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第44話 どっちの着ぐるみ
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ブレッドマン侯爵家の当主、ジンジャーは毎朝、起きるのが楽しみで仕方がない。
愛する妻ホリーと演技ではなく一緒の寝台で横になった日は緊張をしてしまったが、無事にある出来事を完遂出来た。
「これで魔法使いへの道は断たれた」とフンフフン♪上機嫌。
「呪いでも学んでホリーに近づく男を蹴散らそうかな」と本気で考えていたりする。
今夜も一緒に寝台でごろニャン。
毎晩でも連射可能な機能を搭載しているジンジャーだが、ホリーは隔週1回で良いとつれない返事。
しかし朝晩が寒くなるとホリーとピタ!くっついて眠れるのでジンジャーはそれだけでも満足で上機嫌。
上機嫌なのだが、一難去ってまた一難。
ホリーにお食事マナーを教えていたクロースを遠ざける事が出来たとほくそ笑んでいたら今度はルドルフ。
事業の為だ、ルドルフは使用人だと解っていてもホリーの近くに男性がいる事が許せない。
――いっそクビにしようかな――
そんな事を考えた事もあるけれど、クロースもルドルフも仕事は真面目で丁寧だし、使用人の信頼も厚い。
特にルドルフはホリーを王都に連れて来てくれたし、実は一番先に手袋を外しジンジャーに触れてくれた。
――だとしてもだ!!――
イルミも同行するとは言え、ホリーとお出かけが許せない。
何が許せないか。ホリーと同じ馬車に乗り、同じ空間(しかも狭い)で同じ空気を吸う事が許せない。
ホリーの吐いた息の一部をルドルフが吸うのも許せないが、ルドルフの息がホリーに取り込まれるのも許せない。
――いっそ馬車の屋根を切り飛ばすか――
いいや、ダメだ。雨は突然。恋も突然。いつ何が起こるか判らない。
――やはり一緒に行くしかない――
そう思うのだがジンジャーが一緒に行くと馬車を降りた瞬間、平民たちは蜘蛛の子を散らすようにいなくなってしまう。
どうしても参加不可避な夜会も王宮の従者たちは身構えてジンジャーを迎える。
それだけ存在を警戒されているのだ。感染ったら困ると。
――あぁーっ!どうしよう!行きたい、行きたい!一緒に行きたい!――
悶えているとホリーが「寝る時は静かに」と注意をする。
「ごめん…」
「どうしたのです?さっきからもぞもぞと」
「ルドルフの弟妹のところに行くんだろう?私もいっしょはダメか?」
「ダメです。まだ早いです」
「馬車から降りないから。頼む!一緒に行きたいんだ」
「またそんな子供のような事を!仕方ありませんね…子供たちが驚くといけないので試作品の着ぐるみ着ます?」
「着ぐるみ…」
ホリーは子供向けなので、親である大人が機能性などを気に入ってくれても子供が「これが着たい!」と思ってくれないといつの間にか着ないままでシーズンを終えてしまうと考えている。
そう言えば…と考える。
ジンジャーもそうだった。
お気に入りのシャツはまだ乾いていないのを解っているのに干しているのを取ってきて着た経験がある。
伯父の国王が「同じのを買ったから」と同じシャツばかり30枚ほどあったのだが、お気に入りと言うのはその30枚の中でも1枚が出来てしまうもの。
ホリーは子供たちに「半乾き、生乾きでもこれが着たい!」と思ってもらえる品を目指している。
「解った。着ぐるみを着よう。で?何の着ぐるみなんだ?」
「ピーマンよ」
「ピ、ピーマン?!」
お子様の嫌いな食材でもベスト3から外れないと言われるピーマン。
しかし、親が子供に食べて欲しい野菜にもランキング入りする大人と子供で気持ちの乖離が激しいピーマンを何故チョイスしたのかジンジャーにはホリーが良く判らない。
「今回はほら、子供の服と言ってもお金を出すのは大人じゃない?そんな大人の事情を鑑みて、ピー!ピーって発言の度に言葉を遮る音声でも楽しんでもらおうと思って」
――野菜のピーマンではなくP男ってことか――
しかしジンジャーは思う。
いい加減いろんな場所に「来ないでください」と立ち入り禁止なのに、さらに発言禁止まで加わってしまうのではないかと。
悩んでいるとホリーが言った。
「スイカもあるわよ?」
「スイカ?まさかと思うが…」
「そのま・さ・か。でもピー音がダブルよ?」
こっちも野菜のスイカではなく、楽しくお会計をしてもらおうと商店街では店主が決済の度に「ピピッ!」と声に出す。
結局どっちもピー音だった。
ジンジャーは言った。
「当日、着ぐるみの実物を見て決めるよ」
夜は更けていく。
窓の外にはフクロウがホーホー。
しかし翌朝、ジンジャーは小鳥のピピピ♪
可愛い鳴き声に飛び起きたのだった。
愛する妻ホリーと演技ではなく一緒の寝台で横になった日は緊張をしてしまったが、無事にある出来事を完遂出来た。
「これで魔法使いへの道は断たれた」とフンフフン♪上機嫌。
「呪いでも学んでホリーに近づく男を蹴散らそうかな」と本気で考えていたりする。
今夜も一緒に寝台でごろニャン。
毎晩でも連射可能な機能を搭載しているジンジャーだが、ホリーは隔週1回で良いとつれない返事。
しかし朝晩が寒くなるとホリーとピタ!くっついて眠れるのでジンジャーはそれだけでも満足で上機嫌。
上機嫌なのだが、一難去ってまた一難。
ホリーにお食事マナーを教えていたクロースを遠ざける事が出来たとほくそ笑んでいたら今度はルドルフ。
事業の為だ、ルドルフは使用人だと解っていてもホリーの近くに男性がいる事が許せない。
――いっそクビにしようかな――
そんな事を考えた事もあるけれど、クロースもルドルフも仕事は真面目で丁寧だし、使用人の信頼も厚い。
特にルドルフはホリーを王都に連れて来てくれたし、実は一番先に手袋を外しジンジャーに触れてくれた。
――だとしてもだ!!――
イルミも同行するとは言え、ホリーとお出かけが許せない。
何が許せないか。ホリーと同じ馬車に乗り、同じ空間(しかも狭い)で同じ空気を吸う事が許せない。
ホリーの吐いた息の一部をルドルフが吸うのも許せないが、ルドルフの息がホリーに取り込まれるのも許せない。
――いっそ馬車の屋根を切り飛ばすか――
いいや、ダメだ。雨は突然。恋も突然。いつ何が起こるか判らない。
――やはり一緒に行くしかない――
そう思うのだがジンジャーが一緒に行くと馬車を降りた瞬間、平民たちは蜘蛛の子を散らすようにいなくなってしまう。
どうしても参加不可避な夜会も王宮の従者たちは身構えてジンジャーを迎える。
それだけ存在を警戒されているのだ。感染ったら困ると。
――あぁーっ!どうしよう!行きたい、行きたい!一緒に行きたい!――
悶えているとホリーが「寝る時は静かに」と注意をする。
「ごめん…」
「どうしたのです?さっきからもぞもぞと」
「ルドルフの弟妹のところに行くんだろう?私もいっしょはダメか?」
「ダメです。まだ早いです」
「馬車から降りないから。頼む!一緒に行きたいんだ」
「またそんな子供のような事を!仕方ありませんね…子供たちが驚くといけないので試作品の着ぐるみ着ます?」
「着ぐるみ…」
ホリーは子供向けなので、親である大人が機能性などを気に入ってくれても子供が「これが着たい!」と思ってくれないといつの間にか着ないままでシーズンを終えてしまうと考えている。
そう言えば…と考える。
ジンジャーもそうだった。
お気に入りのシャツはまだ乾いていないのを解っているのに干しているのを取ってきて着た経験がある。
伯父の国王が「同じのを買ったから」と同じシャツばかり30枚ほどあったのだが、お気に入りと言うのはその30枚の中でも1枚が出来てしまうもの。
ホリーは子供たちに「半乾き、生乾きでもこれが着たい!」と思ってもらえる品を目指している。
「解った。着ぐるみを着よう。で?何の着ぐるみなんだ?」
「ピーマンよ」
「ピ、ピーマン?!」
お子様の嫌いな食材でもベスト3から外れないと言われるピーマン。
しかし、親が子供に食べて欲しい野菜にもランキング入りする大人と子供で気持ちの乖離が激しいピーマンを何故チョイスしたのかジンジャーにはホリーが良く判らない。
「今回はほら、子供の服と言ってもお金を出すのは大人じゃない?そんな大人の事情を鑑みて、ピー!ピーって発言の度に言葉を遮る音声でも楽しんでもらおうと思って」
――野菜のピーマンではなくP男ってことか――
しかしジンジャーは思う。
いい加減いろんな場所に「来ないでください」と立ち入り禁止なのに、さらに発言禁止まで加わってしまうのではないかと。
悩んでいるとホリーが言った。
「スイカもあるわよ?」
「スイカ?まさかと思うが…」
「そのま・さ・か。でもピー音がダブルよ?」
こっちも野菜のスイカではなく、楽しくお会計をしてもらおうと商店街では店主が決済の度に「ピピッ!」と声に出す。
結局どっちもピー音だった。
ジンジャーは言った。
「当日、着ぐるみの実物を見て決めるよ」
夜は更けていく。
窓の外にはフクロウがホーホー。
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