結婚式の前夜、花嫁に逃げられた公爵様の仮妻も楽じゃない

cyaru

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第17話  好評のブレンド茶

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ブリュエットの小屋には使用人がよくやって来る。

勤務の前に少し早めに出勤をしてきて、わざわざやって来たり勤務時間が終わると帰りの辻馬車の時間までにと全力で走って来たり。

何故なのかと言えば目的はブリュエットの細々と作っている野草茶を求めに来るのだ。

メイドのカレンに頼んで屋台で売って貰う量とは別にブリュエットは使用人達それぞれに独自配合をした野草茶を手渡す。

医師ではないので診察をした訳ではないけれど、「血圧が高いんだろうな」と思えばビワや柿の葉、ドクダミをブレンドして飲みやすいように成分そのまま香りだけ誤魔化す野草を混ぜる。

家族に妊婦さんがいるとなれば悪阻を消すわけではなく、気持ちを落ち着けるために「桑の葉」をメインにブレンドする。

「え?カモミールじゃダメなんですか?」
「カモミールは妊婦さんには良くないのよ」
「そうだったんだ…だからお義姉さん、3回も流産したのかなぁ」
「それだけが原因とは言えないけど…」
「落ち着くって言われて毎日2,3リットル飲んでたんです」
「それは・・・かなり飲み過ぎね。体に良いと言われても妊娠中、産後、授乳中、それぞれに良い悪いもあるから・・・桑の葉茶も飲み過ぎはダメよ?」


妊婦さん用は気を使うが、女性使用人のメインは美肌効果。
こちらもお茶だけでどうにかなる訳ではないけれど、美肌を求めるなら紅茶や緑茶は避けた方が良い。

便秘をしてしまうので宿便がお腹に溜まってしまうのだ。
宿便をするりと出すのにここでも桑の葉茶は活躍する。ここにハト麦や枇杷の葉をブレンドするのだ。

全員が同じではなく、その人にあったブレンドをするので3,4カ月で肌に違いを感じた女性使用人は足繁く通ってくる。

「へぇ。じゃあ私とエルサは配合が違うんですね」
「そうね。マリエさんは渋みが苦手でしょう?だからマイルドな飲み口になる様にハト麦を少し多めなのよ」

ちょっとの配合の違いで効果はほぼ同じ。香りや味の好き嫌いにも神対応してくれると女性使用人の間では高評価だが、男性使用人もこっそりとやって来る。

こちらは他の人に聞かれたくない悩みを持っているのでこっそりである。

「すぐに・・・萎えちゃうんです。奥様にこんな相談・・・すんませんっ」

気持ちはあるのだけれど継続しない昂り。ブリュエットには経験はないけれど、こんな時には!!

「ボタンヅルとナルコユリをブレンドしてみるわね」
「効きますかね…まだ40代なのに‥このままじゃカカァに愛想つかされてしまうんです」
「大丈夫ですわ。文献で読んだだけですが、遠い東の国イッサコ・バヤシは50代でも1晩に4、5回戦。脳卒中というご病気で半身に自由が無くなっても衰える事はなかったそうですから」
「それ・・・キキスギ」
「違いますよ?杉は使っていませんから」
「そのスギじゃないんですが」

他にも女性の中にも年齢が高くなると悩む人も多いが男性も共通する頻尿とチョイ漏れ。

「オウギと桂皮けいひ白朮びゃくじゅつをブレンドしてみるわね」
「どうなるんです?」
「スパっと!って訳じゃないけど…キレが良くなる?って感じかな。でもお医者様のお薬のように治すのではなくて改善に持っていくって手助けをする程度だから依存してはダメですよ?」

そうやってブレンド茶を渡すとこちらも3,4カ月飲み続けることで恥ずかしいシミを作る事も回数が減り、残尿感も感じなくなったと好評。


「奥様は物知りですよねぇ。薬師さんに師事されたんですか?」
「ううん。そう言うのじゃなくて市場とか行くと応急処置をする医療部があったりするからそういう手伝いとか、薬師さんに薬草を卸す商会の薬草摘みとかに駆り出されたり…あとは煎じる時とかひたすらゴリゴリやらなきゃいけないからその役をしたり。そんな経験とかからこうしたらどうかなって・・・」
「もっと大々的に売り出せば凄く人気が出るお店、出せると思いますよ?」
「あ~・・・いいの。いいの。こう言うのは細々とするのが良いのよ」


その先は言えない。まさか小銭を稼いで屋台に卸し、靴を買っていたとか言えば同情されてしまう。欲しいのは同情ではなく「良かったよ!効いた気がする」という笑顔なのだ。

いろんな植物が植えられているオーストン公爵家の庭を自由にしていいから出来ること。

身の丈に合った生活をしないと自滅して行った人間を多く見てもいるブリュエットは倹しく生きていくのに必要な金だけあればいいのだ。

使用人達が帰っていくと一息つく時間‥‥だったのに!

「やぁ。夕食の前にお茶はどうかな。流行りの茶葉を買って来た」

――お茶なら腐るほどあるので買わなくていいのに――

『奥様のお茶は最高!』使用人達の話を小耳に挟んだオクタヴィアンが高級茶葉を小脇に抱え、超絶眩しい笑顔でブリュエットを茶に誘って来たのだった。
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