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第26話 ハク伯爵家の譲渡・・・え?買い取り?
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「何かあるのかしら?」
「さぁ…でも何処かに出掛けるみたいですよ」
着替えは手伝ってもらわなくても出来るのだが、侍女頭のミモザが髪の毛だけをセットするためにやって来てくれた。
外に出るのならいつものように簡単に纏めるだけでは次期公爵夫人という立場ならやはり不味いのだろう。
「リエ。何を着てもどんな髪型になっても可愛いなぁ」
「ありがとうございます。それと・・・このワンピースもありがとうございます」
支給品のお仕着せしかもっていなかったブリュエットにオクタヴィアンはやっと贈り物が出来た。しかも自分の贈った服を着てくれていると思うと嬉しくて仕方がない。
「何処に行くんです?」
「ん~まぁ堅苦しいんだけど、天国への入り口かな?」
――え?私、まだ死にたくないんだけど?――
連れていかれた場所は貴族を監理、監督している貴族院だった。
建物だけは遠くから見たことはあるが、門の中に入った事も建物をこんな間近で見たのも初めてだった。
「リエは伯爵家をどうしたい?」
「どうって…私では経営する事も出来ないし…返上してお金にしようかなって」
「じゃぁ、その権利を僕が買い取ってもイイかな」
「まぁ…欲しいならどうぞ?」
「ん。決まりだ。手続きしよう」
本人でなければダメだったのは、ブリュエットの資産を保管する口座を作る為だった。
オクタヴィアンはハク伯爵家の売買契約を貴族院で行なうためにブリュエットを連れてきた。
ブリュエットはまだ19歳の為、当主ではないがハク伯爵家唯一の人間。そしてオクタヴィアンとは婚姻関係にある。
領地などがあればもっと早くに奪われていたかも知れないが爵位だけなのでマーシャル子爵家もその日を待っていたのだろう。
「何をするの?」
「僕たちは夫婦だからね。僕たちの子供が生まれた時に領地付きで子供に権利を渡す事が出来るようにここで手続きをするんだよ。リエからは爵位、僕からは僕が権利を持つ領地。領地の経営は僕が今まで通りに行うから2つを紐づけするんだよ。そうしておくと子供に譲渡や相続させるときの手間が省ける」
「じゃぁ買い取るっていうのは?」
「リエがまだ当主の資格がないから僕が買い取る形で保護するんだ。そのお金をプールする口座を作るんだけど、お金が自由に出来るのはリエが20歳になってからになる。予約済みにするってことさ」
「そうなのね。判った。どれを書けばいい?」
文官にも手伝って貰ってブリュエットのみが権利を持つ爵位は「2人の子供が相続をするため」と但し書きをされた上で受理になった。
しかし、うーん…ブリュエットは首を傾げた。
「やっぱり買うのはおかしいわ。裏があるでしょ」
「バレたか。仕方ない。怒らないで聞いてくれる?」
「怒る事なんてないわ。手続きも済んでしまったし」
オクタヴィアンは正直に話した。
通常貴族の結婚には多額の持参金が必要になる。今回の結婚には持参金はなかった。マーシャル子爵家もあくまでも「仕事」としてなので払った事になっている事になっていた。
そして持参金に対するものが支度金。その支度金はマーシャル子爵家が握っている。
しかし、公爵家次期当主の夫人となったのにブリュエットには資産がない。支度金がブリュエットの資産の筈なのに。
いずれは子供に渡すという名目でオクタヴィアンはブリュエットに支度金という形で資産を譲った。
「爵位を売ったってことにしないとリエはお金だけなんて受け取らないだろう?」
「まぁ、それはそうだけど…」
しかしこの時、ブリュエットはどうして口座まで作らねばならなかったのかは問わなかった。
現金となれば持ち運びは大変になるが用意出来ない訳ではない。
その事を知るのは、結婚して丁度1年目になる日だった。
「さぁ…でも何処かに出掛けるみたいですよ」
着替えは手伝ってもらわなくても出来るのだが、侍女頭のミモザが髪の毛だけをセットするためにやって来てくれた。
外に出るのならいつものように簡単に纏めるだけでは次期公爵夫人という立場ならやはり不味いのだろう。
「リエ。何を着てもどんな髪型になっても可愛いなぁ」
「ありがとうございます。それと・・・このワンピースもありがとうございます」
支給品のお仕着せしかもっていなかったブリュエットにオクタヴィアンはやっと贈り物が出来た。しかも自分の贈った服を着てくれていると思うと嬉しくて仕方がない。
「何処に行くんです?」
「ん~まぁ堅苦しいんだけど、天国への入り口かな?」
――え?私、まだ死にたくないんだけど?――
連れていかれた場所は貴族を監理、監督している貴族院だった。
建物だけは遠くから見たことはあるが、門の中に入った事も建物をこんな間近で見たのも初めてだった。
「リエは伯爵家をどうしたい?」
「どうって…私では経営する事も出来ないし…返上してお金にしようかなって」
「じゃぁ、その権利を僕が買い取ってもイイかな」
「まぁ…欲しいならどうぞ?」
「ん。決まりだ。手続きしよう」
本人でなければダメだったのは、ブリュエットの資産を保管する口座を作る為だった。
オクタヴィアンはハク伯爵家の売買契約を貴族院で行なうためにブリュエットを連れてきた。
ブリュエットはまだ19歳の為、当主ではないがハク伯爵家唯一の人間。そしてオクタヴィアンとは婚姻関係にある。
領地などがあればもっと早くに奪われていたかも知れないが爵位だけなのでマーシャル子爵家もその日を待っていたのだろう。
「何をするの?」
「僕たちは夫婦だからね。僕たちの子供が生まれた時に領地付きで子供に権利を渡す事が出来るようにここで手続きをするんだよ。リエからは爵位、僕からは僕が権利を持つ領地。領地の経営は僕が今まで通りに行うから2つを紐づけするんだよ。そうしておくと子供に譲渡や相続させるときの手間が省ける」
「じゃぁ買い取るっていうのは?」
「リエがまだ当主の資格がないから僕が買い取る形で保護するんだ。そのお金をプールする口座を作るんだけど、お金が自由に出来るのはリエが20歳になってからになる。予約済みにするってことさ」
「そうなのね。判った。どれを書けばいい?」
文官にも手伝って貰ってブリュエットのみが権利を持つ爵位は「2人の子供が相続をするため」と但し書きをされた上で受理になった。
しかし、うーん…ブリュエットは首を傾げた。
「やっぱり買うのはおかしいわ。裏があるでしょ」
「バレたか。仕方ない。怒らないで聞いてくれる?」
「怒る事なんてないわ。手続きも済んでしまったし」
オクタヴィアンは正直に話した。
通常貴族の結婚には多額の持参金が必要になる。今回の結婚には持参金はなかった。マーシャル子爵家もあくまでも「仕事」としてなので払った事になっている事になっていた。
そして持参金に対するものが支度金。その支度金はマーシャル子爵家が握っている。
しかし、公爵家次期当主の夫人となったのにブリュエットには資産がない。支度金がブリュエットの資産の筈なのに。
いずれは子供に渡すという名目でオクタヴィアンはブリュエットに支度金という形で資産を譲った。
「爵位を売ったってことにしないとリエはお金だけなんて受け取らないだろう?」
「まぁ、それはそうだけど…」
しかしこの時、ブリュエットはどうして口座まで作らねばならなかったのかは問わなかった。
現金となれば持ち運びは大変になるが用意出来ない訳ではない。
その事を知るのは、結婚して丁度1年目になる日だった。
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