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第24話 領地からの荷物
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鉱山のある領地への視察を終え、2カ月目。
アイリーンの元に、坑夫の案内人が「直ぐに用意できる」と言った「クズ石」が1から6、AからJと書かれた16袋に分けられてラビットハウスに届いた。
同時に20人ほどの領民に描かせたデザイン画も届いた。
紙はとても高価で貴重。しかしアイリーンはオルコット侯爵の言葉通り「辞めたら失敗」だと紙を買って渡した。彼らも紙がどれほどに高級品かを知っている。最初から紙にいきなり書くことはせず、地面や木の皮を鞣したものに描いて考えが纏まれば紙に描く。
アイリーンはその中の1枚に目を奪われた。
15歳の姉、12歳の妹、そして姉の友人の15歳、3人の少女が連名で描いたデザイン。
アイリーンは「うん」と頷いてそのデザインを束になった真ん中より少し上に差し込んだ。
最初から目を引くようなものを見てしまうと4、5枚目のデザイン画まで見てあとは見るのを止めてしまう。かと言って最後のお楽しみになれば半分ほどまで見て残りも同じだろうと見るのを止めてしまう。
だから、真ん中より少し上に挟む。
そうすれば、似たようなデザイン画が続いて見るのを止めようとした時に、少女たちのデザイン画が出て来る。すると、その後にも「お宝」があるのでは?と最後まで見てくれる。
一通り目を通して貰えれば、運が良ければもう2、3枚。補欠として検討してくれる可能性がある。
デザイン画の裏に記載された名前の筆跡は同じ。領地も識字率が低く自分の名前すら書けない者が多い事を示唆している。
――本当にやる事がいっぱいだわ――
次にアイリーンは「クズ石」と呼ばれた石たちが入った袋を開けた。
荷を運ぶだけなら10日も掛からない日程だが、日数を要した理由は袋を開けてみると「かなり急いだ」と直ぐに判った。
ただ、荷物を送ったのではなく、元々袋にはごちゃ混ぜにしていたのだろう。
一度全てを袋から出し、1から6と書かれた袋はサファイアが入っており、1が透明度も高く傷も僅か。番号が大きくなるにしたがってランクが下がっていく分け方をされていた。
1袋の中にも、今度は色味の強さごとに包まれている。
アルファベットの袋はルビー。考え方は同じでAは現状の中で一番程度がよく、次になる従ってランクが落ちていく。
「たったあれだけの説明で理解してくれたのね」
「そんなに簡単な説明だったんですか?」
ジェシーは大きく分けた袋の中に細かく分けた小袋を1つ手に取って中の宝石を透かせる。
「えぇ。選別は慣れているだろうしクドクド説明をしなくてもいいだろうと。判ってるよ!って事を説明されることほど失礼で無駄だと感じる時間はないもの。それでもモノが小さいからかなり手間取るだろうとは思ったんだけど…これだけの量を1カ月半ほどで仕分けてくれたなんて。有難いわ」
それぞれの袋から小分けされた袋を取り出し、アイリーンはサンプルとして商会には領地に向かう前に話はしており、話は大筋で纏まっていて、見切り発車で注文も実際に受けている。
ただ、アイリーンは宝飾品に関しては素人。「細かく分けてくれているなぁ」と思っても今は手探り状況なので、領地の方でも「やっつけ仕事」には違いない。急がせてしまえばそれだけ仕事が雑になる。
これから見てもらう商会は「人々に売るプロ」であり領地にいるのは「採掘するプロ」でその価値観は似て非なるもの。間違いなく「ダメだし」は食らってしまうだろう。
話を詰めた時はサンプル数が少なく、受けた注文も「今回限りとなるかも知れない」とは言われていたが、アイリーンは「絶対に流行る」という根拠のない自信があった。
ただ、少ないサンプルを見てもらった時に、少ない中でも「色目が違う」と指摘を受けた。「赤」「青」という系統では同じ括りでも、空の青と海の青は違うし、季節によって濃紺から水色までかなりの段階で濃淡がつく。
サンプルの石も同じで1から10段階とすれば、並べてみると 1、3、4、7、9、10と言った感じ。隣り合う数字の色はかなり似ているが、3段階目と9段階目では「違う」とハッキリ判る。
クズ石なんだから。安かろう悪かろう。
それでは継続した事業は展開できない。
供給を上回る受注を受け「待たせるプレミア」を持たせてこそ商売。その為には些細な事でも気を抜く事は出来なかった。
アイリーンの元に、坑夫の案内人が「直ぐに用意できる」と言った「クズ石」が1から6、AからJと書かれた16袋に分けられてラビットハウスに届いた。
同時に20人ほどの領民に描かせたデザイン画も届いた。
紙はとても高価で貴重。しかしアイリーンはオルコット侯爵の言葉通り「辞めたら失敗」だと紙を買って渡した。彼らも紙がどれほどに高級品かを知っている。最初から紙にいきなり書くことはせず、地面や木の皮を鞣したものに描いて考えが纏まれば紙に描く。
アイリーンはその中の1枚に目を奪われた。
15歳の姉、12歳の妹、そして姉の友人の15歳、3人の少女が連名で描いたデザイン。
アイリーンは「うん」と頷いてそのデザインを束になった真ん中より少し上に差し込んだ。
最初から目を引くようなものを見てしまうと4、5枚目のデザイン画まで見てあとは見るのを止めてしまう。かと言って最後のお楽しみになれば半分ほどまで見て残りも同じだろうと見るのを止めてしまう。
だから、真ん中より少し上に挟む。
そうすれば、似たようなデザイン画が続いて見るのを止めようとした時に、少女たちのデザイン画が出て来る。すると、その後にも「お宝」があるのでは?と最後まで見てくれる。
一通り目を通して貰えれば、運が良ければもう2、3枚。補欠として検討してくれる可能性がある。
デザイン画の裏に記載された名前の筆跡は同じ。領地も識字率が低く自分の名前すら書けない者が多い事を示唆している。
――本当にやる事がいっぱいだわ――
次にアイリーンは「クズ石」と呼ばれた石たちが入った袋を開けた。
荷を運ぶだけなら10日も掛からない日程だが、日数を要した理由は袋を開けてみると「かなり急いだ」と直ぐに判った。
ただ、荷物を送ったのではなく、元々袋にはごちゃ混ぜにしていたのだろう。
一度全てを袋から出し、1から6と書かれた袋はサファイアが入っており、1が透明度も高く傷も僅か。番号が大きくなるにしたがってランクが下がっていく分け方をされていた。
1袋の中にも、今度は色味の強さごとに包まれている。
アルファベットの袋はルビー。考え方は同じでAは現状の中で一番程度がよく、次になる従ってランクが落ちていく。
「たったあれだけの説明で理解してくれたのね」
「そんなに簡単な説明だったんですか?」
ジェシーは大きく分けた袋の中に細かく分けた小袋を1つ手に取って中の宝石を透かせる。
「えぇ。選別は慣れているだろうしクドクド説明をしなくてもいいだろうと。判ってるよ!って事を説明されることほど失礼で無駄だと感じる時間はないもの。それでもモノが小さいからかなり手間取るだろうとは思ったんだけど…これだけの量を1カ月半ほどで仕分けてくれたなんて。有難いわ」
それぞれの袋から小分けされた袋を取り出し、アイリーンはサンプルとして商会には領地に向かう前に話はしており、話は大筋で纏まっていて、見切り発車で注文も実際に受けている。
ただ、アイリーンは宝飾品に関しては素人。「細かく分けてくれているなぁ」と思っても今は手探り状況なので、領地の方でも「やっつけ仕事」には違いない。急がせてしまえばそれだけ仕事が雑になる。
これから見てもらう商会は「人々に売るプロ」であり領地にいるのは「採掘するプロ」でその価値観は似て非なるもの。間違いなく「ダメだし」は食らってしまうだろう。
話を詰めた時はサンプル数が少なく、受けた注文も「今回限りとなるかも知れない」とは言われていたが、アイリーンは「絶対に流行る」という根拠のない自信があった。
ただ、少ないサンプルを見てもらった時に、少ない中でも「色目が違う」と指摘を受けた。「赤」「青」という系統では同じ括りでも、空の青と海の青は違うし、季節によって濃紺から水色までかなりの段階で濃淡がつく。
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クズ石なんだから。安かろう悪かろう。
それでは継続した事業は展開できない。
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