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第34話 脳みそ花畑野郎と認定される
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それまで何の疑問も持たず、疑う事さえしなかった者から「もしや」と考えを改めるような言動をされると困惑するものである。
ロベルトは関係を迫ってくるレティシアに恐怖すら覚えた。
悪ふざけにしては度が過ぎている。かと言ってロベルトの事が本当に好きで自分だけのものにしたいのかとなれば違う。
体を売ることを生業とした娼婦がこの世に存在することは知っていても、見知った人間が金のために体を売ることが出来るのだと解った瞬間から、言いようのない嫌悪感が全身に走る。
ロベルトはレティシアが面倒くさい性格であったり、何を根拠にその自信が?と思う事は多々あったけれど、隣にいてバカが出来た頃とはまるで違うレティシアから離れようと腰をずらした。
拳1つ分よれば拳1つ分近寄ってくる。
メスの香りとでも言うのだろうか。きつい香水の香りに胃の更にしたから不快感がこみあげてきて吐きそうになった。
「悪い、帰るよ」
「待ってよ。女にここまで言わせて逃げる気?」
「言わせてって…そんなのレティが勝手に言い出した事だろう?そもそもでここには酒でもどうだと、それだけだったじゃないか。何より僕は…レティにはそんな気になれないよ」
「魅力がないって言いたいの?その言葉、女がどれだけ傷つくか解ってる?」
「傷つくとかじゃなく!僕は今も昔も愛しているのはリアだけだ。リア以外に異性を感じたことが無いんだよ。だからレティとそういう関係‥・ごめん、想像も出来ないんだ。なんて言うか、母上と茶を飲むってそんなレベルにしか思えないんだよ」
レティシアが少しばかり驚いた顔をしたので、ロベルトは「解ってくれたかな」と少し安堵した。
が、レティシアは突然笑い始めた。
「アハッ。ハハハッ‥・ちょっと…アーハッハッハ」
大声で笑い始めたので店の中の客もキャバ嬢も誰もがぴたりと会話をやめ、シーンと静まり返った。静寂の中でレティシアの笑い声だけが響く。
「ちょっと。お客様の前でしょう。どうしたのよ」
ママではないだろうかレティシアより少し年上に見える女性が笑い転げるレティシアを窘めた。
「おっかしい!まァるで相手されてないのに愛してるですって。超ウケるんですけどっ。アーハッハッハ」
「何がおかしいんだよ!」
ロベルトもレティシアが揶揄っているのではなく、本気でバカにしているのだと言う事は解った。
指で目尻の涙を拭いながらレティシアは「大丈夫だから」と窘めて来た女性を追い払うとロベルトの耳元で囁いた。
「ロベルトくーん。朝はもうすぐですよ~」
今度は明らかに茶化している。
が、突然真面目な顔になり、声もまともになった。
「あんたさ、私が知る限りだけどコーディリアに一度も愛された事なんかないわよ」
「嘘だ!僕とリアは婚約者だったんだ。あんな事故がなければ今頃は…」
カチリとタバコに火をつけたレティシアは「ふぅー」鼻から白い息を吐き出し、ニっと笑った。
「イイコト教えてあげる」
「なんだよ」
「アレ、事故じゃないわ。この件は懲役も食らったし本当の事を教えてあげるわ」
「は?どういう意味だ」
「落ちたのは事故じゃないと言ってるの。正直私もびっくりしたのよ?あの状況だったら例え私が今以上の貧乏子爵家の娘だったとしても、疑わしいと思われる位置にいる、それだけでアチラさんは貴方の婚約者だったし事件にする事だって出来ちゃうの。実際、あれはあの女の不注意による事故じゃなくて、私が脅そうと思って突き飛ばした事件なのよ。ちょっとやり過ぎて手摺は本当に折れたけど。だからあの女が事故だと言い張った時、何が目的か解らなくて怖かったわ。だって、後から黙っててやるって脅してくるかもしれないし。だけど、解っちゃったのよ」
「何が判ったんだ?」
「脅すつもりなら事故で言い張るのはどう考えてもおかしいのよ。だって事故ですと王家が認めたら事故は事故なんだもの。こっちに”事故でしょ?”って正当な逃げ道を作ってくれるようなものよ。だから、そこまでロベルト、アナタと別れたかったんだろうなって。一生残る傷跡が出来れば王族って変なところ古臭いから傷が残るってだけで王家は婚約を白紙にしてくる。それを狙ったんだと思ったのよ。案の定婚約は解消になったしね。考えてみればあの女、私がどんなにロベルトに粉かけても全然ノってこなかったわ。今だってそうよね?辺境からロベルトが戻ってきたのに音沙汰無しってどうよ。結局、未練も何もないのよ。ま、未練になるような気持すら元々なかったんでしょうけどね」
パチン!!ロベルトは堪らなくなってレティシアの頬を張り飛ばした。
頬を張る音にまた周囲から音が消えて視線だけが集まってくる。
「好き勝手言うな。リアは僕の事を愛している。何故か解るか?僕がリアを愛しているからさ」
「ハッ。あんた、正気?」
「あぁ正気だ。僕のリアに対しての気持ちは何時だって本物だ。その気持ちにリアが応えない筈がないんだ」
「可哀想な王子様だこと。ま、信じる者は救われるっていうし。いいんじゃない?でも言っておくわ。私はちゃんと本当の事を教えてあげた。この先、後悔する事になっても私に難癖をつけるのは止めてね?」
「なんだと?」
「だって。私、本当の愛を知ってるもの。だから妬まれても迷惑なのよ。金すら貸してくれないような脳みそ花畑野郎には特にね!」
レティシアは吐き捨てるように言い放つと屈強な男性店員を呼び「お金が無いらしいわ。抓みだして」と、ロベルトを店の外に追い出せと命じたのだった。
ロベルトは関係を迫ってくるレティシアに恐怖すら覚えた。
悪ふざけにしては度が過ぎている。かと言ってロベルトの事が本当に好きで自分だけのものにしたいのかとなれば違う。
体を売ることを生業とした娼婦がこの世に存在することは知っていても、見知った人間が金のために体を売ることが出来るのだと解った瞬間から、言いようのない嫌悪感が全身に走る。
ロベルトはレティシアが面倒くさい性格であったり、何を根拠にその自信が?と思う事は多々あったけれど、隣にいてバカが出来た頃とはまるで違うレティシアから離れようと腰をずらした。
拳1つ分よれば拳1つ分近寄ってくる。
メスの香りとでも言うのだろうか。きつい香水の香りに胃の更にしたから不快感がこみあげてきて吐きそうになった。
「悪い、帰るよ」
「待ってよ。女にここまで言わせて逃げる気?」
「言わせてって…そんなのレティが勝手に言い出した事だろう?そもそもでここには酒でもどうだと、それだけだったじゃないか。何より僕は…レティにはそんな気になれないよ」
「魅力がないって言いたいの?その言葉、女がどれだけ傷つくか解ってる?」
「傷つくとかじゃなく!僕は今も昔も愛しているのはリアだけだ。リア以外に異性を感じたことが無いんだよ。だからレティとそういう関係‥・ごめん、想像も出来ないんだ。なんて言うか、母上と茶を飲むってそんなレベルにしか思えないんだよ」
レティシアが少しばかり驚いた顔をしたので、ロベルトは「解ってくれたかな」と少し安堵した。
が、レティシアは突然笑い始めた。
「アハッ。ハハハッ‥・ちょっと…アーハッハッハ」
大声で笑い始めたので店の中の客もキャバ嬢も誰もがぴたりと会話をやめ、シーンと静まり返った。静寂の中でレティシアの笑い声だけが響く。
「ちょっと。お客様の前でしょう。どうしたのよ」
ママではないだろうかレティシアより少し年上に見える女性が笑い転げるレティシアを窘めた。
「おっかしい!まァるで相手されてないのに愛してるですって。超ウケるんですけどっ。アーハッハッハ」
「何がおかしいんだよ!」
ロベルトもレティシアが揶揄っているのではなく、本気でバカにしているのだと言う事は解った。
指で目尻の涙を拭いながらレティシアは「大丈夫だから」と窘めて来た女性を追い払うとロベルトの耳元で囁いた。
「ロベルトくーん。朝はもうすぐですよ~」
今度は明らかに茶化している。
が、突然真面目な顔になり、声もまともになった。
「あんたさ、私が知る限りだけどコーディリアに一度も愛された事なんかないわよ」
「嘘だ!僕とリアは婚約者だったんだ。あんな事故がなければ今頃は…」
カチリとタバコに火をつけたレティシアは「ふぅー」鼻から白い息を吐き出し、ニっと笑った。
「イイコト教えてあげる」
「なんだよ」
「アレ、事故じゃないわ。この件は懲役も食らったし本当の事を教えてあげるわ」
「は?どういう意味だ」
「落ちたのは事故じゃないと言ってるの。正直私もびっくりしたのよ?あの状況だったら例え私が今以上の貧乏子爵家の娘だったとしても、疑わしいと思われる位置にいる、それだけでアチラさんは貴方の婚約者だったし事件にする事だって出来ちゃうの。実際、あれはあの女の不注意による事故じゃなくて、私が脅そうと思って突き飛ばした事件なのよ。ちょっとやり過ぎて手摺は本当に折れたけど。だからあの女が事故だと言い張った時、何が目的か解らなくて怖かったわ。だって、後から黙っててやるって脅してくるかもしれないし。だけど、解っちゃったのよ」
「何が判ったんだ?」
「脅すつもりなら事故で言い張るのはどう考えてもおかしいのよ。だって事故ですと王家が認めたら事故は事故なんだもの。こっちに”事故でしょ?”って正当な逃げ道を作ってくれるようなものよ。だから、そこまでロベルト、アナタと別れたかったんだろうなって。一生残る傷跡が出来れば王族って変なところ古臭いから傷が残るってだけで王家は婚約を白紙にしてくる。それを狙ったんだと思ったのよ。案の定婚約は解消になったしね。考えてみればあの女、私がどんなにロベルトに粉かけても全然ノってこなかったわ。今だってそうよね?辺境からロベルトが戻ってきたのに音沙汰無しってどうよ。結局、未練も何もないのよ。ま、未練になるような気持すら元々なかったんでしょうけどね」
パチン!!ロベルトは堪らなくなってレティシアの頬を張り飛ばした。
頬を張る音にまた周囲から音が消えて視線だけが集まってくる。
「好き勝手言うな。リアは僕の事を愛している。何故か解るか?僕がリアを愛しているからさ」
「ハッ。あんた、正気?」
「あぁ正気だ。僕のリアに対しての気持ちは何時だって本物だ。その気持ちにリアが応えない筈がないんだ」
「可哀想な王子様だこと。ま、信じる者は救われるっていうし。いいんじゃない?でも言っておくわ。私はちゃんと本当の事を教えてあげた。この先、後悔する事になっても私に難癖をつけるのは止めてね?」
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