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第20話 バッサバッサとパサパサ
しおりを挟む「いやぁ。驚いたよ。次から次へ。正直、ジェイの婚姻歴さえあればいいと思っての結婚だったが君を手放すのが惜しくなってしまうよ」
「子供の戯言です。でも、身の回りにあるものってこんなことが出来たらなとか、こうすれば便利かなと思う事から派生すると思うんですよ。原理は判らないんですけど50年後くらいには人が空を飛んで移動出来るようになって、100年後くらいには夜空の星に旅行に行ける…そんな技術も出来てるかも知れません」
「空か。アハハ。子供の時に思ったよ。そのまま飛び立つ鳩のような鳥もいれば助走をつけて飛び立つ鳥もいる。空でバッサバッサ羽ばたいてない時だって飛んでいる。私も鳥のように空が飛べたらと思ったことがあるよ」
駆動車に揺られて最後の夕食会で食べた白み魚のポワレが逆流しそうだが、何故か王弟殿下に滅茶苦茶気に入られたイリスはその後も「一緒に行こう!」と2件の会合に付き添ってくれたおかげもあるのか、坑道事業と合わせて乗合駆動車の件で面会したその後の2家からも大絶賛を受けた。
坑道事業のほうがオマケになってしまったが、人も技術も損得関係なく提供させてもらうとの返事を貰い、今日の面会は3件とも大成功だった。
「ふぇぇ…疲れたぁ」
「お帰りなさいませ。お食事は済まされてくるとの事でしたので湯殿は直ぐに使えるようにしております」
別棟に帰宅をするとミモザが出迎えてくれる。
ミモザの後ろから出てきたメイドのアリスがイリスの荷物を受け取ってくれてようやく部屋に辿り着き、イリスはソファに飛び込むようにして横になった。
「お尻が痛い~。踏ん張ったから足も痛ぁい」
「ですよねぇ。私も駆動車で奥様のお供をする時は帰ったら足がパンパンです」
あまりにも揺れるので体を支えるのに座ったままで踏ん張らねばならず、こりゃ明日は筋肉痛だとイリスは半泣き。明日ならまだいい。明後日の出立の日も影響はあるだろうから地獄の旅になりそうだと天井を遠い目で見上げた。
「そう言えば昼間に若旦那様が来ておりました」
「は?なにしに?」
「さぁ‥‥ライモンド様が戻られているので暇なんでしょうね」
「そうなの?」
「若奥様は御存じなかったですね。メアリー様はライモンド様が戻られるとラジェット様の事なんか丸っきりの無視です。朝晩の挨拶さえしないんですよ?あれだけしてもらっているのにどういうつもりなのか判りませんが」
「へぇ。そうなんだぁ」
だとしてもラジェットに何かしてやろうとは思えない。
いや、ミモザとアリスの話を聞いて、言いようのない怒りがこみ上げてくる。
初夜に出て行けと言っておきながら、自分がボッチになったら擦り寄ってくる。
――マジ、気持ち悪いわ――
揺れではなんとか堪えたけれど、今度こそ白み魚のポワレが胃から飛び出してきそうだ。
ミモザとアリスもイリスと同じ考えだったようで「相手にしてもらえないからコッチって気持ち悪い」と言いながらアリスに至ってはベェェっと舌まで出していた。
「取り敢えず奥様は御留守ですと伝えておきました」
「それでいいわ。留守なのは噓じゃないし。領地に行っても留守でお願い」
「承知しております」
堅苦しいのはここまで。
夕食会を兼ねた会合で筆頭公爵家の当主から「息子が海の向こうの国に行って来てね」と貰った菓子折り。
レント家も金持ちだが海の向こうの国と交易を始めようと計画をしている筆頭公爵家。
お土産の菓子は日持ちをする上に見た目も華やか。
「ジャジャーン!貰っちゃいましたー!」
「わぁ♡可愛い!!お花の形をしてるぅ。食べるの勿体なーい」
「お茶淹れますね。ちょっと濃い目で♡こら!アリス!つままない!」
お茶も入ってイリス、ミモザ、アリスの3人は菓子折りから花を模った菓子を1つづつ手に取った。
「いただきまぁす!」
ぱくっ!!ぱくっ!!ぱくっ!!
3人が同時に菓子を食べた。
<< うっ!! >>
ぐびっ!!ぐびっ!!ぐびっ!!
同時に3人は淹れたての茶を飲んだ。
2口目を口の中に入れるのに何故か見合ってしまう3人。
「ぱさぱさする…」とイリス
「味があると言えばあるんだけど‥」とミモザ
「口の中の水分全部持っていかれたぁ」とアリス。
3人が食べたのは海の向こうにある国の名産品。
落雁だった。
バッサバッサと飛ぶ雁と違い、パッサパサだった。
――残りは侯爵夫人にあげよう――
意地悪ではない。お裾分けである。
菓子折りの蓋を閉じるのにミモザもアリスも反対をしなかった。
それが全てを物語っている味と食感だった。
「子供の戯言です。でも、身の回りにあるものってこんなことが出来たらなとか、こうすれば便利かなと思う事から派生すると思うんですよ。原理は判らないんですけど50年後くらいには人が空を飛んで移動出来るようになって、100年後くらいには夜空の星に旅行に行ける…そんな技術も出来てるかも知れません」
「空か。アハハ。子供の時に思ったよ。そのまま飛び立つ鳩のような鳥もいれば助走をつけて飛び立つ鳥もいる。空でバッサバッサ羽ばたいてない時だって飛んでいる。私も鳥のように空が飛べたらと思ったことがあるよ」
駆動車に揺られて最後の夕食会で食べた白み魚のポワレが逆流しそうだが、何故か王弟殿下に滅茶苦茶気に入られたイリスはその後も「一緒に行こう!」と2件の会合に付き添ってくれたおかげもあるのか、坑道事業と合わせて乗合駆動車の件で面会したその後の2家からも大絶賛を受けた。
坑道事業のほうがオマケになってしまったが、人も技術も損得関係なく提供させてもらうとの返事を貰い、今日の面会は3件とも大成功だった。
「ふぇぇ…疲れたぁ」
「お帰りなさいませ。お食事は済まされてくるとの事でしたので湯殿は直ぐに使えるようにしております」
別棟に帰宅をするとミモザが出迎えてくれる。
ミモザの後ろから出てきたメイドのアリスがイリスの荷物を受け取ってくれてようやく部屋に辿り着き、イリスはソファに飛び込むようにして横になった。
「お尻が痛い~。踏ん張ったから足も痛ぁい」
「ですよねぇ。私も駆動車で奥様のお供をする時は帰ったら足がパンパンです」
あまりにも揺れるので体を支えるのに座ったままで踏ん張らねばならず、こりゃ明日は筋肉痛だとイリスは半泣き。明日ならまだいい。明後日の出立の日も影響はあるだろうから地獄の旅になりそうだと天井を遠い目で見上げた。
「そう言えば昼間に若旦那様が来ておりました」
「は?なにしに?」
「さぁ‥‥ライモンド様が戻られているので暇なんでしょうね」
「そうなの?」
「若奥様は御存じなかったですね。メアリー様はライモンド様が戻られるとラジェット様の事なんか丸っきりの無視です。朝晩の挨拶さえしないんですよ?あれだけしてもらっているのにどういうつもりなのか判りませんが」
「へぇ。そうなんだぁ」
だとしてもラジェットに何かしてやろうとは思えない。
いや、ミモザとアリスの話を聞いて、言いようのない怒りがこみ上げてくる。
初夜に出て行けと言っておきながら、自分がボッチになったら擦り寄ってくる。
――マジ、気持ち悪いわ――
揺れではなんとか堪えたけれど、今度こそ白み魚のポワレが胃から飛び出してきそうだ。
ミモザとアリスもイリスと同じ考えだったようで「相手にしてもらえないからコッチって気持ち悪い」と言いながらアリスに至ってはベェェっと舌まで出していた。
「取り敢えず奥様は御留守ですと伝えておきました」
「それでいいわ。留守なのは噓じゃないし。領地に行っても留守でお願い」
「承知しております」
堅苦しいのはここまで。
夕食会を兼ねた会合で筆頭公爵家の当主から「息子が海の向こうの国に行って来てね」と貰った菓子折り。
レント家も金持ちだが海の向こうの国と交易を始めようと計画をしている筆頭公爵家。
お土産の菓子は日持ちをする上に見た目も華やか。
「ジャジャーン!貰っちゃいましたー!」
「わぁ♡可愛い!!お花の形をしてるぅ。食べるの勿体なーい」
「お茶淹れますね。ちょっと濃い目で♡こら!アリス!つままない!」
お茶も入ってイリス、ミモザ、アリスの3人は菓子折りから花を模った菓子を1つづつ手に取った。
「いただきまぁす!」
ぱくっ!!ぱくっ!!ぱくっ!!
3人が同時に菓子を食べた。
<< うっ!! >>
ぐびっ!!ぐびっ!!ぐびっ!!
同時に3人は淹れたての茶を飲んだ。
2口目を口の中に入れるのに何故か見合ってしまう3人。
「ぱさぱさする…」とイリス
「味があると言えばあるんだけど‥」とミモザ
「口の中の水分全部持っていかれたぁ」とアリス。
3人が食べたのは海の向こうにある国の名産品。
落雁だった。
バッサバッサと飛ぶ雁と違い、パッサパサだった。
――残りは侯爵夫人にあげよう――
意地悪ではない。お裾分けである。
菓子折りの蓋を閉じるのにミモザもアリスも反対をしなかった。
それが全てを物語っている味と食感だった。
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