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第38話 従者の忠告
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ノースレスト王国から帰国の途にある隊列から早馬が出され、先にウェストレスト王国に到着をした。
齎された知らせに第2王子エルクスは考えていた以上にうまく進んだ事に胸を撫でおろす。
予想では金銭保証になるかと思った取水の1割増しは賭けでもあった。
金銭保証なら1回で終わるが水の取水は永年だ。
港湾の利用も正規料金なので、これだけで国の収益は3%の増収になる。ルシファーが部屋に籠った事で格安の利用料を提示せねばならなくなったが、これで帳消しになるだろう。
「しかし、何故こんなことをしでかしたんだろうな」
「何でも嫁いで来られた妃殿下の異母姉が産んだ子が国内の子息の子種ではなかったようです。赤子は侯爵家の敷地内から出していませんので直接確認はまだ出来ておりませんが、父親側にも損害金の半額を負担させるはずだったようですから、全てを被る事は出来なかったんでしょう」
「そうなる前に子供のしつけをきっちりしておけば良かっただけだが、皮肉なものだな。手塩に掛けた子供によって命さえも失うが、虐待し続けなんの教えも与えず、ただ血を分けただけの娘がいたから国が痛手を負うだけで済むとはな。して、その赤子はどうなった」
「教会預かりになるようですが、肌の色が違う、それだけでもあの国では足枷でしょうが父親は判らず母親は犯罪人となれば生き辛いでしょうね」
「ならその子供、引き取ればどうだ?」
「無茶言わないでください。間者にでも育てるつもりですか。何よりあの異母姉の子です。ルシファー殿下がキレますよ?」
エルクスが見ても笑ってしまうほどにルシファーはマジョリカに溺れている。
エミリアの子を国内のどこかの貴族でも引き取ったとなれば怒鳴り込んでくるに違いない。
「触らぬ神に祟りなしか。だが赤子には罪はないからな。親がクズだから子もクズになるとは限らない。そのいい例がマジョリカ妃だからな」
「かなり変わり種…とも言えますが」
「ルシファーの相手だ。それくらいぶっ飛んでないと扱えないだろう」
エルクスはぶるっと1つ身震いをした。
モンテストとその手の会話はした事はないが、マジョリカのように特異な才能を抱えた女性が妻となり、周囲が知る所になれば第1王子が既に立太子をしてはいるが、次の王位は間違いなく揉める。
1世紀も前の時代なら男性の裁量1つでどうとでもなったが、社交界で女性の立ち位置は重要である今「おほほ」と微笑んで流行の最先端を走っているだけでは話にならない。
特に諸外国でも海の向こうの国と交易も活発になっている今、語学と言うのは非常に大きな武器になる。通訳からはくみ取れない腹の内を読まねばならない外交。何を言っているのか判らないと笑っているだけならいない方がずっとマシだ。
半年足らずで聞き慣れない言語でも使いこなす事が出来る才能がある人間は脅威でもある。
報告によればマジョリカにもルシファーにも王位は興味がないので辞退をする方向になるだろうが、野心があればどうなったか判らないと思うと体も震えようと言うものだ。
「私の妃だったらどうだったかな」
「殿下。内紛になりそうな想像はお止めください」
「解ってるよ。国もだが家庭内も紛争は起きないに限る。兄弟でも夫婦でもね。さて。今日は妃に花でも持って帰るかな」
「やめた方が良いですよ」
「何故だ」
「何もない時に贈り物をしたら、女性は間違いなく ”何かある” と痛くない腹を痛くなるまで探られますから」
エルクスは大人しく従者の忠告を聞き入れた。
齎された知らせに第2王子エルクスは考えていた以上にうまく進んだ事に胸を撫でおろす。
予想では金銭保証になるかと思った取水の1割増しは賭けでもあった。
金銭保証なら1回で終わるが水の取水は永年だ。
港湾の利用も正規料金なので、これだけで国の収益は3%の増収になる。ルシファーが部屋に籠った事で格安の利用料を提示せねばならなくなったが、これで帳消しになるだろう。
「しかし、何故こんなことをしでかしたんだろうな」
「何でも嫁いで来られた妃殿下の異母姉が産んだ子が国内の子息の子種ではなかったようです。赤子は侯爵家の敷地内から出していませんので直接確認はまだ出来ておりませんが、父親側にも損害金の半額を負担させるはずだったようですから、全てを被る事は出来なかったんでしょう」
「そうなる前に子供のしつけをきっちりしておけば良かっただけだが、皮肉なものだな。手塩に掛けた子供によって命さえも失うが、虐待し続けなんの教えも与えず、ただ血を分けただけの娘がいたから国が痛手を負うだけで済むとはな。して、その赤子はどうなった」
「教会預かりになるようですが、肌の色が違う、それだけでもあの国では足枷でしょうが父親は判らず母親は犯罪人となれば生き辛いでしょうね」
「ならその子供、引き取ればどうだ?」
「無茶言わないでください。間者にでも育てるつもりですか。何よりあの異母姉の子です。ルシファー殿下がキレますよ?」
エルクスが見ても笑ってしまうほどにルシファーはマジョリカに溺れている。
エミリアの子を国内のどこかの貴族でも引き取ったとなれば怒鳴り込んでくるに違いない。
「触らぬ神に祟りなしか。だが赤子には罪はないからな。親がクズだから子もクズになるとは限らない。そのいい例がマジョリカ妃だからな」
「かなり変わり種…とも言えますが」
「ルシファーの相手だ。それくらいぶっ飛んでないと扱えないだろう」
エルクスはぶるっと1つ身震いをした。
モンテストとその手の会話はした事はないが、マジョリカのように特異な才能を抱えた女性が妻となり、周囲が知る所になれば第1王子が既に立太子をしてはいるが、次の王位は間違いなく揉める。
1世紀も前の時代なら男性の裁量1つでどうとでもなったが、社交界で女性の立ち位置は重要である今「おほほ」と微笑んで流行の最先端を走っているだけでは話にならない。
特に諸外国でも海の向こうの国と交易も活発になっている今、語学と言うのは非常に大きな武器になる。通訳からはくみ取れない腹の内を読まねばならない外交。何を言っているのか判らないと笑っているだけならいない方がずっとマシだ。
半年足らずで聞き慣れない言語でも使いこなす事が出来る才能がある人間は脅威でもある。
報告によればマジョリカにもルシファーにも王位は興味がないので辞退をする方向になるだろうが、野心があればどうなったか判らないと思うと体も震えようと言うものだ。
「私の妃だったらどうだったかな」
「殿下。内紛になりそうな想像はお止めください」
「解ってるよ。国もだが家庭内も紛争は起きないに限る。兄弟でも夫婦でもね。さて。今日は妃に花でも持って帰るかな」
「やめた方が良いですよ」
「何故だ」
「何もない時に贈り物をしたら、女性は間違いなく ”何かある” と痛くない腹を痛くなるまで探られますから」
エルクスは大人しく従者の忠告を聞き入れた。
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