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期間限定妻はオプションを付ける
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「フェインさん、こっち!こっち」
いつものように侯爵家の侍女さん3人を連れて庭師さんの担当区画を巡っております。
すっかり打ち解けてわたくしも庭師さんとお揃いのツナギを着て土いじりをするのです。
今日はミニトマトの苗に添え木をするのです。
キュッキュと結んでいきますが、未だにアンプレッセ様の野菜のお残しは続いております。
「こんなに瑞々しくて美味しいのにどうして残すのかしら」
「うーん…嫌いな人は嫌いだからねぇ。小さいときは結構食べてくれたんだが今は野菜より肉のほうが好きだからじゃないかなぁ」
判らないでもないのですが、やはりそれは良くないと思うのです。
庭師さん達の努力を知ってもらおうと散歩をお勧めしたのですが、本当に散歩をしていただけとは。ストレートに言った方が伝わりやすかったのかしら。
「坊ちゃんだったら…あ、旦那様の事ですよ?そうだなぁ勝負を挑んで勝ったら言う事を聞いてくれると思います。昔から勝ち負けで負ければ仕方ないと受け入れてましたから」
と、言う事で帰宅をされたアンプレッセ様にわたくしは勝負を挑んだので御座います。
「デンティド侯爵様!わたくしと勝負をしてくださいませ」
「勝負?どうして」
「お野菜をいつも残されるからですわ。パンも齧ったままで次のパンを齧る事もあります。ちゃんとした席でのお食事だけマナーや所作をこなせばよいものでは御座いませんもの。わたくしが勝てばお残し厳禁で勝負をしてくださいませ」
「ハハハ、何を言うかと思ったら。君も残しても――」
「お黙りなさいませ!!何を仰るのです。1つの野菜を作るのに庭師さんたちがどれほどの努力をしているかご存じですの?美味しくなるように土から手間をかけているのです。既に他国では平面ではなく立体的に野菜を育てています。それも一つの方法ですが折角大地の恵みを得られるのに、残してもいいだなんて!」
「いや、すまない、言いすぎ――」
「デンティド侯爵様はモッタイナイお化けに憑りつかれてもいいのですか?夜な夜なもったいな~いって出て来て、お花を摘みに行く事も出来なくなるのですよ!」
「ハハハ。それは困るな。そんなお化けがいたら捕まえてみせてやろう」
「笑い事では御座いません。大きな口に飲み込まれてしまうのですよ!」
「大丈夫だ。その時はポマードと唱える。それくらいは寝言でも言える。まぁ付き合ってやろう。何で勝負をするのだ」
おかしいですわ。生前お爺様はそう仰っていたのに、アンプレッセ様は怖がりもしない。
わたくしは怖くて朝まで我慢しましたのに!
ですが、この勝負は頂きましたわ。お爺様仕込みのわたくしの攻めを防いで御覧なさいませ!
「これですわ!」
「なんだ、それは…チェスではないな。ハッ!ジャーポンのショーギかっ!」
アンプレッセ様がチェスが得意なのは知っております。その程度は調べておりますわ。
さすが脳筋。侮れませんわ。騎士団では群を抜く腕前だとか。
戦略、戦法が必要なチェスでアンプレッセ様に勝てるとは思っておりません。
しかし、同じく戦略、戦法が必要と言えど!
意表を突いたショーギ。そして指し手は勿論・・・。
「参りますわよ‥‥フフフ…(ぱちん)」
「1九歩っ!まさかっ!!」
「デンティド侯爵様、駒が泣いているぜ。ですわ」
「違うっ!まさか…本当に駒が光っているとは!!都市伝説だと思っていた。すまない。投了だ。ショーギは指し方を知らんのだ」
「へっ?‥‥ま、まぁいいでしょう。ではわたくしの勝ちと言う事で今夜のお食事からお残しは禁止ですわ」
「今日はシェフがオヤコドーンという異国料理だと言ってたから残さないと思うがな」
ヒュゥゥゥ~
何故でしょう。凄く負けた気分になってしまいました。
食べて欲しくて小さく小さく小さく切って形も味も判らないような工夫を凝らした料理よりも、形はそのままだけど一気にかき込める丼シリーズは最強なのかしら。
その日の夕食は宣言通りのオヤコドーン。
抗う術は肉はちょっぴりで玉ねぎ爆盛りですわ。
「待て、これではオヤコドーンとは言えないだろう!」
「どうしてです?」
「この卵は、ウズラだろう!しかも肉が少ない!」
「価格的には同じです。ウズラ‥‥高いので」
そして、もう一つオプションがあるのです。むしろそのオプションがあるからなのです。
先日街の仕立て屋さんに行き、仕立てて頂いた使用人さん達の服が届いたのです。
「デンティド侯爵様。オプションをお付けしましょう」
「オプション?卵を追加か?」
「皆さま、お願いいたしますわ!」
「はぁい」と可愛く返事をしてくださった本日の夜勤担当侍女&メイドさんたち。
エプロンも可愛く仕上がっております。
頭にブリムを付けているのがメイドさん。つけていないのが侍女さんですわ。
なんて可愛いんでしょう。公爵家に戻ったら向こうでも採用しなくては。
「旦那様!!」
「なっなんだ…お前たちいきなり…」
「(せぇのっ)美味しくなぁぁれっ(指で♡)」
はて?おかしいですわね。静まり返っておりますわ。
アンプレッセ様は仰け反ったまま硬直されておられます。
愛が足らなかったのかしら?魔法が足らなかった?
かの日、帰りに皆さんと立ち寄ったメイドカフェでは楽しく盛り上がって美味しかったですのに。
ハッ!そうでした。
侍女さんもメイドさんもアンプレッセ様には興味がなかったのですわ!
いつものように侯爵家の侍女さん3人を連れて庭師さんの担当区画を巡っております。
すっかり打ち解けてわたくしも庭師さんとお揃いのツナギを着て土いじりをするのです。
今日はミニトマトの苗に添え木をするのです。
キュッキュと結んでいきますが、未だにアンプレッセ様の野菜のお残しは続いております。
「こんなに瑞々しくて美味しいのにどうして残すのかしら」
「うーん…嫌いな人は嫌いだからねぇ。小さいときは結構食べてくれたんだが今は野菜より肉のほうが好きだからじゃないかなぁ」
判らないでもないのですが、やはりそれは良くないと思うのです。
庭師さん達の努力を知ってもらおうと散歩をお勧めしたのですが、本当に散歩をしていただけとは。ストレートに言った方が伝わりやすかったのかしら。
「坊ちゃんだったら…あ、旦那様の事ですよ?そうだなぁ勝負を挑んで勝ったら言う事を聞いてくれると思います。昔から勝ち負けで負ければ仕方ないと受け入れてましたから」
と、言う事で帰宅をされたアンプレッセ様にわたくしは勝負を挑んだので御座います。
「デンティド侯爵様!わたくしと勝負をしてくださいませ」
「勝負?どうして」
「お野菜をいつも残されるからですわ。パンも齧ったままで次のパンを齧る事もあります。ちゃんとした席でのお食事だけマナーや所作をこなせばよいものでは御座いませんもの。わたくしが勝てばお残し厳禁で勝負をしてくださいませ」
「ハハハ、何を言うかと思ったら。君も残しても――」
「お黙りなさいませ!!何を仰るのです。1つの野菜を作るのに庭師さんたちがどれほどの努力をしているかご存じですの?美味しくなるように土から手間をかけているのです。既に他国では平面ではなく立体的に野菜を育てています。それも一つの方法ですが折角大地の恵みを得られるのに、残してもいいだなんて!」
「いや、すまない、言いすぎ――」
「デンティド侯爵様はモッタイナイお化けに憑りつかれてもいいのですか?夜な夜なもったいな~いって出て来て、お花を摘みに行く事も出来なくなるのですよ!」
「ハハハ。それは困るな。そんなお化けがいたら捕まえてみせてやろう」
「笑い事では御座いません。大きな口に飲み込まれてしまうのですよ!」
「大丈夫だ。その時はポマードと唱える。それくらいは寝言でも言える。まぁ付き合ってやろう。何で勝負をするのだ」
おかしいですわ。生前お爺様はそう仰っていたのに、アンプレッセ様は怖がりもしない。
わたくしは怖くて朝まで我慢しましたのに!
ですが、この勝負は頂きましたわ。お爺様仕込みのわたくしの攻めを防いで御覧なさいませ!
「これですわ!」
「なんだ、それは…チェスではないな。ハッ!ジャーポンのショーギかっ!」
アンプレッセ様がチェスが得意なのは知っております。その程度は調べておりますわ。
さすが脳筋。侮れませんわ。騎士団では群を抜く腕前だとか。
戦略、戦法が必要なチェスでアンプレッセ様に勝てるとは思っておりません。
しかし、同じく戦略、戦法が必要と言えど!
意表を突いたショーギ。そして指し手は勿論・・・。
「参りますわよ‥‥フフフ…(ぱちん)」
「1九歩っ!まさかっ!!」
「デンティド侯爵様、駒が泣いているぜ。ですわ」
「違うっ!まさか…本当に駒が光っているとは!!都市伝説だと思っていた。すまない。投了だ。ショーギは指し方を知らんのだ」
「へっ?‥‥ま、まぁいいでしょう。ではわたくしの勝ちと言う事で今夜のお食事からお残しは禁止ですわ」
「今日はシェフがオヤコドーンという異国料理だと言ってたから残さないと思うがな」
ヒュゥゥゥ~
何故でしょう。凄く負けた気分になってしまいました。
食べて欲しくて小さく小さく小さく切って形も味も判らないような工夫を凝らした料理よりも、形はそのままだけど一気にかき込める丼シリーズは最強なのかしら。
その日の夕食は宣言通りのオヤコドーン。
抗う術は肉はちょっぴりで玉ねぎ爆盛りですわ。
「待て、これではオヤコドーンとは言えないだろう!」
「どうしてです?」
「この卵は、ウズラだろう!しかも肉が少ない!」
「価格的には同じです。ウズラ‥‥高いので」
そして、もう一つオプションがあるのです。むしろそのオプションがあるからなのです。
先日街の仕立て屋さんに行き、仕立てて頂いた使用人さん達の服が届いたのです。
「デンティド侯爵様。オプションをお付けしましょう」
「オプション?卵を追加か?」
「皆さま、お願いいたしますわ!」
「はぁい」と可愛く返事をしてくださった本日の夜勤担当侍女&メイドさんたち。
エプロンも可愛く仕上がっております。
頭にブリムを付けているのがメイドさん。つけていないのが侍女さんですわ。
なんて可愛いんでしょう。公爵家に戻ったら向こうでも採用しなくては。
「旦那様!!」
「なっなんだ…お前たちいきなり…」
「(せぇのっ)美味しくなぁぁれっ(指で♡)」
はて?おかしいですわね。静まり返っておりますわ。
アンプレッセ様は仰け反ったまま硬直されておられます。
愛が足らなかったのかしら?魔法が足らなかった?
かの日、帰りに皆さんと立ち寄ったメイドカフェでは楽しく盛り上がって美味しかったですのに。
ハッ!そうでした。
侍女さんもメイドさんもアンプレッセ様には興味がなかったのですわ!
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