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第二章~王子殿下は興味「しか」ない
ヴァレンティノ、ピックの先に。
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「ごほっ!ごほっ!・・・どうして燻っているの?」
時計を見ればあと数十秒で7時丁度、時計の長針は天を突きさす向きより若干傾いていたのだが、直ぐにトゥトゥーリアは異変に気が付いた。
扉の隙間からもくもくと煙が入って来て部屋の天井を白く煙らせていた。
「えっ?!火事?竈も暖炉の火も消したはずなのに!」
部屋から飛び出してみると、探すまでもない小さな家。
キッチンの厨房にある竈が煙の発生源で、その竈の前にしゃがんで何かを突っ込んでいるのはヴァレンティノだった。
「な、何をされてますの?!」
「あ、おはようリア。今、パンを炙ってるんだ」
「パンを炙る?!でもこの煙は!!」
「この前、炙りすぎてちょっと焦げ目のついたパン。ちょっとであれだけ美味しいんだからもっと美味しくしようと思って」
――まさか!!炭を作っているの!!――
それ以上だった。
ヴァレンティノの手にする長めのピックの先には火力全開の竈の火が轟々と燃え盛り、その中に長めのピックの先に突き刺したパンだったと思われる物体が炭の黒を通り越し、真っ赤になって燃えていた。
これがピックではなく紐ならお化け屋敷の火の玉だ。
「よし、今度こそ」
――何が今度こそなの?!――
「7個目なんだよ。ピックも柔いな。真っ赤になって曲がってしまって火の中にパンが落ちたんだ」
――ですよね――
ヴァレンティノの足元をよく見れば「鉄は熱きうちに打て!」とばかりに元の形状を感じさせない「元ピック」が黒く変色し「く」の字になって転がっていた。
この煙はパンを焼いたための煙。パンは確かに焼くものだが焼き加減が異常過ぎた。
「うわっちっち!!よし!出来たぞ」
「あの・・・火がまだ燃えてるわよ?」
「吹き消せばいい。ふぅ~」
しかし炎が吹いた息で棚引くだけで火は消えない。
「そうか!ついでだから」
――何がついでなの?――
ヴァレンティノは城や宮では出来ないが、パンをミルクに浸して食べるのがお気に入り。
炎を上げる真っ黒なパンだった物体にシボリーナから搾って来たミルクを豪快にぶっかけた。
ジュゥゥゥ~だけで済むはずがない。
高熱になり炎を纏っていたパンは突然冷たいミルクを掛けられた事で爆発したのだ。
パンっ!パパンパン!!
元がパンだからか弾ける音も「パンパンパン」
「うわぁぁ!!」
「きゃぁぁ!!」
ガシャーン!!ガチャーン!!ガチャガチャガチャーン!
弾けてしまったパンから飛び出す破片軍からトゥトゥーリアを守るようにヴァレンティノは覆いかぶさったのだが、勢い良すぎて腰の高さほどのラックを倒し、家にある全ての食器も割ってしまった。
シボリーナのミルクの入ったミルク瓶も割れて、キッチンはミルクの香りと焦げ臭い香りが入り混じる亜空間と化した。
「パンは焼くもので、燃やすものではありません!」
「はぃ‥‥」
「掃除、してくださいね」
「はぃ・・・」
「だけど、ありがとう。次は一緒に炙りましょうね?」
「うっうん!」
7時03分。ヴァレンティノはモップを手にしたのだった。
「殿下、大変ですね」
「手伝ってはくれぬのか」
「勤務時間超過になっちゃうと、ここの護衛シフトから外されるんです。手伝いたいんですよ?でもこれから自宅警備の時間なんですっ」
騎士は朝食を食べるとスキップをしながら自宅に帰って行った。
その翌週、トゥトゥーリアの住まう屋敷は巡回ルートのみとなり、泊まり込みの護衛騎士は配置されなくなったのだった。
★~★
相変わらずな夫婦・・・この続きは明日10時10分と10時40分に‥。
おやすみなさい(-_-)zzz
時計を見ればあと数十秒で7時丁度、時計の長針は天を突きさす向きより若干傾いていたのだが、直ぐにトゥトゥーリアは異変に気が付いた。
扉の隙間からもくもくと煙が入って来て部屋の天井を白く煙らせていた。
「えっ?!火事?竈も暖炉の火も消したはずなのに!」
部屋から飛び出してみると、探すまでもない小さな家。
キッチンの厨房にある竈が煙の発生源で、その竈の前にしゃがんで何かを突っ込んでいるのはヴァレンティノだった。
「な、何をされてますの?!」
「あ、おはようリア。今、パンを炙ってるんだ」
「パンを炙る?!でもこの煙は!!」
「この前、炙りすぎてちょっと焦げ目のついたパン。ちょっとであれだけ美味しいんだからもっと美味しくしようと思って」
――まさか!!炭を作っているの!!――
それ以上だった。
ヴァレンティノの手にする長めのピックの先には火力全開の竈の火が轟々と燃え盛り、その中に長めのピックの先に突き刺したパンだったと思われる物体が炭の黒を通り越し、真っ赤になって燃えていた。
これがピックではなく紐ならお化け屋敷の火の玉だ。
「よし、今度こそ」
――何が今度こそなの?!――
「7個目なんだよ。ピックも柔いな。真っ赤になって曲がってしまって火の中にパンが落ちたんだ」
――ですよね――
ヴァレンティノの足元をよく見れば「鉄は熱きうちに打て!」とばかりに元の形状を感じさせない「元ピック」が黒く変色し「く」の字になって転がっていた。
この煙はパンを焼いたための煙。パンは確かに焼くものだが焼き加減が異常過ぎた。
「うわっちっち!!よし!出来たぞ」
「あの・・・火がまだ燃えてるわよ?」
「吹き消せばいい。ふぅ~」
しかし炎が吹いた息で棚引くだけで火は消えない。
「そうか!ついでだから」
――何がついでなの?――
ヴァレンティノは城や宮では出来ないが、パンをミルクに浸して食べるのがお気に入り。
炎を上げる真っ黒なパンだった物体にシボリーナから搾って来たミルクを豪快にぶっかけた。
ジュゥゥゥ~だけで済むはずがない。
高熱になり炎を纏っていたパンは突然冷たいミルクを掛けられた事で爆発したのだ。
パンっ!パパンパン!!
元がパンだからか弾ける音も「パンパンパン」
「うわぁぁ!!」
「きゃぁぁ!!」
ガシャーン!!ガチャーン!!ガチャガチャガチャーン!
弾けてしまったパンから飛び出す破片軍からトゥトゥーリアを守るようにヴァレンティノは覆いかぶさったのだが、勢い良すぎて腰の高さほどのラックを倒し、家にある全ての食器も割ってしまった。
シボリーナのミルクの入ったミルク瓶も割れて、キッチンはミルクの香りと焦げ臭い香りが入り混じる亜空間と化した。
「パンは焼くもので、燃やすものではありません!」
「はぃ‥‥」
「掃除、してくださいね」
「はぃ・・・」
「だけど、ありがとう。次は一緒に炙りましょうね?」
「うっうん!」
7時03分。ヴァレンティノはモップを手にしたのだった。
「殿下、大変ですね」
「手伝ってはくれぬのか」
「勤務時間超過になっちゃうと、ここの護衛シフトから外されるんです。手伝いたいんですよ?でもこれから自宅警備の時間なんですっ」
騎士は朝食を食べるとスキップをしながら自宅に帰って行った。
その翌週、トゥトゥーリアの住まう屋敷は巡回ルートのみとなり、泊まり込みの護衛騎士は配置されなくなったのだった。
★~★
相変わらずな夫婦・・・この続きは明日10時10分と10時40分に‥。
おやすみなさい(-_-)zzz
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