アメイジングな恋をあなたと

cyaru

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レオン、OPEN初日に散る

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「ようこそ、いらっしゃいました」

お客様の第一号は前日も先頭に陣取っていらっしゃった平民の女性。
結婚式を1カ月後に控え、背中に出来たニキビを何とかしたい!と切実なお悩みを持つ方で御座います。

お薬としてはハッキリ言って御座いません。
兎に角清潔を保つ事。そしてバランスの良い食事としっかり睡眠。これが特効薬なのです。

「お薬もなく大丈夫なんですか?」

「刺激を与えると化膿してしまったりします。あとは背中って結構汗もかくんですが後ろで見えないし、ついつい強く擦ってしまいがちです。髪を洗った後の洗髪剤は綺麗に流し、背中もこまめに汗を流して優しく洗ってください。拭くときも擦るのではなく水分を吸わせる感じで」

「でも刺激…服でしょうか」

「そうですね。現在麻の御召し物なので綿100%などに変えてみると良いかも知れません。麻よりはお高くなってしまいますが」


こんな事もあろうかと!!隣国のムゥトン伯爵家で販売をしている綿100%の下着やワンピースなどもカタログを取り揃えております。
見えない所のお洒落は、確かに可愛い下着もありますが肌に真っ先に触れるものなので素材も優しいものが一番です。

「念のために1カ月後…いえ、結婚式の前で3週間後に予約をお取りしますので症状を見せてください。改善が見られないのならお薬も検討しましょう」

「大丈夫なんでしょうか…結婚式は背中は隠れるんですけど…夜は見られちゃうし」

「では1週間後にしてみましょう。結婚式の前日も。実質3回になりますがこちらも対策を考えてみます」

「ありがとうございます!!」


女の子の悩みはとても繊細で根深いものなのです。
最初からお薬、それも1つの方法ですがお薬に頼らないのも肌トラブル回避の1つの方法でもあります。お薬も出さない!と怒ってしまう方もいるでしょうけども頼りすぎるのは何事も危険なのです。


バタバタとしているので、こんな時にレオン殿下でも「開店おめでとう」なんてやってきたらどうしよう?!と思ったのですが、王子様も忙しいのか閉店まではお客様以外の事に気を取られずに済んでホッとしているところにアルフォンソ様がいらっしゃいました。

「開店おめでとう。営業時間中は遠慮させてもらったんだが…良かったら皆で食べてくれ」

気が付けば皆昼食も食べずに必死で御座いました。
塩気のあるパンに生野菜とベーコン、そして炒り卵。手で持って食べやすいように1つ1つ包装してくださって。アルフォンソ様はこういう小さい所に気が付いてくださるのよね。

そして‥‥やはり来るとは思っておりました。

「みんな。ご苦労さん。初日は疲れただろう。これは私からの祝いだ。今日は帰って祝杯をあげてぐっすり寝てくれ」

っと…買えませんよ?えぇ。こんな高価なワインは誰も買えません。
そう言う点では嬉しいのですが、酒の力を借りずとも今日は寝台に横になったら即爆睡しそうなくらい皆疲れているのです。

しかも1人5本のワイン…全部飲んだら明日は起きられないでしょうし、なにより持って帰るのに重たいではありませんか。そういう所には気が回らないのはやはり物を運ぶ経験がないからでしょうか。


比較してしまって申し訳ないのですが…レオン殿下、やっぱり好きになれません。根っからの極悪人ではないと思うのですが、あざとさの中に金持ち臭を漂わせる所が受け入れがたいと感じるのですわ。


「今日の伝票終わりました。凄いですよ。中間あたりでドーンドーンと貝殻の容器を買ってくださった方が連発したのもありますけど…初日の売り上げ360万超えてますっ!」

「そんなに?!」

やはり1点物で閉じるにもその貝殻同士でないと合わないハマグリの容器は1つが30万以上するのです。自然に出来た模様に色を少し足して、小さな指輪やネックレスには出来ない石を散りばめるのです。

それが折り返しの時点で8個も売れたのです。閉店間際にも3つ。
純利益としては納品分や人件費、家賃などもろもろを引くので100万もありませんがスタートとしては大成功で御座いました。


店員さんも先に引けて、アルフォンソ様が預けた馬を引き取りに行っている間、レオン殿下が私に話しかけて来られました。


「アドリアナ嬢。先日の側妃の件だが、真剣に考えてくれないだろうか」

カタンと小さな音がしたので、アルフォンソ様が戻られたのでしょう。
この話が聞こえているかは姿は見えないので解りません。ですが「帰ろう」と言ってこない所を見ると聞こえてはいるのでしょう。

「殿下、有難いお話ですがお断りさせて頂きます」
「何故だ?側妃となれば正妃のような煩わしさもなく子供が出来れば育児にも専念できる。乳母に預けて自由にしてもらってもいいんだ」
「何もしないというのは性に合わないのです」
「なら執務の手伝いをしてくれればいい」
「それは側妃という役目の範疇を超えます。何より・・・私は政略結婚と言えど夫を共有するのは受け入れられないのです」
「私が頭を下げてもか?」
「レオン殿下は頭を下げてはなりません。そういう御立場でしょう?」


カタッと2つの音が重なります。1つは気持ち遅れた音でアルフォンソ様が踏み込んだ足音。もう1つは向かいに腰を下ろしていたレオン殿下が立ち上がり私の手を包むように握った椅子の音。

「頼む。アドリアナ。貴女に心を奪われた憐れな王子に愛を乞わせてくれないか?」

レオン殿下の目は嘘偽りのない目に見えました。
少しの間を置いて、返事を返そうとするとその返事が断りだと思ったのかレオン殿下は更に手の力を強めたのです。

「もし!もし、私がロカ家に間者を送り込んでいた事で腹を立てているのなら謝る。それだけ君のことが心配だったんだ。アルの事も信用はしていたが…同じ男だ。何かあったらと思うと気が気でなかったし、牽制もしなければと…夕食会では出過ぎたかと思ったが…側妃でないと迎える事が出来ないこの決まりをどうする事も出来ず‥」

「レオン殿下。お気持ちは嬉しいのです。でも、私はあと2年半弱はどうにもならないのです。しかし殿下は早くお世継ぎをと望まれる身。時間は止まってくれません。何より先程も申し上げた通り私は夫を共有する事はできません。それは‥‥女だからそう思うのかも知れません。だとすれば正妃となられるかたも私のことはよく思われないでしょう。国の中枢、次代を担う御子を育てる場で人間の泥臭い争いはあってはならないと思うのです」

レオン殿下の握る手の力は弱まり、スルっと離れると力なく椅子に腰を下ろされました。

「欲しくないものは簡単に手に入るのに、本当に欲しいものは手に入らない。理不尽だな」

「そうでしょうか。他にも王子殿下、王女殿下もいらっしゃるのに第一人者と言われているのはレオン殿下努力あってこそだと私は思います」

「君は優しいな。そしてとんでもなくズルい」

「まぁ!失礼な。本当にそう思っておりますのに」

「そうか。判った。まぁそこで…聞き耳を立てている猟犬もいるし潔く引くのも従弟の務めだな。で…無礼講で良い。これだけ、本当の本心を教えて欲しい」

「だから!本当だと言ってます」

「そうじゃない。今までは貴族令嬢としての言葉だ。それが本心であるのは解っている。これから聞く事はカレドス家は全く関係なくアドリアナ個人としての本心を聞かせてくれ」

「なんでしょう」

「もし、正妃と出来たなら、もし私が王位を捨てても良いと思ったなら受け入れてくれたか?」

「いいえ?受け入れませんけど」

え?どうして突然放心状態になっていらっしゃるの?
本心を聞きたいって言うから!!私が悪いの?え?悪くないですわよね??

隠れているアルフォンソ様!!出て来なさい!!

その後、レオン殿下は2人の従者の方がトルソーを運ぶように運ばれて行きました。
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