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解雇と募集
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昼前までウロウロとしたエリザベートは部屋に戻ると早速3人を呼び出した。
エリザベートに仕える、パンジー、デイジー、リジーの3人は王妃から直接言い渡されている者である。交代だとは言ってもリジーは男性である事からエリザベートの着替えなどを手伝う事は出来ない。
それは国が違っても同じなのだと少し安堵したが、従者、侍女に安堵をしたのではない。
単に着替えなどについてだけである。
先ずは本だけではなく実際はどうなのかという確認である。
それならば、目の前に並ぶ3人に聞いた方が手っ取り早い。
大まかな所は万国共通であろうとも、本に書いてあるからとその著者が正しいとは限らない。
ハウツー本を鵜呑みにし、頼りにするのは愚か者だけである。
なんせ、ハウツー本を書いている者は初心者ではない。初心者はハウツー本に書かれている文字に戸惑い、文字を理解するためにまた別の本を買う。
何事も本当に理解し、行動したければ実践している者を見て盗み、判らなければ聞く事である。エリザベートはその点も両親から厳しく指導をされてきた。
「確認をしたい事があるの」
エリザベートの意図が何処にあるのかを表情から読み取ろうとしているが、仮面をつける事など容易いことである。それが出来なければ貴族令嬢としての第一歩は踏み出せない。
「わたくしはこの国、バロビン国についての知識は所詮本に書かれている事しか知りません。なのであなた方に教えて頂きたいの」
「どのような事でございましょうか」
「この国では、朝や夕方の挨拶はしなくてもいいの?」
「いえ、そのような事は御座いません。すれ違えば挨拶は致します」
「あら?でも今朝リジーにはわたくしから挨拶をしたでしょう?」
「あれはっ!そのっ…気がつかなくて…申し訳ございませんっ」
「存在感がそこまでなかったのね。ごめんなさい」
「ちっ違います…その…考え事をしていて」
「ならこの王子宮の使用人はみんな朝から考え事をしているのね」
「どういう事でしょうか」
「だって、誰も朝は挨拶はしてくれなかったわよ?」
リジーを睨んだパンジーもデイジーも最後の言葉に思わずエリザベートの顔を見る。
部署が違っても朝すれ違えば挨拶をするのは当たり前である。
ましてそれが、宮の長。第一王子の妻となる人ならば尚更である。
何かを言いたそうなデイジーを制してエリザベートは続ける。
「この国では掃除…と言うものを行う時に明らかに埃があってもそれを可となさるの?」
「いえ、そのような事は御座いません」
「ではパンジー。あなたの左後方にあるチェストに置いてある花瓶を持ち上げてみて」
「花瓶でございますか?」
「そうよ」とエリザベートが返事をするとチェストに近づき花瓶を持ち上げる。
花瓶の底の形に汚れがつき、持ち上げた花瓶も膨らんだ部分に埃が付いている。
「も、申し訳ありませんっ。直ぐにっ」
「後でね。今は質問に答えて頂戴」
埃を薄っすらと被った花瓶をエプロンで拭きとるとパンジーは姿勢を正す。
「この国では、水は貴重だと聞いたけれどリネンや衣類の洗濯はしないのかしら?」
「いえ、そのような事は御座いません」
「リネンは毎日交換しますし、ご着用になり洗濯が必要なものは洗濯係が洗います」
「まさか‥‥すみません。失礼します」
デイジーはエリサベートの寝台が置かれている奥のスペースに行き「ヒッ」と声を小さく上げる。振り返ると眉間に皺を寄せて、「申し訳ございません」と頭を垂れた。
「それも、後でね。こちらに並んで頂戴」
「はい」
デイジーが元居た場所に並ぶと、エリザベートは今の時刻を尋ねる。
それぞれが腕時計を確認し、部屋の中にある壁掛け時計も確認をする。
「12時51分で御座います」小さくリジーが呟くように答える。
何が言いたいのかはよく判ったのだろう。3人とも顔色は良くない。
「朝食については早朝にわたくしが散歩に参りましたので、誰かが来たのかも知れない。それは不問にするとしてもこの部屋に戻ってそろそろ1時間。この国では昼食という習慣がない?」
「いえ、御座います。朝、昼、夕と食事は余程の事がない限り3度です」
「では、今はその余程…という事でよろしいかしら」
「それから」と言いながら立ち上がり、寝台の奥にある扉まで歩いて3人をコイコイと手招きをする。ベッドメイクもされていない寝台に不快な表情を見せながらも3人がやってくる。
「パンジー。この奥の部屋は何かご存じかしら」
「はい、おトイレ‥‥で御座いますが」
「ではデイジー。扉を開けて確認してくださる?」
はいと小さく返事をしてゆっくりと扉を開くデイジー。
「何よ!これは!」
その声に、リジーもパンジーも扉の奥を覗く。
そこには朝のまま、便器がない状態の空間が広がっていた。
今度はソファに座り、項垂れる3人に向かいに座れと指示をする。
持参してきた菓子を3人に手渡し「疲れた時は甘い物」と言って食べるように言う。
毒を警戒するかと先に同じものを口に放り込むエリザベート。
恐る恐るパンジーが先に口に入れる。途端に驚いた顔になる。
「チョコレート?!」
「そうよ。ミルクチョコレートだからリジーには少し甘いかもね」
パンジーの言葉にリジーもデイジーも包み紙から取り出し口に放り込む。
バロビン国ではかなり高価で国王でもそうそう口にする事はない菓子である。
じっくりと味わう3人に追加で幾つかを勧め乍ら切り出す。
「この宮の女主人は誰かしら?」
<<エリザベート様で御座います>>
「今、主である第一王子は留守。この宮の主として命令します」
<<はい>>
【使用人全員を解雇します】
予想された言葉だとは言え、全員となると日常生活に支障がでるのは明らかである。
しかしエリザベートは動じない。
「大丈夫よ。元々の持ち場に戻るだけでしょう?」
3人は悟った。エリザベートは推定を確定にするために自分たちをここに呼んだのだ。
言っている事は間違いではない。今この宮にいる使用人は王妃に進言をして第二王子以下の王子の妻たちが送り込んだ使用人である。
おそらく挨拶や、食事の呼び出し、リネンや洗濯、掃除など後で言い訳できるような稚拙な嫌がらせはほぼ全員の王子妃であろう。しかし便器を外すという明らかな物は間違いなくあの王子妃だと推測した。
下級貴族の令嬢で当初は愛人で王子宮に上がり、正妃である王子妃が不慮の死を遂げた事で繰り上がった王子妃。
戻された使用人達は鰾膠も無く追い出されるだろう。
数か月ここに務めたのではなく、到着の翌日には追い出されるのである。そんな者を受け入れる事はない。自分たちがした事をなかった事にするには追い出すのが手っ取り早い。
「今後の使用人はどうするのです?」
「雇いますよ?雇わないと宮が回らないでしょう?」
「ですが、どうやって」
「求人募集をするわ。全土に向けて」
いやいや、それは!と止める3人だがエリザベートは聞く耳を持たない。
「予算がつきませんよ!」と言ってみれば「自腹を切るから」と涼しい顔である上に。
【その方が国も無駄金使わずに済むでしょう?】
と、今度はキャンディを口に放り込んでいる。
3日後、荒廃した全土に向けて求人募集がされる。各地にあるのは警備隊の駐屯所と教会である。
それぞれに張り紙をして、文字が読めない者には口頭で説明をしてもらうように手配をする。
勿論ポケットマネーである。
使用人大募集!!
掃除が好き、洗濯が好き、馬が好き、剪定が出来る、体力だけはある、子供が好き‥etc
給料現金払い。交通費支給。皆勤手当、傷病手当あり。賞与も年3回!!
文字の読み書きできなくてもOK!住み込み可!未経験可!経験者優遇!
15歳以上なら年齢不問。条件付きで往復交通費は支給。詳細は面接で!
この募集に全土から当然の如く応募者が殺到した。その数4500名超え。
それまで王子宮に派遣されていた者は追い出され、応募してくるのも予想の範囲内。
使えるかどうかの見極めるのも女主人の役目であるが使えないから出されたのである。
雇い入れる予定はない。
「しばらくは暇が潰せそう♡」
エリザベートはチョコレートを口に放り込んだ。
エリザベートに仕える、パンジー、デイジー、リジーの3人は王妃から直接言い渡されている者である。交代だとは言ってもリジーは男性である事からエリザベートの着替えなどを手伝う事は出来ない。
それは国が違っても同じなのだと少し安堵したが、従者、侍女に安堵をしたのではない。
単に着替えなどについてだけである。
先ずは本だけではなく実際はどうなのかという確認である。
それならば、目の前に並ぶ3人に聞いた方が手っ取り早い。
大まかな所は万国共通であろうとも、本に書いてあるからとその著者が正しいとは限らない。
ハウツー本を鵜呑みにし、頼りにするのは愚か者だけである。
なんせ、ハウツー本を書いている者は初心者ではない。初心者はハウツー本に書かれている文字に戸惑い、文字を理解するためにまた別の本を買う。
何事も本当に理解し、行動したければ実践している者を見て盗み、判らなければ聞く事である。エリザベートはその点も両親から厳しく指導をされてきた。
「確認をしたい事があるの」
エリザベートの意図が何処にあるのかを表情から読み取ろうとしているが、仮面をつける事など容易いことである。それが出来なければ貴族令嬢としての第一歩は踏み出せない。
「わたくしはこの国、バロビン国についての知識は所詮本に書かれている事しか知りません。なのであなた方に教えて頂きたいの」
「どのような事でございましょうか」
「この国では、朝や夕方の挨拶はしなくてもいいの?」
「いえ、そのような事は御座いません。すれ違えば挨拶は致します」
「あら?でも今朝リジーにはわたくしから挨拶をしたでしょう?」
「あれはっ!そのっ…気がつかなくて…申し訳ございませんっ」
「存在感がそこまでなかったのね。ごめんなさい」
「ちっ違います…その…考え事をしていて」
「ならこの王子宮の使用人はみんな朝から考え事をしているのね」
「どういう事でしょうか」
「だって、誰も朝は挨拶はしてくれなかったわよ?」
リジーを睨んだパンジーもデイジーも最後の言葉に思わずエリザベートの顔を見る。
部署が違っても朝すれ違えば挨拶をするのは当たり前である。
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何かを言いたそうなデイジーを制してエリザベートは続ける。
「この国では掃除…と言うものを行う時に明らかに埃があってもそれを可となさるの?」
「いえ、そのような事は御座いません」
「ではパンジー。あなたの左後方にあるチェストに置いてある花瓶を持ち上げてみて」
「花瓶でございますか?」
「そうよ」とエリザベートが返事をするとチェストに近づき花瓶を持ち上げる。
花瓶の底の形に汚れがつき、持ち上げた花瓶も膨らんだ部分に埃が付いている。
「も、申し訳ありませんっ。直ぐにっ」
「後でね。今は質問に答えて頂戴」
埃を薄っすらと被った花瓶をエプロンで拭きとるとパンジーは姿勢を正す。
「この国では、水は貴重だと聞いたけれどリネンや衣類の洗濯はしないのかしら?」
「いえ、そのような事は御座いません」
「リネンは毎日交換しますし、ご着用になり洗濯が必要なものは洗濯係が洗います」
「まさか‥‥すみません。失礼します」
デイジーはエリサベートの寝台が置かれている奥のスペースに行き「ヒッ」と声を小さく上げる。振り返ると眉間に皺を寄せて、「申し訳ございません」と頭を垂れた。
「それも、後でね。こちらに並んで頂戴」
「はい」
デイジーが元居た場所に並ぶと、エリザベートは今の時刻を尋ねる。
それぞれが腕時計を確認し、部屋の中にある壁掛け時計も確認をする。
「12時51分で御座います」小さくリジーが呟くように答える。
何が言いたいのかはよく判ったのだろう。3人とも顔色は良くない。
「朝食については早朝にわたくしが散歩に参りましたので、誰かが来たのかも知れない。それは不問にするとしてもこの部屋に戻ってそろそろ1時間。この国では昼食という習慣がない?」
「いえ、御座います。朝、昼、夕と食事は余程の事がない限り3度です」
「では、今はその余程…という事でよろしいかしら」
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「パンジー。この奥の部屋は何かご存じかしら」
「はい、おトイレ‥‥で御座いますが」
「ではデイジー。扉を開けて確認してくださる?」
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「何よ!これは!」
その声に、リジーもパンジーも扉の奥を覗く。
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今度はソファに座り、項垂れる3人に向かいに座れと指示をする。
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しかしエリザベートは動じない。
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3人は悟った。エリザベートは推定を確定にするために自分たちをここに呼んだのだ。
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おそらく挨拶や、食事の呼び出し、リネンや洗濯、掃除など後で言い訳できるような稚拙な嫌がらせはほぼ全員の王子妃であろう。しかし便器を外すという明らかな物は間違いなくあの王子妃だと推測した。
下級貴族の令嬢で当初は愛人で王子宮に上がり、正妃である王子妃が不慮の死を遂げた事で繰り上がった王子妃。
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数か月ここに務めたのではなく、到着の翌日には追い出されるのである。そんな者を受け入れる事はない。自分たちがした事をなかった事にするには追い出すのが手っ取り早い。
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「雇いますよ?雇わないと宮が回らないでしょう?」
「ですが、どうやって」
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いやいや、それは!と止める3人だがエリザベートは聞く耳を持たない。
「予算がつきませんよ!」と言ってみれば「自腹を切るから」と涼しい顔である上に。
【その方が国も無駄金使わずに済むでしょう?】
と、今度はキャンディを口に放り込んでいる。
3日後、荒廃した全土に向けて求人募集がされる。各地にあるのは警備隊の駐屯所と教会である。
それぞれに張り紙をして、文字が読めない者には口頭で説明をしてもらうように手配をする。
勿論ポケットマネーである。
使用人大募集!!
掃除が好き、洗濯が好き、馬が好き、剪定が出来る、体力だけはある、子供が好き‥etc
給料現金払い。交通費支給。皆勤手当、傷病手当あり。賞与も年3回!!
文字の読み書きできなくてもOK!住み込み可!未経験可!経験者優遇!
15歳以上なら年齢不問。条件付きで往復交通費は支給。詳細は面接で!
この募集に全土から当然の如く応募者が殺到した。その数4500名超え。
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使えるかどうかの見極めるのも女主人の役目であるが使えないから出されたのである。
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