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第5話♡ 捜索戦隊サガスンジャー
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翌朝、爽快な目覚めを迎えた私。
深夜と言えどラウルのマッサージは私のツボを余すところなく刺激し、肩も軽いです。お兄様に膝カックンをされて前のめりになったかの日が嘘のように足も軽いのです。
「若奥様、今日はお顔の色が。頬もほんのりピンクですね」
「そうかしら…」
「えぇ、ですが・・・後で湿布を致しましょう」
何かと思えば池に落ちた時、腕も何処かにぶつけてしまっていたようで少し赤くなっております。これは数日後に青くなり、段々と黄色・・・。黄色?
私は湿布をされる前の腕をジィィ~っと眺めます。
――赤、青、黄色、そしてピンク。そして今日の部屋着は緑色――
これは間違いございません。神は「池を捜索せよ」と仰っているのです。
私の体を使ってトンツートンのモールス信号ならぬ、暗号を送って来るなんて。
ラウルは昨夜、うたた寝をするほど気が緩んでいるので今が「チャーンス♡」だと赤い弐号・・・いえ、好機だと神が教えてくださっているのです。
「湿布は不要ですわ」
「で、ですか治りが遅くなってしまいます」
「今日は・・・そうね。汚れてしまってもいい服装でお願いできるかしら」
「汚れても良い?何をされるのです」
「池の中で探したいものがあるの」
「池っ?!何かを落としたのでしたら使用人に探させます。若奥様が池になんて!若旦那様が壊れます!」
――ん?怒るではなく壊れる?――
そう言われてみるとラウルは使用人さんに色々と申しつけているようで、私はする事が無い時があるのです。1年も経てばある程度公爵家のことも判りますが、責任を取っての結婚だとしても過保護すぎるのです。
踏み台を使って本を取るのは仕方ないにしても、実家でよく行っていた刺繍も「針は危険」とさせてもらえませんし、では編み棒で何かを編もうとすれば「先が尖っている」と禁止。
唯一許されたのが筒状のニッチングをつかったリリヤン。
お子様が初めての手芸で使用するものだけなのです。
実家の侯爵家は危険は危険でも取り敢えずはさせて貰えたのですが、爵位が1つ上がるとこうも違うのでしょうか。
「大丈夫。朝食の時にラウルに許可を貰うわ」
何としてもファッションマッサージ師との不貞の証拠を掴まねばなりません。
私が池に落ちたのも何かの思し召し。この機を逃してはならないのです。
5色揃った色が私に訴えます。
私がリーダーとなり、捜索戦隊サガスンジャーを組織せねばなりません。
失せ物を見つけるのは、こう見えて私、得意なのです。
お兄様の寝台の下からはマッチョな男性が生まれたままのあられもない絵姿。
お父様の執務室の引き出しにはお母様に贈ろうとしたのだけれど、詐欺商品だと知り贈れなかったココ〇岡の宝石。それなりのお値段なので捨てるに捨てられなかったのでしょう。未練を感じました。
お母様の化粧台の二重底には若かりし頃、止めてしまうと不幸が訪れるというチェーンレター。官製はがきの切手が今は68プルなのに15プルだったのには時代の流れを感じましたわ。
「ラウル。おはようございます」
「おはよう。具合はどうだい?」
「はい、絶好調で御座います」
「それはよかった。今日は焼きたてのベーグルを用意したよ」
――私、ベーグルより食パンがいいな――
ついでにスクランブルエッグより目玉焼きの黄身を固めに焼いたのがいいんだけどな。いいえ。贅沢は言ってはいけません。食事ができるのは領民の皆様のおかげですもの。
でも食パンなら縁のパンの耳をカリっと油で揚げるとまた違った美味しさもあるのですが、貴族令嬢の御茶請けとしては不適切と言われ、なかなか食べる機会には恵まれません。公爵夫人ともなれば・・・もうお目にかかれないかも。
席についた私は、ラウルと共に朝食を取るのですが今日もラウルは私を凝視。
そんなに注視して頂かなくてもラウルのプレートにある食材は取りませんのに。
私がフォークで食材を口に入れると、ラウルはなにも口に入れていないのにエアー咀嚼。
きっと30回も噛めばほぼ飲み込めますので「100回嚙みなさい」と言われたのを事前にカウントしているのでしょう。
それはそうと本題を切り出さねばなりません。
「ラウル。今日なのですがお願いがあるのです」
「お願い?何か欲しいものでも?」
――不貞の証拠です――
危ない。危ない。手の内を曝け出すところでしたわ。
「昨日、池の中に落とし物を致しまして」
ガタン!! (び、びっくりした・・・どうしたの?!)
突然立ち上がったラウルにテーブルが動いてグラスのミルクが零れそう。
どうしたのかしら。
「何を落としたんだ?私が探してくるから形や色を教えてくれ」
――そんなのが事前に分かれば苦労しません――
「何を・・・と言われましても、探してみなければわからないとしか‥」
「そうか。判った。私が必ず見つけよう。直ぐに捜索隊を組織する」
「お、お待ちください!私が探したいのです!」
「大丈夫だ。サロンから池も見える。逐一発見したものを持って来るから見てくれればいい」
「それではダメなのです!」
「エディットは心配性だな。大丈夫。池の水を全部抜いてでも探してあげるよ」
おや?まさか‥既に回収済み?
ラウルならあり得ます。昨夜私に気付かれたと思い早朝に証拠を既に回収しているのかも知れません。
そうでなければ池の水まで抜いてしまったら隠そうにも隠せませんもの。
私の脳内にエマージェンシーランプが点滅致します。
――池からは回収済み。ではどこに?――
ラウルの目を真っ直ぐに見返すと、フッと顔を逸らせるラウル。
間違いございません。池からは引き上げてどこか別の場所に隠したのです。
時刻からすれば屋敷の外には持ち出せませんから、敷地内。
ラウルの手は汚れていないので、土の中に埋めたのではなさそうです。
だとすれば屋敷の中。
「ラウル」
「どうしたんだ?形を思い出したか?」
「いいえ。そう言えば落としてなかった事に気が付きました」
「そうか?それは良かった。実はしばらく休みなんだ」
「まぁ…殿下から暇を頂きましたの?」
「クビにはなってないかな。アハハ」
油断をさせておいて、私は屋敷の中を探す事にしたのですが…。
さて、何処から探そうかとしている私の目に速足で1つの部屋に向かうラウル。明らかに通常時と様子が異なりました。まさか1つ目の部屋で大当たりを引くとは思いませんでした。
深夜と言えどラウルのマッサージは私のツボを余すところなく刺激し、肩も軽いです。お兄様に膝カックンをされて前のめりになったかの日が嘘のように足も軽いのです。
「若奥様、今日はお顔の色が。頬もほんのりピンクですね」
「そうかしら…」
「えぇ、ですが・・・後で湿布を致しましょう」
何かと思えば池に落ちた時、腕も何処かにぶつけてしまっていたようで少し赤くなっております。これは数日後に青くなり、段々と黄色・・・。黄色?
私は湿布をされる前の腕をジィィ~っと眺めます。
――赤、青、黄色、そしてピンク。そして今日の部屋着は緑色――
これは間違いございません。神は「池を捜索せよ」と仰っているのです。
私の体を使ってトンツートンのモールス信号ならぬ、暗号を送って来るなんて。
ラウルは昨夜、うたた寝をするほど気が緩んでいるので今が「チャーンス♡」だと赤い弐号・・・いえ、好機だと神が教えてくださっているのです。
「湿布は不要ですわ」
「で、ですか治りが遅くなってしまいます」
「今日は・・・そうね。汚れてしまってもいい服装でお願いできるかしら」
「汚れても良い?何をされるのです」
「池の中で探したいものがあるの」
「池っ?!何かを落としたのでしたら使用人に探させます。若奥様が池になんて!若旦那様が壊れます!」
――ん?怒るではなく壊れる?――
そう言われてみるとラウルは使用人さんに色々と申しつけているようで、私はする事が無い時があるのです。1年も経てばある程度公爵家のことも判りますが、責任を取っての結婚だとしても過保護すぎるのです。
踏み台を使って本を取るのは仕方ないにしても、実家でよく行っていた刺繍も「針は危険」とさせてもらえませんし、では編み棒で何かを編もうとすれば「先が尖っている」と禁止。
唯一許されたのが筒状のニッチングをつかったリリヤン。
お子様が初めての手芸で使用するものだけなのです。
実家の侯爵家は危険は危険でも取り敢えずはさせて貰えたのですが、爵位が1つ上がるとこうも違うのでしょうか。
「大丈夫。朝食の時にラウルに許可を貰うわ」
何としてもファッションマッサージ師との不貞の証拠を掴まねばなりません。
私が池に落ちたのも何かの思し召し。この機を逃してはならないのです。
5色揃った色が私に訴えます。
私がリーダーとなり、捜索戦隊サガスンジャーを組織せねばなりません。
失せ物を見つけるのは、こう見えて私、得意なのです。
お兄様の寝台の下からはマッチョな男性が生まれたままのあられもない絵姿。
お父様の執務室の引き出しにはお母様に贈ろうとしたのだけれど、詐欺商品だと知り贈れなかったココ〇岡の宝石。それなりのお値段なので捨てるに捨てられなかったのでしょう。未練を感じました。
お母様の化粧台の二重底には若かりし頃、止めてしまうと不幸が訪れるというチェーンレター。官製はがきの切手が今は68プルなのに15プルだったのには時代の流れを感じましたわ。
「ラウル。おはようございます」
「おはよう。具合はどうだい?」
「はい、絶好調で御座います」
「それはよかった。今日は焼きたてのベーグルを用意したよ」
――私、ベーグルより食パンがいいな――
ついでにスクランブルエッグより目玉焼きの黄身を固めに焼いたのがいいんだけどな。いいえ。贅沢は言ってはいけません。食事ができるのは領民の皆様のおかげですもの。
でも食パンなら縁のパンの耳をカリっと油で揚げるとまた違った美味しさもあるのですが、貴族令嬢の御茶請けとしては不適切と言われ、なかなか食べる機会には恵まれません。公爵夫人ともなれば・・・もうお目にかかれないかも。
席についた私は、ラウルと共に朝食を取るのですが今日もラウルは私を凝視。
そんなに注視して頂かなくてもラウルのプレートにある食材は取りませんのに。
私がフォークで食材を口に入れると、ラウルはなにも口に入れていないのにエアー咀嚼。
きっと30回も噛めばほぼ飲み込めますので「100回嚙みなさい」と言われたのを事前にカウントしているのでしょう。
それはそうと本題を切り出さねばなりません。
「ラウル。今日なのですがお願いがあるのです」
「お願い?何か欲しいものでも?」
――不貞の証拠です――
危ない。危ない。手の内を曝け出すところでしたわ。
「昨日、池の中に落とし物を致しまして」
ガタン!! (び、びっくりした・・・どうしたの?!)
突然立ち上がったラウルにテーブルが動いてグラスのミルクが零れそう。
どうしたのかしら。
「何を落としたんだ?私が探してくるから形や色を教えてくれ」
――そんなのが事前に分かれば苦労しません――
「何を・・・と言われましても、探してみなければわからないとしか‥」
「そうか。判った。私が必ず見つけよう。直ぐに捜索隊を組織する」
「お、お待ちください!私が探したいのです!」
「大丈夫だ。サロンから池も見える。逐一発見したものを持って来るから見てくれればいい」
「それではダメなのです!」
「エディットは心配性だな。大丈夫。池の水を全部抜いてでも探してあげるよ」
おや?まさか‥既に回収済み?
ラウルならあり得ます。昨夜私に気付かれたと思い早朝に証拠を既に回収しているのかも知れません。
そうでなければ池の水まで抜いてしまったら隠そうにも隠せませんもの。
私の脳内にエマージェンシーランプが点滅致します。
――池からは回収済み。ではどこに?――
ラウルの目を真っ直ぐに見返すと、フッと顔を逸らせるラウル。
間違いございません。池からは引き上げてどこか別の場所に隠したのです。
時刻からすれば屋敷の外には持ち出せませんから、敷地内。
ラウルの手は汚れていないので、土の中に埋めたのではなさそうです。
だとすれば屋敷の中。
「ラウル」
「どうしたんだ?形を思い出したか?」
「いいえ。そう言えば落としてなかった事に気が付きました」
「そうか?それは良かった。実はしばらく休みなんだ」
「まぁ…殿下から暇を頂きましたの?」
「クビにはなってないかな。アハハ」
油断をさせておいて、私は屋敷の中を探す事にしたのですが…。
さて、何処から探そうかとしている私の目に速足で1つの部屋に向かうラウル。明らかに通常時と様子が異なりました。まさか1つ目の部屋で大当たりを引くとは思いませんでした。
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