2 / 41
夢のウハウハ生活
しおりを挟む
その昔、もう辛うじてお名前を憶えている程度ですが7年前まで婚約者は居たのです。しかし領地に視察に行った際、泊まった宿屋でその宿屋の娘と同衾してしまい半年ほどして子供が出来てしまった事が発覚。
「僕の子じゃない!」と仰っていたのですけども、生まれてみればアラ!可愛い♡婚約者の色をしっかりと受け継いで、それはもうそっくりな子供で御座いました。
その件で婚約は破棄となり、彼は家から籍を抜かれ放逐。
宿屋も「泊まるな・危険」と貴族からは敬遠されるようになり商売にならず廃業。
それはそうでしょう。商人は宿屋ではなく野営が当たり前。夜は寝台でなんて考えているのは貴族くらい。貴族が利用してくれ無くなれば客はいないという事です。
風の便りで、彼は副王都のストリップ劇場の呼び込みを、奥様は中でお客様にショーを披露していると聞きました。野垂れ死んでいなくて何よりです。
瑕疵はあちらにあっても、婚約が破棄になってしまえば次の相手などなかなか見つかりません。
ゲン担ぎと申しますか、貴族は面倒な生き物でもありますので不幸を呼び込む、災いが降りかかるなどのように思われてしまい、関わり合いにならないのが一番と敬遠をされるのです。
それも御座いますので、支払われた慰謝料はそれなりにあり使わずに貯めておりましたが領地の水害に全てを吐き出してもまだ足らなかったのです。
私の両親は当初は反対を致しました。
ですが私ももう23歳となってしまい、貴族令嬢としては行き遅れ、薹が立つと申しましょうか。これから先は父の後を継いで兄が当主となりますし、何時までも実家にいる事も出来ません。
以前の婚約破棄での慰謝料は領民が生きるためにはもう投げうってしまいましたし、同額を私に返済すると言ってもこれから立て直しの領地ですから10年以上はかかってしまうでしょう。
私なりに算盤を弾いたのです。
使ってしまったお金に対しては領地の一部を10年間自由にさせて頂くこと。そしてパルカス侯爵家から慰謝料も私の自由に使ってよいとすれば、婚姻期間の3年で倹しく生きるには十分ではないかと。
★~★
今回の婚約は離縁をする結婚を前提とした両家が認める契約。
なので、元々ブラウリオ様とは結婚となっても契りを交わそうとは考えておりませんでした。
今日は取り敢えずの挨拶を済ませ、帰りも遅くなるため侯爵家が客間を用意してくださったのでそこで眠る予定だったのです。
なんせこの婚約式の日までの間、ブラウリオ様は意中の方の意向で一度もお顔を拝見した事がなく、お声も聞いた事が御座いませんでした。
挨拶と言っても自己紹介程度でお部屋に伺ったのもブラウリオ様も同じ思いだったのか「お話があるそうです」と従者に言伝をされていて、その言葉に従って部屋を伺っただけのモノ。
なのにいきなり頬を張るなんて。
ちょっとだけ期待したのですよ?
何と言っても侯爵家ですから、「本日はこちらでお休みください」と客間に案内され、見えた寝台はそれはもうフカフカ!「こんな寝台で眠るなんて人生に何度もないわ!」と期待したのです。
朝も10時に朝食を部屋まで持って来てくださるという至れり尽くせり。
朝食を終えればパルカス侯爵夫妻が「お飾り妻」の為に用意してくださったという別宅訪問の予定だったのです。3年間の白い結婚成立まで使用人も付けてくれてのウハウハ生活を送る場所も見ておきたかったですし。
その条件を提示されたとき、使用人がお目付け役、見張り役である事など理解しておりましたが夢の生活に違いは御座いません。
だとしてもです。
いきなり頬を張るような人間が同じ屋根の下にいるかと思うと気分も悪くなります。
「ポリー!ポリーいる?」
「はい、お嬢様‥‥ど、どうなされました?!」
「予定が変わったわ。屋敷に戻りましょう」
「待て、話は終わっていない」と宣うブラウリオ様でしたが、私はポリーと共にまだ歓談が続くホールから聞こえてくる声を背に馬車乗り場に向かったのでした。
「僕の子じゃない!」と仰っていたのですけども、生まれてみればアラ!可愛い♡婚約者の色をしっかりと受け継いで、それはもうそっくりな子供で御座いました。
その件で婚約は破棄となり、彼は家から籍を抜かれ放逐。
宿屋も「泊まるな・危険」と貴族からは敬遠されるようになり商売にならず廃業。
それはそうでしょう。商人は宿屋ではなく野営が当たり前。夜は寝台でなんて考えているのは貴族くらい。貴族が利用してくれ無くなれば客はいないという事です。
風の便りで、彼は副王都のストリップ劇場の呼び込みを、奥様は中でお客様にショーを披露していると聞きました。野垂れ死んでいなくて何よりです。
瑕疵はあちらにあっても、婚約が破棄になってしまえば次の相手などなかなか見つかりません。
ゲン担ぎと申しますか、貴族は面倒な生き物でもありますので不幸を呼び込む、災いが降りかかるなどのように思われてしまい、関わり合いにならないのが一番と敬遠をされるのです。
それも御座いますので、支払われた慰謝料はそれなりにあり使わずに貯めておりましたが領地の水害に全てを吐き出してもまだ足らなかったのです。
私の両親は当初は反対を致しました。
ですが私ももう23歳となってしまい、貴族令嬢としては行き遅れ、薹が立つと申しましょうか。これから先は父の後を継いで兄が当主となりますし、何時までも実家にいる事も出来ません。
以前の婚約破棄での慰謝料は領民が生きるためにはもう投げうってしまいましたし、同額を私に返済すると言ってもこれから立て直しの領地ですから10年以上はかかってしまうでしょう。
私なりに算盤を弾いたのです。
使ってしまったお金に対しては領地の一部を10年間自由にさせて頂くこと。そしてパルカス侯爵家から慰謝料も私の自由に使ってよいとすれば、婚姻期間の3年で倹しく生きるには十分ではないかと。
★~★
今回の婚約は離縁をする結婚を前提とした両家が認める契約。
なので、元々ブラウリオ様とは結婚となっても契りを交わそうとは考えておりませんでした。
今日は取り敢えずの挨拶を済ませ、帰りも遅くなるため侯爵家が客間を用意してくださったのでそこで眠る予定だったのです。
なんせこの婚約式の日までの間、ブラウリオ様は意中の方の意向で一度もお顔を拝見した事がなく、お声も聞いた事が御座いませんでした。
挨拶と言っても自己紹介程度でお部屋に伺ったのもブラウリオ様も同じ思いだったのか「お話があるそうです」と従者に言伝をされていて、その言葉に従って部屋を伺っただけのモノ。
なのにいきなり頬を張るなんて。
ちょっとだけ期待したのですよ?
何と言っても侯爵家ですから、「本日はこちらでお休みください」と客間に案内され、見えた寝台はそれはもうフカフカ!「こんな寝台で眠るなんて人生に何度もないわ!」と期待したのです。
朝も10時に朝食を部屋まで持って来てくださるという至れり尽くせり。
朝食を終えればパルカス侯爵夫妻が「お飾り妻」の為に用意してくださったという別宅訪問の予定だったのです。3年間の白い結婚成立まで使用人も付けてくれてのウハウハ生活を送る場所も見ておきたかったですし。
その条件を提示されたとき、使用人がお目付け役、見張り役である事など理解しておりましたが夢の生活に違いは御座いません。
だとしてもです。
いきなり頬を張るような人間が同じ屋根の下にいるかと思うと気分も悪くなります。
「ポリー!ポリーいる?」
「はい、お嬢様‥‥ど、どうなされました?!」
「予定が変わったわ。屋敷に戻りましょう」
「待て、話は終わっていない」と宣うブラウリオ様でしたが、私はポリーと共にまだ歓談が続くホールから聞こえてくる声を背に馬車乗り場に向かったのでした。
応援ありがとうございます!
989
お気に入りに追加
1,287
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる