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告白は狸寝入りで
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「ポリー…死ぬ。休ませて」
「何を言っているのです。お嬢様があれもやる、これもやると旦那様に言うものだから旦那様も忙しくてお嬢様以上にボヤかれておりますよ。さ、お嬢様の持ち分だけでも仕上げてください」
品物が飛ぶように売れるのはよいのですが、問題がまたまた発生。
それは人手不足。
薬の場合、包み方でどれだけ日持ちをするかが決まるのでタケノコの皮は山のように届きますし物量の確保は問題ないのに人の手が全く足りないのです。
なにより、今日は兎に角量が多いのです。
騎士団の遠征に同行する医療班からも医療院経由で発注があり、カレドス家でもてんやわんや。ロカ子爵家で居候している私にもいつもの倍以上が割り振られてしまいました。
今日も木箱に3つ。小分けする薬の数は2500。
もう指先がバカになりそうですけども、紙をこれだけ触れば指先もボロボロになるのにそうならないのは、タヌキの油とミモザの成分のおかげのようです。
部屋に溢れるタケノコの皮と、煎じた薬草。
私の周囲ではゴリゴリと乳鉢で薬草を煎じる音と、カサカサと小分けに包む音しかしません。
気が付けば部屋から一歩も出ないまま夕方になっていたり、ロカ子爵家の敷地内から出ていない日も2、3か月。今日こそは庭を散歩するぞ!と昨夜眠りについたのに。
社交もする必要がない結婚はとてもありがたいですし、あれだけ「暇~暇~」と唸る事もありませんので贅沢な悩みでは御座いますが…息が詰まりそう。
そんな中、部屋に来られたのはアルフォンソ様。
帰宅をされた際は夕食をご一緒するのですけども、今日は特に梱包する量が多くお出迎えも忘れておりました。
「これはまた…凄い量だな」
「アルフォンソ様。お出迎えも出来ず申し訳ございません」
「いや、いいんだ。それよりも疲れているんじゃないか?」
「疲れているんですけども、そうも言ってられないのです」
「なら手空きの使用人にも手伝って貰えばいい」
「そんな事出来ません!みなさんはこのために働いているのではないのですから」
そうはいっても、梱包した薬を受け取りに来る従者が間もなくやってきます。
涙目になる私とポリー。ロカ子爵家の使用人さんが「手伝いますよ」と少しづつ引き受けてくださいます。
手慣れている私よりも綺麗に、早く梱包していくのは何故?
軽いショックに打ちのめされながらもようようで当日分を仕上げる事が出来たのです。
手伝ってくださった使用人さんには後日お手当てを出さなければと思いつつ、当日支払いが出来ない非礼を侘びやっと一息で御座います。
「くぅ…肩が痛い…明日はもう肩が上がらないかも」
そんな私にアルフォンソ様が!事もあろうか肩を揉んでくれると言うのです。
「いえいえ、そんな事はさせられません」
「何もしない。肩を揉むだけだ。こう見えて腕に定評もあるんだぞ。遠慮をするな」
そう言って私の肩を揉み始めるアルフォンソ様。
これが‥‥また…気持ちいいのです。
――そこよ。そこ――
丁度いいところに親指が当たり、強くなく弱くない指圧が痛さを乗り越えると心地よさに代わり、私は座ったままでウトウト…ハッ!!…ウトウト…ハッ!っと繰り返しているうちに舟をこぎ始めてしまったのです。
半分寝入って半分覚醒。そんな状態で「あぁ、運ばれちゃってる」と横抱きですらその振動が私を眠りに誘うのです。
寝台に寝かされて「あぁ…オフトンだぁ」と思っていると…。
――んん?んんん??――
意識の殆どが眠りに傾いた状態で御座いましたが、どうして手を握られているのか?と深い眠りに落ちそうな気持が妨げられて覚醒に傾いてしまいました。
そして、申し訳ないのですけども、タヌキの油でスベスベを保っている手を持つ私は狸寝入りをせざるを得なくなったのです。
「寝顔も可愛いな」
――フェッ?!まさか寝顔を見られてる?――
「屋敷に帰ると君が出迎えてくれる。その度に、このままずっと閉じ込めておきたい気持ちになる」
――にゃにゃニャンデスッテ?!監禁宣言?――
「日を追うごとに君を好きだと言う気持ちが抑えられない。肩を揉むなどと言わないと君に触れる事も出来ないんだ。本当は抱きしめたいなんて知られたら…君に嫌われてしまう」
――嫌うとか以前の問題かと。一応人妻ですし――
「君の離縁が成立する日まで、静かに見守ろうと思ってる」
――って事は離縁になったら暴走しちゃうの?――
「君の見る夢。俺もいるのかな。そうだと嬉しい」
そっと握っていた手を離し掛布を纏わせるとアルフォンソ様は静かに部屋を出て行かれたのですけども、考えてもみなかった告白に私は折角整えられた掛布に芋虫のように包まってしまったのです。
★~★
次は18時10分です(*^-^*)
「何を言っているのです。お嬢様があれもやる、これもやると旦那様に言うものだから旦那様も忙しくてお嬢様以上にボヤかれておりますよ。さ、お嬢様の持ち分だけでも仕上げてください」
品物が飛ぶように売れるのはよいのですが、問題がまたまた発生。
それは人手不足。
薬の場合、包み方でどれだけ日持ちをするかが決まるのでタケノコの皮は山のように届きますし物量の確保は問題ないのに人の手が全く足りないのです。
なにより、今日は兎に角量が多いのです。
騎士団の遠征に同行する医療班からも医療院経由で発注があり、カレドス家でもてんやわんや。ロカ子爵家で居候している私にもいつもの倍以上が割り振られてしまいました。
今日も木箱に3つ。小分けする薬の数は2500。
もう指先がバカになりそうですけども、紙をこれだけ触れば指先もボロボロになるのにそうならないのは、タヌキの油とミモザの成分のおかげのようです。
部屋に溢れるタケノコの皮と、煎じた薬草。
私の周囲ではゴリゴリと乳鉢で薬草を煎じる音と、カサカサと小分けに包む音しかしません。
気が付けば部屋から一歩も出ないまま夕方になっていたり、ロカ子爵家の敷地内から出ていない日も2、3か月。今日こそは庭を散歩するぞ!と昨夜眠りについたのに。
社交もする必要がない結婚はとてもありがたいですし、あれだけ「暇~暇~」と唸る事もありませんので贅沢な悩みでは御座いますが…息が詰まりそう。
そんな中、部屋に来られたのはアルフォンソ様。
帰宅をされた際は夕食をご一緒するのですけども、今日は特に梱包する量が多くお出迎えも忘れておりました。
「これはまた…凄い量だな」
「アルフォンソ様。お出迎えも出来ず申し訳ございません」
「いや、いいんだ。それよりも疲れているんじゃないか?」
「疲れているんですけども、そうも言ってられないのです」
「なら手空きの使用人にも手伝って貰えばいい」
「そんな事出来ません!みなさんはこのために働いているのではないのですから」
そうはいっても、梱包した薬を受け取りに来る従者が間もなくやってきます。
涙目になる私とポリー。ロカ子爵家の使用人さんが「手伝いますよ」と少しづつ引き受けてくださいます。
手慣れている私よりも綺麗に、早く梱包していくのは何故?
軽いショックに打ちのめされながらもようようで当日分を仕上げる事が出来たのです。
手伝ってくださった使用人さんには後日お手当てを出さなければと思いつつ、当日支払いが出来ない非礼を侘びやっと一息で御座います。
「くぅ…肩が痛い…明日はもう肩が上がらないかも」
そんな私にアルフォンソ様が!事もあろうか肩を揉んでくれると言うのです。
「いえいえ、そんな事はさせられません」
「何もしない。肩を揉むだけだ。こう見えて腕に定評もあるんだぞ。遠慮をするな」
そう言って私の肩を揉み始めるアルフォンソ様。
これが‥‥また…気持ちいいのです。
――そこよ。そこ――
丁度いいところに親指が当たり、強くなく弱くない指圧が痛さを乗り越えると心地よさに代わり、私は座ったままでウトウト…ハッ!!…ウトウト…ハッ!っと繰り返しているうちに舟をこぎ始めてしまったのです。
半分寝入って半分覚醒。そんな状態で「あぁ、運ばれちゃってる」と横抱きですらその振動が私を眠りに誘うのです。
寝台に寝かされて「あぁ…オフトンだぁ」と思っていると…。
――んん?んんん??――
意識の殆どが眠りに傾いた状態で御座いましたが、どうして手を握られているのか?と深い眠りに落ちそうな気持が妨げられて覚醒に傾いてしまいました。
そして、申し訳ないのですけども、タヌキの油でスベスベを保っている手を持つ私は狸寝入りをせざるを得なくなったのです。
「寝顔も可愛いな」
――フェッ?!まさか寝顔を見られてる?――
「屋敷に帰ると君が出迎えてくれる。その度に、このままずっと閉じ込めておきたい気持ちになる」
――にゃにゃニャンデスッテ?!監禁宣言?――
「日を追うごとに君を好きだと言う気持ちが抑えられない。肩を揉むなどと言わないと君に触れる事も出来ないんだ。本当は抱きしめたいなんて知られたら…君に嫌われてしまう」
――嫌うとか以前の問題かと。一応人妻ですし――
「君の離縁が成立する日まで、静かに見守ろうと思ってる」
――って事は離縁になったら暴走しちゃうの?――
「君の見る夢。俺もいるのかな。そうだと嬉しい」
そっと握っていた手を離し掛布を纏わせるとアルフォンソ様は静かに部屋を出て行かれたのですけども、考えてもみなかった告白に私は折角整えられた掛布に芋虫のように包まってしまったのです。
★~★
次は18時10分です(*^-^*)
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