アメイジングな恋をあなたと

cyaru

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元親友、キレて忠告

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幸せというのはこういうことを指すに違いない。

ブラウリオはアドリアナと正式に結婚となった日、ソフィーリアをパルカス侯爵家に迎え入れた。

執務はまだ高齢ではあるが父親が行っていたため、朝、目覚めた時から夜に眠りにつくまでソフィーリアと同じ時間を過ごす。寝ている時でさえ隣で体温を分け合って眠る。


「ソフィー。僕はなんて幸せ者なんだろう」
「リオ、私もよ。とっても幸せ」
「そうだ、今日は仕立て屋を呼んであるんだ。好きなだけドレスを頼むといい」
「本当に?ドレスに合わせた小物やジュエリーも買っていいの?」
「当たり前だよ。全部がソフィーのオリジナルになるよう見立てていいんだ」


仕事は父親がやってくれるし、侯爵家の名を売るのは母親がしてくれる。食事に限らず身の回りの世話も使用人がしてくれて、ブラウリオはただソフィーリアと甘い時間が過ごせる充実した日々を送っていた。

色々と物を買い与えるのだが、両親からは「3年経つまでは表に出すな」と厳命をされている。ブラウリオもその意味は解っている。
周囲が「契約結婚」だという事は解っているし別居である事も知っていたとしても公的にブラウリオの妻はアドリアナ。

完全な私的な場ではソフィーリアを連れ立って歩けるが、公的な場では問題になる。
本音と建て前。本質の部分を誰もが知っていても、3年間は我慢の日々を過ごさねばならなかった。

ソフィーリアにも肩身の狭い思いをさせてしまうから、せめて物欲だけでも満たしてやろう。そんな気持ちだった。



しかし2か月も経つとブラウリオの気持ちに変化が見え始めた。

ブラウリオ自身にも判らないのだが、ソフィーリアのアラが目に付くし鼻に突くのだ。知り合って直ぐに付き合いを始めてもう10年近くになる。

その間には泊りがけで旅行にも行ったし、24時間どころか100時間以上も一緒に過ごした事もある。お互いの欠点とも言える部分も愛おしいと思っていたのに何かが違うのだ。


そんな思いをソフィーリアに打ち明けるのもどうかと考えたブラウリオは3年前に長く婚約者でいた令嬢と結婚をした友人を誘って飲みに出た。
ソフィーリアには「日付が変わる前には戻るから」という約束をして外に出た時「自由」を感じた。

「よぅ!ここだ!」
「カマロ!待たせたな。今日は突然の誘いですまない」

カマロとはもう物心ついた時からの親友だった。3年前の結婚を機に伯爵家も継いでまだまだ新参者と呼ばれながらもブラウリオがソフィーリアを侯爵家に迎え入れた頃、カマロは当主として初めて大きな仕事を公爵家と共同事業だったが始めたという噂も聞いた。

相当に忙殺される日々を送っていると思われたが、ブラウリオが是が非でもと頼み込んだのである。


「今日はどうしたんだ?」
「いや、カマロに聞いて欲しい事があるんだ」
「聞いて欲しい?愚痴か?相談か?」
「相談だな」

バーテンが2人にグラスを静かに差し出して来て、ブラウリオはグラス同士をカチンと当てようとしたがカマロはそのまま飲み始めてしまった。

「相談ってなんだ?」
「実はソフィーの事なんだ」
「まだ付き合っていたのか?って事はあの噂は本当だったのか?」

カマロの驚きは作られたものではなかった。

「噂ってなんだ?」
「いや、お前がカレドス家の令嬢と契約結婚をしたというからさ。おまけに本妻となった女性は本宅に住まわせず完全別居。そこにお前が愛人を本宅に呼んだとか言うから俺もカチンと来てしまったよ」
「それ…噂じゃない。その通りだ」


大きなため息の後カマロはグラスの残りを一気に飲み干すとバーテンに2杯目を頼んだ。


「嘘だろ…本気で平民を引き入れたと言うのか」
「黙っていてすまない。あまり他家の人間に言える事じゃないんだ。だがカレドス家の女も了解の上なんだ」
「で?相談ってなんだ?」

明らかにカマロの温度が変わった。早く話をしろと急かすようにカマロが言う

「実はソフィーと一緒に暮らし始めて何と言うか…嫌な部分が目に付くんだ」
「例えばどんな?」
「食事を手で掴んで食べたり」
「待った。抓むではなく掴むか?」

カマロは抓むと指先で示し、続けて掴むと言いながら手で何か鷲掴みにする様な素振りをした。

「あぁ。なら掴むだな。それからクチャクチャと音が酷い」
「一緒に食事をした事はなかったのか?」
「あった。その時は気にならないと言うか‥可愛いとさえ思った」
「あ~アレだ。アレ」
「アレ?」
「付き合う女と結婚する女は違うって事だ。付き合っている時は何でも許せる。好きだしそこに責任がない」
「いや、責任はあるよ。支払いだってそうだし――」
「そう言う事じゃない」

カマロは2杯目のグラスも一気に飲み干すと体を捩じりブラウリオと真正面から向き合った。

「責任って言うのは人生って事だ。相手の人生も自分が背負う。それは相手もお前の人生を背負う事になるんだが、そこに差を感じてるんだ。貴族の結婚ってのは平民と違って片方が多くの荷物を背負う。これが平民だと女も一緒になって働いて2馬力、3馬力となるんだが貴族は違う。親を見たら判るだろう?」

ブラウリオは両親を思い浮かべた。
確かに父親だけが働いているようでもある。しかし母親も何もしないかと言えばそうでもない。
なら2馬力じゃないか?と首を傾げた。

「貴族には貴族の決まりがある。いいか?お前の所は父親1人でもなんとかやっていけるが母親一人なら無理だ。この違いは判るだろう?」

「あぁ、それなら判る」

「似たようなものだ。お前はとその女じゃ背負う重さが違うが、それがこの先もずっと続く。その女と墓まで同じになってしまう。お前はそこに嫌気がさしてるんだよ。なんで恋人にここまでしなくちゃいけないんだ?ってな。何故そう思うのか。判るか?」

「いや、判らない」

「その女が何時まで経っても当主夫人の務めを理解しようとしないからさ。貴族の結婚は当人だけの問題じゃない。肩に乗るのは妻や子供だけじゃなく使用人も領民も全部だ。嫌な所が見えているのはその女が当主夫人の器じゃないと本能が警鐘鳴らしてるって事だ。だから貴族は婚約期間をおくんだ。その間に次の当主夫妻になるに相応しい学びをお互いが足を揃えて学ぶ期間が婚約期間なんだ。好き好きって恋愛期間と勘違いするなよ?」


カマロは呆れながらもブラウリオに思ったままを告げたのだが、ブラウリオはガシャン!!手にしていたグラスを床に叩きつけるとカマロの胸ぐらを掴みあげた。

「聞いた風な事を言うな。お前に俺の何が判る」

カマロはブラウリオの手を掴み、胸ぐらからその手を引き剥がした。勢いよく剥がしたのでカマロのシャツもボタンが飛んで裂けてしまった。

「判らないし、解りたくもない。噂が事実だとすればブラウリオ。お前との付き合いも今日までだ。これからは他人として接してくれ」

「なんだと?!貴様、僕が侯爵家だと忘れてないか?」

「覚えているとも。ただ忠告してやろう。侯爵家と言えど廃家になった家は過去に幾つもあるんだぜ」

カマロの言葉の意味が解らないブラウリオではない。
ただ、それだけ言うとカマロはブラウリオを振り返る事無く店から出て行ってしまった。

ブラウリオは割れたグラスと清掃代も上乗せしてカウンターに札を置くとカマロの出て行った出口とは違う出口から店を出たのだった。


★~★
本日はここまでです(*^-^*)

明日は3日目。ブラウリオがアドリアナに急接近?!
そしてレオンまで様子を見に来てズギューン・ドギューン。
ラストの直線の場所取りに必死な第3コーナー。
楽しんで頂けると嬉しいです(*^-^*)
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