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第04話  経費削減、必死のプレゼン

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そう思ったのが執事が驚くような事を言う。

「いえいえ、期間限定とは言っても若奥様ですからお召し物などは採寸をして専用の衣類をご用意致します。離れは12室御座いますしキッチンも不浄も湯殿もそれぞれ3つ御座います。敷地内では御座いますが専用庭も御座いますので屋外で茶の席なども楽しんで頂け――」

「要りません!体は1つしかないのに12室あっても使いきれません。均等に回したとしても1年で1室1か月、2年で2か月しか使わないような部屋は要りません。庭の中に庭も不要です。何より視界から消えろ、声も煩わしいと言われておりますので、視界に入る事無く、声を聞かれる事もなくひっそりと息を顰め暮らしたいのです」

「で、ですが…」

「世の中経費削減です。不要なものにわざわざお金をかける必要など全くないのです。お願いします!!」

「し、しかし・・・それではあまりにも‥」

「こうなったらぶっちゃけます!お金が必要なんです。2年後、伯父夫婦の元には帰れません。そうなれば1人で生きて行かねばなりませんが先ずは住む場所が必要です。保証人なしとなればお家賃もそれなりの所になってしまいますし、2年もブランクがあれば、仕事をしようにもすぐに雇って貰えるとも限りません。食うに困って行き倒れなんてなったらオーストン公爵家も困るでしょう?私の頼りになるのは1日1万ゴルを節約した残りだけなんです!」


あと一押し!ブリュエットは執事にグイっと身を寄せた。

「ひっそりと2年間過ごします。なんなら敷地の外にも出ないと約束します。対外的には病弱だとすれば2年で儚くなった・・・そうして頂いても良いんです。白い結婚で離縁となるより死別の方が若旦那様も聞こえがいいでしょう?」

ブリュエットは咄嗟に出た一言だったが、案外その方が暮らしやすいのでは?と自分で自分を自画自賛。そこそこの金を持って出たとなれば接触をしてくるのは目に見えている。亡くなったとなれば間違いなく伯父夫婦につき纏われる事はない。

「わ、解りました、解りましたから!!」
「では離れではなく何処に行けばいいでしょう?」

ブリュエットが案内をされたのは炭の保管小屋と言ってもマーシャル子爵家の薪の保管小屋とは雲泥の差。使用人が湯を沸かす事が出来る程度の小さな竈のあるキッチン、その竈の熱を利用した湯殿が併設されているだけでなく、勝手口を開ければ井戸があり、キッチンと兼用の食事室とは別に仮眠用の寝台のある部屋もある。

休憩所を兼ねた小さなお屋敷。
そこはブリュエット的豪邸だった。

薪の一部を炭にするには燃やさねばならない。煙が出るので本宅から見れば風下に位置していて、香りも出来るだけ漂わないように本宅から距離もあるし外郭の塀がすぐそこにある。

本宅まではくねくねとする小道を歩いて30分ほど。全力で走って7、8分という所だろうか。


「ここにします!ここがいいです!」
「で、ですが棟続きで炭にする薪を保管しているので虫も出ますし…」
「ゲジゲジとかですよね。カミキリムシ、カメムシは苦手ですけど何とかします」
「しかし本宅からは離れていますし…」
「気にしません!そしてそんな事!!気にしないでください!」


虫ならマーシャル子爵家の薪の保管小屋にも掃いて捨てるほどいたし、あちらは本宅の厨房に近かったのでネズミも走り回っていた。
湯が欲しければ厨房まで行かないとならなかったし、井戸も距離があったので冬の寒い日は小道が凍って何度桶に汲んだ水を転んで被ってしまったことか。

ここなら勝手口を開ければ井戸があり、竈の湯は直ぐに湯殿で使える。
まさに天国ではないか!!

結婚式で祭司の言葉には返事を返せず、神様には心の声しか伝えられなかったが今なら声に出来る。

「神様!感謝します!あ、執事さんにも心からの感謝を!!」

満面の笑みで感謝を伝えるブリュエットに執事も悪い気はしなかった。

ブリュエットには使い古したお仕着せで良いといわれたが、新品のお仕着せを数着支給する事を決めた執事だった。
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