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第25話 答えはないの♡
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ギリギリと射抜くような視線でサブリナがトゥトゥーリアを睨みつける異様な雰囲気もある執務室。ヴァレンティノもそんな空気は気が付いたようで、ちらちらとトゥトゥーリアとサブリナに視線を向ける。
午後の勤務の時間になり、席を立ったトゥトゥーリアは頼まれていた書類の束を持ってヴァレンティノのデスクまでやって来た。
「殿下、一通り見てみましたが、この付箋のある2カ所についてはご査収願えますか?」
「何処だ?」
トゥトゥーリアは頼まれていた書類を教科ごとに分けた。
「まず、今回は王立学園の中等科への入試・・・でしたよね?」
「そうだ。初等科からは無条件で持ち上がりとなるが、言ってみれば途中辞退者の枠を埋める編入試験のようなものだ」
トゥトゥーリアはまずヴァレンティノから見て左側に置いた3つについては「問題なし」と判断したと告げた。そして、最後に残った1教科。算術の試験に付箋がついていた。
「付箋は1カ所のようだが?」
「続き問題でしたので。問1の1つ目と2つ目です。後に行くに従って問題は難易度が上がっていきますが、付箋は一番最初の問題です」
すかさずサブリナが「間違いがある筈がない」と横から声をあげた。
が、トゥトゥーリアはサブリナの声を無視してページを開いた。
「先ず問1です」
「何処が間違ってると言うの!」
「サブリナ嬢。黙って。トゥトゥーリア、続けて」
ヴァレンティノに制止をされたサブリナは絶対的な自信があるのか、今まで以上にトゥトゥーリアを睨みつけた。
「今回の試験。最後の問題を見る限りかなり高度な問題が出されています。問32ではおそらく学園の高等科最高学年の生徒でも解くのは難解な問題です。その問題がある事を考えますと、問1の答え。解答には【24】とありますが、これだけでは不十分です」
「問1か。言ってみればサービス問題のようなものだな」
【問1-1 1×2×3×4 】
「これ、24じゃない!間違ってないわよ!」
「間違っているとは言ってません。不十分だと申しました」
ヴァレンティノは数式とトゥトゥーリアの言葉を聞いて「あっ!」声を出した。
「確かに。24は間違いではないが、この数式なら不十分だ」
「どこが不十分なのよ!」
意気込むサブリナにトゥトゥーリアは初めて視線を合わせたかもしれない。
「1から順番に数字が上がって行く問い方ですので、この場合は24の他に4の階乗、つまり【4!】も正解になるんです。答えが2つありますので、解答のこちらの冊子にも2つの答えが必要になります」
「かっ階乗なんて知らないわよ!」
苦しい言い訳をするサブリナだったが、問題を進めるごとに難しくなっている形式で最終問に至っては階乗を知っていて当然の数学力が試される。
最終問題がなくても、数学好きなら解答する可能性がある事を考えれば、やはり解答は2つになるのだ。
「じゃ、じゃぁこの問題はやめるわ!それでいいんでしょ!」
「ではサブリナ嬢。別の問いを至急考えてくれ。で?もう1つは?」
サブリナは人2人分距離のあるトゥトゥーリアにも聞こえてきそうなくらいに歯を食いしばっていた。
――知らなかったのなら知れたから良かったじゃない――
そう思うのだが、2つ目は不十分ではなく「誤り」
奥歯が割れるんじゃ?とヴァレンティノを見た。
――お口のケアもしてあげてね?――
トゥトゥーリアとヴァレンティノの視線が合う。
少し頬を染めたヴァレンティノだったが、トゥトゥーリアは気にせず進めた。
「問1の2つ目ですが、解答が間違っています」
「そんなはずないわ!言いがかりはやめてよ!」
【問1-2 105÷0 】
ヴァレンティノは解答を見て、式をみて首を傾げたがまたもや「あっ!」声を出した。
「これは、良い問題だと思います。105÷0と0÷105は間違いやすいので」
「ど、どこが違うのよ!」
「0÷105なら答えは0となります。しかし105÷0は数学的に0で割る事は矛盾が乗じるため「解なし」が答えになるのです。割り算の場合は分母で表す事が出来ますが、どちらが分母になるかで答えが変わり――」
パンッ!!
近づいて来たサブリナの手がトゥトゥーリアの頬を打った。
「酷い!酷いわ!わたくしに恥をかかせたいだけなんでしょう!」
「サブリナ嬢、それは違う。こうやってみんなで確認をせねばたった1問の問題でも受験する者には人生を左右する結果になるかも知れないんだ。それは問題を作った君にも判っているはずだ!」
――ちょっとロマンスが薄いけど、狎れあいで良いのかしら?――
トゥトゥーリアは壁の時計を見た。終業時間である。
「では私はこれで。次は4日後でしたね。いつもの時間にお伺いします」
「ま、待て。この後――」
「私より、彼女のケア。大事ですよね?」
念押しをしたトゥトゥーリアは廊下に出ると、執事エルドから今日の日当を手渡して貰い、小走りになって厩舎に向かった。
「ボナ君っ!おぅまたせっ!」
「ブルルゥ♡」
「今日はね~帰りにリンゴを買ってあげる」
颯爽と飛び乗る事が出来ず、ボナパルト号に柵まで体を寄せてもらい、柵を足掛かりにしてしがみ付くようにボナパルト号の背に乗ると、フルフルと状態をゆっくり起こす。
「さぁ!ボナ君!私を青果店まで連れてって~」
ヴァレンティノが跨ると暴れ馬になるのに大人しいボナパルト号。
来た時と同じようにゆっくりパッカポッカと宮を後にしたのだった。
午後の勤務の時間になり、席を立ったトゥトゥーリアは頼まれていた書類の束を持ってヴァレンティノのデスクまでやって来た。
「殿下、一通り見てみましたが、この付箋のある2カ所についてはご査収願えますか?」
「何処だ?」
トゥトゥーリアは頼まれていた書類を教科ごとに分けた。
「まず、今回は王立学園の中等科への入試・・・でしたよね?」
「そうだ。初等科からは無条件で持ち上がりとなるが、言ってみれば途中辞退者の枠を埋める編入試験のようなものだ」
トゥトゥーリアはまずヴァレンティノから見て左側に置いた3つについては「問題なし」と判断したと告げた。そして、最後に残った1教科。算術の試験に付箋がついていた。
「付箋は1カ所のようだが?」
「続き問題でしたので。問1の1つ目と2つ目です。後に行くに従って問題は難易度が上がっていきますが、付箋は一番最初の問題です」
すかさずサブリナが「間違いがある筈がない」と横から声をあげた。
が、トゥトゥーリアはサブリナの声を無視してページを開いた。
「先ず問1です」
「何処が間違ってると言うの!」
「サブリナ嬢。黙って。トゥトゥーリア、続けて」
ヴァレンティノに制止をされたサブリナは絶対的な自信があるのか、今まで以上にトゥトゥーリアを睨みつけた。
「今回の試験。最後の問題を見る限りかなり高度な問題が出されています。問32ではおそらく学園の高等科最高学年の生徒でも解くのは難解な問題です。その問題がある事を考えますと、問1の答え。解答には【24】とありますが、これだけでは不十分です」
「問1か。言ってみればサービス問題のようなものだな」
【問1-1 1×2×3×4 】
「これ、24じゃない!間違ってないわよ!」
「間違っているとは言ってません。不十分だと申しました」
ヴァレンティノは数式とトゥトゥーリアの言葉を聞いて「あっ!」声を出した。
「確かに。24は間違いではないが、この数式なら不十分だ」
「どこが不十分なのよ!」
意気込むサブリナにトゥトゥーリアは初めて視線を合わせたかもしれない。
「1から順番に数字が上がって行く問い方ですので、この場合は24の他に4の階乗、つまり【4!】も正解になるんです。答えが2つありますので、解答のこちらの冊子にも2つの答えが必要になります」
「かっ階乗なんて知らないわよ!」
苦しい言い訳をするサブリナだったが、問題を進めるごとに難しくなっている形式で最終問に至っては階乗を知っていて当然の数学力が試される。
最終問題がなくても、数学好きなら解答する可能性がある事を考えれば、やはり解答は2つになるのだ。
「じゃ、じゃぁこの問題はやめるわ!それでいいんでしょ!」
「ではサブリナ嬢。別の問いを至急考えてくれ。で?もう1つは?」
サブリナは人2人分距離のあるトゥトゥーリアにも聞こえてきそうなくらいに歯を食いしばっていた。
――知らなかったのなら知れたから良かったじゃない――
そう思うのだが、2つ目は不十分ではなく「誤り」
奥歯が割れるんじゃ?とヴァレンティノを見た。
――お口のケアもしてあげてね?――
トゥトゥーリアとヴァレンティノの視線が合う。
少し頬を染めたヴァレンティノだったが、トゥトゥーリアは気にせず進めた。
「問1の2つ目ですが、解答が間違っています」
「そんなはずないわ!言いがかりはやめてよ!」
【問1-2 105÷0 】
ヴァレンティノは解答を見て、式をみて首を傾げたがまたもや「あっ!」声を出した。
「これは、良い問題だと思います。105÷0と0÷105は間違いやすいので」
「ど、どこが違うのよ!」
「0÷105なら答えは0となります。しかし105÷0は数学的に0で割る事は矛盾が乗じるため「解なし」が答えになるのです。割り算の場合は分母で表す事が出来ますが、どちらが分母になるかで答えが変わり――」
パンッ!!
近づいて来たサブリナの手がトゥトゥーリアの頬を打った。
「酷い!酷いわ!わたくしに恥をかかせたいだけなんでしょう!」
「サブリナ嬢、それは違う。こうやってみんなで確認をせねばたった1問の問題でも受験する者には人生を左右する結果になるかも知れないんだ。それは問題を作った君にも判っているはずだ!」
――ちょっとロマンスが薄いけど、狎れあいで良いのかしら?――
トゥトゥーリアは壁の時計を見た。終業時間である。
「では私はこれで。次は4日後でしたね。いつもの時間にお伺いします」
「ま、待て。この後――」
「私より、彼女のケア。大事ですよね?」
念押しをしたトゥトゥーリアは廊下に出ると、執事エルドから今日の日当を手渡して貰い、小走りになって厩舎に向かった。
「ボナ君っ!おぅまたせっ!」
「ブルルゥ♡」
「今日はね~帰りにリンゴを買ってあげる」
颯爽と飛び乗る事が出来ず、ボナパルト号に柵まで体を寄せてもらい、柵を足掛かりにしてしがみ付くようにボナパルト号の背に乗ると、フルフルと状態をゆっくり起こす。
「さぁ!ボナ君!私を青果店まで連れてって~」
ヴァレンティノが跨ると暴れ馬になるのに大人しいボナパルト号。
来た時と同じようにゆっくりパッカポッカと宮を後にしたのだった。
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