公爵夫妻は今日も〇〇

cyaru

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第2話♡  夫の愛する人

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足掻いても無駄、仕方がないかと思った時に第2の事件が起きたのです。
そう、ラウルには愛する人がやはり存在したのです。

そりゃね、婚約は19歳で責任からの婚約も仕方ないと自分に言い聞かせても、異性に興味しかないお年頃ですから、好きなご令嬢の1人や2人出来たって仕方が御座いません。

私だって好きなタイプも御座います。
願わくば・・・逞しい胸板をお持ちで、私のウェストくらいが太ももの鍛え抜いた体躯の上、見た目がヒグマ、いえゴリラでもいいのです。

最近お兄様の元をよく訪れるシリアコ様。目の保養です。

それくらいでなくては現実頭皮・・・いえ、現実逃避と申しますわね。
将来の光の反射も若い頃のお姿を重ね合わせる事が出来れば現実を見なくて済みますもの。

若い頃には眩しい笑顔。お年を召せば笑顔に成らずとも太陽光を反射。

フッ・・・殿方は罪な生き物ですわ。




月日が経ち・・・。
私が20歳、ラウルが間もなく23歳の誕生日を迎えようと言う日。
結婚式の打ち合わせで公爵家を訪れた時、義母となるお義母様の勘違いで3時間もはやく到着してしまった私は侍女とお義母様と庭を散策する事になったのです。

『この先にガゼボを造ったの。輿入れをしたら一緒にお茶を楽しみましょうね』

と、 ”間もなくお義母様” に先導されて庭を歩いた先、まさにそのガゼボでラウルと1人の令嬢が良い雰囲気だったものだから、あらどうしましょう。

しかも・・・。

『頼む!俺のこんな汚い部分を出せるのはお前しかいないんだ!』
『こんな事・・・エディットに知られたら大変よ?』
『そこは上手くやる。心配しないでくれ』


私の隣で何時だったか書庫の本の挿絵で見た「般若」だったか「多聞天たもんてん」だったかのような表情に変貌を遂げた ”間もなくお義母様” の乱入でその先を知る事は叶わなかったけれど。

ラウルには『再教育をさせるわ!』と意気込んだ ”間もなくお義母様” によって暫く会う事は叶わなかったし、憤慨したお父様に手紙は開封する前に暖炉行きとなってしまったのでその後は知れず仕舞い。

茶会などでそれとなく探りを入れてみれば「そう言えば距離は近かった」と証言する令嬢多数。そして新たな証言として「確かラウル様には意中のご令嬢が居られるはず」とのこと。

その方はまさしく!このご令嬢、ラウルの「はとこ」にあたるモネス子爵家のカレン様に間違いない。
年齢はラウルよりも2つ上なのですが、くりくりパッチリとした垂れ気味の可愛い目にアヒルのような唇。

初めて言葉を交わした子息たちに、もれなく「守ってあげたい♡」と思わせる容貌のご令嬢。

ラウルに一言申し上げるとすれば・・・。

競争率オッズはそれなりに高ぅ御座いましてよ?」

なのだけれど、両想いなら競争率も関係御座いません。


これは早くこのお話を破談にして差し上げねば!とお父様に早速相談したのですがペレ公爵家に「見直しが出来るくらいなら」と含みあるお返事を頂きまして、お父様もどこか遠い目をして「諦めろ」との一言。

――爵位の差もあるし、愛人にされるのかしら――

兄弟姉妹は禁忌でいとことなれば怪訝な顔もされますが、ハトコとなれば問題も無い。
ならばお望みの相手と結ばれるのが一番だと思ったのですが私との縁が破談とならないのなら愛人として抱えるしか御座いません。

ラウルの心中を考えると私は居た堪れなくなってしまいました。



その上、初夜を済ませることが出来なかったのは完全な私の落ち度。

結婚式では、不本意な婚約からの結婚に御気分も良くなかったのでしょう。
強張った表情で、必要以上の言葉も語らず。

誓いのキスも「もうお前の言葉は聞きたくない」とばかりに息も吸われて眩暈が致しました。余りに長く吸われたので最前列に腰かけていたお兄様と神父様が背から倒れる私を支えてくださったのです。

何か喚く声が聞こえましたが、お兄様の「ゆっくりでいい。息を吸い込め」という声に私はようやく息が出来たのです。

閨教育では女性は殿方に従えば良いとの教えで御座いましたが、ラウルも寝所に来るまでには葛藤もしつつだったでしょうが、私は知っています。

殿方には「据え膳食わぬは男の恥」という言葉もあり、好いていない女性でも抱けるのだとか、疲れている時には特に発散をしたくなるものだと学びました。

結婚式の前、1カ月ほどは不眠不休に等しい働き方をされたと伺っております。
確かに魅力とは?と考える貧弱な胸ではありますがそこまで肉体的に追い込まなくても・・・。


しかし、それはまさに狂気を纏った凶器。
バスローブの下が全裸も脅威な驚異で御座いましたが・・・目が離せません。

「その部分、凶暴につき」と脳内で言葉が駆け巡る程に視線を逸らしつつ、怖いもの見たさという好奇心は抑えられなかったのです。

思わず二度見、三度見、そして凝視をしつつの流し目をしてしまった部位。
ですが、ラウルの驚きを含んだ声に現実を見ることになったのです。

「どうしたんだ!!」
「え‥‥ん??えっ…どうして・・・」
「体調が悪かったんだな。直ぐに侍医を呼ぶ。横になっていなさい」

事を始める前に血で染まるシーツ。
出血しているのに血の気が引く私。

どうすればラウルが自由に恋愛を謳歌できるか、親の横やりなしに愛人を迎えられるかと考え、睡眠不足もあった私は肝心な日に不正出血。過労や強いストレスで月のものが狂ってしまったり、月のものと異なる出血をするのだそうです。

「エディットの体が一番大事だから」
「いえ、申し訳ございません」
「謝るな。君が謝るような事じゃない」

慰めの言葉が心に染み入り、私は不甲斐なさを感じつつも関係を結ばなくて済んだ初夜。当主としては不適格でも男としては操を立てたと言えるのでは?と自分に言い聞かせたのです。

その日から様子見に様子見を重ね、もう大丈夫!と挑もうとすれば折り合いのつく日に月のもの・・・。
やはり前世の行いが良くなかったのかも知れません。

結局、そのまま1年の月日が経ってしまったのですから。
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