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成婚パレード
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「あぁ!俺の嫁なのにっ」
その言葉を残し、無残にも引裂かれる2人。ちなみに片方は失神中。
控室に戻ると、デイジーとパンジーは土下座で一同を出迎える。
「この度は誠に!誠に申し訳ございませんでしたぁぁー!」
しかし、誰一人怒ったり、声を荒げる者はいない。
帝国皇帝においては笑いすぎてベルトの穴がブチっと1穴分だけ裂けてしまった。
侯爵夫妻はにこやかで、侯爵が目にハンカチをあてているのは娘が嫁ぐ寂しさだと言う。
夫人は「大事にしてくれそうな感じで良かったわぁ」とご満悦である。
前の婚約者が婚約者だっただけに、一同ミカエルの荒業いや、所業にも寛大である。
ただ一つ、大問題が残っている。エリザベートである。
失神してしまったため、式場に馬に乗って現れたのがミカエルなのか、いや違う。人間だったかどうかもエリザベートは判別出来ていない可能性がある。
夫人が言うには「籍も入ってるし逃げる子じゃない」とは言うものの、人の心は移ろい易い。
特に女心と秋の空と言うではないかとパンジーとデイジーはハラハラしている。
エリサベートの従兄弟たちも至って歓迎のムードを出している。
「心配しなくてもいいよ。案外ケロっとしてるからさ」
「それより君、可愛いね。僕と結婚しない?」
ドサクサに紛れてパンジーに求婚までする始末である。
お買い得物件ではある。帝国の次期宰相が約束された男で公爵家嫡男。
見目も大変麗しく、帝国は一夫一妻。浮気は断罪ものである。
パンジーの心が揺れるのは致し方ないだろう。
ちなみにデイジーには誰も求婚しない。何故か?従兄弟たち曰く。
「男の匂いがする」のだそうだ。ドーベルマン並みの嗅覚である。
「でも良かったわ。あの神父さんの隣にいる男だったらこっちが蹴り入れるところだったもの」
「えっ?…あれは第2王子なんですが…」
「あ~ダメダメ。あんな優男じゃエリーの手綱は無理」
――いや、第1王子よりはっ優良物件だと思いますが――
パンジーとデイジーは首を傾げるが一同意見は合致しているようである。
他国から見れば何かが違うのかも知れない。
【うわっ!熊っ!ヒグマが来たっ!】
お目覚めである。このまま永久に眠ったらどうしようかと思ったパンジーとデイジーは胸をなで下ろした。どうやら正常な判断が出来ている…出来ている?
「パンジー!熊がでたわ!」
「いえ、あの‥…申し上げにくいのですが…」
「デイジー!ヒグマよ!ヒグマが馬に乗ってたわ!」
「妃殿下‥‥誠に言いにくいのですが…」
「お父様っ!お母様っ!ヒグマが獲物をこうやって持ってましたわ!」
指をクイっと曲げてきっとクマが爪で鳥を持っていたと錯覚しているのだろう。
なんと痛ましい‥‥それを見てまた皇帝はツボに入る。
「ブワッハッハッハ」
「陛下?どうして笑っているのです?わたくし変な事を言いました?」
――いえ、見たままを実況くださいました――
深々と頭を下げるパンジーとデイジー。
「あれがミカエル殿下だよ」
「良かったわね。ワイルド系よ?」
――違うと思います。単に野生に生きているだけで――
哀れ。パンジーとデイジーの声はこの部屋の面々には届かない。
きっと妃殿下もガッカリしただろうと項垂れてしまった。
「なんだ。アレがミカエルさまなのね。はぁ驚いちゃった」
――それでいいの?あれでいいの?病んでませんか?――
「でもあの恰好でパレードしたら、わたくし猛獣使いと間違われるかも」
――そこ?心配するところはそこですか?――
どうやらエリザベートの心配はこの後予定されているパレードのようである。
確かに成婚パレードなのに片方がヒグマだと誤解を生みかねない。
心配するところはどこも間違っていないようだ。
場所は変わってこちらは新郎の控室である。
現在この部屋にミカエルはいない。冬眠に山に戻ったのではない。
湯殿で洗われているのである。
勿論、新郎用に用意された婚礼の儀用スーツはもう用済みである。
パレード用のスーツに着替え、エリザベートを馬車までエスコートするのだ。
そのためには小汚い恰好を何とかせねばならない。
偽装という大役をギリギリで回避し飛び蹴りまで披露した第2王子は疲労困憊である。
彼の行動を諫めるものなど誰もいない。あの場の飛び蹴りは正解だった。
ミカエルは湯殿で髪も散髪をされ、かなりスッキリしている。
元々は結構色白なのであるが、連日連夜野山を駆け回っていた為日焼けをしている。
鍛えた訳ではないが、余分な肉はなく引き締まった体である。
そうでなければ山の主のような大ウサギを仕留めるのは不可能に近い。
きちんとしたスーツに身を包んだミカエルが戻ってくると3人の妃はため息を吐く。
多分、マトモにすれば5人兄弟の中で一番の美丈夫である事は間違いない。
ついつい夫である第3王子のアルバートと比べてしまい魅入ってしまうのはサリアである。
サリアはイケメンが大好物なのだ。金を持っているイケメンなら尚良しである。
「この馬鹿垂れが。肝を冷やしたぞ」
「えっ?肝は冷やしてはダメです。乾燥させて漢方薬にするものです」
「違うわ!馬鹿垂れが」
「そうよ。もう寿命が縮まったわ」
「それは無理ですよ。寿命なんて測れるものではないですから」
「そうじゃないわよ!この子はもう!」
「ま、積もる話は今度でいいですか?奥さん迎えに行かないと♡」
<< はぁぁぁ?? >>
口をあんぐりと開けてしまう一同を置いて部屋を出て行くミカエル。
そこに第一騎兵隊団長のシグマがやってきた。
「殿下!貴方と言う人は!」
「第1王子ミカエルだが?」
「そうではありません!」
「いや、本人が言うから間違いない」
「違っ!違いませんが、今までどちらにおられたのです!」
「え?湯殿で洗われていたが?」
間違いではない。決して間違いではないが間違いなのだ。
そして花嫁の待つ控室の扉を開ける。
「本日は誠にありがとうございました。申し遅れましたが挨拶をさせて頂きます」
「おぉ婿殿。さぁさぁこちらへ」
「失礼を致します‥‥ハグッ…」
ちょこんと座るエリザベートを見て胸に痛みを感じるミカエル。
いや、痛みと言うよりもキュンキュンする感じである。
「美しい‥‥」
「ありがとうございます。ミカエルさまも素敵ですわよ」
「おぉぉう!なんと!言葉を返してくれるのか…この喜びをどう表現したらいい?」
「どうとでも?」
「麗しい私の妻、エリザベート」
「はい?」
「私の名はミカエル・シリユーズ・バロビン。あなたの夫だ」
「そうですね」
「この日より私は貴女の為に生き、貴女の為に死のう」
「教会だからついでにお葬式も?早すぎません?」
温度差が激しい夫婦が誕生した瞬間である。
マグマの如く熱い心のミカエル。液体窒素よりも冷たいエリザベート。
間違ってはいけない。決して嫌ってはいない。好きでもないだけである。
ミカエルの気持ちはチョモランマの登頂に成功した瞬間であるが、エリサベートの気持ちはマリアナ海溝の最深部を横這いしている…そんな夫婦である。
しかしエリザベートも貴族令嬢であり、これからはガチの王子妃である。
パレードの為に馬車に並んで座る2人。
「あの…エリザベート…手を繋ぎたいんだが」
「手は沿道に向かって振らねばなりません」
「じゃ…足を絡ませてもいい?」
「馬車は揺れます。ちゃんとした姿勢で足で踏ん張らねばなりません」
大歓声が沸き上がる中、成婚パレードが始まる。沿道の民に手を振る2人。
王宮前の広場で速度が落ちた時、ミカエルはエリザベートの髪にベール越し、キスをする。
【キャァァ♡】 さらに高まる歓声。
「殿下、サービスし過ぎでは?」
「ん~リップサービスだからさ」
「それ、意味が違いますよね」
「そうかな?アハハハ…(ちゅっ♡)」
「お控えなさいませ」
こめかみがピキリと音を立てる。
それでも王子妃スマイルは忘れないエリザベート。流石である。
「あ、どうしよう」
「どうなさいました?」
「夜を想像したら大変な事に…」
【バシッ!】 【ハグァッ!】 間、髪をいれず扇が振り下ろされる。
民に見えない部分で繰り広げられる馬車内格闘技。
「殿下、民に笑顔を」
「は、はぃぃ~」
モジ男になりながらも、顔は笑顔。王子スマイルはお手の物。流石である。
こうして成婚パレードは無事に終了したのであった。
その言葉を残し、無残にも引裂かれる2人。ちなみに片方は失神中。
控室に戻ると、デイジーとパンジーは土下座で一同を出迎える。
「この度は誠に!誠に申し訳ございませんでしたぁぁー!」
しかし、誰一人怒ったり、声を荒げる者はいない。
帝国皇帝においては笑いすぎてベルトの穴がブチっと1穴分だけ裂けてしまった。
侯爵夫妻はにこやかで、侯爵が目にハンカチをあてているのは娘が嫁ぐ寂しさだと言う。
夫人は「大事にしてくれそうな感じで良かったわぁ」とご満悦である。
前の婚約者が婚約者だっただけに、一同ミカエルの荒業いや、所業にも寛大である。
ただ一つ、大問題が残っている。エリザベートである。
失神してしまったため、式場に馬に乗って現れたのがミカエルなのか、いや違う。人間だったかどうかもエリザベートは判別出来ていない可能性がある。
夫人が言うには「籍も入ってるし逃げる子じゃない」とは言うものの、人の心は移ろい易い。
特に女心と秋の空と言うではないかとパンジーとデイジーはハラハラしている。
エリサベートの従兄弟たちも至って歓迎のムードを出している。
「心配しなくてもいいよ。案外ケロっとしてるからさ」
「それより君、可愛いね。僕と結婚しない?」
ドサクサに紛れてパンジーに求婚までする始末である。
お買い得物件ではある。帝国の次期宰相が約束された男で公爵家嫡男。
見目も大変麗しく、帝国は一夫一妻。浮気は断罪ものである。
パンジーの心が揺れるのは致し方ないだろう。
ちなみにデイジーには誰も求婚しない。何故か?従兄弟たち曰く。
「男の匂いがする」のだそうだ。ドーベルマン並みの嗅覚である。
「でも良かったわ。あの神父さんの隣にいる男だったらこっちが蹴り入れるところだったもの」
「えっ?…あれは第2王子なんですが…」
「あ~ダメダメ。あんな優男じゃエリーの手綱は無理」
――いや、第1王子よりはっ優良物件だと思いますが――
パンジーとデイジーは首を傾げるが一同意見は合致しているようである。
他国から見れば何かが違うのかも知れない。
【うわっ!熊っ!ヒグマが来たっ!】
お目覚めである。このまま永久に眠ったらどうしようかと思ったパンジーとデイジーは胸をなで下ろした。どうやら正常な判断が出来ている…出来ている?
「パンジー!熊がでたわ!」
「いえ、あの‥…申し上げにくいのですが…」
「デイジー!ヒグマよ!ヒグマが馬に乗ってたわ!」
「妃殿下‥‥誠に言いにくいのですが…」
「お父様っ!お母様っ!ヒグマが獲物をこうやって持ってましたわ!」
指をクイっと曲げてきっとクマが爪で鳥を持っていたと錯覚しているのだろう。
なんと痛ましい‥‥それを見てまた皇帝はツボに入る。
「ブワッハッハッハ」
「陛下?どうして笑っているのです?わたくし変な事を言いました?」
――いえ、見たままを実況くださいました――
深々と頭を下げるパンジーとデイジー。
「あれがミカエル殿下だよ」
「良かったわね。ワイルド系よ?」
――違うと思います。単に野生に生きているだけで――
哀れ。パンジーとデイジーの声はこの部屋の面々には届かない。
きっと妃殿下もガッカリしただろうと項垂れてしまった。
「なんだ。アレがミカエルさまなのね。はぁ驚いちゃった」
――それでいいの?あれでいいの?病んでませんか?――
「でもあの恰好でパレードしたら、わたくし猛獣使いと間違われるかも」
――そこ?心配するところはそこですか?――
どうやらエリザベートの心配はこの後予定されているパレードのようである。
確かに成婚パレードなのに片方がヒグマだと誤解を生みかねない。
心配するところはどこも間違っていないようだ。
場所は変わってこちらは新郎の控室である。
現在この部屋にミカエルはいない。冬眠に山に戻ったのではない。
湯殿で洗われているのである。
勿論、新郎用に用意された婚礼の儀用スーツはもう用済みである。
パレード用のスーツに着替え、エリザベートを馬車までエスコートするのだ。
そのためには小汚い恰好を何とかせねばならない。
偽装という大役をギリギリで回避し飛び蹴りまで披露した第2王子は疲労困憊である。
彼の行動を諫めるものなど誰もいない。あの場の飛び蹴りは正解だった。
ミカエルは湯殿で髪も散髪をされ、かなりスッキリしている。
元々は結構色白なのであるが、連日連夜野山を駆け回っていた為日焼けをしている。
鍛えた訳ではないが、余分な肉はなく引き締まった体である。
そうでなければ山の主のような大ウサギを仕留めるのは不可能に近い。
きちんとしたスーツに身を包んだミカエルが戻ってくると3人の妃はため息を吐く。
多分、マトモにすれば5人兄弟の中で一番の美丈夫である事は間違いない。
ついつい夫である第3王子のアルバートと比べてしまい魅入ってしまうのはサリアである。
サリアはイケメンが大好物なのだ。金を持っているイケメンなら尚良しである。
「この馬鹿垂れが。肝を冷やしたぞ」
「えっ?肝は冷やしてはダメです。乾燥させて漢方薬にするものです」
「違うわ!馬鹿垂れが」
「そうよ。もう寿命が縮まったわ」
「それは無理ですよ。寿命なんて測れるものではないですから」
「そうじゃないわよ!この子はもう!」
「ま、積もる話は今度でいいですか?奥さん迎えに行かないと♡」
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口をあんぐりと開けてしまう一同を置いて部屋を出て行くミカエル。
そこに第一騎兵隊団長のシグマがやってきた。
「殿下!貴方と言う人は!」
「第1王子ミカエルだが?」
「そうではありません!」
「いや、本人が言うから間違いない」
「違っ!違いませんが、今までどちらにおられたのです!」
「え?湯殿で洗われていたが?」
間違いではない。決して間違いではないが間違いなのだ。
そして花嫁の待つ控室の扉を開ける。
「本日は誠にありがとうございました。申し遅れましたが挨拶をさせて頂きます」
「おぉ婿殿。さぁさぁこちらへ」
「失礼を致します‥‥ハグッ…」
ちょこんと座るエリザベートを見て胸に痛みを感じるミカエル。
いや、痛みと言うよりもキュンキュンする感じである。
「美しい‥‥」
「ありがとうございます。ミカエルさまも素敵ですわよ」
「おぉぉう!なんと!言葉を返してくれるのか…この喜びをどう表現したらいい?」
「どうとでも?」
「麗しい私の妻、エリザベート」
「はい?」
「私の名はミカエル・シリユーズ・バロビン。あなたの夫だ」
「そうですね」
「この日より私は貴女の為に生き、貴女の為に死のう」
「教会だからついでにお葬式も?早すぎません?」
温度差が激しい夫婦が誕生した瞬間である。
マグマの如く熱い心のミカエル。液体窒素よりも冷たいエリザベート。
間違ってはいけない。決して嫌ってはいない。好きでもないだけである。
ミカエルの気持ちはチョモランマの登頂に成功した瞬間であるが、エリサベートの気持ちはマリアナ海溝の最深部を横這いしている…そんな夫婦である。
しかしエリザベートも貴族令嬢であり、これからはガチの王子妃である。
パレードの為に馬車に並んで座る2人。
「あの…エリザベート…手を繋ぎたいんだが」
「手は沿道に向かって振らねばなりません」
「じゃ…足を絡ませてもいい?」
「馬車は揺れます。ちゃんとした姿勢で足で踏ん張らねばなりません」
大歓声が沸き上がる中、成婚パレードが始まる。沿道の民に手を振る2人。
王宮前の広場で速度が落ちた時、ミカエルはエリザベートの髪にベール越し、キスをする。
【キャァァ♡】 さらに高まる歓声。
「殿下、サービスし過ぎでは?」
「ん~リップサービスだからさ」
「それ、意味が違いますよね」
「そうかな?アハハハ…(ちゅっ♡)」
「お控えなさいませ」
こめかみがピキリと音を立てる。
それでも王子妃スマイルは忘れないエリザベート。流石である。
「あ、どうしよう」
「どうなさいました?」
「夜を想像したら大変な事に…」
【バシッ!】 【ハグァッ!】 間、髪をいれず扇が振り下ろされる。
民に見えない部分で繰り広げられる馬車内格闘技。
「殿下、民に笑顔を」
「は、はぃぃ~」
モジ男になりながらも、顔は笑顔。王子スマイルはお手の物。流石である。
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