アメイジングな恋をあなたと

cyaru

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見限られた息子

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この回はブラウリオの視点です。

★~★

このままでは非常に不味い。それは火を見るよりも明らかだ。
何としても領地行きを遅らせるか、父上の力を借りてアドリアナを呼び戻さねばならない。

「お願いです。話を!話を聞いてください!」
「なんだ。日暮れまでには王都を抜けたいんだ。手短に言え」
「日暮れまでにっ!?そんな急がなくても!」
「馬鹿を言え。この時期だ。早めに宿場町に到達せねば商人に替えの馬を先取りされてしまうではないか」

僕よりも馬の方が大事だなんて。
あんなに僕の事を可愛がってくれたのにこの心変わりは何なのだろう。
僕は両親が信じられなかった。

しかし、背水の陣だ。言わねばならない。


「アドリアナとの関係を修復したいんです。どうか力を貸してください!」
「ハッ。馬鹿な。暴力行為にまで及んでおきながら関係の修復?無駄だ」
「心を入れ替えます!3年!当初の約束通り3年で良いんです。契約通りに戻してください。別居でも良いんです。僕が通い、なんとか――」
「馬鹿な事を言うな!金の卵を捨てて腐った卵に餌をやる愚か者が!」


再度大きな怒声が僕に浴びせられた。


「関係の修復だと?ならお前は何故この半年の間にロカ子爵家に一度も顔を出していないんだ?お前の愚行で別居と言えどパルカス侯爵家所有の家に住まわせる事は出来ないとカレドス伯爵が言ったんだぞ?結婚をしたのに実家に住まわせると。それでは婚姻の事実が全くなくなるではないか!」


そうなのだ。別居で結果的に一度も訪問をしていなくてもパルカス侯爵家所有の別邸なら生活の面倒は見ているとして婚姻関係が認められる。


その他にパルカス侯爵家所有でなくても何処かに住まう家なり部屋を用意すればいいのだ。それがカレドス家の持ち物でなければ。その際には面倒でも最低月に一度は茶なり、どこかに連れ出すなりしなくてはならなかった。

だからこそロカ子爵家は「面会は自由」としたのだ。
過ぎてしまった半年を悔いても時が戻る訳ではない。


「これからはちゃんとします。だから…僕を…僕を見捨てないで!父上…母上ぇぇ。僕を助けてくださいっ」


父上と母上は僕には甘い。
反省していると強く態度に見せて、涙でも流せばイチコロ‥‥。

ではなかった。


「なら今からでも行けばどうだ。先ずは行動だろう」
「じゃぁ…出立は伸ばして――」
「まだ言うのか?さっきも言っただろう。この時期は替えの馬がいるかいないか。大きな問題なのだ。お前の戯言に付き合っている時間も惜しいのだ」

父上は完全に僕を見限っていた。最後の頼りは母上だが、顔をあげ母上を見ると僕を冷たく見下ろしていた。


「あなた。教えてあげれば?どうせ使用人を雇うにもお金もないんでしょうし」
「あぁそうだな」

――何を教えてくれると言うんだ?――


起死回生の一手になるならそれでもいい。
正直、父上と母上は何があっても僕を見捨てないと考えていたし、侯爵家を継ぐと言う事は単に当主が僕になるだけで何も変わらないと思っていただけにこの状況を打破するなら僕は悪魔に魂を売っても構わないとさえ思った。

「カレドス家には既に1回目の支援金を払っている。その金を戻して貰え。但しお前は暴力行為もあり不貞行為もある。やり方を1つ間違えると詰むから慎重にな」

「そうよ。カレドス家には初回、17億を支援しているの。それだけあればケネス従兄とロザリ従妹アのどちらかは領地を売ってくれるかも知れないわね」

「それじゃダメなんです。僕は気が付いたんです。領地を買い戻したところで現状は変わりません。切り盛りするにはソフィーではダメなんです。アドリアナじゃないとその先がないじゃないですか」

「今更それを言うか?何のために私達がこの縁談を纏めたと思っているんだ。そのソフィーを選んだのはお前だ。力不足を認めたのは良い事だが、遅いんだ。もう遅いんだよ」

「そんなっ!始まってもいない夫婦関係なんです。必ずアドリアナの気持ちを僕に向けさせます。だから!」

「そこまで言うなら気概を見せてもらおうか」

「気概?どうやって」

「領地の件についてのみ次の支援金を支払う半年後まで待ってやる。そのソフィーとやらにその期間でそこそこの執務が出来るようにするんだ。いいか?お前とカレドスの娘の結婚、これは誰も面と向かって言わないだけで内容は周知されている。お前が平民女に傾倒していることもな。今更それをやっぱり貴族の女の方がいいですと乗り換えてみろ。何と噂されると思う」

「ソフィーに執務を?無理です。父上っ!父上も母上もいないんでしょう?その間…生活も出来ないじゃないですか」

「即答するな!バカ者が!それくらいは辛抱しろ。お前の我儘でどれだけ面倒を被っていると考えているッ!お前に残されている道はあのバカ女を体裁だけでも取り繕うことだけだ!」


父上と母上が領地に引き籠るのは変わらないなんて言いやがる。

――くそっ。覚えてろ。領地が手に入ったら速攻で売り飛ばしてやる――

庶民よりすこしだけ裕福な暮らしは想像するだけで身震いしそうだったが、ソフィーの出来栄えを報告するための監視要員となる使用人は数人残してくれた。

ただし人数が人数の為、以前のように住み込みは1人もいない。

全員が通いで朝食は作り置きになるし、夕食も作って配膳まではしてもらえるが片付けは自分でしなければ朝食を取る際にテーブルには置く場所が無くなる。その程度だろうと考えていた僕は目論見もくろみが甘かった事を知るのだった。
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