王子殿下には興味がない

cyaru

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第25話   楽しくなければしないでしょ

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13日目。いよいよ明日でサブリナがお役御免、いやこの執務が終わると言う日。

ボナパルト号に跨り、パッカポッカとやって来たトゥトゥーリアを先に到着していたサブリナが待ち構えていた。

「妃殿下。お話が御座いますの。お時間よろしくて?」
「そうですね。開始まで30分有りますから、その間なら」
「良かったわ。ではこちらへ」


案内をされたのはヴァレンティノの執務室に行く廊下とは反対の廊下を通った先にある部屋。

――へぇ、こんな部屋もあったんだ――

宮に住まう事も無く、あのこぢんまりとした家で生活をしているトゥトゥーリアには宮の間取りですら興味がなかった。離縁をするのに知り尽くしているほうが問題だろうと考えている。


「わたくし、妃殿下がお可哀想でなりませんの」
「可哀想?私が?」

――確かにそうとも言えるわね。本当は市井で働きたかったのに――

そう考えたトゥトゥーリアだったが、サブリナの言う「可哀想」とは違っていた。


「わたくし、レリィとは以前婚約をしておりましたの」
「はい、以前お聞きしました」
「良かった。お忘れになっているのでは?と思いまして」

――私なら婚約解消した相手を一刻も早く忘れたいと思うけど――


「それと、私が可哀想というのとどういう関係が?」
「心苦しくて。でも妃殿下のお立場を考えると知っておられた方が宜しいかと」

――なんなの?あるある言いたいで引っ張るのかしら?――


時間もあるのになぁと壁に掛けられた時計を見るとあと15分。
あるある言いたいとロングバージョンはご遠慮願いたい時間である。


「わたくし、実は婚約を解消した後もレリィとは密な付き合いを続けておりますの」
「宜しいのでは?円満解消ならそのような事もあるでしょうし、王家と公爵家、いがみ合うより仲が良いほうが周りも要らぬ心配をせずに済みますから」

ギリっとサブリナが下唇を噛むのだが、トゥトゥーリアは「それで?」と話を進めろと急かした。


「初心な妃殿下は御存じないので、レリィも気にかけておりましたの。レリィは子は要らぬ・・・そう申したはずです」

――あ~そんな事を言ってたわね――


「母親の違う子供は・・・色々と御座いますでしょう?」


――解るぅ~それ解るぅ~もう解りみしかなぁい!!――

色々なシチュエーションはあるだろうが、少なくともトゥトゥーリアは母親に非がないのに不遇の扱いを母子で受けて来た。こんな関係なら要らないと心から思うほどに!


「わたくしとレリィ。今は婚約を解消しておりますが、関係は続いていると言っているのです。お判りかしら?」

「解るか解らないかで言えば解ります。端的に言えば不貞の関係ですよね?」

「判って頂けて良かった♡レリィはなかなか気の休まる時間もないでしょう?わたくしが癒しとなってレリィを支えておりますの。でも・・・妃殿下には申し訳ないという気持ちも御座いましてよ?」

「不貞は刑事罰に問われるわけではないので、倫理観の欠如と言うことを理解されたうえでの事なら、いい大人ですし好きにされれば宜しいのでは?」

「倫理観っ?!あぁもう面倒ね。ハッキリ言ってあげる。レリィはね、わたくしといる時間の方が楽しくて穏かに過ごせる!そう言ってるの!お飾りならお飾りらしく別邸にでも引き籠っていればいいのよッ!」

――あ、本性出ちゃったんだ・・・でもね、ここに来いって言ったの、貴女の大好きなレリィなんだけど?――


しかし、ここで感情を出そうにも如何せん、トゥトゥーリアには正直どうでも良すぎて勝手にしてくれとしか言えないし、思えない。

時間もない事だし…とトゥトゥーリアは時計を見てサブリナに向かって笑った。


「楽しいと思いますよ?癒されもするでしょうし、穏かに過ごせるでしょう。だって不貞ですもの。何処の世界に生活感満載の不貞があります?面倒な事は全部人に丸投げか後回しにして今を楽しむだけが不貞なんですよ?そこに楽しさとか癒しとかなかったら誰も不貞なんかしませんよ」

「レリィに冷たくされるからと強がりを!ハンッ!愛されない女の僻みって惨めね」

「愛されてるかどうかは私の気持ちではないのでわかりませんが、少なくとも離縁について2年という期間を言い出されたのは殿下です。私は付き合わされているようなものなので、冷たくされようが言い合いになろうが貴女を僻んではいませんよ?時間なので失礼しますね?」

「逃げる気?!たかが・・・侯爵家の庶子の癖にッ!」

「逃げるのではありません。仕事の開始時間まであと5分ないからです。それと侯爵家の庶子である事は否定しません。ですが望んで侯爵家に庶子として生まれた訳ではないですし、自分でどうにもならない事をやり玉にあげられても・・・正直、迷惑です。不貞でも何でもご自由に。私は関与も関知もしません。興味がないので」


部屋を出たトゥトゥーリアをサブリナは追いかけては来なかった。

廊下を歩きながらトゥトゥーリアは思った。

――あんな大声で・・・部屋に入る意味あった?――
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