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バロビン国の継承者
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数日後の昼、国王陛下、王妃殿下と昼食をともにするミカエルとエリザベート。
昨日の内に提出された事業計画書はどれも舌を巻くばかりで国王も苦笑いである。
国費を一切使わない事や、失業者対策、貧困対策、学習、就学、就職支援もありミカエルが世界屈指の借金王になったとはいえ、その借金は胸を張れるものである。
「全てをと言う訳にもいかない。一部を負担させてはくれないか」
そういう国王にエリザベートは微笑んで首を横に振る。
事業の内、いくつかは軌道に乗れば国に格安で買い取ってもらうのである。
それまでにミカエルが背負っている借金も全て返済し、財産を築いたうえでの買取。
ミカエルとエリザベートは幾つかの事業を国に売ったあとは、世界屈指の富豪なのだ。
「それも、これもこの国が手付かずだったことが幸いしたのです」
エリザベートは微笑む。
そして、ミカエルは父であり、母であるこの国の長に告げる。
【私は、継承権を放棄する】
そうではないかと思ってはいたが、ハッキリと口にされると堪える物がある。
「議会が黙っていないと思うが…どうするんだ」
「王にはサージェスが相応しい。私は引くだけです」
「エリザベートちゃんはどう思っているの?それでいいの?」
「構いませんわ。わたくしは夫であるミカエル様のご意思に添うのみですわ」
「説得は無駄に終わりそうだな。だがまだ諦めてはおらんからな」
「父上、しつこいな」
「ぶっちゃけ、お前ではない。エリザベートが王子妃の器ではないからな」
「買い被り過ぎですわ。わたくしには王妃という位置は荷が重すぎます」
「そなたが重ければ、他の者はどうすれば良いのだ」
「両陛下が長生きをなされば良いだけでは御座いませんか。オホホ」
国王は諦めきれないが、この2人は無理強いをすれば国外に出てしまうかも知れないとふと考えた。だが目の前の2人以上の功績を挙げ、議会にも国民にもそれを超えると納得させるのは残り4人の王子では無理だろうと感じる。
もしミカエル以外であれば、それは【この2人が推した者】という事になる。
ミカエルはサージェスを推すようだが、サージェスは満遍なく事を押えてはいるがこれと言って突き抜けたものがない。その点アルバートは公共工事についてだけは突出している。
第4王子レオナルドについてはもう論外である。目先の1つの事しか出来ない。
同時進行が出来ないのは誰が見ても不適格である。
第5王子のカサリウスは諜報という事には秀でている。国防については騎士たちを纏める事は出来るだろうがそれだけである。
兄弟同士が助け合ってくれれば一番だが、育った環境に権力を欲しがった側妃たちの影響は強く残っている。それが悔やまれてならないのだが後の祭りである。
手だてがあるとすれば、後日開かれる議会でミカエルとエリザベートの継承を提議する事であるが、それをすればこの2人は国を出るかも知れない。やはり2人が推すサージェスをつけるのが一番かと国王は思案した。
2人が王子宮に戻った後、王妃と話をするが昔から言い出せば聞かないミカエルである。無理やり継承させれば国ごと何処かの国に身売りする可能性も無きにしも非ず。残り4人の王子から立てるしかないかと思ったところに偶々第2王子サージェスが通りかかった。
周りの様子を伺うように見渡すと足早に近寄ってくる。
国王にはそれが酷く不自然に思えた。何か決断をせねばならないのかと不安が過る。
「父上、お義母上。お話が御座います」
「どうしたのだ?」
呼び方が陛下ではない事から、不安が更に強くなった。国王も何をサージェスが言わんとするのかおおよその情報は掴んでいたので姿勢を正した。王妃もそれを察知する。
「調査の結果がまとまりました」
「例の件か‥‥悩ましいな」
「一つ懸念が御座います。人払いを」
近くに居た従者たちを下がらせ、サージェスはもう一度見回すと着席した。
表情は決して明るくはない。良い話ではないからだ。
「ヘイスティグズ国第1王子カ―セル殿下の所在を確認致しました」
「なんと‥‥まさかと思うが」
「そのまさかです。アルバートの妃サリアも確認をしております」
「あら?サリア妃は今、アルバートが捜索をしているのでは?」
「カ―セル殿下と共にサリア妃も囲われております。如何しますか」
「夫婦が揃ってか‥‥全く、寄りにもよって他国の王子に兄の妃を」
「封じるしかないと思います。義姉上の元婚約者とはいえ廃嫡はされておりませんので、カ―セル殿下には申し訳ないですが生きて帰国をされると国際問題です。ヘイスティグズ国だけではなく人道に反する事ですから集中砲火を浴びる事は間違いなく、国際的にもバロビン国は孤立、もみ消す以外に方法はないかと」
「お前の方が余程に諜報に向いておるな」
「まさか。私はカサリウスとはまた違います。憲兵、警護団、騎士たちの過ちを裁く立場でもありますから慣れているだけです。まぁ、楽しい仕事ではないですが」
「判った。許可しよう」
「良いのですね?王子殺しになりますが…生みの母の側妃殿下はどうします」
「毒杯を進言しよう。断るのであれば生涯地下牢に幽閉するしかなかろう」
「では、アルバートはどうしますか?サリア妃の亡骸を引き渡しますか?」
「いや、いい機会だ。失踪と言う事で10年アルバートには反省させよう。公爵家もあんな女を愛人にと共に選んだのだ。前妃への弔いにもなるだろう」
「兄上にはどうします?知らせますか?」
「いや、何も言わんでいい。で、どうやって始末をする?」
「カ―セル殿下、サリア妃、他1名と共にあの夫婦も処分します。処分後に王子宮に火を放ち焼死と言う事で盛大に葬儀を行います。代りの遺体は死刑囚が丁度男女1名づつ先日病死をしておりますので、程よく焼ければ判別もつかないでしょうから」
国王は晴れ渡った空を見上げる。愚行を繰り返す息子の存在を知ったのは最近である。
まさかと思い、内密に調査を開始すると犠牲となった者たちの亡骸が何体も発見をされた。
この日が来たかと覚悟を決めた。
「すまないな。よろしく頼む」
「承知致しました。代りの死刑囚の遺体も傷みがありますので早急に行います」
「それはそうと‥‥先程ミカエル、エリザベートと話をしたんだが…」
「サージェス。2人は貴方を継承者に押すそうよ」
「とんでもない。兄上を差し置いて私など。私には妃もおりませんしそんな大役はとても背負えるものではありません。継承権を放棄するのは私の方です」
「そう言うだろうとは思ったが、あの2人は梃子でも動かんだろう」
「しかし私は‥‥兄弟で一番手を汚しております。引いた位置が適しています」
王妃は席を立つとサージェスの手をそっと握る。
義母になる王妃の手は、母よりも温かく慈愛を感じた。
「いいえ。あなたの手は汚れていない。もし汚れているというのならそれをさせるわたくしや、陛下のほうがもっと汚れています。あなたの手は汚れていません」
「義母上…」
サージェスは立ち上がった。一礼をしてその場を去る。
継承については頷かなかったが、後ろ姿はもう立派に王の背中だった。
王子宮に戻ったエリザベートはすっかり元気になったオオカミと戯れる。
大きさはまだ子犬ほどであるがやはりオオカミだけあって、あまり懐かない。
「慣れてくれませんわねぇ」
「名前をつけてあげればどうだろうか?」
「名前ですか‥‥難しいですねぇ」
「ウルフなんてどうだ?オオカミらしくないか?」
「らしいのではなく、そのまんまではありませんか」
悩んでいる2人の元に、雇いいれている平民のペッカーがやってくる。
ペッカーの顔を見ると途端にハフハフと興奮を始めペッカーに走って行くオオカミの子。
「あ、旦那様、奥様、どうなさいました?チビが何か粗相を?」
<< チビ? >>
「おいで。チビ!ご飯だぞ」
「ハフハフ!!ハフハフ!!」
「よーしよし…お手!!上手いぞ~! 回れ!(グルグル)」
「待て、そいつはポチじゃないのか?」
「殿下、どう見たってこいつはポチって感じじゃないです」
「ペッカー‥‥成長後を考えて名をつけたの?」
「あ…まぁ、でも今は小さいから!ほら?」
使用人のペッカー。そういう問題ではない。安易に小さいからチビはダメである。
そしてペッカーは餌係だった事もあってすっかり手懐けていたのだった。
エリザベート初の敗北感を味わう。
「えぇぇー?わたくしの夢はぁ??背中に乗れないわぁ…」
「リザ。大丈夫。俺の上に乗ればいい」
「は?」
「本にも書いてあった。ほら!ここだ!騎乗位は良いらしいぞ」
「わたくし、駄犬には乗りませんわ」
「じゃ、忠犬になるからさ…」
流れる沈黙。膨らみの見えるミカエルの股間。視線が熱い!!
「フッ‥‥ミニマム」
凄まじい破壊力。ミカエルは餌を食べるチビが成長するのを羨ましいと思ってしまった。
昨日の内に提出された事業計画書はどれも舌を巻くばかりで国王も苦笑いである。
国費を一切使わない事や、失業者対策、貧困対策、学習、就学、就職支援もありミカエルが世界屈指の借金王になったとはいえ、その借金は胸を張れるものである。
「全てをと言う訳にもいかない。一部を負担させてはくれないか」
そういう国王にエリザベートは微笑んで首を横に振る。
事業の内、いくつかは軌道に乗れば国に格安で買い取ってもらうのである。
それまでにミカエルが背負っている借金も全て返済し、財産を築いたうえでの買取。
ミカエルとエリザベートは幾つかの事業を国に売ったあとは、世界屈指の富豪なのだ。
「それも、これもこの国が手付かずだったことが幸いしたのです」
エリザベートは微笑む。
そして、ミカエルは父であり、母であるこの国の長に告げる。
【私は、継承権を放棄する】
そうではないかと思ってはいたが、ハッキリと口にされると堪える物がある。
「議会が黙っていないと思うが…どうするんだ」
「王にはサージェスが相応しい。私は引くだけです」
「エリザベートちゃんはどう思っているの?それでいいの?」
「構いませんわ。わたくしは夫であるミカエル様のご意思に添うのみですわ」
「説得は無駄に終わりそうだな。だがまだ諦めてはおらんからな」
「父上、しつこいな」
「ぶっちゃけ、お前ではない。エリザベートが王子妃の器ではないからな」
「買い被り過ぎですわ。わたくしには王妃という位置は荷が重すぎます」
「そなたが重ければ、他の者はどうすれば良いのだ」
「両陛下が長生きをなされば良いだけでは御座いませんか。オホホ」
国王は諦めきれないが、この2人は無理強いをすれば国外に出てしまうかも知れないとふと考えた。だが目の前の2人以上の功績を挙げ、議会にも国民にもそれを超えると納得させるのは残り4人の王子では無理だろうと感じる。
もしミカエル以外であれば、それは【この2人が推した者】という事になる。
ミカエルはサージェスを推すようだが、サージェスは満遍なく事を押えてはいるがこれと言って突き抜けたものがない。その点アルバートは公共工事についてだけは突出している。
第4王子レオナルドについてはもう論外である。目先の1つの事しか出来ない。
同時進行が出来ないのは誰が見ても不適格である。
第5王子のカサリウスは諜報という事には秀でている。国防については騎士たちを纏める事は出来るだろうがそれだけである。
兄弟同士が助け合ってくれれば一番だが、育った環境に権力を欲しがった側妃たちの影響は強く残っている。それが悔やまれてならないのだが後の祭りである。
手だてがあるとすれば、後日開かれる議会でミカエルとエリザベートの継承を提議する事であるが、それをすればこの2人は国を出るかも知れない。やはり2人が推すサージェスをつけるのが一番かと国王は思案した。
2人が王子宮に戻った後、王妃と話をするが昔から言い出せば聞かないミカエルである。無理やり継承させれば国ごと何処かの国に身売りする可能性も無きにしも非ず。残り4人の王子から立てるしかないかと思ったところに偶々第2王子サージェスが通りかかった。
周りの様子を伺うように見渡すと足早に近寄ってくる。
国王にはそれが酷く不自然に思えた。何か決断をせねばならないのかと不安が過る。
「父上、お義母上。お話が御座います」
「どうしたのだ?」
呼び方が陛下ではない事から、不安が更に強くなった。国王も何をサージェスが言わんとするのかおおよその情報は掴んでいたので姿勢を正した。王妃もそれを察知する。
「調査の結果がまとまりました」
「例の件か‥‥悩ましいな」
「一つ懸念が御座います。人払いを」
近くに居た従者たちを下がらせ、サージェスはもう一度見回すと着席した。
表情は決して明るくはない。良い話ではないからだ。
「ヘイスティグズ国第1王子カ―セル殿下の所在を確認致しました」
「なんと‥‥まさかと思うが」
「そのまさかです。アルバートの妃サリアも確認をしております」
「あら?サリア妃は今、アルバートが捜索をしているのでは?」
「カ―セル殿下と共にサリア妃も囲われております。如何しますか」
「夫婦が揃ってか‥‥全く、寄りにもよって他国の王子に兄の妃を」
「封じるしかないと思います。義姉上の元婚約者とはいえ廃嫡はされておりませんので、カ―セル殿下には申し訳ないですが生きて帰国をされると国際問題です。ヘイスティグズ国だけではなく人道に反する事ですから集中砲火を浴びる事は間違いなく、国際的にもバロビン国は孤立、もみ消す以外に方法はないかと」
「お前の方が余程に諜報に向いておるな」
「まさか。私はカサリウスとはまた違います。憲兵、警護団、騎士たちの過ちを裁く立場でもありますから慣れているだけです。まぁ、楽しい仕事ではないですが」
「判った。許可しよう」
「良いのですね?王子殺しになりますが…生みの母の側妃殿下はどうします」
「毒杯を進言しよう。断るのであれば生涯地下牢に幽閉するしかなかろう」
「では、アルバートはどうしますか?サリア妃の亡骸を引き渡しますか?」
「いや、いい機会だ。失踪と言う事で10年アルバートには反省させよう。公爵家もあんな女を愛人にと共に選んだのだ。前妃への弔いにもなるだろう」
「兄上にはどうします?知らせますか?」
「いや、何も言わんでいい。で、どうやって始末をする?」
「カ―セル殿下、サリア妃、他1名と共にあの夫婦も処分します。処分後に王子宮に火を放ち焼死と言う事で盛大に葬儀を行います。代りの遺体は死刑囚が丁度男女1名づつ先日病死をしておりますので、程よく焼ければ判別もつかないでしょうから」
国王は晴れ渡った空を見上げる。愚行を繰り返す息子の存在を知ったのは最近である。
まさかと思い、内密に調査を開始すると犠牲となった者たちの亡骸が何体も発見をされた。
この日が来たかと覚悟を決めた。
「すまないな。よろしく頼む」
「承知致しました。代りの死刑囚の遺体も傷みがありますので早急に行います」
「それはそうと‥‥先程ミカエル、エリザベートと話をしたんだが…」
「サージェス。2人は貴方を継承者に押すそうよ」
「とんでもない。兄上を差し置いて私など。私には妃もおりませんしそんな大役はとても背負えるものではありません。継承権を放棄するのは私の方です」
「そう言うだろうとは思ったが、あの2人は梃子でも動かんだろう」
「しかし私は‥‥兄弟で一番手を汚しております。引いた位置が適しています」
王妃は席を立つとサージェスの手をそっと握る。
義母になる王妃の手は、母よりも温かく慈愛を感じた。
「いいえ。あなたの手は汚れていない。もし汚れているというのならそれをさせるわたくしや、陛下のほうがもっと汚れています。あなたの手は汚れていません」
「義母上…」
サージェスは立ち上がった。一礼をしてその場を去る。
継承については頷かなかったが、後ろ姿はもう立派に王の背中だった。
王子宮に戻ったエリザベートはすっかり元気になったオオカミと戯れる。
大きさはまだ子犬ほどであるがやはりオオカミだけあって、あまり懐かない。
「慣れてくれませんわねぇ」
「名前をつけてあげればどうだろうか?」
「名前ですか‥‥難しいですねぇ」
「ウルフなんてどうだ?オオカミらしくないか?」
「らしいのではなく、そのまんまではありませんか」
悩んでいる2人の元に、雇いいれている平民のペッカーがやってくる。
ペッカーの顔を見ると途端にハフハフと興奮を始めペッカーに走って行くオオカミの子。
「あ、旦那様、奥様、どうなさいました?チビが何か粗相を?」
<< チビ? >>
「おいで。チビ!ご飯だぞ」
「ハフハフ!!ハフハフ!!」
「よーしよし…お手!!上手いぞ~! 回れ!(グルグル)」
「待て、そいつはポチじゃないのか?」
「殿下、どう見たってこいつはポチって感じじゃないです」
「ペッカー‥‥成長後を考えて名をつけたの?」
「あ…まぁ、でも今は小さいから!ほら?」
使用人のペッカー。そういう問題ではない。安易に小さいからチビはダメである。
そしてペッカーは餌係だった事もあってすっかり手懐けていたのだった。
エリザベート初の敗北感を味わう。
「えぇぇー?わたくしの夢はぁ??背中に乗れないわぁ…」
「リザ。大丈夫。俺の上に乗ればいい」
「は?」
「本にも書いてあった。ほら!ここだ!騎乗位は良いらしいぞ」
「わたくし、駄犬には乗りませんわ」
「じゃ、忠犬になるからさ…」
流れる沈黙。膨らみの見えるミカエルの股間。視線が熱い!!
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