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婚約解消を告げてみた
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議会場を出て財務大臣、国務大臣、その補佐官と回廊を歩いていく。
中心にいるのが21歳の令嬢という点を除けばお偉い様の御一行のお通りである。
「こちらですが視察の日程については後日お知らせいたします」
「いえ、わたくしは同行しませんので結果をお願いいたしますわ」
「承知致しました」
「第14街道の整備ですが、フラステ川中流域の通行止めに際しては如何しましょう」
「そうね、そこは迂回路もない地域ね。夜間は危険だし検討しましょう」
「では住民への説明会についても未定でよろしいですか」
「いえ、工事をするのは確定だから説明会は予定通りに」
「承知致しました」
不明点の指示を受けた補佐官は急ぎ列を離れて各自の省庁に戻っていく。
「ところでソリアス第二王子殿下のご容体はどうなのかしら?」
「第二王子殿下については峠を越えて快方に向かっているとの事です」
「良かったわ。起き上がれるようになったら議会から消化の良い果物などを贈りましょうか」
「そうですね。まだ2歳ですしそのように手配を致しましょう」
年の離れた第二王子は【麻疹】に罹患し高熱が続き発疹が出ていた。
市井で流行っているとの事で、側付侍女などは帰宅せずにエリザベートの勧めで【酢】を混ぜた水で手洗い消毒をして管理を徹底していたが、【誰】が持ち込んだかは明らかだった。
第二王子が発症する10日ほど前、カ―セルとクララが例の如く茶会を行っていた。
その時に、カ―セルに土産だと言って露店で売られている果物を籠に入れて持ってきた。
不特定多数の人間が麻疹が流行っている状況で触れたと容易に想像できる果物だったため、従者が持ち込みを注意したがその従者をカ―セルが叱りつけた。麻疹の経験があるカ―セルもクララも楽観視しており、偶々散歩で通りかかった第二王子に声をかけた。
「リンゴもバナナもあるわよ?リンゴはそのまま皮ごと食べると美味しいのよ?」
そう言って、目の前でクララが食べると第二王子も真似をして食べてしまった。
上手く齧れない第二王子にその場でリンゴをナイフで切り手渡しで食べさせる。
残念だがクララに手洗いの習慣はない。
だが、感染源がクララだろうと思ってもカ―セルのお気に入りである。
せいぜい王妃から「こんな時期に」と叱られるだけのカ―セルに反省の色はない。
あまりにも年が離れているため誰もが言い出せないが、第一王子であり現在の王太子カ―セルよりも第二王子の方が余程にマシだと思っている。
その為、近いうちに幼児教育からであるが始まる教育の講師陣は重鎮たちが両陛下の意見を聞くだけにとどめた上で決定をしている。
何事も【検討はしてみた】というパフォーマンスは必要なのだ。
第二王子に見舞いの品を指示していた所に、エリザベートの名を呼ぶ声が聞こえた。
「エリザベート!こんな所で!」
大臣たちの眉間に皺が寄る。【こんな所?】と誰もが思っている。先程まで重要な会議だったのだ。これから評決を持って国王の元に行く途中なのである。
「全く、待てど暮らせど来やしない。何様のつもりだ」
「畏れながら本日は何の連絡も受けておりませんが」
「2時間ほど前に連絡をしただろうが!」
「2時間?申し訳ございません、本日は5時間前より議会に出席しておりましたので」
「くだらん。俺の代理だろうが。クララが可哀想だろう。優先順位を考えろ」
余りの言いように大臣補佐官の1人が一歩前に出てしまった。
咄嗟にエリザベートは手を伸ばしそれ以上進むなと補佐官に目を合わせる。
そこにバタバタと足音をさせながらクララが走ってカ―セルの腕にしがみ付いた。
「やっと追いついた!ダメだよぉカル!怒っちゃダメ!」
「いや、この女には己の立場と言うものが判っていない」
その場にいる目の前の2人以外は【己の立場?】と心で復唱をしてみる。
勿論それは言った本人に誰の事かと聞きたい気持ちを瞬時に押えてである。
「本当に役に立たん女だ。こんな女と結婚をすると思うと反吐が出る」
エリザベートは心で「もう一声!」と叫ぶがカ―セルはその先を言わない。
大変な事になるから言わないのではなく【父に叱られる】から言わないのだ。
煽ってみたい気持ちもあったが、上手く伝わらなければ失敗してしまう。
ここは直球で勝負した方が良さそうだと一歩前に出た。
「殿下、そこまでの仰りようです。お心に添うのが臣下の務め」
エリザベートの言葉に大臣たちが息を飲む。カ―セルの答え次第で動かねばならない。誰もが呼吸も忘れて次の言葉を待つ。
【殿下、婚約を解消致しませんか?】
「なっ…よしわか…」
「だめぇ!そんなの絶対に!絶対にぃぃ!だめぇぇ!!」
「クララ?どうしたんだ?」
「ダメよ!婚約を解消なんて絶対だめっダメなんだから!うわぁぁぁん!」
思わず心で舌打ちをしてしまうエリザベート、ホッと胸をなで下ろす大臣たち。
こんな所で証人になるなど荷が重すぎるのである。
カ―セルはわんわん泣き出したクララを宥めるのに手いっぱいで他の事は見えていない。
エリザベートは周りに「参りましょうか」と声を掛けてその場を立ち去った。
ここで言葉は得られなかったが、侯爵家側は解消でも構わないとカ―セルだけではなく周りに知られるだけでも収穫はあったのである。
周りの面々はどうしてクララが反対をしたのかは判っていない。
誰もがカ―セルとクララは想い合っていると思っているのだ。ただクララでは国が傾いてしまう。
カ―セルは王の器ではないのだ。それを支えるのがエリザベートなら文句はない。
エリザベートが王妃で実権を握り、クララはただ寵愛を受ける愛人か手を回せば側妃か妾妃が関の山。誰もがそう考えていた。
エリザベートだけが知っている。カ―セルがクララを大事にしているのは間違いない。それは皆と同じ共通の認識である。そこからが違うのだ。クララが好きなのはアイザック。
カ―セルの側近で会いに行けば高確率でアイザックに会えるから来ているだけだ。
クララはカ―セルに親しすぎる友人以上の感情を持っていない。悲しい事に「友人枠」なのだ。
この婚約が無くなれば、もしかすればカ―セルが権力にものを言わせてクララを召し上げるかも知れないが、その時は既に婚約者でも何でもない。好きにすればいい。
問題は当事者で片づけてくれればいいだけである。
舞台はハミルトン公爵家の夜会である。
公爵夫妻も子息もかなり乗り気で、婚約者の令嬢もその両親ももろ手を挙げて賛成したと言う。
3大公爵家の3家共が【末代まで語れる笑い話】に興味津々なのである。
公爵家ともなれば、カ―セルがやらかしてくれる事であわよくば玉座が転がり込んでくる。
3家とも王家の血筋なのである。勿論筆頭のハミルトン公爵家がその時は舵を切るが、重要なポストを全て押さえる事が出来、例え第二王子が成人するまでと言っても約20年国を統べる事が出来るのである。
国王がカ―セルを廃嫡や王太子を降格し王子にしたとしても、その件で今まで以上に国王の求心力は弱まり貴族の力が強くなるだろう。
どっちに転んでも旨味しかない。早速に公爵家同士、そして親族間で結束が強くなっている。
その為の下準備も進んでいる。
3大公爵家の1つ。ボーフィート家は親族のハヴァー伯爵家に資金を提供し、元子爵夫人を好待遇で家庭教師として1か月半雇い入れた。
通常20万ほどの給金に対し、85万という高給を提示。元子爵夫人はそれに飛びついた。
同じ時期、クララのドレスを作るため基本となる型の製作も始まった。
予定では1カ月後、つまり夜会まで2週間足らずの時点でドレスの発注に備えるためである。
アレンジしやすいデザイン本の編集も始まっている。
選択肢の少ない中から微調整しやすい物を選んでもらい仕上げるのである。
ドレスの代金は100万だが【超特急】になるためリーズナブルな価格だ。
急ぎなので布がこれしかないと一番流通している布地を使う事も決まっている。
「お母様、あのドレス普通に仕立てればおいくらなの?」
「10万もしないはずよ(ニヤリ)」
「うわぁ‥‥口元を扇で隠してくださいませ」
「あら?でも伯爵家は無料で家庭教師が1カ月半付くし、あのご令嬢はドレスが着られる。仕立て屋は10万弱なのに15万で品が売れる。ボーフィート家は出した85万は戻ってくるんだもの。元子爵家だって超特急でドレスを作れるのよ?みんな大喜びじゃない?」
「お母様‥‥本当に口元を扇で隠してくださいませ」
またもや娘にダメ出しをされる侯爵夫人なのだった。
中心にいるのが21歳の令嬢という点を除けばお偉い様の御一行のお通りである。
「こちらですが視察の日程については後日お知らせいたします」
「いえ、わたくしは同行しませんので結果をお願いいたしますわ」
「承知致しました」
「第14街道の整備ですが、フラステ川中流域の通行止めに際しては如何しましょう」
「そうね、そこは迂回路もない地域ね。夜間は危険だし検討しましょう」
「では住民への説明会についても未定でよろしいですか」
「いえ、工事をするのは確定だから説明会は予定通りに」
「承知致しました」
不明点の指示を受けた補佐官は急ぎ列を離れて各自の省庁に戻っていく。
「ところでソリアス第二王子殿下のご容体はどうなのかしら?」
「第二王子殿下については峠を越えて快方に向かっているとの事です」
「良かったわ。起き上がれるようになったら議会から消化の良い果物などを贈りましょうか」
「そうですね。まだ2歳ですしそのように手配を致しましょう」
年の離れた第二王子は【麻疹】に罹患し高熱が続き発疹が出ていた。
市井で流行っているとの事で、側付侍女などは帰宅せずにエリザベートの勧めで【酢】を混ぜた水で手洗い消毒をして管理を徹底していたが、【誰】が持ち込んだかは明らかだった。
第二王子が発症する10日ほど前、カ―セルとクララが例の如く茶会を行っていた。
その時に、カ―セルに土産だと言って露店で売られている果物を籠に入れて持ってきた。
不特定多数の人間が麻疹が流行っている状況で触れたと容易に想像できる果物だったため、従者が持ち込みを注意したがその従者をカ―セルが叱りつけた。麻疹の経験があるカ―セルもクララも楽観視しており、偶々散歩で通りかかった第二王子に声をかけた。
「リンゴもバナナもあるわよ?リンゴはそのまま皮ごと食べると美味しいのよ?」
そう言って、目の前でクララが食べると第二王子も真似をして食べてしまった。
上手く齧れない第二王子にその場でリンゴをナイフで切り手渡しで食べさせる。
残念だがクララに手洗いの習慣はない。
だが、感染源がクララだろうと思ってもカ―セルのお気に入りである。
せいぜい王妃から「こんな時期に」と叱られるだけのカ―セルに反省の色はない。
あまりにも年が離れているため誰もが言い出せないが、第一王子であり現在の王太子カ―セルよりも第二王子の方が余程にマシだと思っている。
その為、近いうちに幼児教育からであるが始まる教育の講師陣は重鎮たちが両陛下の意見を聞くだけにとどめた上で決定をしている。
何事も【検討はしてみた】というパフォーマンスは必要なのだ。
第二王子に見舞いの品を指示していた所に、エリザベートの名を呼ぶ声が聞こえた。
「エリザベート!こんな所で!」
大臣たちの眉間に皺が寄る。【こんな所?】と誰もが思っている。先程まで重要な会議だったのだ。これから評決を持って国王の元に行く途中なのである。
「全く、待てど暮らせど来やしない。何様のつもりだ」
「畏れながら本日は何の連絡も受けておりませんが」
「2時間ほど前に連絡をしただろうが!」
「2時間?申し訳ございません、本日は5時間前より議会に出席しておりましたので」
「くだらん。俺の代理だろうが。クララが可哀想だろう。優先順位を考えろ」
余りの言いように大臣補佐官の1人が一歩前に出てしまった。
咄嗟にエリザベートは手を伸ばしそれ以上進むなと補佐官に目を合わせる。
そこにバタバタと足音をさせながらクララが走ってカ―セルの腕にしがみ付いた。
「やっと追いついた!ダメだよぉカル!怒っちゃダメ!」
「いや、この女には己の立場と言うものが判っていない」
その場にいる目の前の2人以外は【己の立場?】と心で復唱をしてみる。
勿論それは言った本人に誰の事かと聞きたい気持ちを瞬時に押えてである。
「本当に役に立たん女だ。こんな女と結婚をすると思うと反吐が出る」
エリザベートは心で「もう一声!」と叫ぶがカ―セルはその先を言わない。
大変な事になるから言わないのではなく【父に叱られる】から言わないのだ。
煽ってみたい気持ちもあったが、上手く伝わらなければ失敗してしまう。
ここは直球で勝負した方が良さそうだと一歩前に出た。
「殿下、そこまでの仰りようです。お心に添うのが臣下の務め」
エリザベートの言葉に大臣たちが息を飲む。カ―セルの答え次第で動かねばならない。誰もが呼吸も忘れて次の言葉を待つ。
【殿下、婚約を解消致しませんか?】
「なっ…よしわか…」
「だめぇ!そんなの絶対に!絶対にぃぃ!だめぇぇ!!」
「クララ?どうしたんだ?」
「ダメよ!婚約を解消なんて絶対だめっダメなんだから!うわぁぁぁん!」
思わず心で舌打ちをしてしまうエリザベート、ホッと胸をなで下ろす大臣たち。
こんな所で証人になるなど荷が重すぎるのである。
カ―セルはわんわん泣き出したクララを宥めるのに手いっぱいで他の事は見えていない。
エリザベートは周りに「参りましょうか」と声を掛けてその場を立ち去った。
ここで言葉は得られなかったが、侯爵家側は解消でも構わないとカ―セルだけではなく周りに知られるだけでも収穫はあったのである。
周りの面々はどうしてクララが反対をしたのかは判っていない。
誰もがカ―セルとクララは想い合っていると思っているのだ。ただクララでは国が傾いてしまう。
カ―セルは王の器ではないのだ。それを支えるのがエリザベートなら文句はない。
エリザベートが王妃で実権を握り、クララはただ寵愛を受ける愛人か手を回せば側妃か妾妃が関の山。誰もがそう考えていた。
エリザベートだけが知っている。カ―セルがクララを大事にしているのは間違いない。それは皆と同じ共通の認識である。そこからが違うのだ。クララが好きなのはアイザック。
カ―セルの側近で会いに行けば高確率でアイザックに会えるから来ているだけだ。
クララはカ―セルに親しすぎる友人以上の感情を持っていない。悲しい事に「友人枠」なのだ。
この婚約が無くなれば、もしかすればカ―セルが権力にものを言わせてクララを召し上げるかも知れないが、その時は既に婚約者でも何でもない。好きにすればいい。
問題は当事者で片づけてくれればいいだけである。
舞台はハミルトン公爵家の夜会である。
公爵夫妻も子息もかなり乗り気で、婚約者の令嬢もその両親ももろ手を挙げて賛成したと言う。
3大公爵家の3家共が【末代まで語れる笑い話】に興味津々なのである。
公爵家ともなれば、カ―セルがやらかしてくれる事であわよくば玉座が転がり込んでくる。
3家とも王家の血筋なのである。勿論筆頭のハミルトン公爵家がその時は舵を切るが、重要なポストを全て押さえる事が出来、例え第二王子が成人するまでと言っても約20年国を統べる事が出来るのである。
国王がカ―セルを廃嫡や王太子を降格し王子にしたとしても、その件で今まで以上に国王の求心力は弱まり貴族の力が強くなるだろう。
どっちに転んでも旨味しかない。早速に公爵家同士、そして親族間で結束が強くなっている。
その為の下準備も進んでいる。
3大公爵家の1つ。ボーフィート家は親族のハヴァー伯爵家に資金を提供し、元子爵夫人を好待遇で家庭教師として1か月半雇い入れた。
通常20万ほどの給金に対し、85万という高給を提示。元子爵夫人はそれに飛びついた。
同じ時期、クララのドレスを作るため基本となる型の製作も始まった。
予定では1カ月後、つまり夜会まで2週間足らずの時点でドレスの発注に備えるためである。
アレンジしやすいデザイン本の編集も始まっている。
選択肢の少ない中から微調整しやすい物を選んでもらい仕上げるのである。
ドレスの代金は100万だが【超特急】になるためリーズナブルな価格だ。
急ぎなので布がこれしかないと一番流通している布地を使う事も決まっている。
「お母様、あのドレス普通に仕立てればおいくらなの?」
「10万もしないはずよ(ニヤリ)」
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「あら?でも伯爵家は無料で家庭教師が1カ月半付くし、あのご令嬢はドレスが着られる。仕立て屋は10万弱なのに15万で品が売れる。ボーフィート家は出した85万は戻ってくるんだもの。元子爵家だって超特急でドレスを作れるのよ?みんな大喜びじゃない?」
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