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出禁の女
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侯爵家の名前を出してしまうのは不味いかな?と元使用人さんと一緒にソフィーリア様には仮整理券を渡し人目につかない場所に移動しましょうと言ってはみますが火に油状態。
終いにはなんと…。
「アンタね。侯爵夫人にこんな事して済むと思ってるの?アタシはね、レオン殿下にもお言葉をかけて貰った事もある由緒正しい侯爵夫人なのよ!」
――由緒正しい侯爵夫人って‥‥なに?――
色々とヘルカオレ王国では不味い事も仰っているのですがこれが有名な無自覚というものでしょう。無知から来る無自覚、無意識下の言動は非常に質が悪いのです。
知らないと言うのは決して強みにはなりません。まして侯爵夫人を名乗るのであればそれなりの素養があると周囲は思って接してきますので、初期のハードルが高いのです。
伯爵夫人なら許されても侯爵夫人、公爵夫人には許されない事も多いのです。
「あの、王子殿下のお名前を出されるのはよろしくないかと存じます」
「ハァッ?!アタシが嘘を吐いているって言いたいの?」
「いえ、嘘か本当か。それ以前に問題があるのではないでしょうか?と申し上げているのです」
こんな街中ですし、レオン殿下もお店の事は御存じですし何よりカウンセリングをする医師をここにも配置するのは国家的な医師の育成と、開業する際の王都集中を分散させる計画があるからです。
もしかすると何故か「池の鯉」をご存じだった事もあるので、どこかで聞き耳を立てているかも知れないのです。
――あのブルーギルどうなったかしら――
そんな事も考えてしまいます。別の池を生簀代わりにして1日3食1匹食べても繁殖力が強いので10年経っても減らないと思いますし…。
魚嫌いにならないと良いんですけど‥‥っと違う違う。
それよりも貴族の方や一部平民でも商会関係の方は現在のパルカス侯爵夫人が誰なのかは知っておりますけども、人口で一番多い一般の平民の方は知らないのです。
目の前で自分の名前ではありませんが呼名称を叫ばないで頂きたいのです。
「お客様、兎に角こちらに」
「触んな!!あんたさ、不敬よ!」
――それを言うならオマエガナー…っていけないポリー化したわ――
ソフィーリア様はどこにそんな力が!?と思うくらいに足を踏ん張って動いてくれないのです。触るなの誤変換、いえご認識だと思いますが「触んな」と叫ばれて元使用人さんも私もひっかき傷があれよあれよという間に沢山ついてしまいました。
――たぬき油、塗りこまなくちゃ――って、それは後よ!
手を焼いていると、騒ぎを聞きつけたのか現在のパルカス侯爵家の使用人さんが走って来られました。
「あ、あなたは!!」
「やだ、久しぶりね。元気だった?」
「はい、おかげさまで毎日神経ガリガリに削ってます」
一緒になってソフィーリア様を動かそうとしていたのはパルカス侯爵家の元使用人さん時代には侍女頭をされていた現店員さん。
走って来たパルカス侯爵家の使用人さんは侍女頭時代に店員さんがノウハウを教えていた執事見習いさん。但し今は執事になられております。
「なに?アンタたち知り合いなの?」
「知り合いも何も…この人は半年‥いや8カ月くらい前?まで侯爵家で侍女頭をしていた人ですよ」
「そんなの知らないわよ。アタシが来る前の話をしてどうすんの?アンタはアンタが生まれる前の事も知ってるの?知らないでしょう?ゴチャゴチャ言う前に教えとけって話よ」
「そんな無茶な…」
しかし、ソフィーリア様は「って事は?」と手をパンと打ち鳴らしニマッと微笑まれました。
「侯爵家に世話になってたんなら、明日売る品物。今ここで出しなさいよ。アタシが先行して使ってあげるわ。取り敢えず一式。色違いも忘れずに持って来るのよ」
もうこうなるとただのチンピラ、破落戸で御座います。
無茶苦茶もいいところで私は出禁にしようと声を掛ける直前、ソフィーリア様を迎えに来た現執事さんがソフィーリア様から仮整理券を奪い取り、私に手渡してきてくださいました。
「お連れ様。明日は旦那様の執務、きっちり手伝って頂きます。終わるまで外出はさせません」
「なんですって?あんた、雇い主になんてことを!」
「私の雇い主は大旦那様です。旦那様でもお連れ様でもありません」
「チッ!どいつもこいつも。ほぉぉぉんと使えない!帰ったらリオに言いつけてやる、あんた、クビ!クビにしてやるんだから!」
「はいはい。クビでもサビでもニキビでもお好きにどうぞ。帰りますよ」
ソフィーリア様って…人の言葉を理解しているのかしら。
彼は雇い主はブラウリオ様でもソフィーリア様でもないとハッキリ言ったのにどうしてクビに?もしかするとブラウリオ様も同程度かも知れないので、解雇されるかも知れません。
そうなったときは彼を仕入れ係にでも雇い入れてみようかしら。
整理券を配るのは追加になりましたが、その夜は何故かどっと疲れがでてしまいアルフォンソ様のお出迎えをする頃には私、寝台で爆睡しておりました。
終いにはなんと…。
「アンタね。侯爵夫人にこんな事して済むと思ってるの?アタシはね、レオン殿下にもお言葉をかけて貰った事もある由緒正しい侯爵夫人なのよ!」
――由緒正しい侯爵夫人って‥‥なに?――
色々とヘルカオレ王国では不味い事も仰っているのですがこれが有名な無自覚というものでしょう。無知から来る無自覚、無意識下の言動は非常に質が悪いのです。
知らないと言うのは決して強みにはなりません。まして侯爵夫人を名乗るのであればそれなりの素養があると周囲は思って接してきますので、初期のハードルが高いのです。
伯爵夫人なら許されても侯爵夫人、公爵夫人には許されない事も多いのです。
「あの、王子殿下のお名前を出されるのはよろしくないかと存じます」
「ハァッ?!アタシが嘘を吐いているって言いたいの?」
「いえ、嘘か本当か。それ以前に問題があるのではないでしょうか?と申し上げているのです」
こんな街中ですし、レオン殿下もお店の事は御存じですし何よりカウンセリングをする医師をここにも配置するのは国家的な医師の育成と、開業する際の王都集中を分散させる計画があるからです。
もしかすると何故か「池の鯉」をご存じだった事もあるので、どこかで聞き耳を立てているかも知れないのです。
――あのブルーギルどうなったかしら――
そんな事も考えてしまいます。別の池を生簀代わりにして1日3食1匹食べても繁殖力が強いので10年経っても減らないと思いますし…。
魚嫌いにならないと良いんですけど‥‥っと違う違う。
それよりも貴族の方や一部平民でも商会関係の方は現在のパルカス侯爵夫人が誰なのかは知っておりますけども、人口で一番多い一般の平民の方は知らないのです。
目の前で自分の名前ではありませんが呼名称を叫ばないで頂きたいのです。
「お客様、兎に角こちらに」
「触んな!!あんたさ、不敬よ!」
――それを言うならオマエガナー…っていけないポリー化したわ――
ソフィーリア様はどこにそんな力が!?と思うくらいに足を踏ん張って動いてくれないのです。触るなの誤変換、いえご認識だと思いますが「触んな」と叫ばれて元使用人さんも私もひっかき傷があれよあれよという間に沢山ついてしまいました。
――たぬき油、塗りこまなくちゃ――って、それは後よ!
手を焼いていると、騒ぎを聞きつけたのか現在のパルカス侯爵家の使用人さんが走って来られました。
「あ、あなたは!!」
「やだ、久しぶりね。元気だった?」
「はい、おかげさまで毎日神経ガリガリに削ってます」
一緒になってソフィーリア様を動かそうとしていたのはパルカス侯爵家の元使用人さん時代には侍女頭をされていた現店員さん。
走って来たパルカス侯爵家の使用人さんは侍女頭時代に店員さんがノウハウを教えていた執事見習いさん。但し今は執事になられております。
「なに?アンタたち知り合いなの?」
「知り合いも何も…この人は半年‥いや8カ月くらい前?まで侯爵家で侍女頭をしていた人ですよ」
「そんなの知らないわよ。アタシが来る前の話をしてどうすんの?アンタはアンタが生まれる前の事も知ってるの?知らないでしょう?ゴチャゴチャ言う前に教えとけって話よ」
「そんな無茶な…」
しかし、ソフィーリア様は「って事は?」と手をパンと打ち鳴らしニマッと微笑まれました。
「侯爵家に世話になってたんなら、明日売る品物。今ここで出しなさいよ。アタシが先行して使ってあげるわ。取り敢えず一式。色違いも忘れずに持って来るのよ」
もうこうなるとただのチンピラ、破落戸で御座います。
無茶苦茶もいいところで私は出禁にしようと声を掛ける直前、ソフィーリア様を迎えに来た現執事さんがソフィーリア様から仮整理券を奪い取り、私に手渡してきてくださいました。
「お連れ様。明日は旦那様の執務、きっちり手伝って頂きます。終わるまで外出はさせません」
「なんですって?あんた、雇い主になんてことを!」
「私の雇い主は大旦那様です。旦那様でもお連れ様でもありません」
「チッ!どいつもこいつも。ほぉぉぉんと使えない!帰ったらリオに言いつけてやる、あんた、クビ!クビにしてやるんだから!」
「はいはい。クビでもサビでもニキビでもお好きにどうぞ。帰りますよ」
ソフィーリア様って…人の言葉を理解しているのかしら。
彼は雇い主はブラウリオ様でもソフィーリア様でもないとハッキリ言ったのにどうしてクビに?もしかするとブラウリオ様も同程度かも知れないので、解雇されるかも知れません。
そうなったときは彼を仕入れ係にでも雇い入れてみようかしら。
整理券を配るのは追加になりましたが、その夜は何故かどっと疲れがでてしまいアルフォンソ様のお出迎えをする頃には私、寝台で爆睡しておりました。
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