21 / 30
第20話 そこで狙うは他力本願
しおりを挟む
コンココーン!!
軽快なリズムで扉をノックしたヴォーダンは「はぁい。どうぞ」と部屋の中から返って来た声に勢いよく扉を開けた。
「ナディ!!会いたかったよ!あぁこんなに痩せて!僕がいなかったから食事も喉を通らなかった?」
「いいえ。毎日3食にプラスして午後のお茶に寝る前の危険を承知な夜食まできっちりと。3kgほど重くなりました」
「そうだと思ったよ!あぁ可愛い!この悪戯なほっぺにキスをしても?(ちゅっちゅっ)」
「断りを入れると同時、返事を聞く前にキスはどうなんでしょう?」
「だって目の前に美味しそうなナディがいるんだよ?これ以上僕に待てと言うのかい?」
「待て!」
キツツキでもこんなに激しくクチバシを木に打ち付ける事はないだろうに。そんなスピードでチュッチュとキスをしてくるので、直立不動で無表情にもなってしまう。
しかし、「待て」と言えば動きを止めてくれる。
そう言えば幼い時も「ダメ!」と言えば動きを止めていたなと思い出す。
が、大人になると違う行動をし始めるという技も身に付いていた。
「ナディを見ると体の内側が燃えるように熱くなるんだ。きっと僕の淡い恋心だね」
――随分と燃焼の激しい淡さなのね――
そう言って上着を脱ぐだけならいい。
ばさりと椅子の背凭れに上着が掛けられた。
暑いならシャツのボタンを上から1、2つ外すのも仕方がない。
背凭れに掛けられた上着の上にシャツがパサリと乗った。
続いてカチャカチャと音がすると思えばベルトを外していて、ファサっと足元にボトムスが落ちる。そのまま奇妙な動きで歩き回られるよりはマシ…とシャツの上にボトムスが乗るのも限界を超えているが目を瞑る。
「はぁ~暑っ。ハートが燃えるってこの事だな」
「お待ちなさい!何故燃えるのはハートなのに下着まで脱ぐんです?」
「そりゃナディに隠し事をしたくないからだよ」
「隠しなさい!!」
「いやだ!ナディに隠し事はしたくないんだ」
――私は全力で隠して欲しい――
遊んでいる風にも見えるが、服を脱ぐさまがどうも板についている。
きっと脱ぎ慣れている、いや裸で過ごすのが通常運転なのだろう。
「心の隠し事は外からは見えません。先ずは体を隠しなさいってば!」
「体?どっちを?前?後ろ?」
「取り敢えずは前!!後ろを向いたら後ろ!!」
「もう♡ナディって照れ屋なんだな」
そう言ってヴォーダンは自身の双璧に手を当てて双璧の先端を隠す。
「位置が高い!!もっと下を隠しなさい!部屋に誰か来たらどうするの!」
「大丈夫。見られても相手が目を覆い隠すからさ」
確かにそうだ。
部屋に入ってみたら全裸男、となれば間違いなく見た方が目を覆い隠す。
でも違う。そこでもう色々と間違っている。
「そこで他力本願をしちゃダメ!」
「ナディはダメダメって。そんな事を言ってると拗ねるよ?」
――勝手に拗ねろ!――
が、この絵面は何なのだろうとフライアは考える。
ちゃんと服を着ている自分が全裸男に後ろから抱きしめられている。
そしてそのままの姿勢で椅子に座り、何故か膝の上に座らされている。
――慣れるしかないの?コレに?!――
フライアは思い切って聞いてみた。
「ねぇ?ディーンはいつも部屋では裸なの?戦地でもそうなの?」
「え?服着てるよ?どうしてそんな事を聞くんだ?」
「じゃぁ!今も服を着てください!お腹も冷えてしまうし部屋に誰か入って来てこんな姿見られたら恥ずかしいでしょう?」
「ナディ。無茶を言うなよ」
――無茶??え?私、無茶ぶりしたの?違うわよね?――
ヴォーダンはさも!当然かのようにフライアに言い切った。
その時のドヤ顔をフライアは生涯忘れる事はないだろう。
「腹が冷えないようにナディを抱っこしてるんだ。それに…自分の体を見られて恥ずかしいと思った事がないから問題ないよ」
ヴォーダンは超絶美丈夫の上に体も引き締まっている。無駄がないのだ。
整い過ぎた顔に体躯。だからこその絶対的な自信なのか。
――1度でいい。恥ずかしいと思ったことが無いと言ってみたい――
恥ずかしいとしか思ったことが無いと言っていいフライアは真逆の思考が出来るヴォーダンを素直に「凄いな」と思ってしまった。
「で、でもほら…普通は人に見せない部分も揺れてるでしょ!」
「あぁ。コレ?用を足す時に部下が見るけど顔を背けてくれるよ?」
こればかりは父親のも、兄のも見たことが無いので比べようがない。
ヴォーダンと話をしていると、あまりにも堂々としているので、もしかすると友人と双璧の豊かさで「いいなぁ」とか言っている自分の方が間違っているのでは?とさえ思ってしまう。
そしてふと思った。
ヴォーダンは魔法が使える。だから内燃が激しいのかも知れないと。こればかりは魔法が使えないフライアなので全力疾走した後で体が熱くなる感覚に似ているんだろうか?と想像するしかない。
「魔法が使えるから火照りがあるのかしら?」
「そんな事ない。だって熱くなるのは可愛いナディのせいだよ」
――私のせい?!――
ちょっとでも心配してしまったことが大きな敗北感を生む。
フライアはもう気を使ってやる事なんかないんだからね!!とヴォーダンをキっと睨むが微笑を返されるだけ。
「ナディが僕を見てる…ますます熱くなっちゃいそうだ。これでも抑えてるんだ。煽らないでくれよ」
フライアはヴォーダンの瞳の奥に見てはいけない禁断の炎が見えた気がして体をズラした。すると、もっと危険で熱い部分、寝た子を起こしてしまった事に気が付いたのだった。
軽快なリズムで扉をノックしたヴォーダンは「はぁい。どうぞ」と部屋の中から返って来た声に勢いよく扉を開けた。
「ナディ!!会いたかったよ!あぁこんなに痩せて!僕がいなかったから食事も喉を通らなかった?」
「いいえ。毎日3食にプラスして午後のお茶に寝る前の危険を承知な夜食まできっちりと。3kgほど重くなりました」
「そうだと思ったよ!あぁ可愛い!この悪戯なほっぺにキスをしても?(ちゅっちゅっ)」
「断りを入れると同時、返事を聞く前にキスはどうなんでしょう?」
「だって目の前に美味しそうなナディがいるんだよ?これ以上僕に待てと言うのかい?」
「待て!」
キツツキでもこんなに激しくクチバシを木に打ち付ける事はないだろうに。そんなスピードでチュッチュとキスをしてくるので、直立不動で無表情にもなってしまう。
しかし、「待て」と言えば動きを止めてくれる。
そう言えば幼い時も「ダメ!」と言えば動きを止めていたなと思い出す。
が、大人になると違う行動をし始めるという技も身に付いていた。
「ナディを見ると体の内側が燃えるように熱くなるんだ。きっと僕の淡い恋心だね」
――随分と燃焼の激しい淡さなのね――
そう言って上着を脱ぐだけならいい。
ばさりと椅子の背凭れに上着が掛けられた。
暑いならシャツのボタンを上から1、2つ外すのも仕方がない。
背凭れに掛けられた上着の上にシャツがパサリと乗った。
続いてカチャカチャと音がすると思えばベルトを外していて、ファサっと足元にボトムスが落ちる。そのまま奇妙な動きで歩き回られるよりはマシ…とシャツの上にボトムスが乗るのも限界を超えているが目を瞑る。
「はぁ~暑っ。ハートが燃えるってこの事だな」
「お待ちなさい!何故燃えるのはハートなのに下着まで脱ぐんです?」
「そりゃナディに隠し事をしたくないからだよ」
「隠しなさい!!」
「いやだ!ナディに隠し事はしたくないんだ」
――私は全力で隠して欲しい――
遊んでいる風にも見えるが、服を脱ぐさまがどうも板についている。
きっと脱ぎ慣れている、いや裸で過ごすのが通常運転なのだろう。
「心の隠し事は外からは見えません。先ずは体を隠しなさいってば!」
「体?どっちを?前?後ろ?」
「取り敢えずは前!!後ろを向いたら後ろ!!」
「もう♡ナディって照れ屋なんだな」
そう言ってヴォーダンは自身の双璧に手を当てて双璧の先端を隠す。
「位置が高い!!もっと下を隠しなさい!部屋に誰か来たらどうするの!」
「大丈夫。見られても相手が目を覆い隠すからさ」
確かにそうだ。
部屋に入ってみたら全裸男、となれば間違いなく見た方が目を覆い隠す。
でも違う。そこでもう色々と間違っている。
「そこで他力本願をしちゃダメ!」
「ナディはダメダメって。そんな事を言ってると拗ねるよ?」
――勝手に拗ねろ!――
が、この絵面は何なのだろうとフライアは考える。
ちゃんと服を着ている自分が全裸男に後ろから抱きしめられている。
そしてそのままの姿勢で椅子に座り、何故か膝の上に座らされている。
――慣れるしかないの?コレに?!――
フライアは思い切って聞いてみた。
「ねぇ?ディーンはいつも部屋では裸なの?戦地でもそうなの?」
「え?服着てるよ?どうしてそんな事を聞くんだ?」
「じゃぁ!今も服を着てください!お腹も冷えてしまうし部屋に誰か入って来てこんな姿見られたら恥ずかしいでしょう?」
「ナディ。無茶を言うなよ」
――無茶??え?私、無茶ぶりしたの?違うわよね?――
ヴォーダンはさも!当然かのようにフライアに言い切った。
その時のドヤ顔をフライアは生涯忘れる事はないだろう。
「腹が冷えないようにナディを抱っこしてるんだ。それに…自分の体を見られて恥ずかしいと思った事がないから問題ないよ」
ヴォーダンは超絶美丈夫の上に体も引き締まっている。無駄がないのだ。
整い過ぎた顔に体躯。だからこその絶対的な自信なのか。
――1度でいい。恥ずかしいと思ったことが無いと言ってみたい――
恥ずかしいとしか思ったことが無いと言っていいフライアは真逆の思考が出来るヴォーダンを素直に「凄いな」と思ってしまった。
「で、でもほら…普通は人に見せない部分も揺れてるでしょ!」
「あぁ。コレ?用を足す時に部下が見るけど顔を背けてくれるよ?」
こればかりは父親のも、兄のも見たことが無いので比べようがない。
ヴォーダンと話をしていると、あまりにも堂々としているので、もしかすると友人と双璧の豊かさで「いいなぁ」とか言っている自分の方が間違っているのでは?とさえ思ってしまう。
そしてふと思った。
ヴォーダンは魔法が使える。だから内燃が激しいのかも知れないと。こればかりは魔法が使えないフライアなので全力疾走した後で体が熱くなる感覚に似ているんだろうか?と想像するしかない。
「魔法が使えるから火照りがあるのかしら?」
「そんな事ない。だって熱くなるのは可愛いナディのせいだよ」
――私のせい?!――
ちょっとでも心配してしまったことが大きな敗北感を生む。
フライアはもう気を使ってやる事なんかないんだからね!!とヴォーダンをキっと睨むが微笑を返されるだけ。
「ナディが僕を見てる…ますます熱くなっちゃいそうだ。これでも抑えてるんだ。煽らないでくれよ」
フライアはヴォーダンの瞳の奥に見てはいけない禁断の炎が見えた気がして体をズラした。すると、もっと危険で熱い部分、寝た子を起こしてしまった事に気が付いたのだった。
2,297
お気に入りに追加
3,515
あなたにおすすめの小説

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

戻る場所がなくなったようなので別人として生きます
しゃーりん
恋愛
医療院で目が覚めて、新聞を見ると自分が死んだ記事が載っていた。
子爵令嬢だったリアンヌは公爵令息ジョーダンから猛アプローチを受け、結婚していた。
しかし、結婚生活は幸せではなかった。嫌がらせを受ける日々。子供に会えない日々。
そしてとうとう攫われ、襲われ、森に捨てられたらしい。
見つかったという遺体が自分に似ていて死んだと思われたのか、別人とわかっていて死んだことにされたのか。
でももう夫の元に戻る必要はない。そのことにホッとした。
リアンヌは別人として新しい人生を生きることにするというお話です。

ヴェルセット公爵家令嬢クラリッサはどこへ消えた?
ルーシャオ
恋愛
完璧な令嬢であれとヴェルセット公爵家令嬢クラリッサは期待を一身に受けて育ったが、婚約相手のイアムス王国デルバート王子はそんなクラリッサを嫌っていた。挙げ句の果てに、隣国の皇女を巻き込んで婚約破棄事件まで起こしてしまう。長年の王子からの嫌がらせに、ついにクラリッサは心が折れて行方不明に——そして約十二年後、王城の古井戸でその白骨遺体が発見されたのだった。
一方、隣国の法医学者エルネスト・クロードはロロベスキ侯爵夫人ことマダム・マーガリーの要請でイアムス王国にやってきて、白骨死体のスケッチを見てクラリッサではないと看破する。クラリッサは行方不明になって、どこへ消えた? 今はどこにいる? 本当に死んだのか? イアムス王国の人々が彼女を惜しみ、探そうとしている中、クロードは情報収集を進めていくうちに重要参考人たちと話をして——?

【完結】陛下、花園のために私と離縁なさるのですね?
紺
ファンタジー
ルスダン王国の王、ギルバートは今日も執務を妻である王妃に押し付け後宮へと足繁く通う。ご自慢の後宮には3人の側室がいてギルバートは美しくて愛らしい彼女たちにのめり込んでいった。
世継ぎとなる子供たちも生まれ、あとは彼女たちと後宮でのんびり過ごそう。だがある日うるさい妻は後宮を取り壊すと言い出した。ならばいっそ、お前がいなくなれば……。
ざまぁ必須、微ファンタジーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる