして、先日残っている中で一番大きな領地が洪水に襲われてしまい収穫間際だった農作物はほぼ全滅に近い事が知らされた。今年の収入の6割を失う事は間違いない。
失うのは収入だけではない。被害にあった領民への生活保障や来年耕作できるように田畑を復興する前に、流れ込んだ土砂や木材などを撤去し処分せねばならない。
必要なのは【金】だ。
侯爵は今回ばかりは致し方ないとオランド伯爵家からこの2年間で最大の融資を限度額の中から受ける事を決めた。丁度、2年目が近い。根抵当権の更新もしなければならなかった。
更新期間を設定する時、オランド伯爵家から「2年にするか5年にするか」と問われた。侯爵もそれなりに考えて更新期間を2年とした。
5年と言う長い設定にしていると、夫人の散財を抑えきれない場合、今度こそ全てを失う。2年と言う区切りで金額を見せる事によって抑制しようと考えたのだ。
侯爵は既に麻痺していたのかも知れない。
無尽蔵に金があると使いまくる人間が見る数字は「あと幾ら使えるのか」であり「毎月の返済額」や「利息」は元より「借り入れている額」の数字は見ようとしない。
金額を見せる事で「使い過ぎた」とは思わず「まだこんなに金がある」と限度額までの金額をまるで預貯金のように考えてしまうのだ。見せる事で抑制は出来ず、見せた事で拍車がかかる。
見せるのであれば「現状借り入れた額」だけにせねばならなかったのである。
オランド伯爵家にやってきたレスピナ侯爵は早速更新の手続きに入った。
そこて現実を見て、心が折れたのだ。
更新そのものは日付を書き換えるだけなので直ぐに終わった。
レスピナ侯爵は洪水での被害補償や復興に当たって必要な金額の融資額を提示した。
オランド伯爵家からは希望通りの金額は可能との回答だったが、侯爵の予定ではまだ限度額に対し4割のつもりだった。
だが、融資をしてもらうために差し出された書面にあった金額は限度額に対し7割になっていた。
――評価額が下がったのか?――
更新の書面と、前回の書面を比べるが評価額に変わりはなかった。
原因は夫人の散財だったのだ。
夫人の散財は目も当てられないが、初年度はルシェルが各領地を回り直接作付けの指導や収穫後、遊ばせるのではなく観光客を呼び込むためコスモスや遅咲きのヒマワリ、ラベンダーなどを植えさせ見物に来た観光客の収入もあった。
レスピナ侯爵領に行けば色んな花が広大に咲き誇ると昨年の夜会では注目の的だったくらいだ。王都を中心に東西南北に点々と領地をもつ強み。ルシェルが引っ張り出したのである。
そのおかげで純利益は過去最高を叩きだし、1年で68億の買い物に7億の種や肥料、整備費を借り入れていたが負担なく利息とは別に元金を40億を返済した。
洪水に一番大きな領がみまわれてしまったが、借り入れをせず今年は10億を入れて農作物の作付用や街道の簡単な補修費を出せた。天災で流れてしまったとは言え7つの内6つは被害が無いのは不幸中の幸いだった。
筈だったのだ。
「どういう事なんだ?!」
「どういうも何も、こちらは約束に基づいて限度額の中で金を貸しているだけです」
そこにあった借入の書面は殆どが侯爵夫人の署名が入っていて、月に5、6回借り入れをされていたのだ。屋敷に回って来る請求分とは別の買い物に使った金だった。
侯爵夫人の買い物癖は、完全に抑制するのは不可能だった。
何より侯爵夫人が侯爵家の実質の当主なのだ。
経営を全面的に任されて家印を預かり自身の署名も当主と同等とはいえ、所詮は代理人。入り婿の惨めな立場。
レスピナ侯爵は憤慨した。頭が沸騰するほどに憤慨したが領民の為に借りるものは借りねばならない。
手続きを済ませ、帰りの馬車では壁にしている板に穴があきそうなほど拳を叩きつけた。
「どういうつもりなんだ」
「どういうと言われても…仕方ないじゃない」
借り入れの書面の複製をテーブルに叩きつけ、妻である侯爵夫人に詰め寄った侯爵だったが侯爵夫人は何処吹く風とメイドにマニュキュアを塗らせ、塗り終わった指に息を吹きかけた。
「そんな事より、今度またお友達と湖に行くのよ。今度は人数が多くて。馬車の手配をお願いね」
「なんだって?!」
「聞こえなかった?ヴァカンスよ。王都は寒くなるでしょう?湖のある地域は年中春のような気候だし、船だってもう一隻新造したのよ。だから人数が多くなるの。招待をするのに費用を負担させるなんて出来ないわ」
侯爵夫人はさも当たり前のように、招待した50名近くの交通費や宿泊費、移動や滞在にかかる費用をこちらが負担すると言い、しかも船をまた発注。旅行の準備と言うからにはもう船は出来上がっていると言う事である。
「判った。好きにすると良い」
肩を落として侯爵は執務室に籠った。
深く溜息を吐いて、暫く椅子に座って天井を眺めた後、執務机の引き出しを開けた。
そこには長年何時渡そうかと何度も考え、諦め、また考えた書類が一枚入っていた。
【離縁書】である。
そして、戸棚の奥に隠してあった封筒を取り出した。
封筒の中には先代から妻が爵位を継ぐ際に、【入り婿で苦労をかけるから】と譲渡された侯爵夫人も知らないはずの領の権利書が入っていた。
先代公爵の妻、つまりオレリアンの祖母が権利を持っていた領の権利書である。
娘にも内緒で婿に手渡してくれたこの土地を、オレリアンとルシェルに手渡そうとレスピナ侯爵は考えたのだ。
翌日レスピナ侯爵はオレリアンが出仕している王宮の初級文官に与えられている部署に行った。
「どうしたんだ。父上」
珍しく出仕していたオレリアンは父を見て驚いた。
「元気そうで良かった。実は…」
レスピナ侯爵はオレリアンに母である侯爵夫人とは離縁をすると告げた。
離縁に際し、爵位の継承を行う書類もこの後で貴族院に届け出ると言った。
「今日付けでお前は爵位を授かり、私とは書面での縁は切れる。これはお前の祖母から貰ったアレも知らない領の権利書だ。お前とルシェルさんに譲渡の手続きもしておく。元気で暮らせよ」
蛙の子は蛙。
オレリアンの心は高鳴った。
実の父が母と離縁をすれば父の実家はもう廃家となった子爵家。
平民になるしかないという現実よりも、領を譲渡されるという事は自由になる金が出来るという事だと小躍りしたのだ。
「父上っ!元気でな!」
「あぁ…」
レスピナ侯爵にはもう乾いた笑いしか出なかった。
「どうしてですか?!何故!?」
爵位譲渡の手続きを終え、離縁届けも提出したレスピナ侯爵はもう声も出ない。
「抵当権が打たれていますので、譲渡をされる際は抵当権を外してからにしてください」
「そんな‥‥バカな…もう一度調べてくださいっ」
「あのね、何度調べても同じです。こちらには国保管の原本がありますが、それがこれなんです」
指し示された書面には持ってきた領には数年前に抵当が打たれている事が記載されていた。
あと3年で支払い開始の期日を迎える期限付きの抵当である。
根抵当権とは違い、金融商会によって打たれた抵当。評価額目一杯の借り入れは借り入れてから返済があったかどうかなど考えるまでもない。侯爵夫人に返済という考えは一切ないからだ。
爵位を譲渡し「前」となったレスピナ侯爵もといルースはずっと隠していた虎の子の権利書なのだ。返済をした覚えは当然ない。期日が来れば借りた額の代りにこの領は金融商会のモノになり、膨れ上がった金利の請求が始まる。
――もう、どうでもいいか――
ルースは思った。
――ルシェルさんに名義を書き換えなくて良かった――
ルースは薄々感じてはいたのだ。
ルシェルは何時までもレスピナ侯爵家にはいないだろうと。
――彼女なら見切りをつける時を誤らずに逃げ出すだろう――
希望的観測だったが、ルースは歩き出した。
平民となった身分でこの先は必ずしも安泰とは言えないが、重荷が無くなった体は軽かった。
そんなルースを建物の影から見ている男が1人いる事にも気が付かず、ルースは街の雑踏の中に消えていった。
あの融資の件から1年と8カ月が過ぎようとしていた。
「どういうつもりなんだ」
「どういうと言われても…仕方ないじゃない」
侯爵に詰め寄られているのは侯爵夫人である。
ついに侯爵は覚悟を決めた。
覚悟と言っても最低の覚悟である。
爵位をオレリアンに譲り、引退後は夫人と離縁。
爵位譲渡のゴタゴタに紛れて虎の子を持って侯爵は「逃げる」という最低な覚悟を決めたのだ。
侯爵に「離縁」を色濃く思わせ、その衝動に突き進ませる原因があった。
ルシェルは2年前、根抵当権を打った際に侯爵に言った。
【限度額まで余裕があるから借り入れするのではなく、災害に備えろ】と。
そして、先日残っている中で一番大きな領地が洪水に襲われてしまい収穫間際だった農作物はほぼ全滅に近い事が知らされた。今年の収入の6割を失う事は間違いない。
失うのは収入だけではない。被害にあった領民への生活保障や来年耕作できるように田畑を復興する前に、流れ込んだ土砂や木材などを撤去し処分せねばならない。
必要なのは【金】だ。
侯爵は今回ばかりは致し方ないとオランド伯爵家からこの2年間で最大の融資を限度額の中から受ける事を決めた。丁度、2年目が近い。根抵当権の更新もしなければならなかった。
更新期間を設定する時、オランド伯爵家から「2年にするか5年にするか」と問われた。侯爵もそれなりに考えて更新期間を2年とした。
5年と言う長い設定にしていると、夫人の散財を抑えきれない場合、今度こそ全てを失う。2年と言う区切りで金額を見せる事によって抑制しようと考えたのだ。
侯爵は既に麻痺していたのかも知れない。
無尽蔵に金があると使いまくる人間が見る数字は「あと幾ら使えるのか」であり「毎月の返済額」や「利息」は元より「借り入れている額」の数字は見ようとしない。
金額を見せる事で「使い過ぎた」とは思わず「まだこんなに金がある」と限度額までの金額をまるで預貯金のように考えてしまうのだ。見せる事で抑制は出来ず、見せた事で拍車がかかる。
見せるのであれば「現状借り入れた額」だけにせねばならなかったのである。
オランド伯爵家にやってきたレスピナ侯爵は早速更新の手続きに入った。
そこて現実を見て、心が折れたのだ。
更新そのものは日付を書き換えるだけなので直ぐに終わった。
レスピナ侯爵は洪水での被害補償や復興に当たって必要な金額の融資額を提示した。
オランド伯爵家からは希望通りの金額は可能との回答だったが、侯爵の予定ではまだ限度額に対し4割のつもりだった。
だが、融資をしてもらうために差し出された書面にあった金額は限度額に対し7割になっていた。
――評価額が下がったのか?――
更新の書面と、前回の書面を比べるが評価額に変わりはなかった。
原因は夫人の散財だったのだ。
夫人の散財は目も当てられないが、初年度はルシェルが各領地を回り直接作付けの指導や収穫後、遊ばせるのではなく観光客を呼び込むためコスモスや遅咲きのヒマワリ、ラベンダーなどを植えさせ見物に来た観光客の収入もあった。
レスピナ侯爵領に行けば色んな花が広大に咲き誇ると昨年の夜会では注目の的だったくらいだ。王都を中心に東西南北に点々と領地をもつ強み。ルシェルが引っ張り出したのである。
そのおかげで純利益は過去最高を叩きだし、1年で68億の買い物に7億の種や肥料、整備費を借り入れていたが負担なく利息とは別に元金を40億を返済した。
洪水に一番大きな領がみまわれてしまったが、借り入れをせず今年は10億を入れて農作物の作付用や街道の簡単な補修費を出せた。天災で流れてしまったとは言え7つの内6つは被害が無いのは不幸中の幸いだった。
筈だったのだ。
「どういう事なんだ?!」
「どういうも何も、こちらは約束に基づいて限度額の中で金を貸しているだけです」
そこにあった借入の書面は殆どが侯爵夫人の署名が入っていて、月に5、6回借り入れをされていたのだ。屋敷に回って来る請求分とは別の買い物に使った金だった。
侯爵夫人の買い物癖は、完全に抑制するのは不可能だった。
何より侯爵夫人が侯爵家の実質の当主なのだ。
経営を全面的に任されて家印を預かり自身の署名も当主と同等とはいえ、所詮は代理人。入り婿の惨めな立場。
レスピナ侯爵は憤慨した。頭が沸騰するほどに憤慨したが領民の為に借りるものは借りねばならない。
手続きを済ませ、帰りの馬車では壁にしている板に穴があきそうなほど拳を叩きつけた。
「どういうつもりなんだ」
「どういうと言われても…仕方ないじゃない」
借り入れの書面の複製をテーブルに叩きつけ、妻である侯爵夫人に詰め寄った侯爵だったが侯爵夫人は何処吹く風とメイドにマニュキュアを塗らせ、塗り終わった指に息を吹きかけた。
「そんな事より、今度またお友達と湖に行くのよ。今度は人数が多くて。馬車の手配をお願いね」
「なんだって?!」
「聞こえなかった?ヴァカンスよ。王都は寒くなるでしょう?湖のある地域は年中春のような気候だし、船だってもう一隻新造したのよ。だから人数が多くなるの。招待をするのに費用を負担させるなんて出来ないわ」
侯爵夫人はさも当たり前のように、招待した50名近くの交通費や宿泊費、移動や滞在にかかる費用をこちらが負担すると言い、しかも船をまた発注。旅行の準備と言うからにはもう船は出来上がっていると言う事である。
「判った。好きにすると良い」
肩を落として侯爵は執務室に籠った。
深く溜息を吐いて、暫く椅子に座って天井を眺めた後、執務机の引き出しを開けた。
そこには長年何時渡そうかと何度も考え、諦め、また考えた書類が一枚入っていた。
【離縁書】である。
そして、戸棚の奥に隠してあった封筒を取り出した。
封筒の中には先代から妻が爵位を継ぐ際に、【入り婿で苦労をかけるから】と譲渡された侯爵夫人も知らないはずの領の権利書が入っていた。
先代公爵の妻、つまりオレリアンの祖母が権利を持っていた領の権利書である。
娘にも内緒で婿に手渡してくれたこの土地を、オレリアンとルシェルに手渡そうとレスピナ侯爵は考えたのだ。
翌日レスピナ侯爵はオレリアンが出仕している王宮の初級文官に与えられている部署に行った。
「どうしたんだ。父上」
珍しく出仕していたオレリアンは父を見て驚いた。
「元気そうで良かった。実は…」
レスピナ侯爵はオレリアンに母である侯爵夫人とは離縁をすると告げた。
離縁に際し、爵位の継承を行う書類もこの後で貴族院に届け出ると言った。
「今日付けでお前は爵位を授かり、私とは書面での縁は切れる。これはお前の祖母から貰ったアレも知らない領の権利書だ。お前とルシェルさんに譲渡の手続きもしておく。元気で暮らせよ」
蛙の子は蛙。
オレリアンの心は高鳴った。
実の父が母と離縁をすれば父の実家はもう廃家となった子爵家。
平民になるしかないという現実よりも、領を譲渡されるという事は自由になる金が出来るという事だと小躍りしたのだ。
「父上っ!元気でな!」
「あぁ…」
レスピナ侯爵にはもう乾いた笑いしか出なかった。
「どうしてですか?!何故!?」
爵位譲渡の手続きを終え、離縁届けも提出したレスピナ侯爵はもう声も出ない。
「抵当権が打たれていますので、譲渡をされる際は抵当権を外してからにしてください」
「そんな‥‥バカな…もう一度調べてくださいっ」
「あのね、何度調べても同じです。こちらには国保管の原本がありますが、それがこれなんです」
指し示された書面には持ってきた領には数年前に抵当が打たれている事が記載されていた。
あと3年で支払い開始の期日を迎える期限付きの抵当である。
根抵当権とは違い、金融商会によって打たれた抵当。評価額目一杯の借り入れは借り入れてから返済があったかどうかなど考えるまでもない。侯爵夫人に返済という考えは一切ないからだ。
爵位を譲渡し「前」となったレスピナ侯爵もといルースはずっと隠していた虎の子の権利書なのだ。返済をした覚えは当然ない。期日が来れば借りた額の代りにこの領は金融商会のモノになり、膨れ上がった金利の請求が始まる。
――もう、どうでもいいか――
ルースは思った。
――ルシェルさんに名義を書き換えなくて良かった――
ルースは薄々感じてはいたのだ。
ルシェルは何時までもレスピナ侯爵家にはいないだろうと。
――彼女なら見切りをつける時を誤らずに逃げ出すだろう――
希望的観測だったが、ルースは歩き出した。
平民となった身分でこの先は必ずしも安泰とは言えないが、重荷が無くなった体は軽かった。
そんなルースを建物の影から見ている男が1人いる事にも気が付かず、ルースは街の雑踏の中に消えていった。
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