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番外編☆カサリウスの妻は多趣味
しおりを挟む私はバロビン国に5番目の王子として生まれた。名をカサリウスと言う。
物心ついた時には、母上と侍女の話をドアの隙間からチラ見しながら盗み聞きをするのが癖になってしまっていた。それがいつの間にか他人様のお話を天井裏や床下、時には屋根や壁に聴診器を当てて聞くようになった、
趣味が高じたと言ってよいだろう。
先日、ミカエル兄上が結婚をした。
一番結婚から遠い世界にいると思っていただけに驚いてしまった。
何を考えている人かよく判らないが、見た目はディオールの次に美人である。
ディオールとは私の妻で、これがまた美人で可愛くて正直誰にも見せたくはない。
多趣味な彼女だが、何か始めると突き詰めないと気が済まないようだ。
しかも、ほとんどが体をいじめ抜く系統に限られている。
限界を超えた先が見たいと言うのが私にはよく判らない。
妻、ディオールの最近の趣味は筋トレである。
リンゴなんかを素手でグシャっとするのではなく、魅せる筋肉の筋トレだ。
現在体脂肪率3%と極限まで余分な脂肪を落としているため、正直‥‥おっぱいが固い。
妻の体つくりに合わせた食事なので、王子宮で出てくる肉はササミなどではない。
「ダチョウ」「ワニ」など、【えっ?食べるの?】という肉ばかりである。
まぁ、調理方法次第で色々とアレンジをしているが飲料がプロテインなのはちょっと勘弁をしてほしいと思う事もあるが絶対に口にはしない。話をしてもらえなくなる。
よく付き合わされてベンチプレスをするのであるがこれがなかなかにキツイ。
何がキツイかと言うと、部位を指定されるのがキツイのだ。
「肩甲拳筋よ!肩甲拳筋にアミノ酸を分散させてッ!」
いや、すまない。肩甲骨はここだというのは判るんだが、肩甲拳筋ってどこにあるんだ?
それにどうやってアミノ酸の分散させるのだ?方法が判らない!!
ディオールが言うには、ぐっとしてぱっ!と簡単に言うがそれが判らない。
「脊柱起立筋に意識をむけるのッ!」
いや、それ何処だよ…大胸筋やハムストリングスならわかるが・・。
そう言えばその前の趣味はエアロビクスだった。
「笑顔!スマァイルッ!!はいっ!はいっ!」
兎に角笑顔で全力。踊りまくるのである。
レオタードを着用するのだが、吹っ切れるまでは時間が掛かった。
筋肉に目覚めたのはオリビア・ニュート●ジョンのフィジカルPVを見た事が原因である。
出だしからかなり危険なヴィジュアルの映像がかまされる。
パンイチで縄跳びなんて危険極まりないだろう。
何度もその部分だけをリピートするディオールの目が怖かった。
そう言えばディオールを見かけたのは入れ墨屋の前だった。
よく外国の人がとんでもない文字を彫りたいというアレだ。
聞けば東洋の島国が出てくるPV(ここでもPVか!)で【やきとり】という看板が目立っていて是非と店主を困らせていたのだ。
「ウエストラ〇フのキーアンが好きなの!」
というディオール。いやそれだけでその文字は危険すぎるだろう。
I LAY MY LOVE~なんちゃらというPVだそうだがキーアンにも失礼だ。
ちなみに、私はキテ●ちゃんというネコっぽいキャラクターの友達の×〇君と言うのをいれようと思っていたが同じように店主に断られた。背中一面にいれようと思ったのだが断念した。
「ねぇっ!わたくし馬に乗りたいわ!」
筋トレが終わったディオールは私にさりげなくおねだりをしてくる。
「どうして馬?馬術でも始めるのか?」
「ロデオよ!ロデオで体幹を鍛えたいの!」
確かに荒馬を乗りこなす事もあるが、主に牛ではないか?
そんな私の疑問を軽く飛び越えるのが可愛い妻のディオールである。
「だって、牛だと角があるじゃない?」
それは闘牛ではないのか?オゥレイィ!っと赤い布を振っているので間違いない。
間違いなく、間違っている。
「バランスボールで良いんじゃないかな」
「だって、バランスボールの上でジャグリングはもう習得したもの」
そんな事まで出来るようになっていたのか。侮っていたな。
諜報を廃業したら妻の大道芸で食べていけるかも知れない。
「あらイケナイ。休憩の5分が終わったわ」
「次は何をするんだい?」
「ラットプルダウンよ。一緒にどうかしら」
美しい微笑で私を誘うがやめておこう。
立ち上がった私は、バーに捕まるディオールを見ながらプロテインを調合する。
質の良い筋肉の為には夫の協力は欠かせない。
シャカシャカ…
「カサリィン~‥‥タイムやってぇ…」
妻がお呼びだ。行かねばならない。私はシェイカーを置いた。
Fin
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コメントありがとうございます<(_ _)>
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